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第48話 依頼





「......はい コレ」

「ナンなん コレ?」

「ジャイン牝蛎の美肌クリーム。1個は現物で 残りは銀貨でって話だったでしょ?」


 リアン襲撃から 一夜明けた午後。
 〈碧猫屋〉を訪れた褐色肌の闇エルフに 店の奥から出てきた水碧髪アクア・マリンの薬師が軟膏瓶を手渡す。
 カウンターには琥珀髪ライト・アンバーのバイト少女。


「あー 言ゆうてたヤツな。リアンの件で 忘れてかけてたわ」

「あら ミスったわね。そのまま忘れてくれてりゃよかったのに......。でも まぁ 昨日のヤツは ちょっと強烈だったわよね」

「リアンは ボロ雑巾みたいになってるし フォージもズタズタ。アイツら そんな弱いこと あらへんねんで......。鬼強オニヅヨのアリシアレベルの槍使いや」

「アリシア様レベルの槍使い!?」


 カウンターのバイト少女が 叫び声をあげる。
 暗紅色ガーネットと海碧色ディープ・マリンの瞳に 見詰められて真っ赤になり下を向く琥珀色ライト・アンバーの瞳。


「どうしたの ジーナ。大っきな声出して。槍使いに知り合いでもいるの?」

「そう言ゆうたら こないだの森小鬼モグル討伐ん時に ヤバい槍使いが 無茶苦茶しとったんやっけ?」


 13歳の少女が 頷きかけて 小さく首を振る。

 
「あー アリシアに口止めされてんねんな。口止め料 払うとか 一番噂 広まんのにな~ 騎士団のヤツらアホちゃうの?」 

「アリシアが追ってるヤツって 翼獅子騎士団グリフォナイツのガウェインだっけ? そんな強いヤツが何人もいるって考えるより 同じヤツって考える方が 自然かもね」

「せやけど 森小鬼モグル虐殺して 踊り子狙ねろうて 何がしたいん? 弱いもんイジメが趣味なんか? 結果 王都騎士団アークナイツにケンカ売るとか 意味分からん......」


 カウンターのバイト少女が ボソボソと何事か呟く。


「へー ガウェインって そんなに人気なの? ハイリシアでは英雄扱い......。星降る街ウェスティリアにも 結構ファンがいるんだ。黒髪のイケメンで 文武両道で リギャン侯爵家の事実上の跡取り?」

「ふーん。そんなヤツやったら リアンやったヤツのイメージとちゃうなぁ。影で悪さするタイプか 別人なんか......」


 .........。
 ......。
 ...。
 

 バイト少女も帰宅した夜更け。
 人通りの少なくなった表通りを歩く2つの足音。 

 1人は大柄な男性 もう1人も男性 こちらは少し小柄。


「なんや 今夜も お客みたいやで」

「......こんな時間に? 儲かる話なら いいけど あんま いい予感しないわね」


 ── カランッ カラン... カラン...... ──


「あら いらっしゃい。随分 久しぶりじゃない。いったい どういう風の吹き回し?」


 先に入ってきた1人が外套のフードを外す。
 マリノアも紅瑠石もガーネット よく見知った骨太で恰幅の良い濃橙髪ダーク・アンバー。
 そして もう1人は 暗灰色の外套のフードを被ったままの長剣を携えた小柄な人物......。
 .........。
 ......。
 

「......事情は解ったけど〈碧猫屋あおねこや〉は薬種商なんですけど?」

「こんなこと頼めるのは この店ぐらいしか無い」

「娘に頼みなさいよ。あの娘こなら 何とかするでしょ?」

「奴が動くと大事になる。なるべく目立たんように頼みたい。報酬は 言い値で構わんと この男も納得している」

「......だってさ。どーする紅瑠石ガーネット?」

「ウチ的には 乗り掛かった船やし 報酬出るんやったら 別にええけど?」

「了解。なら〈碧猫屋あおねこや〉として その仕事受けるわ。ただ もう少し条件面は詰めときたいわね。一応 書面起こすわよ......」

 
 .........。
 ......。
 
 フード付き外套の2人が去って暫くの後 店を出る たすき掛けのカバンに糸杉の長杖の少女と 細身の大太刀を背負った闇エルフ。
 星降る街ウェスティリアの深夜の闇に溶けるように消える2人。

 
 翌朝 出勤してきたエレノアールが店を開け カウンターに残された書き置きを見る。
 サッと目を通し 通常業務を開始する主婦薬師。
 書き置きを残して店主が消えるのは この店では時・々・あることなのだ。
 午後になり バイト少女がやってくると奥へ引っ込み調合作業へ。

 夕刻 店を訪れた長身の麗人に2人の不在を告げるバイト少女。
 薬師への伝言を託け 店を去る筆頭騎士。

 3日後 水碧髪アクア・マリンの店主が帰り 通常業務を再開する〈碧猫屋あおねこや〉。
 全ては 以前通り......。




 
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星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
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第48話 依頼





