ホーム›星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~›第41話 ペイジ家
← 次の話目次前の話 →

第41話 ペイジ家




「お帰りなさいませ お嬢様」

「ただいま ジル。ただ 今週は鍛練期間だから すぐにまた出掛けるから。父様 母様には そう伝えておいて」

「承知致しました お嬢様」


 ウェスティリア北西区の王城近い高級住宅街。
 王城北側の貴族街の城と見紛うほどの巨大な邸館ではないにせよ豪壮と形容するのがふさわしい 周囲を圧する3階建ての大邸宅。
 石塀に金柵の大門の横にある通用口の鍵を開け 玄関で出迎えた執事のジルに用件を伝え 自室へと向かうリアン。
 負けん気の強い緑碧瞳エメラルド・ブルーの踊り子が気後れした表情を浮かべるのを 気にも留めず 巨大な玄関ホール横の階段を1段飛ばしで上がる。

 
「シノン 何してるでありますかっ さっさと2階に来るでありますっ」


 階下に声を掛け 自室へと急ぐ濃緑瞳マラカイト・グリーンの少女。
 主人の急な帰宅に慌てて駆け上がってきた専属のメイドに素早く指示を出す。


「ネア わ・た・し・の水色と白のチュニックあったでしょう? あと この間 母様が買ってらした 着ずに仕舞い込んである薄ピンクのスカートも持って来て頂戴」

「はい お嬢様」


 ウォーキングクローゼットへと入っていく紺髪のメイド。
 入れ違いに部屋に入ってきた煌金髪シャイン・ゴールドの踊り子に背を向けたまま 部屋に据え置かれた宝箱を漁る濃緑髪マラカイト・グリーン。
 

「今 衣装を取りに行かせたでありますから 少し目立たない格好に着替えるであります.........おかしいでありますね ここに仕舞ったハズなのでありますが。......シノンは 自分と背丈が あまり変わらないでありますから 自分の服でも着れると思うのであります.........ああ コレであります。やっぱり ここに仕舞ってたであります」


 そう言いながら取り出したのは 今 佩いているのとほぼ同じサイズの細剣レイピア......装飾は もう少しシンプルな拵えのもの。


「お嬢様 お召し物でございます」

「ありがとう ネア。お客様がお着替えになられるから 隣の客間を開けて。......シノンは スカートの方が良いでありますよね?」


 一応の確認に頷く踊り子。
 
 
「着替えの手伝いとか 必要でありますか?」


 慌てた様子で 首を横に振るシノン。


「ネア お客様は 着替えの手伝いは必要ないそうですから お部屋にご案内して差し上げたら こっちへ戻って来て」

「承知致しました お嬢様」


 紺髪のメイドに連れられて 煌金髪シャイン・ゴールドが部屋から出ていくの見送ると 濃緑髪マラカイト・グリーンも着替えを始める。

 .........。
 ......。
 

「......コレ 背中のとこが......」


 部屋に戻って来たシノン。
 薄ピンクと白のフェイクツーピース。
 背中部分の赤いリボン編み上げと肩部分のパフスリーブが可愛いらしいデザイン。
 だが 背中のリボン部分の着付けは1人では難しいらしく 途中で解ほどけている。


「ああ。思った通り 似合うでありますね......。ネア 着付けを手伝って差し上げて」


 紺髪のメイドに手伝われて着付けを終えた金髪碧眼の美少女に お嬢様からの更なる提案。


「やっぱり そのキラキラの金髪が目立つでありますから これを被ると 良いと思うのであります」


 そう言って紺髪のメイドに 赤いリボン付きの白いボンネットを手渡す。
 ネアは シノンのひとつ括りの髪を解ほどくとボンネットを被せ首下でリボンを括る。
 白磁の様な肌味に映える赤いリボン。
 愛らしい人形の様な 見るからに令嬢といった外見。

 対する本物のご令嬢は 水色のチュニックに膝丈のドロワーズ。
 腰には2本の細剣レイピアを吊るしている。
 肩からは 白い短マント 頭にはチュニックと同じ色の鍔広に大きな白い羽根飾りの帽子。


