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第31話 G.P.S.覚書〈その12:報酬〉



 読者の皆様 お久しぶりです。
 ジーナ・ダイヤモンドです。
 森小鬼モグルをめぐる冒険が終わり 学院の試験も終わって
 私わたくしが〈碧猫屋あおねこや〉のアルバイトに復帰して3日目のことでございました。

 マリノア店長様とエレノアールさんは奥で調合中。
 私わたくしが店番を勤めます夏の長い夕暮れ刻。


 ── カランッ カラン... カラン...... ──


「マリノア 邪魔する」


 ヴィオラのような深みのある低音。
 ドキンッと心臓が強く脈打ちます。

 お店の入り口の方へと視線を向けますと 目に入ってくる長身で颯爽として淡麗な お姿。
 そう 親衛三騎士筆頭のアリシア・アダマンティ様です。


「......いっ いらっしゃいませ」


 掠れる声で それだけお伝えすると 慌てて立ち上がり マリノア店長様を呼びに 奥へと向かおうと致します。


「ああ。待ってくれ ジーナ。今日はキミに用がある」


 ああ。
 読者の皆様。
 ご好評頂いております〈G.P.S.覚書〉も 今回が最終回になるやもしれません。
 最推しのアリシア様に呼び止められてしまいました。
 しかも 私わたくしに 用があるとのお言葉。
 心臓が高鳴り過ぎて このまま死を迎えるのは ほぼ確実な情勢と申せましょう。


「この間 東の森の奥地まで 森小鬼モグル討伐へ行ってくれたのだろう? その報酬を預かってきた」


 そう仰るとアリシア様は ズシリと重そうな布袋を取り出し 手渡して下さいます。


「銀貨100枚入っている筈だ。確かめてくれ」


 銀貨100枚。
 想定の上限に近い報酬。
 頭の中で素早く計算致します。

 リイン村の衛士 アイリスさんのお話だと 森小鬼モグル討伐の衛士隊からの礼金は1匹当たり銀貨3枚が規定だそうなのです。
 私わたくし共が討伐したのは 合計20匹。
 土小鬼ドグルや森小鬼の巫術師モグル・シャーマンも討伐しましたので 少し増額されるかもとのお話もございましたので70~80枚程度 5人で分けましたらば1人宛15枚程度との予想でございました。
 
 ただ 大規模な群れ(惨殺されてはおりましたが......)でしたので アイリスさんのご判断で王都騎士団アークナイツへも報告を上げて頂きました。
 それが受理されて 騎士団からの報償金という形になりますと 衛士隊からの礼金よりも 上乗せが期待できるのでは... とのキールさんの見立て。
 
 結果 銀貨100枚 つまり1人宛で20枚。
 
 〈碧猫屋あおねこや〉の1週間のお給料が5枚~10枚というところでございますから 上々の首尾と申せましょう。
 実働3日で 残りの10日程は試験勉強や図書館での読書に当てられたことを思いますと 割りが良かったとすら 申せるのかもしれません。
 まぁ 命を落とす危険性も十分にあった訳ではございますが......。


「確認ができたら この受け取りにサインが欲しい」


 袋から 銀貨を取り出し 10枚ずつの塊にして参ります。
 日頃から〈碧猫屋〉の売上管理をしておりますので 100枚程度すぐ数えることが出来ます。
 確かに100枚ございます。
 

「うん。そうだ そこに署名を頼む。こういったことは丁寧にしておかないとロクサーヌがうるさいからな」


 アリシア様が差し出された紙片にジーナ・ダイヤモンドと署名致します。


「ダイヤモンドか......。ダイヤモンド 美しい名だな」


 そう仰るとアリシア様は受け取りを丁寧に仕舞われます。
 他の方々の署名は大丈夫なのでしょうか?
 疑問に思ったことを お尋ね致します。


「ああ。そのことだが 少し説明がある。ジーナに関しては信用しているから 先に受け取りをもらってしまったんだが......」


 アリシア様の口から『信用している』。
 ......なんと嬉しいお言葉なのでしょう。
 天にも昇るとは まさにこの様な気持ちを言うのでございましょう。


「その銀貨100枚なんだが 受け取りに少し条件があるんだ。今回の森小鬼モグル討伐の件について こちら王都騎士団が許可を出すまで口外しないで欲しい。その条件を飲めるならの銀貨100枚だ」


 アリシア様の頼みとあれば もちろん絶対に口外など致しません。
 大きく2度頷き お約束を致します。
 ......ですが 私わたくしは お約束出来ますが あとの方々についてまでは お約束出来かねる部分もございます。
 特に アホの赤毛猿フィンなど吹聴しまくりそうな気が致します。
 お隣に呼ばれて一緒に食事をしておる際にも おば様に話す内容が日に日に 大袈裟になっていっておるのでございますから。


「ああ。ジーナが黙っていてくれればいい。その為の100枚だ。他のメンバーも約束を取り付ければ100枚支払う」

「へ? えっ!? ジーナ1人で銀貨100枚も もらえるの!?」


 思わず叫んでしまって絶望的な自己嫌悪に陥ります。
 憧れのアリシア様の前で はしたなくも大声を しかも子供っぽく自分のことを『ジーナ』などと......。


「ああ。まぁ そうだな......」


 アリシア様も私わたくしの大声に少し驚かれたご様子。
 ああ いっそ死にたいです。
 いえ もう死にます。
 帰り道にある深井戸に身投げ致します。
 今日まで ご愛読ありがとうございました......。


「名目上は 森小鬼モグル等 計126匹討伐で5人に銀貨 計500枚支払ったという処理にした」


 私わたくし共が倒したのは20匹で残りの100体以上は 正体不明の槍使いの手によるモノなのですが......。
 

「うん。それについてはリイン村のアイリス・デュンクル巡視長からの報告書を読ませてもらった。2次被害等が出ないように 丁寧に事後処理をしてくれたのだろう? そういった部分を含めての報償金だ。黙って受け取ってくれればいい」


 そう言って 優しく微笑んで下さいます。
 やはり 淡麗でお美し過ぎるお顔......まっすぐ見つめることなど到底できぬ相談 慌てて顔を伏せます。
 

「......リイン村からの報告書によると ジーナ 君きみがこの事件の顛末について かなり詳しく 記録を取ってくれているらしいじゃないか」


 筆頭騎士様の問い掛けに 頷きます。
 読者の皆様にも ご覧頂いた通り 覚書は綿密に認したためてございます。
 アリシア様の深みのある低音が さらに低くなります。


「騎士団としては その翼鷲獅グリフォンを連れていた槍使いについて もう少し知りたい。私 個人としてもな......。それと...だ。さらに個人的な用件があるんだ。次の休みでいいから 1度 私の休憩所へ来てくれないだろうか? そこで ゆっくり2人で話がしたい」


 え?
 私わたくし 一体何を言われているのでございましょうか?
 アリシア様のご自室で2人でお話?

 今日の帰り道に井戸に飛び込む所存でしたが 少しだけ延期したいと思います。
 確実に昇天できるイベント発生でございますので。
 
 



 
 
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星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
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 読者の皆様 お久しぶりです。
 ジーナ・ダイヤモンドです。
 森小鬼モグルをめぐる冒険が終わり 学院の試験も終わって
 私わたくしが〈碧猫屋あおねこや〉のアルバイトに復帰して3日目のことでございました。

 マリノア店長様とエレノアールさんは奥で調合中。
 私わたくしが店番を勤めます夏の長い夕暮れ刻。


 ── カランッ カラン... カラン...... ──


「マリノア 邪魔する」


 ヴィオラのような深みのある低音。
 ドキンッと心臓が強く脈打ちます。

 お店の入り口の方へと視線を向けますと 目に入ってくる長身で颯爽として淡麗な お姿。
 そう 親衛三騎士筆頭のアリシア・アダマンティ様です。


「......いっ いらっしゃいませ」


 掠れる声で それだけお伝えすると 慌てて立ち上がり マリノア店長様を呼びに 奥へと向かおうと致します。


「ああ。待ってくれ ジーナ。今日はキミに用がある」


 ああ。
 読者の皆様。
 ご好評頂いております〈G.P.S.覚書〉も 今回が最終回になるやもしれません。
 最推しのアリシア様に呼び止められてしまいました。
 しかも 私わたくしに 用があるとのお言葉。
 心臓が高鳴り過ぎて このまま死を迎えるのは ほぼ確実な情勢と申せましょう。


「この間 東の森の奥地まで 森小鬼モグル討伐へ行ってくれたのだろう? その報酬を預かってきた」


 そう仰るとアリシア様は ズシリと重そうな布袋を取り出し 手渡して下さいます。


「銀貨100枚入っている筈だ。確かめてくれ」


 銀貨100枚。
 想定の上限に近い報酬。
 頭の中で素早く計算致します。

 リイン村の衛士 アイリスさんのお話だと 森小鬼モグル討伐の衛士隊からの礼金は1匹当たり銀貨3枚が規定だそうなのです。
 私わたくし共が討伐したのは 合計20匹。
 土小鬼ドグルや森小鬼の巫術師モグル・シャーマンも討伐しましたので 少し増額されるかもとのお話もございましたので70~80枚程度 5人で分けましたらば1人宛15枚程度との予想でございました。
 