「......はい コレ」

「ナンなん コレ?」

「ジャイン牝蛎の美肌クリーム。1個は現物で 残りは銀貨でって話だったでしょ?」


 リアン襲撃から 一夜明けた午後。
 〈碧猫屋〉を訪れた褐色肌の闇エルフに 店の奥から出てきた水碧髪アクア・マリンの薬師が軟膏瓶を手渡す。
 カウンターには琥珀髪ライト・アンバーのバイト少女。


「あー 言ゆうてたヤツな。リアンの件で 忘れてかけてたわ」

「あら ミスったわね。そのまま忘れてくれてりゃよかったのに......。でも まぁ 昨日のヤツは ちょっと強烈だったわよね」

「リアンは ボロ雑巾みたいになってるし フォージもズタズタ。アイツら そんな弱いこと あらへんねんで......。鬼強オニヅヨのアリシアレベルの槍使いや」

「アリシア様レベルの槍使い!?」


 カウンターのバイト少女が 叫び声をあげる。
 暗紅色ガーネットと海碧色ディープ・マリンの瞳に 見詰められて真っ赤になり下を向く琥珀色ライト・アンバーの瞳。


「どうしたの ジーナ。大っきな声出して。槍使いに知り合いでもいるの?」

「そう言ゆうたら こないだの森小鬼モグル討伐ん時に ヤバい槍使いが 無茶苦茶しとったんやっけ?」


 13歳の少女が 頷きかけて 小さく首を振る。

 
「あー アリシアに口止めされてんねんな。口止め料 払うとか 一番噂 広まんのにな~ 騎士団のヤツらアホちゃうの?」 

「アリシアが追ってるヤツって 翼獅子騎士団グリフォナイツのガウェインだっけ? そんな強いヤツが何人もいるって考えるより 同じヤツって考える方が 自然かもね」

「せやけど 森小鬼モグル虐殺して 踊り子狙ねろうて 何がしたいん? 弱いもんイジメが趣味なんか? 結果 王都騎士団アークナイツにケンカ売るとか 意味分からん......」


 カウンターのバイト少女が ボソボソと何事か呟く。


「へー ガウェインって そんなに人気なの? ハイリシアでは英雄扱い......。星降る街ウェスティリアにも 結構ファンがいるんだ。黒髪のイケメンで 文武両道で リギャン侯爵家の事実上の跡取り?」

「ふーん。そんなヤツやったら リアンやったヤツのイメージとちゃうなぁ。影で悪さするタイプか 別人なんか......」


 .........。
 ......。
 ...。
 

 バイト少女も帰宅した夜更け。
 人通りの少なくなった表通りを歩く2つの足音。 

 1人は大柄な男性 もう1人も男性 こちらは少し小柄。


「なんや 今夜も お客みたいやで」

「......こんな時間に? 儲かる話なら いいけど あんま いい予感しないわね」


 ── カランッ カラン... カラン...... ──


「あら いらっしゃい。随分 久しぶりじゃない。いったい どういう風の吹き回し?」


 先に入ってきた1人が外套のフードを外す。
 マリノアも紅瑠石もガーネット よく見知った骨太で恰幅の良い濃橙髪ダーク・アンバー。
 そして もう1人は 暗灰色の外套のフードを被ったままの長剣を携えた小柄な人物......。
 .........。
 ......。
 

「......事情は解ったけど〈碧猫屋あおねこや〉は薬種商なんですけど?」

「こんなこと頼めるのは この店ぐらいしか無い」

「娘に頼みなさいよ。あの娘こなら 何とかするでしょ?」

「奴が動くと大事になる。なるべく目立たんように頼みたい。報酬は 言い値で構わんと この男も納得している」

「......だってさ。どーする紅瑠石ガーネット?」

「ウチ的には 乗り掛かった船やし 報酬出るんやったら 別にええけど?」

「了解。なら〈碧猫屋あおねこや〉として その仕事受けるわ。ただ もう少し条件面は詰めときたいわね。一応 書面起こすわよ......」

 
 .........。
 ......。
 
 フード付き外套の2人が去って暫くの後 店を出る たすき掛けのカバンに糸杉の長杖の少女と 細身の大太刀を背負った闇エルフ。
 星降る街ウェスティリアの深夜の闇に溶けるように消える2人。

 
 翌朝 出勤してきたエレノアールが店を開け カウンターに残された書き置きを見る。
 サッと目を通し 通常業務を開始する主婦薬師。
 書き置きを残して店主が消えるのは この店では時・々・あることなのだ。
 午後になり バイト少女がやってくると奥へ引っ込み調合作業へ。

 夕刻 店を訪れた長身の麗人に2人の不在を告げるバイト少女。
 薬師への伝言を託け 店を去る筆頭騎士。

 3日後 水碧髪アクア・マリンの店主が帰り 通常業務を再開する〈碧猫屋あおねこや〉。
 全ては 以前通り......。




 
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