恍惚
安酒場で泥酔し、狩人は嘲笑していました。自分自身の滑稽さ、愚かさを。――恍惚と、酔い痴れていました。
手玉にとるつもりだったのです。
王妃を易々と罠にかけたように、あの可憐な王女も、と。
罪の報復か、それとも王女が言うように、もはや選択肢などあり得ず、自ら求むることになる「運命」なのか。
狩人はありとあらゆる武器を使いこなす達人でした。女に関しても、それは自負していたことでした。
王妃を傀儡にし、意のままに操ることを愉しむだけで満足だったのです。自らが王座につくなど、考えつきもしません。自由気ままな身分であることが、狩人の誇りだったからです。
だから、戯れのひとつにすぎなかったのです。生業にしている狩りの、片手間にすぎない、戯れ。
狩人は己の手を見つめました。そこには、王女がつけた爪痕が未だに残っていました。
いずれ消えてしまう小さな傷。
けれど、胸に内に深々と突き刺さった誓約は狩人の未来への道筋を変えていくことでしょう。
狩人は、王女がつけた傷の上に自らナイフを突き立てました。
縦に一線、ナイフを走らせました。痛みよりも、恍惚感が狩人の脳を浸していきました。
狩人の悦にいった笑い声が安酒場に、響き渡ります。
酒場にいた男達はいぶかしんで狩人を見やりましたが、狂ったように笑う酔っぱらいに、誰も関心をはらうことはありませんでした。
罪に溺れてゆく未来を手にした男の高笑いは、喧騒の中に埋もれ、もはや聞く人もありませんでした。