 ただ 大規模な群れ(惨殺されてはおりましたが......)でしたので アイリスさんのご判断で王都騎士団アークナイツへも報告を上げて頂きました。
 それが受理されて 騎士団からの報償金という形になりますと 衛士隊からの礼金よりも 上乗せが期待できるのでは... とのキールさんの見立て。
 
 結果 銀貨100枚 つまり1人宛で20枚。
 
 〈碧猫屋あおねこや〉の1週間のお給料が5枚~10枚というところでございますから 上々の首尾と申せましょう。
 実働3日で 残りの10日程は試験勉強や図書館での読書に当てられたことを思いますと 割りが良かったとすら 申せるのかもしれません。
 まぁ 命を落とす危険性も十分にあった訳ではございますが......。


「確認ができたら この受け取りにサインが欲しい」


 袋から 銀貨を取り出し 10枚ずつの塊にして参ります。
 日頃から〈碧猫屋〉の売上管理をしておりますので 100枚程度すぐ数えることが出来ます。
 確かに100枚ございます。
 

「うん。そうだ そこに署名を頼む。こういったことは丁寧にしておかないとロクサーヌがうるさいからな」


 アリシア様が差し出された紙片にジーナ・ダイヤモンドと署名致します。


「ダイヤモンドか......。ダイヤモンド 美しい名だな」


 そう仰るとアリシア様は受け取りを丁寧に仕舞われます。
 他の方々の署名は大丈夫なのでしょうか?
 疑問に思ったことを お尋ね致します。


「ああ。そのことだが 少し説明がある。ジーナに関しては信用しているから 先に受け取りをもらってしまったんだが......」


 アリシア様の口から『信用している』。
 ......なんと嬉しいお言葉なのでしょう。
 天にも昇るとは まさにこの様な気持ちを言うのでございましょう。


「その銀貨100枚なんだが 受け取りに少し条件があるんだ。今回の森小鬼モグル討伐の件について こちら王都騎士団が許可を出すまで口外しないで欲しい。その条件を飲めるならの銀貨100枚だ」


 アリシア様の頼みとあれば もちろん絶対に口外など致しません。
 大きく2度頷き お約束を致します。
 ......ですが 私わたくしは お約束出来ますが あとの方々についてまでは お約束出来かねる部分もございます。
 特に アホの赤毛猿フィンなど吹聴しまくりそうな気が致します。
 お隣に呼ばれて一緒に食事をしておる際にも おば様に話す内容が日に日に 大袈裟になっていっておるのでございますから。


「ああ。ジーナが黙っていてくれればいい。その為の100枚だ。他のメンバーも約束を取り付ければ100枚支払う」

「へ? えっ!? ジーナ1人で銀貨100枚も もらえるの!?」


 思わず叫んでしまって絶望的な自己嫌悪に陥ります。
 憧れのアリシア様の前で はしたなくも大声を しかも子供っぽく自分のことを『ジーナ』などと......。


「ああ。まぁ そうだな......」


 アリシア様も私わたくしの大声に少し驚かれたご様子。
 ああ いっそ死にたいです。
 いえ もう死にます。
 帰り道にある深井戸に身投げ致します。
 今日まで ご愛読ありがとうございました......。


「名目上は 森小鬼モグル等 計126匹討伐で5人に銀貨 計500枚支払ったという処理にした」


 私わたくし共が倒したのは20匹で残りの100体以上は 正体不明の槍使いの手によるモノなのですが......。
 

「うん。それについてはリイン村のアイリス・デュンクル巡視長からの報告書を読ませてもらった。2次被害等が出ないように 丁寧に事後処理をしてくれたのだろう? そういった部分を含めての報償金だ。黙って受け取ってくれればいい」


 そう言って 優しく微笑んで下さいます。
 やはり 淡麗でお美し過ぎるお顔......まっすぐ見つめることなど到底できぬ相談 慌てて顔を伏せます。
 

「......リイン村からの報告書によると ジーナ 君きみがこの事件の顛末について かなり詳しく 記録を取ってくれているらしいじゃないか」


 筆頭騎士様の問い掛けに 頷きます。
 読者の皆様にも ご覧頂いた通り 覚書は綿密に認したためてございます。
 アリシア様の深みのある低音が さらに低くなります。


「騎士団としては その翼鷲獅グリフォンを連れていた槍使いについて もう少し知りたい。私 個人としてもな......。それと...だ。さらに個人的な用件があるんだ。次の休みでいいから 1度 私の休憩所へ来てくれないだろうか? そこで ゆっくり2人で話がしたい」


 え?
 私わたくし 一体何を言われているのでございましょうか?
 アリシア様のご自室で2人でお話?

 今日の帰り道に井戸に飛び込む所存でしたが 少しだけ延期したいと思います。
 確実に昇天できるイベント発生でございますので。
 
 



 
 
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星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
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