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第49話 陰謀




 3つの月の光月日と収穫祭が重なる麗らかな秋の1日。
 秋の訪れと共に始まったアレクサンドラ3世の即位20周年記念式典。
 貴族層や豪商達は言うに及ばず 各職人組合や教会 学院等の大規模な団体 果ては個人営業の商店や露店商まで 奉祝の名の下に 大規模な見せ物や食事会の開催 特別メニューや特別価格での食料や酒類の大盤振る舞い......。
 星降る街ウェスティリアの住人だけでなく ヘブンブリーズ王国中の いや 国内外からの祝賀客達で 街路という街路が溢れ返り 笑いと乱痴気騒ぎに包まれた3日間。

 その興奮は 3日目の午後に行われた アレクサンドラ3世のヘブンブリーズ城への入城パレードで最高潮に達した。
 フェイシア教会配下の聖心騎士団クォンタムナイツの聖騎士達。
 シェルンプ辺境伯率いる青龍騎士団にリンツ侯の紅炎騎士団。
 あるいは リギャン侯爵家が誇る翼獅子騎士グリフォナイトを乗せた黒く獰猛な翼鷲獅グリフォンだとか。
 王国を支える軍人貴族達の華麗で勇ましい姿。

 そして【赤竜殺しドラゴン・スレイヤー】【救国の七英雄】騎士団長ダルケス・アダマンティの後に続く 王国最強の王都騎士団アークナイツの一糸乱れぬ行進。
 その中には この祝賀式典を機会に正式に王都騎士アークナイトとなったリアリアーナ・ペイジーノ女子爵の姿もあった。
 緊張によるものか あるいは体調が悪かったのか パレード終了後 すぐにトイレに駆け込み吐き戻す姿が見られたというが......。

 パレードの中央には 親衛三騎士に先導されたオープンカースタイルの4頭立ての馬車......4頭共に ユニコーンを模した馬具を着けた純白の駿馬。

 王家の伝統色である青白を基調とした豪華絢爛なドレスに身を包み 王冠 宝玉 神杖を身につけた女王その人と 夫君 王太子 そして王女のロイヤルファミリーを乗せた馬車へと巻き起こる万歳の歓声は パレード全体が城の跳ね橋の奥へ消えた後も 長く街中に こだましたのだった......。
 .........。
 ......。
 ...。
 

 王家主宰の数々の式典や他の上級貴族主宰の晩餐会への出席をこなしたジンク・レギャン・トゥーレ・ハイリシア侯爵が 騎士団長 及び護衛の翼獅子騎士グリフォナイツ6騎 兵300と共に自領へ帰還したのは 式典から3週間後 自領を出てから4ヶ月後のことであった。
 しきたり通りに 城外の平原で 留守を預かっていた長女のセレン女子爵と騎士副団長のガウェイン卿夫妻の出迎えを受け そのまま半日の行程を終え ハイリシアの主城〈黒翼城ジェットウイング〉へ。

 王都での華やかな式典とは比ぶるべくも無いものの 侯城でも来るべき式典の用意が急ピッチで進められていた。
 侯都ハイリシアを揺るがすことになる その式典は7日後に迫っていた。

 
 .........。
 ......。


 式典の2日前 王都星降る街ウェスティリアから女王の名代 兼 王都騎士団アークナイツ団長代理としてアリシア・アダマンティがハイリシアに到着する。
 軍事貴族配下の有力騎士団の代替わりに際して 総君主として国王名代 及び友好騎士団として王都騎士団アークナイツ団長代理が式典に出席するのは慣例だったが 親衛騎士筆頭というような騎士団上席者が臨席するのは極めて異例だった。
 情報通噂好きの侯都ハイリシアの住人達は 王家も翼獅子騎士団グリフォナイツには別格の敬意を払っているのだと実まことしやかに話すのだった。



 そして式典当日。
 6騎の翼獅子騎士グリフォナイツに護衛された1頭の翼鷲獅グリフォンが〈黒翼城ジェットウイング〉の3階部分に大きく張り出した広大なテラスに降り立つ。
 大きな白い翼に黒の差し羽根が美しい愛騎〈シェリング〉の背中に騎乗するのは 軍礼用の華麗な漆黒の甲冑を装った翼獅子騎士団グリフォナイツ副団長ガウェイン・ラグナート卿。
 従卒に〈シェリング〉の手綱を渡し 猛禽の頭部を模した兜を脱ぐ。
 
 鴉の濡れ羽のような艶やかな黒髪。
 切れ長の涼やかな目元......その美貌をやっかむ男達には冷たいと評されることもあるのだが。
 そして 翼獅子騎士グリフォナイトらしい 細身の中背。

 左手に兜を抱え 右手には愛用の黒鋼製の短槍。
 テラスの奥〈黒翼城ジェットウイング〉の謁見の間へと向かう。
 広間の入り口で 進み出た従騎士に銘槍〈黒鴉嘴レイブンズ・ビーク〉と兜を預ける。

 音も無く 大広間の両開きの扉が開き 宮廷楽士達の奏でるファンファーレが鳴り響く。
 大広間に居並ぶ ハイリシアの重臣や その妻達。
 左腰に佩いた長剣の柄頭を右手で確かめ終えると 足元に敷かれた緋絨毯の上を悠然と真っ直ぐに歩み始める。

 視線の先 2段高くなった玉座の前には 豪奢な金髪に不敵な笑みを湛えた義父 ジンク・レギャン侯爵の姿が。
 その隣 侯爵の1段下の左には 煌金髪シャイン・ゴールドの妻セレン女子爵......金髪に映える黒をベースにしたロングドレス。
 侯爵の右側には 女王の名代 艶橙髪カッパー・ブロンドのアリシア・アダマンティの姿が見える......王都騎士団の正装 青白色のサーコートに長剣。

 前日の打ち合わせ通り 自らが忠誠を誓ったハイリシア侯爵の前 2段下の部分に片膝を着いて跪き 頭を垂れる。


「忠勇なる我が息・子・ ガウェイン・ラグナートよ。貴卿を本日より 我が獰猛なる翼獅子騎士団グリフォナイツの騎士団長に任命する。これまで以上に奮励して 我が最強の剣となれ。領内の静謐と汝の無・私・の・忠・誠・が我が望みなり」


 頭上から響く 義父の声。
 事前に教えられていた言葉とは〈騎士〉の部分が〈息子〉となっていることに感慨を覚えながらも 表情を変えず 習い覚えた忠誠の言葉を口にする。


「はッ 謹んでお受け致します。このガウェイン・ラグナート この命と剣をハイリシアの為に捧げることをお誓い申し上げます」


 そして 手順通りに佩剣の吊り金具を外し 鞘ごと目前に立つ主君に捧げる。
 その黒鞘の長剣を受けとるジンク・レギャン。
 そのまま 1歩下がり壇上へと上る。


「ガウェインよ。お前の新しい剣は隣室にある。そこで受け取るがいい......」


 事前の打ち合わせでは この場で新しい節刀を拝領する手筈では? 訝しく思いつつも ゆっくりと立ち上がるガウェインに 壇上から 1歩 近づいたアリシアが声を掛ける。


「ガウェイン卿 翼獅子騎士グリフォナイツ団長への就任おめでとうございます」


 自らに匹敵する剣士だと噂される女騎士。
 何度か 姿を見かけたことはあったが 言葉を交わす距離は初めてかも知れなかった。
 

「この晴れの式典で言うべきことでは無いのかも知れないが......」
 
 
 淡麗な美貌の裏側で膨れ上がり始めている異常な剣気に 王国最強を自負する槍使いが気づく。


「ガウェイン・ラグナート。リアリアーナ・ペイジーノ女子爵の殺害未遂と王都騎士フォージ・ヒューガスへの傷害容疑について 聞きたいことがある。王都まで同行いただこうか」


 

 
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星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
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第49話 陰謀




 3つの月の光月日と収穫祭が重なる麗らかな秋の1日。
 秋の訪れと共に始まったアレクサンドラ3世の即位20周年記念式典。
 貴族層や豪商達は言うに及ばず 各職人組合や教会 学院等の大規模な団体 果ては個人営業の商店や露店商まで 奉祝の名の下に 大規模な見せ物や食事会の開催 特別メニューや特別価格での食料や酒類の大盤振る舞い......。
 星降る街ウェスティリアの住人だけでなく ヘブンブリーズ王国中の いや 国内外からの祝賀客達で 街路という街路が溢れ返り 笑いと乱痴気騒ぎに包まれた3日間。

 その興奮は 3日目の午後に行われた アレクサンドラ3世のヘブンブリーズ城への入城パレードで最高潮に達した。
 フェイシア教会配下の聖心騎士団クォンタムナイツの聖騎士達。
 シェルンプ辺境伯率いる青龍騎士団にリンツ侯の紅炎騎士団。
 あるいは リギャン侯爵家が誇る翼獅子騎士グリフォナイトを乗せた黒く獰猛な翼鷲獅グリフォンだとか。
 王国を支える軍人貴族達の華麗で勇ましい姿。

 そして【赤竜殺しドラゴン・スレイヤー】【救国の七英雄】騎士団長ダルケス・アダマンティの後に続く 王国最強の王都騎士団アークナイツの一糸乱れぬ行進。
 その中には この祝賀式典を機会に正式に王都騎士アークナイトとなったリアリアーナ・ペイジーノ女子爵の姿もあった。
 緊張によるものか あるいは体調が悪かったのか パレード終了後 すぐにトイレに駆け込み吐き戻す姿が見られたというが......。

 パレードの中央には 親衛三騎士に先導されたオープンカースタイルの4頭立ての馬車......4頭共に ユニコーンを模した馬具を着けた純白の駿馬。

 王家の伝統色である青白を基調とした豪華絢爛なドレスに身を包み 王冠 宝玉 神杖を身につけた女王その人と 夫君 王太子 そして王女のロイヤルファミリーを乗せた馬車へと巻き起こる万歳の歓声は パレード全体が城の跳ね橋の奥へ消えた後も 長く街中に こだましたのだった......。
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 王家主宰の数々の式典や他の上級貴族主宰の晩餐会への出席をこなしたジンク・レギャン・トゥーレ・ハイリシア侯爵が 騎士団長 及び護衛の翼獅子騎士グリフォナイツ6騎 兵300と共に自領へ帰還したのは 式典から3週間後 自領を出てから4ヶ月後のことであった。
 しきたり通りに 城外の平原で 留守を預かっていた長女のセレン女子爵と騎士副団長のガウェイン卿夫妻の出迎えを受け そのまま半日の行程を終え ハイリシアの主城〈黒翼城ジェットウイング〉へ。

 王都での華やかな式典とは比ぶるべくも無いものの 侯城でも来るべき式典の用意が急ピッチで進められていた。
 侯都ハイリシアを揺るがすことになる その式典は7日後に迫っていた。

 
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 式典の2日前 王都星降る街ウェスティリアから女王の名代 兼 王都騎士団アークナイツ団長代理としてアリシア・アダマンティがハイリシアに到着する。
 軍事貴族配下の有力騎士団の代替わりに際して 総君主として国王名代 及び友好騎士団として王都騎士団アークナイツ団長代理が式典に出席するのは慣例だったが 親衛騎士筆頭というような騎士団上席者が臨席するのは極めて異例だった。
 情報通噂好きの侯都ハイリシアの住人達は 王家も翼獅子騎士団グリフォナイツには別格の敬意を払っているのだと実まことしやかに話すのだった。



