ホーム神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~三話 信仰を集めて成長したいと思います
← 前の話目次

三話 信仰を集めて成長したいと思います

(――なぁ、一つ質問があるんだが?)
(何かしら? シンローにしてくれる?)
(いや、暇でしょ? キレイーナさん)
(......暇で忙しくしているのよ)

――暇で忙しいって、馬鹿にしてるんですかね?

(はい、不敬――)
(俺の心の声まで拾わないでくれますかね?)
(神とはそんなものよ)

 絶対鼻ほじりながら言ってるだろ、このひ――ゲフンゲフン。あの美しい顔で鼻をほじるのは不思議なアイロニーがあって、いとをかしですなぁ......。

(......)
(それで、質問なんですが。なんか、表示されてる画面に『魔物襲撃予測:二日後』なんて、不穏な文字列があるんですが、ここのことではないですよね?)
(何言ってるの。ここのこと以外表示してないわ)

 馬鹿ねぇと言わんばかりに鼻で笑った感に、ピクリと眉毛が上がる。

(え......人口三百しかいないのに、魔物が攻めてくるんですか......?)
(そうよ。不運ね)
(不運ねって、助けてあげてくださいよ! 滅亡しちゃいますよ!)
(馬鹿ねぇ。そのためにあなたが降臨したんじゃない)
(俺、赤子ですが?!)
(大丈夫、大丈夫。明日には話せるくらいには信仰も貯まるでしょ)

 呑気なキレイーナに俺は地団駄を踏む――正確には踏めていないが。

(とりあえず、シンローも手伝ってくれるから、シンローが帰ってくるまでムガクと勉強しながら待ってなさい)
(......ムガク、最後に読み込んだ本はなんだ?)
《世界の観光地に関する本です》

 ああああああああああ、勉強出来ねぇじゃねぇか!! しかも、赤子だから、本も運べねぇ!!

 ジロリと天井を睨むと、一冊の本が浮き上がり、ムガクのウィンドウを通過していく。

(――特別に魔物に関する本を読み込ませてあげたわ。これで大人しく勉強していなさい)
(......ありがとうございます)

 若干腑には落ちなかったが、感謝はしておくことにする。ムガクにシンローが訊いていたトロールを中心に質問を投げ、分からないことを聞き、また質問し......気付けば外は暗くなっていた。そして、さらに気付けば朝日が差し込み......。

――あれ? 俺、寝てなくね?

 赤ちゃんなのに寝なくていいの? でも、全然眠たくないんだよな......。神様だから、やっぱり身体の構造からして違う――っていうか、肉体はあるのか? なんて考えている間に、すっかり太陽は上り、シンローが帰ってくる。

「――ごめんね! 大丈夫だった?」

 ムスッとしながらシンローを見上げると、放置した割には心配そうな顔をしていた。

(赤子を突然ほっぽりだすのはどうかと思う......)
「ごめんごめん! 赤子って言っても神だから、死なないからさ!」
(暇つぶしの何か置いていってくれても......)
「チャッピー、いたからいいかなって!」
(......)

 なおも睨む俺に、シンローは手を合わせて改めて「ごめんよ」と言った。

「謝罪の印と言ってはなんですが、これから信仰を集めに行こうか! 集まったら話せるようになるよ!」
(それは助かるけど......)

 シンローはそそくさと俺を抱っこすると、慣れた足取りで部屋を出た。最初にいた教会のような空間も通り過ぎ、外に出る。

「さぁて、新生神・ダイチのお披露目だよー!」

 扉の外は......辛気臭い町があった。何度も補修され、ツギハギだらけになった建物。汲むのが大変そうな井戸。活気のない人々......。

 町の人はシンローと俺を見るなり、濁った目で頭を下げた。子どもを連れた女性なんかは、手を合わせて祈ってくれたりもしている。

「この地に新しく誕生した、ダイチ・コヤーマ・ビッジョだ。皆、大切にしてねー!」
(なぁ、こんなのんびりしてていいの? 明日、魔物来るんだろ?)
「大丈夫だよ、僕が手伝うし。それよりもサクッとダイチの神威を上げておかないと、ダイチが何もできないからね」
(なるほど......?)

 街頭演説するように、シンローは通り過ぎる人々に俺を紹介していく。俺はとりあえず愛想笑いしたり、手を振ってみたりする。会釈するだけの人もいれば、頭を下げて手を合わせてくれる人もいる。

――ん?

 身体の内側から温かいものが少し湧き上がってくるのを感じる。やがて、

ピコン

 目の前に画面が表示された。

―――――
神威が2に上がりました。
神力:1 → 5
【獲得スキル】
・神の声
―――――

「お、話せるようになったかな?」

 シンローが画面を覗く。

「そうみたい。ありがとう」

 子どもらしい透き通った声が、自分の耳にも心地良い。俺の言葉にシンローがうんうんと頷いたあと、少し顔を顰める。

「それにしても、神威を一上げるのにかなり時間がかかったね......。以前の神々の失敗で、神に対しての信仰心がかなり薄くなってるみたい......。申し訳ないけど、神威を上げるのに苦労するかも......」
「えぇ」

 既に苦労しそうな気配に、俺は盛大に顔を顰めた。

「――?」

 ふと、視線を感じて振り向くと、俺を凝視している女の子がいる。金髪の短い髪に赤いバンダナが印象的だ。

「――ひっ」

 よく見ると、俺を熱に浮かされたようなギラギラとした目で見ている。シンローの服を掴んで怯えていると、怖いほどの笑顔でズカズカと俺に近づいてくる。

――怖いよ! 何もしてないのに狂信者だよ! 怖いよ!

ピコン

―――――
神威が3に上がりました。
神力:5 → 10
見た目が3歳になります。
【獲得スキル】
・浮遊
―――――

 神威がもう上がったよ! 怖いって!
シェア
← 前の話
二話 お前の名前はムガク・センリョ!
最新話です
目次に戻る
神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~作者:小島もりたか
目次を見る
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~三話 信仰を集めて成長したいと思います
← 前の話目次

三話 信仰を集めて成長したいと思います

(――なぁ、一つ質問があるんだが?)
(何かしら? シンローにしてくれる?)
(いや、暇でしょ? キレイーナさん)
(......暇で忙しくしているのよ)

――暇で忙しいって、馬鹿にしてるんですかね?

(はい、不敬――)
(俺の心の声まで拾わないでくれますかね?)
(神とはそんなものよ)

 絶対鼻ほじりながら言ってるだろ、このひ――ゲフンゲフン。あの美しい顔で鼻をほじるのは不思議なアイロニーがあって、いとをかしですなぁ......。

(......)
(それで、質問なんですが。なんか、表示されてる画面に『魔物襲撃予測:二日後』なんて、不穏な文字列があるんですが、ここのことではないですよね?)
(何言ってるの。ここのこと以外表示してないわ)

 馬鹿ねぇと言わんばかりに鼻で笑った感に、ピクリと眉毛が上がる。

(え......人口三百しかいないのに、魔物が攻めてくるんですか......?)
(そうよ。不運ね)
(不運ねって、助けてあげてくださいよ! 滅亡しちゃいますよ!)
(馬鹿ねぇ。そのためにあなたが降臨したんじゃない)
(俺、赤子ですが?!)
(大丈夫、大丈夫。明日には話せるくらいには信仰も貯まるでしょ)

 呑気なキレイーナに俺は地団駄を踏む――正確には踏めていないが。

(とりあえず、シンローも手伝ってくれるから、シンローが帰ってくるまでムガクと勉強しながら待ってなさい)
(......ムガク、最後に読み込んだ本はなんだ?)
《世界の観光地に関する本です》

 ああああああああああ、勉強出来ねぇじゃねぇか!! しかも、赤子だから、本も運べねぇ!!

 ジロリと天井を睨むと、一冊の本が浮き上がり、ムガクのウィンドウを通過していく。

(――特別に魔物に関する本を読み込ませてあげたわ。これで大人しく勉強していなさい)
(......ありがとうございます)

 若干腑には落ちなかったが、感謝はしておくことにする。ムガクにシンローが訊いていたトロールを中心に質問を投げ、分からないことを聞き、また質問し......気付けば外は暗くなっていた。そして、さらに気付けば朝日が差し込み......。

――あれ? 俺、寝てなくね?

 赤ちゃんなのに寝なくていいの? でも、全然眠たくないんだよな......。神様だから、やっぱり身体の構造からして違う――っていうか、肉体はあるのか? なんて考えている間に、すっかり太陽は上り、シンローが帰ってくる。

「――ごめんね! 大丈夫だった?」

 ムスッとしながらシンローを見上げると、放置した割には心配そうな顔をしていた。

(赤子を突然ほっぽりだすのはどうかと思う......)
「ごめんごめん! 赤子って言っても神だから、死なないからさ!」
(暇つぶしの何か置いていってくれても......)
「チャッピー、いたからいいかなって!」
(......)

 なおも睨む俺に、シンローは手を合わせて改めて「ごめんよ」と言った。

「謝罪の印と言ってはなんですが、これから信仰を集めに行こうか! 集まったら話せるようになるよ!」
(それは助かるけど......)

 シンローはそそくさと俺を抱っこすると、慣れた足取りで部屋を出た。最初にいた教会のような空間も通り過ぎ、外に出る。

「さぁて、新生神・ダイチのお披露目だよー!」

 扉の外は......辛気臭い町があった。何度も補修され、ツギハギだらけになった建物。汲むのが大変そうな井戸。活気のない人々......。

 町の人はシンローと俺を見るなり、濁った目で頭を下げた。子どもを連れた女性なんかは、手を合わせて祈ってくれたりもしている。

「この地に新しく誕生した、ダイチ・コヤーマ・ビッジョだ。皆、大切にしてねー!」
(なぁ、こんなのんびりしてていいの? 明日、魔物来るんだろ?)
「大丈夫だよ、僕が手伝うし。それよりもサクッとダイチの神威を上げておかないと、ダイチが何もできないからね」
(なるほど......?)

 街頭演説するように、シンローは通り過ぎる人々に俺を紹介していく。俺はとりあえず愛想笑いしたり、手を振ってみたりする。会釈するだけの人もいれば、頭を下げて手を合わせてくれる人もいる。

――ん?

 身体の内側から温かいものが少し湧き上がってくるのを感じる。やがて、

ピコン

 目の前に画面が表示された。

―――――
神威が2に上がりました。
神力:1 → 5
【獲得スキル】
・神の声
―――――

「お、話せるようになったかな?」

 シンローが画面を覗く。

「そうみたい。ありがとう」

 子どもらしい透き通った声が、自分の耳にも心地良い。俺の言葉にシンローがうんうんと頷いたあと、少し顔を顰める。

「それにしても、神威を一上げるのにかなり時間がかかったね......。以前の神々の失敗で、神に対しての信仰心がかなり薄くなってるみたい......。申し訳ないけど、神威を上げるのに苦労するかも......」
「えぇ」

 既に苦労しそうな気配に、俺は盛大に顔を顰めた。

「――?」

 ふと、視線を感じて振り向くと、俺を凝視している女の子がいる。金髪の短い髪に赤いバンダナが印象的だ。

「――ひっ」

 よく見ると、俺を熱に浮かされたようなギラギラとした目で見ている。シンローの服を掴んで怯えていると、怖いほどの笑顔でズカズカと俺に近づいてくる。

――怖いよ! 何もしてないのに狂信者だよ! 怖いよ!

ピコン

―――――
神威が3に上がりました。
神力:5 → 10
見た目が3歳になります。
【獲得スキル】
・浮遊
―――――

 神威がもう上がったよ! 怖いって!
シェア
← 前の話
二話 お前の名前はムガク・センリョ!
最新話です
目次に戻る
神界人事部から異世界担当に配属されました。 ~元IT管理職、人口304人の辺境国家を立て直します~作者:小島もりたか
目次
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません