二話 お前の名前はムガク・センリョ!
シンローにAIについて説明したが、ちょっとしか理解して貰えなかった。そもそもパソコン自体わかっていなかったので、確認すると江戸時代生まれらしかった。そりゃ分かんねーよ!
(学習データはどうやって渡せばいい?)
《学習データとなるものを私に通してください》
――私に通す? あぁ、この画面かな?
(シンロー、なんかちょうど良さそうな本はない?)
「うーん、じゃあそこの魔物に関する本とかどう?」
(じゃあそれで)
シンローにお願いして、画面の上に本を乗せてもらう。画面に実体はないので当たり前だが、本は画面をすり抜けていく。
《登録が完了しました》
《質問はありますか?》
何かある? とシンローを見上げると、シンローが「そうだ」と口を開く。
「じゃあ、トロールについて教えて」
《棍棒等を武器にする大型の魔物です。凶暴ですが知能が低く、時折仲間同士で喧嘩する姿も見られます。皮膚は硬く、治癒力も高いので刃物による攻撃は不利です》
「ふむふむ。あってるね。じゃあ弱点は?」
《太陽の光です。幼体等、弱い個体は石化します》
「うんうん。あってる――便利だね。他の本も覚えて貰おう」
そう言ってシンローは嬉しそうにチャッピーに本を通していく。これでもかと、五十冊くらい入れた。ちょっと多くはないかと思ったが、シンローは「まだ少ないよー」と、サクッとやってしまう。本来は俺がやらなきゃいけなかったことを進んでやってくれたので、正直ありがたかった。
「――よし! これでいいんじゃない?!」
《質問をどうぞ》
「じゃあ、この国の現国王の名前は?」
《パラダイスです》
「ん?」
訝しそうに画面を見つめるシンローに、俺は嫌な予感がした。
「じゃあ、この国の特産は?」
《ココナッツです》
「違うなぁ......大丈夫? 君の従魔」
――これは、もしや......。
(学習データはどれくらい記憶できる......?)
《本一冊分程度です》
(さっきの回答ってハルシネーションしてた?)
《はい、実は現在のメモリ情報から類推して回答していました》
――おい、ふざけんじゃねぇ! あのクソ女!!
(はい、不敬ポイント一点追加)
俺は天井に向かって睨みつける。
(記憶容量が少なかったら使い物にならねぇだろ!)
(貴方の神威と同等の能力しか発揮できないからね)
(神威ってなんだよ!)
(人間からの信仰により上がる神としての威信よ)
「さっきシンローから聞いたでしょ?」と涼しい声で言いやがるのに腹が立つ。
「――じゃあ、最後の一冊分しか記憶していなかったのかぁ」
なんてシンローは画面をまじまじと見ながら呟いている。何も知らないことだらけだって言うのに、本一冊分しか記憶できないなんて不便すぎやしないか?
――クソぉ!!
地団駄を踏んでいると、シンローの前に薄赤色の画面が表示される。
「あ――ごめん、ダイチ。僕、戻って仕事してくるよ。担当地で問題が発生したみたい」
「――う?」
「ごめん、なるべく早く戻るから!」
そう言って俺が何かを言う前に、シンローは消えてしまった。
――え? 俺これからどうすんの?
姿は赤子。力もない。介助してくれる人は去ってしまった。
――そういえば、ご飯とかトイレとかはどうするんだ?
(実体はないから基本不要よ)
(いつまで盗聴してるんですか?)
(ほら、初日じゃない? 一応見守ってるのよ)
(じゃあ、こっちに来て助けてくださいよ。何もできないんです)
(そこまでは嫌だわ)
(なんてクソ上司だ!)
(はい、不敬ポイント二点追加)
あまりの理不尽に、俺はまた地団駄を踏む。なんだろう、泣いていいかな? そもそも、不敬ポイントってなんだよ。神のクセに人事査定ってなんだよ。昇給とかボーナスあるんですかね?!
(一応、使い魔一号なんだし、名前付けてあげればー?)
(――ん? あぁ......)
そうか、チャッピーはAI自体の名前であり、こいつの固有名詞ではない。一応使い魔ならつけてあげた方がいいのか......。
――知識が足りていないのに、誤魔化して回答しようとする......。
(うん。無学浅慮。チャッピー、お前の名前は『ムガク・センリョ』だ!)
《私の名前はムガク・センリョ......永続メモリに記憶します》
(......なかなか、恨みを感じるわね)
誰のせいでこうなったのかな? という言葉を出さないように耐えたのに、結局キレイーナには筒抜けで不敬ポイントを一点追加された――理不尽。
***
ダイチ・コヤーマ・ビッジョ
神威:1
信仰:5
権能:従魔
ステータス:新生神
不敬:8pt
●従魔
ムガク・センリョ
解放レベル:1
能力:記憶・検索