 そして式典当日。
 6騎の翼獅子騎士グリフォナイツに護衛された1頭の翼鷲獅グリフォンが〈黒翼城ジェットウイング〉の3階部分に大きく張り出した広大なテラスに降り立つ。
 大きな白い翼に黒の差し羽根が美しい愛騎〈シェリング〉の背中に騎乗するのは 軍礼用の華麗な漆黒の甲冑を装った翼獅子騎士団グリフォナイツ副団長ガウェイン・ラグナート卿。
 従卒に〈シェリング〉の手綱を渡し 猛禽の頭部を模した兜を脱ぐ。
 
 鴉の濡れ羽のような艶やかな黒髪。
 切れ長の涼やかな目元......その美貌をやっかむ男達には冷たいと評されることもあるのだが。
 そして 翼獅子騎士グリフォナイトらしい 細身の中背。

 左手に兜を抱え 右手には愛用の黒鋼製の短槍。
 テラスの奥〈黒翼城ジェットウイング〉の謁見の間へと向かう。
 広間の入り口で 進み出た従騎士に銘槍〈黒鴉嘴レイブンズ・ビーク〉と兜を預ける。

 音も無く 大広間の両開きの扉が開き 宮廷楽士達の奏でるファンファーレが鳴り響く。
 大広間に居並ぶ ハイリシアの重臣や その妻達。
 左腰に佩いた長剣の柄頭を右手で確かめ終えると 足元に敷かれた緋絨毯の上を悠然と真っ直ぐに歩み始める。

 視線の先 2段高くなった玉座の前には 豪奢な金髪に不敵な笑みを湛えた義父 ジンク・レギャン侯爵の姿が。
 その隣 侯爵の1段下の左には 煌金髪シャイン・ゴールドの妻セレン女子爵......金髪に映える黒をベースにしたロングドレス。
 侯爵の右側には 女王の名代 艶橙髪カッパー・ブロンドのアリシア・アダマンティの姿が見える......王都騎士団の正装 青白色のサーコートに長剣。

 前日の打ち合わせ通り 自らが忠誠を誓ったハイリシア侯爵の前 2段下の部分に片膝を着いて跪き 頭を垂れる。


「忠勇なる我が息・子・ ガウェイン・ラグナートよ。貴卿を本日より 我が獰猛なる翼獅子騎士団グリフォナイツの騎士団長に任命する。これまで以上に奮励して 我が最強の剣となれ。領内の静謐と汝の無・私・の・忠・誠・が我が望みなり」


 頭上から響く 義父の声。
 事前に教えられていた言葉とは〈騎士〉の部分が〈息子〉となっていることに感慨を覚えながらも 表情を変えず 習い覚えた忠誠の言葉を口にする。


「はッ 謹んでお受け致します。このガウェイン・ラグナート この命と剣をハイリシアの為に捧げることをお誓い申し上げます」


 そして 手順通りに佩剣の吊り金具を外し 鞘ごと目前に立つ主君に捧げる。
 その黒鞘の長剣を受けとるジンク・レギャン。
 そのまま 1歩下がり壇上へと上る。


「ガウェインよ。お前の新しい剣は隣室にある。そこで受け取るがいい......」


 事前の打ち合わせでは この場で新しい節刀を拝領する手筈では? 訝しく思いつつも ゆっくりと立ち上がるガウェインに 壇上から 1歩 近づいたアリシアが声を掛ける。


「ガウェイン卿 翼獅子騎士グリフォナイツ団長への就任おめでとうございます」


 自らに匹敵する剣士だと噂される女騎士。
 何度か 姿を見かけたことはあったが 言葉を交わす距離は初めてかも知れなかった。
 

「この晴れの式典で言うべきことでは無いのかも知れないが......」
 
 
 淡麗な美貌の裏側で膨れ上がり始めている異常な剣気に 王国最強を自負する槍使いが気づく。


「ガウェイン・ラグナート。リアリアーナ・ペイジーノ女子爵の殺害未遂と王都騎士フォージ・ヒューガスへの傷害容疑について 聞きたいことがある。王都まで同行いただこうか」


 

 
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星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
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