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第50話 ガウェイン・ラグナート



「ガウェイン・ラグナート。リアリアーナ・ペイジーノ女子爵の殺害未遂と王都騎士フォージ・ヒューガスへの傷害容疑について 聞きたいことがある。王都まで同行いただこうか」
 

 翼獅子騎士グリフォナイツ団長への就任式典で王都騎士アリシア・アダマンティの口から発せられた驚愕すべき言葉に群臣が どよめく中 ジンク・レギャンは 自らの娘の側に寄り添うように立つ。
 その姿を視界の端に納めたガウェインは悟る。

 ......義父ちちは 全てを知っている。
 あの金翼獅の灰色の瞳を欺くことなどできはしなかったのだ......。


「ガウェインよ。これは何かの間違いであろう。王都へ赴き 正々堂々と申し開きをすればどうか? 俺の方からも女王陛下に誤解を解くよう 信書を送ろう」


 白々しい台詞。
 この式典での この展開を演出したのは 義父この男なのだ。
 〈シェリンググリフォン〉〈黒鴉嘴レイブンズ・ビーク〉兜 そして 佩剣......。
 自分を武・装・解・除・す・る・為・に・仕組まれた式典。
 そこへ 名うての女騎士アリシア・アダマンティを呼ぶ算段。

 王都騎士団アークナイツの差し金であるはずがなかった。
 そもそも自分を目の仇にしてきた現騎士団長が地位を譲るという事態そのものを疑って掛かるべきだったのだ。
 ......いや 疑っていたとて 自分を引き立ててくれていたジンクの 主君の寵愛を失った自分に どんな選択肢があったというのか?
 ここは 無駄な抵抗などせず 大人しく捕縛され 命を捨てれば 少なくとも愛する妻セレンに 害が及ぶ事態は防げるのでは......


「衛兵ッ! 反逆者を捕らえよッ!」


 ガウェインの考えが まとまりきる寸前 壇の下から騎士団長の怒声が飛び 鉾槍ハルバードを構えた衛兵達が丸腰の元翼獅子騎士グリフォナイトに飛び掛かる。
 反射的に身体が動き 衛兵の鉾槍ハルバードを奪い取り その首を刎ねる。


「ガウェインッ 止めてェェッ!」


 セレンの叫び声が届く間に残り2人の衛兵の命が失われ 恐怖に戦慄おののく婦人達の悲鳴が大広間に響き渡る。
 振り抜かれた鉾槍から飛んだ衝撃波が騎士団長の胴を払う。
 抜き打ちで自らの腕を狙ってきた艶橙髪カッパー・ブロンドの女騎士からの一撃を鉾槍ハルバードの竿部分で受け止める。

 長剣の一撃を受け流された動きを生かし ガウェインとハイリシア侯爵との間に自らの立ち位置を差し入れるアリシア・アダマンティ。
 その背後に見える義父と最愛の妻。
 泣き叫ぶセレンは義父と護衛の翼獅子騎士2人に引き摺られるようにして 控えの間へと消えて行く。

 もう遠慮する必要は無かった。
 思うのたけ鉾槍ハルバードを振るい 眼前の好敵手を屠る。
 ただ それだけのこと......失うものなど何も無いのだ。
 ガウェイン・ラグナートとは何者か?
 槍を振るい 生き物を殺める。
 それだけの存在だった筈。

 それだけの存在だったのに〈失うことを恐れてしまった〉。

 今一度 悪鬼羅刹へと戻り 存分に鉾槍ハルバードを振るう......ただ それだけ。
 力を尽くし 技の限りを出し切りたいが 悲しいかな 衛兵から奪った並みの造りの鉾槍ハルバード......秘技・奥義を繰り出せば武器の方が持ちはすまい。
 技巧の限りを尽くした刺撃を女騎士の長剣にいなされ 返しの斬撃を かろうじて受け流す。
 
 愛用の銘槍〈黒鴉嘴レイブンズ・ビーク〉があれば もう少しは五分の闘いができただろうか?
 ......いや この女騎士は先程から 鉾槍ハルバードから飛ぶ衝撃波さえいなし 逃げ惑う重臣達への被害を最小限に抑えている。
 
 あるいは 愛騎〈シェリング〉の背に乗れば優位に戦えただろうか?
 だが ここまでに3度口笛を吹いたが 黒い差し羽の美しい相棒グリフォンは姿を見せぬ。
 ただ 今は 己の口笛の届かぬ場所に連れ去られていることを祈るのみ......新しい主に恵まれんことを。

 幾十合と打ち合う内に 居並ぶ重臣達の待避が進み大広間に残るのは ガウェインとアリシア そして 幾人かの不幸な死人のみとなる。

 少し柄の長い長剣を片手半剣のように扱う凄腕の女騎士。
 女の繰り出す攻撃を受け流す度に鉾槍ハルバードの竿部分の耐久そのものを削っていくかのような剣の粘りと しなやかな重さ。
 ......噂に聞く銘刀〈レグラ〉だろうか?
 なんにせよ 相手アリシアは大技を出す条件が整いつつある。


「ガウェイン・ラグナート。何故 あの金髪の少年を狙った?」

「知れたこと ハイリシア侯爵の座を手に入れる為。セレンとの結婚も全てその為のものッ」


 ......そう これでいい。
 セレン 俺は地位の為に お前を利用した 下賤な男。
 俺を忘れて幸せになれ......。


「アリシア・アダマンティ 貴様を倒し ジンク・レギャンを斃し 俺はハイリシアの王になるッ 食らえ! 秘奥義......」


 鉾槍ハルバードを頭上に構え 秘奥義を繰り出す為に気を練り上げる......どうせ 武器の方が耐えきれずに砕けるだろうが。
 だが 狙い通り手練れの女騎士は こちらの練気に反応し 溜めていた気を一気に放出する。
 

「させんッ! 奥義:封神閃ッッ!」



 
 
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星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
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第50話 ガウェイン・ラグナート



「ガウェイン・ラグナート。リアリアーナ・ペイジーノ女子爵の殺害未遂と王都騎士フォージ・ヒューガスへの傷害容疑について 聞きたいことがある。王都まで同行いただこうか」
 

 翼獅子騎士グリフォナイツ団長への就任式典で王都騎士アリシア・アダマンティの口から発せられた驚愕すべき言葉に群臣が どよめく中 ジンク・レギャンは 自らの娘の側に寄り添うように立つ。
 その姿を視界の端に納めたガウェインは悟る。

 ......義父ちちは 全てを知っている。
 あの金翼獅の灰色の瞳を欺くことなどできはしなかったのだ......。


「ガウェインよ。これは何かの間違いであろう。王都へ赴き 正々堂々と申し開きをすればどうか? 俺の方からも女王陛下に誤解を解くよう 信書を送ろう」


 白々しい台詞。
 この式典での この展開を演出したのは 義父この男なのだ。
 〈シェリンググリフォン〉〈黒鴉嘴レイブンズ・ビーク〉兜 そして 佩剣......。
 自分を武・装・解・除・す・る・為・に・仕組まれた式典。
 そこへ 名うての女騎士アリシア・アダマンティを呼ぶ算段。

 王都騎士団アークナイツの差し金であるはずがなかった。
 そもそも自分を目の仇にしてきた現騎士団長が地位を譲るという事態そのものを疑って掛かるべきだったのだ。
 ......いや 疑っていたとて 自分を引き立ててくれていたジンクの 主君の寵愛を失った自分に どんな選択肢があったというのか?
 ここは 無駄な抵抗などせず 大人しく捕縛され 命を捨てれば 少なくとも愛する妻セレンに 害が及ぶ事態は防げるのでは......


「衛兵ッ! 反逆者を捕らえよッ!」


 ガウェインの考えが まとまりきる寸前 壇の下から騎士団長の怒声が飛び 鉾槍ハルバードを構えた衛兵達が丸腰の元翼獅子騎士グリフォナイトに飛び掛かる。
 反射的に身体が動き 衛兵の鉾槍ハルバードを奪い取り その首を刎ねる。


「ガウェインッ 止めてェェッ!」


 セレンの叫び声が届く間に残り2人の衛兵の命が失われ 恐怖に戦慄おののく婦人達の悲鳴が大広間に響き渡る。
 振り抜かれた鉾槍から飛んだ衝撃波が騎士団長の胴を払う。
 抜き打ちで自らの腕を狙ってきた艶橙髪カッパー・ブロンドの女騎士からの一撃を鉾槍ハルバードの竿部分で受け止める。

 長剣の一撃を受け流された動きを生かし ガウェインとハイリシア侯爵との間に自らの立ち位置を差し入れるアリシア・アダマンティ。
 その背後に見える義父と最愛の妻。
 泣き叫ぶセレンは義父と護衛の翼獅子騎士2人に引き摺られるようにして 控えの間へと消えて行く。

 もう遠慮する必要は無かった。
 思うのたけ鉾槍ハルバードを振るい 眼前の好敵手を屠る。
 ただ それだけのこと......失うものなど何も無いのだ。
 ガウェイン・ラグナートとは何者か?
 槍を振るい 生き物を殺める。
 それだけの存在だった筈。

 それだけの存在だったのに〈失うことを恐れてしまった〉。

 今一度 悪鬼羅刹へと戻り 存分に鉾槍ハルバードを振るう......ただ それだけ。
 力を尽くし 技の限りを出し切りたいが 悲しいかな 衛兵から奪った並みの造りの鉾槍ハルバード......秘技・奥義を繰り出せば武器の方が持ちはすまい。
 技巧の限りを尽くした刺撃を女騎士の長剣にいなされ 返しの斬撃を かろうじて受け流す。
 
 愛用の銘槍〈黒鴉嘴レイブンズ・ビーク〉があれば もう少しは五分の闘いができただろうか?
 ......いや この女騎士は先程から 鉾槍ハルバードから飛ぶ衝撃波さえいなし 逃げ惑う重臣達への被害を最小限に抑えている。
 
 あるいは 愛騎〈シェリング〉の背に乗れば優位に戦えただろうか?
 だが ここまでに3度口笛を吹いたが 黒い差し羽の美しい相棒グリフォンは姿を見せぬ。
 ただ 今は 己の口笛の届かぬ場所に連れ去られていることを祈るのみ......新しい主に恵まれんことを。

 幾十合と打ち合う内に 居並ぶ重臣達の待避が進み大広間に残るのは ガウェインとアリシア そして 幾人かの不幸な死人のみとなる。

 少し柄の長い長剣を片手半剣のように扱う凄腕の女騎士。
 女の繰り出す攻撃を受け流す度に鉾槍ハルバードの竿部分の耐久そのものを削っていくかのような剣の粘りと しなやかな重さ。
 ......噂に聞く銘刀〈レグラ〉だろうか?
 なんにせよ 相手アリシアは大技を出す条件が整いつつある。


「ガウェイン・ラグナート。何故 あの金髪の少年を狙った?」

「知れたこと ハイリシア侯爵の座を手に入れる為。セレンとの結婚も全てその為のものッ」


 ......そう これでいい。
 セレン 俺は地位の為に お前を利用した 下賤な男。
 俺を忘れて幸せになれ......。


「アリシア・アダマンティ 貴様を倒し ジンク・レギャンを斃し 俺はハイリシアの王になるッ 食らえ! 秘奥義......」


 鉾槍ハルバードを頭上に構え 秘奥義を繰り出す為に気を練り上げる......どうせ 武器の方が耐えきれずに砕けるだろうが。
 だが 狙い通り手練れの女騎士は こちらの練気に反応し 溜めていた気を一気に放出する。
 

「させんッ! 奥義:封神閃ッッ!」



 
 
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