「......お嬢様 また その様な格好で外出されますと奥様が お嘆きに」

「母様にも 本当に 困ったもの。自・分・ 王都騎士団アークナイツの鍛練期間の修・行・として この方の護・衛・任・務・を行っているのであります。スカートでは 剣は振るえないと母様には 言っておいて頂戴」
 

 .........。
 ......。
 ...。


「さあ 行くであります。自分 まだ正式には騎士見習いではありますが シノンの騎士ナイトとして あと2日 全力で護衛エスコートするであります」


 ペイジ邸の前面の車寄せに出た 男装の少女は恭しく 正装の少年の左手を取る。


「行くって どこに?」

「そうでありますね...... 東北区の貴族街の辺りは どうであります? あの辺りなら 闇ギルドの連中も動き難いでありましょうし」

「そんなとこ行くお金ないじゃん......」

「大丈夫であります。さっきお財布にお金入れ直したでありますし ペイジ家の名前を出せばツケが効く行きつけのお店もあるのであります。賭け事とかしなければ 2日ぐらい何とかなるハズであります」


 歩き始めようとするリアンの少し後ろを歩こうとするシノン。
 その金髪碧眼を見咎める様な濃緑色マラカイト・グリーンの瞳。


「腕は 組んでくれないんでありますか? こんなカッコいい騎士ナイトが護衛エスコートするんでありますのに」


 軽く頬を染める緑碧色エメラルド・ブルーの瞳。
 それは 数日前の自分の台詞を茶化されたと感じたせいなのか それとも別の理由なのか......。
 少し俯き加減に 自らの右腕を護衛の騎士ナイトに絡めに行く。


「貴族街なら 歩くには少し遠いでありますね......。ジルっ! 軽馬車クーペを車寄せに回して! お客様と貴族街の方まで送って頂戴」


 リアンは 回されて来た軽馬車クーペの客室キャビンにサッと乗り込むと 薄ピンク色のスカートドレスの淑女に手を差し伸べる。
 初老の馭者が客室キャビンの扉を閉めると 1頭立ての軽馬車クーペは軽やかに 走りだしたのだった......。
 .........。
 ......。
 ...。
 
 
 
 
シェア
前の話 →
第40話 宿屋
← 次の話
第42話 エレノアール・レンズ
星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム›星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~›第41話 ペイジ家

第41話 ペイジ家




「お帰りなさいませ お嬢様」

「ただいま ジル。ただ 今週は鍛練期間だから すぐにまた出掛けるから。父様 母様には そう伝えておいて」

「承知致しました お嬢様」


 ウェスティリア北西区の王城近い高級住宅街。
 王城北側の貴族街の城と見紛うほどの巨大な邸館ではないにせよ豪壮と形容するのがふさわしい 周囲を圧する3階建ての大邸宅。
 石塀に金柵の大門の横にある通用口の鍵を開け 玄関で出迎えた執事のジルに用件を伝え 自室へと向かうリアン。
 負けん気の強い緑碧瞳エメラルド・ブルーの踊り子が気後れした表情を浮かべるのを 気にも留めず 巨大な玄関ホール横の階段を1段飛ばしで上がる。

 
「シノン 何してるでありますかっ さっさと2階に来るでありますっ」


 階下に声を掛け 自室へと急ぐ濃緑瞳マラカイト・グリーンの少女。
 主人の急な帰宅に慌てて駆け上がってきた専属のメイドに素早く指示を出す。


「ネア わ・た・し・の水色と白のチュニックあったでしょう? あと この間 母様が買ってらした 着ずに仕舞い込んである薄ピンクのスカートも持って来て頂戴」

「はい お嬢様」


 ウォーキングクローゼットへと入っていく紺髪のメイド。
 入れ違いに部屋に入ってきた煌金髪シャイン・ゴールドの踊り子に背を向けたまま 部屋に据え置かれた宝箱を漁る濃緑髪マラカイト・グリーン。
 

「今 衣装を取りに行かせたでありますから 少し目立たない格好に着替えるであります.........おかしいでありますね ここに仕舞ったハズなのでありますが。......シノンは 自分と背丈が あまり変わらないでありますから 自分の服でも着れると思うのであります.........ああ コレであります。やっぱり ここに仕舞ってたであります」


