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♗17

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「というわけで。この場においては全員と接点があるのは私だけなので、ハクスイこと。私、白水京香が仕切らせていただきます。」
 全員でテーブルに着席し、ハクスイから話は始まった。
 五人でこんな世界に飛ばされてよく分からない状況なのに、ハクスイだけは全員顔見知りだという、更に意味分からない状況なのだ。
 分かる所からというプレゼンで、ヒカミとあたしを紹介した。
「それで、こちらにいる、腕に気合いの入った柄が彫ってある、目つきの悪い、」
「余村歩だ。」
 遮った!歩は自分で喋るようだ。
「シラミズとは、3年前にテレビ出演で知り合った。当時はボクシングを真面目にやっていたが、今は地下売人として都内で良くないモノを売りながら、闇外科医で生計を立てている。よろしく。」
 これが初対面の人の前で言う事かよ。もっとオブラードないの?と思ったが、ここでようやく、ヒカミの治療の謎が繋がった。歩が診てくれたのか。
「うお。すげえ。だからこんなに綺麗に縫ってあるのか。」
「ほぼ独学の現場仕込みだけどね。それでも需要があり過ぎて場数は踏めたから傷の縫合だけは得意だ。」
 ヒカミはいいよ。全然馴染める性格だ。なんだかお互い好感度高めぐらいな表情で見ているし。
 そこまで分かっても、肝心のどうやってあたしを止めてくれたのか。その辺の話がまだ分からない。
『ヒカミの治療は歩がやってくれたとして、どうやってあたしを止めたのか......その辺を聞きたい。』
「どうやって。助けたってもなあ......」
 歩の話をまとめると、
 ハクスイと合流したのは本当に偶然。歩は一ヶ月以上前から、この休憩所をホームに、人狼を探しながらこの迷路を出るタイミングを伺っていたらしい。
 そこでハクスイに人狼もといあたしの話を聞いて、睡眠煙を焚いて、
「それでその変な首輪だ。呪いのアイテムみたいな。」
 どうやらこの首輪自体。この世界にインする時に貰ったものらしい。
「【条理のままに、人狼と出会ったら使いな】ってご丁寧に教えてくれたよ。」
 なんか、
「出来過ぎているよな。」
 ヒカミが代わりに言ってくれた。
 これだけ嫌で苦しい事が起きているのに、スレスレで助かって上手くいく。
 多分、あたしの変なネックレスもいつか意味を持つんだろう......まだ何かあるのかと思うともう今から嫌な気分になる。

 そして一番の謎スペック。問題はハクスイを一方的に知っているこの子だ。
「えっと。あの。すみません。わたし、普段自分の好きなもの時じゃないとどうも口下手でして。あの。わたし。キアラっていいます。本名は木皿亜美なんですけど、そこから文字ってずっとキアラって呼ばれています。白水京香様と二場三命さんの大ファンなんです。」
「二場三命の?」
 意外にもすぐに返答し、一番驚いてみせたのはハクスイであった。キャラ的に自分のファンってとこで色々弄りがありそうだったが、あたしたちの本星の情報が来たと言わんばかりに一気に真面目モードで食いついた。
 しかし、木皿ことキアラの返答は予想の斜め上を言った。
「もしかして!皆様も二場さんのファンなんですか?」
 違う!断じて違う!
 どうやら全員顔に書いてあったらしい。キアラの嬉しそうな表情は一瞬で曇った。
「違う......んですね。残念。二場さんの名前ってファンでもないと知らないことが殆どですので、てっきり皆様二場さんのファンかと。」
 あれ?二場さんのファンじゃないと二場さんを知らない。あたしだけ特別だったのだろうか?偶々、ヒカミとハクスイは佐竹に説明を受けただけで......
 あたしがこの噛み合わない部分を解消する為に何か質問を考えていると。先に口を開いたのはヒカミであった。
「キアラさん。おれたちが二場三命を知っているのは、サクだけがここに来る時に二場三命と会っているんだ。おれもハクスイも二場はこの世界を創造者であるって事しか知らないんだ。」
 歩が二場と会ったかどうかは知らないけど、歩は話の腰を折らないように黙って聞くに徹していた。
「ちょっと待ってください。こんなに二場さんに会いたいわたしが会えなくて、別に合わなくても良さそうな人が会えるってどういう事ですか?」
 それは街で推しでもない芸能人を見かけてしまった時と同じ論理。同じ気持ちなだろうか。
「そりゃ残念だ。おれらにもどうにもならんが、埋め合わせで、後で[十分間白水京香を好きにして良い券]をあげるからそれで手を打ってくれ。それで君は誰にこの世界の説明を受けたんだい?」
 さっきのハクスイもそうだけど、この人たち。平然ぶってちょいちょいキレ味に溢れた言葉入れてくるから、これは突っ込むべきかどうか毎回悩む。
「それは、ぜひとも私からもお願いしたいね。私も十分間好きにされたい。」
あたし『アンタが好きにされたいんかい!』
ヒカミ「センスなし。四点。」
歩「えっと。進めようぜ。」

 仕切り直し。
「佐竹と名乗る男です。」
 キアラの言葉で、どっと空気が重くなった。少なくとも、今回あの男に盛大に掻き回された、あたしたち三人は。
「もしかして。その佐竹さんもご存知なんですか?」
 こう返されてしまうのも仕方ない。少なくともあたしら三人は露骨に嫌な顔をしたと思う。
「おれもハクスイも佐竹から説明を受けた。それで最初の休憩場で再会した。なんていうか。佐竹が加害者でおれらが被害者のような関係だ。」
 歩が頷いているから、多分歩も佐竹から説明を受けたのだろう。
「それはつまりどういう、」
「いや。ごめん。百聞は一見にしかずだよな。サク。もう見せてやれ。」
 見せてっても。早くない?普通の人は逃げると思うけど。
「大丈夫だ。遅かれ早かれバレるし、さっきの歩の説明でもう既に言葉だけの事実と答えは出されているんだ。キアラさんが君のことを無理だというなら、それは仕方ない。それまでの関係だ。どんな態度とられようと、おれはサク側につく。」
 わかったよ。あたしはフードを取った。そして、袖で隠していた右手も見えるようにワザとらしく、肘までまくって包帯も外した。
 全員の視線。特にキアラからの視線があたしの右半身に注がれているのがわかる。
『突然意味わからないし、怖いよね。あたしもまだ意味が分かってないし。怖いんだけど。とにかく、その佐竹って男に呪いの可視化とかよく分からないので、こんな姿にされてしまったというのが現状で......』
 キアラはあたしの、色素の抜けた目を見ながら、「怖いです。」と小さく呟いた。
「樫山さんの存在ではなく。二場さんの存在が。」
 予想外の回答に意味がわからず。あたしたちは、目で動揺を確認し合った。
「樫山さん。違かったら大変失礼なのですが、あなたの父方と母方の直系の血縁者って全員把握できますか?家系図とかありますか?もしかして意図的に消されていませんか?子供の頃から前世のような変な記憶とか人と違って変なものを視る習慣とかありませんか?」
 家系図は知らないけど、思い当たる節は確かにある。子供の頃から幽霊を当たり前に視るし、人の感情も煙で視える。そして二場と佐竹が言う狼。ずっと見続けていた狼の夢。
 あまりの動揺と、まだキアラの思惑が見えない事から『と、言いますと。』と短く。イエスともノーとも取れない相槌を打った。
「人狼の少女の話は。二場さんの代表作です。」
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不条識な狼の理(上)作者:駿河鵬命
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「というわけで。この場においては全員と接点があるのは私だけなので、ハクスイこと。私、白水京香が仕切らせていただきます。」
 全員でテーブルに着席し、ハクスイから話は始まった。
 五人でこんな世界に飛ばされてよく分からない状況なのに、ハクスイだけは全員顔見知りだという、更に意味分からない状況なのだ。
 分かる所からというプレゼンで、ヒカミとあたしを紹介した。
「それで、こちらにいる、腕に気合いの入った柄が彫ってある、目つきの悪い、」
「余村歩だ。」
 遮った!歩は自分で喋るようだ。
「シラミズとは、3年前にテレビ出演で知り合った。当時はボクシングを真面目にやっていたが、今は地下売人として都内で良くないモノを売りながら、闇外科医で生計を立てている。よろしく。」
 これが初対面の人の前で言う事かよ。もっとオブラードないの?と思ったが、ここでようやく、ヒカミの治療の謎が繋がった。歩が診てくれたのか。
「うお。すげえ。だからこんなに綺麗に縫ってあるのか。」
「ほぼ独学の現場仕込みだけどね。それでも需要があり過ぎて場数は踏めたから傷の縫合だけは得意だ。」
 ヒカミはいいよ。全然馴染める性格だ。なんだかお互い好感度高めぐらいな表情で見ているし。
 そこまで分かっても、肝心のどうやってあたしを止めてくれたのか。その辺の話がまだ分からない。
『ヒカミの治療は歩がやってくれたとして、どうやってあたしを止めたのか......その辺を聞きたい。』
「どうやって。助けたってもなあ......」
 歩の話をまとめると、
 ハクスイと合流したのは本当に偶然。歩は一ヶ月以上前から、この休憩所をホームに、人狼を探しながらこの迷路を出るタイミングを伺っていたらしい。
 そこでハクスイに人狼もといあたしの話を聞いて、睡眠煙を焚いて、
「それでその変な首輪だ。呪いのアイテムみたいな。」
 どうやらこの首輪自体。この世界にインする時に貰ったものらしい。
「【条理のままに、人狼と出会ったら使いな】ってご丁寧に教えてくれたよ。」
 なんか、
「出来過ぎているよな。」
 ヒカミが代わりに言ってくれた。
 これだけ嫌で苦しい事が起きているのに、スレスレで助かって上手くいく。
 多分、あたしの変なネックレスもいつか意味を持つんだろう......まだ何かあるのかと思うともう今から嫌な気分になる。

 そして一番の謎スペック。問題はハクスイを一方的に知っているこの子だ。
「えっと。あの。すみません。わたし、普段自分の好きなもの時じゃないとどうも口下手でして。あの。わたし。キアラっていいます。本名は木皿亜美なんですけど、そこから文字ってずっとキアラって呼ばれています。白水京香様と二場三命さんの大ファンなんです。」
「二場三命の?」
 意外にもすぐに返答し、一番驚いてみせたのはハクスイであった。キャラ的に自分のファンってとこで色々弄りがありそうだったが、あたしたちの本星の情報が来たと言わんばかりに一気に真面目モードで食いついた。
 しかし、木皿ことキアラの返答は予想の斜め上を言った。
「もしかして!皆様も二場さんのファンなんですか?」
 違う!断じて違う!
 どうやら全員顔に書いてあったらしい。キアラの嬉しそうな表情は一瞬で曇った。
「違う......んですね。残念。二場さんの名前ってファンでもないと知らないことが殆どですので、てっきり皆様二場さんのファンかと。」
 あれ?二場さんのファンじゃないと二場さんを知らない。あたしだけ特別だったのだろうか?偶々、ヒカミとハクスイは佐竹に説明を受けただけで......
 あたしがこの噛み合わない部分を解消する為に何か質問を考えていると。先に口を開いたのはヒカミであった。
「キアラさん。おれたちが二場三命を知っているのは、サクだけがここに来る時に二場三命と会っているんだ。おれもハクスイも二場はこの世界を創造者であるって事しか知らないんだ。」
 歩が二場と会ったかどうかは知らないけど、歩は話の腰を折らないように黙って聞くに徹していた。
「ちょっと待ってください。こんなに二場さんに会いたいわたしが会えなくて、別に合わなくても良さそうな人が会えるってどういう事ですか?」
 それは街で推しでもない芸能人を見かけてしまった時と同じ論理。同じ気持ちなだろうか。
「そりゃ残念だ。おれらにもどうにもならんが、埋め合わせで、後で[十分間白水京香を好きにして良い券]をあげるからそれで手を打ってくれ。それで君は誰にこの世界の説明を受けたんだい?」
 さっきのハクスイもそうだけど、この人たち。平然ぶってちょいちょいキレ味に溢れた言葉入れてくるから、これは突っ込むべきかどうか毎回悩む。
「それは、ぜひとも私からもお願いしたいね。私も十分間好きにされたい。」
あたし『アンタが好きにされたいんかい!』
ヒカミ「センスなし。四点。」
歩「えっと。進めようぜ。」

 仕切り直し。
「佐竹と名乗る男です。」
 キアラの言葉で、どっと空気が重くなった。少なくとも、今回あの男に盛大に掻き回された、あたしたち三人は。
「もしかして。その佐竹さんもご存知なんですか?」
 こう返されてしまうのも仕方ない。少なくともあたしら三人は露骨に嫌な顔をしたと思う。
「おれもハクスイも佐竹から説明を受けた。それで最初の休憩場で再会した。なんていうか。佐竹が加害者でおれらが被害者のような関係だ。」
 歩が頷いているから、多分歩も佐竹から説明を受けたのだろう。
「それはつまりどういう、」
「いや。ごめん。百聞は一見にしかずだよな。サク。もう見せてやれ。」
 見せてっても。早くない?普通の人は逃げると思うけど。
「大丈夫だ。遅かれ早かれバレるし、さっきの歩の説明でもう既に言葉だけの事実と答えは出されているんだ。キアラさんが君のことを無理だというなら、それは仕方ない。それまでの関係だ。どんな態度とられようと、おれはサク側につく。」
 わかったよ。あたしはフードを取った。そして、袖で隠していた右手も見えるようにワザとらしく、肘までまくって包帯も外した。
 全員の視線。特にキアラからの視線があたしの右半身に注がれているのがわかる。
『突然意味わからないし、怖いよね。あたしもまだ意味が分かってないし。怖いんだけど。とにかく、その佐竹って男に呪いの可視化とかよく分からないので、こんな姿にされてしまったというのが現状で......』
 キアラはあたしの、色素の抜けた目を見ながら、「怖いです。」と小さく呟いた。
「樫山さんの存在ではなく。二場さんの存在が。」
 予想外の回答に意味がわからず。あたしたちは、目で動揺を確認し合った。
「樫山さん。違かったら大変失礼なのですが、あなたの父方と母方の直系の血縁者って全員把握できますか?家系図とかありますか?もしかして意図的に消されていませんか?子供の頃から前世のような変な記憶とか人と違って変なものを視る習慣とかありませんか?」
 家系図は知らないけど、思い当たる節は確かにある。子供の頃から幽霊を当たり前に視るし、人の感情も煙で視える。そして二場と佐竹が言う狼。ずっと見続けていた狼の夢。
 あまりの動揺と、まだキアラの思惑が見えない事から『と、言いますと。』と短く。イエスともノーとも取れない相槌を打った。
「人狼の少女の話は。二場さんの代表作です。」
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