 そう言いながら取り出したのは 今 佩いているのとほぼ同じサイズの細剣レイピア......装飾は もう少しシンプルな拵えのもの。


「お嬢様 お召し物でございます」

「ありがとう ネア。お客様がお着替えになられるから 隣の客間を開けて。......シノンは スカートの方が良いでありますよね?」


 一応の確認に頷く踊り子。
 
 
「着替えの手伝いとか 必要でありますか?」


 慌てた様子で 首を横に振るシノン。


「ネア お客様は 着替えの手伝いは必要ないそうですから お部屋にご案内して差し上げたら こっちへ戻って来て」

「承知致しました お嬢様」


 紺髪のメイドに連れられて 煌金髪シャイン・ゴールドが部屋から出ていくの見送ると 濃緑髪マラカイト・グリーンも着替えを始める。

 .........。
 ......。
 

「......コレ 背中のとこが......」


 部屋に戻って来たシノン。
 薄ピンクと白のフェイクツーピース。
 背中部分の赤いリボン編み上げと肩部分のパフスリーブが可愛いらしいデザイン。
 だが 背中のリボン部分の着付けは1人では難しいらしく 途中で解ほどけている。


「ああ。思った通り 似合うでありますね......。ネア 着付けを手伝って差し上げて」


 紺髪のメイドに手伝われて着付けを終えた金髪碧眼の美少女に お嬢様からの更なる提案。


「やっぱり そのキラキラの金髪が目立つでありますから これを被ると 良いと思うのであります」


 そう言って紺髪のメイドに 赤いリボン付きの白いボンネットを手渡す。
 ネアは シノンのひとつ括りの髪を解ほどくとボンネットを被せ首下でリボンを括る。
 白磁の様な肌味に映える赤いリボン。
 愛らしい人形の様な 見るからに令嬢といった外見。

 対する本物のご令嬢は 水色のチュニックに膝丈のドロワーズ。
 腰には2本の細剣レイピアを吊るしている。
 肩からは 白い短マント 頭にはチュニックと同じ色の鍔広に大きな白い羽根飾りの帽子。


「......お嬢様 また その様な格好で外出されますと奥様が お嘆きに」

「母様にも 本当に 困ったもの。自・分・ 王都騎士団アークナイツの鍛練期間の修・行・として この方の護・衛・任・務・を行っているのであります。スカートでは 剣は振るえないと母様には 言っておいて頂戴」
 

 .........。
 ......。
 ...。


「さあ 行くであります。自分 まだ正式には騎士見習いではありますが シノンの騎士ナイトとして あと2日 全力で護衛エスコートするであります」


 ペイジ邸の前面の車寄せに出た 男装の少女は恭しく 正装の少年の左手を取る。


「行くって どこに?」

「そうでありますね...... 東北区の貴族街の辺りは どうであります? あの辺りなら 闇ギルドの連中も動き難いでありましょうし」

「そんなとこ行くお金ないじゃん......」

「大丈夫であります。さっきお財布にお金入れ直したでありますし ペイジ家の名前を出せばツケが効く行きつけのお店もあるのであります。賭け事とかしなければ 2日ぐらい何とかなるハズであります」


 歩き始めようとするリアンの少し後ろを歩こうとするシノン。
 その金髪碧眼を見咎める様な濃緑色マラカイト・グリーンの瞳。


「腕は 組んでくれないんでありますか? こんなカッコいい騎士ナイトが護衛エスコートするんでありますのに」


 軽く頬を染める緑碧色エメラルド・ブルーの瞳。
 それは 数日前の自分の台詞を茶化されたと感じたせいなのか それとも別の理由なのか......。
 少し俯き加減に 自らの右腕を護衛の騎士ナイトに絡めに行く。


「貴族街なら 歩くには少し遠いでありますね......。ジルっ! 軽馬車クーペを車寄せに回して! お客様と貴族街の方まで送って頂戴」


 リアンは 回されて来た軽馬車クーペの客室キャビンにサッと乗り込むと 薄ピンク色のスカートドレスの淑女に手を差し伸べる。
 初老の馭者が客室キャビンの扉を閉めると 1頭立ての軽馬車クーペは軽やかに 走りだしたのだった......。
 .........。
 ......。
 ...。
 
 
 
 
シェア
次の話第42話 エレノアール・レンズ
星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません