ホーム百合の国のプリンセス♂お友達から始めましょう!
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お友達から始めましょう!

 王城でのメイド長ご乱心と、ティアラのプロポーズの後、今後の事を相談するためカチューシャとベルメットは冒険者ギルドの酒場で合流していた。
 ちなみにベルメットとウィッグの戦いはウィッグの仕事の都合のため決着が付かなかったらしい。
「いやはや、我が子ながら相当な美少女だとは思ってたが、まさか王女様に一目惚れされるとは...流石だな!」
「感心することじゃないよ!」
 ベルメットもこの国の女子誰かしらは確実にカチューシャに惚れるだろうとは思っていたが、それがまさか王女様とは予想するまい。
「まぁ王女様ともなればお前も無碍には扱えないし、女の子を好きになるには丁度い良いんじゃないか?」
「良くないよ! 一応断ったけど保留扱いなんだよ!」
 ティアラの方も承諾されるとは始めから思っていなかったようで
「そもそもキミはノーマルだろうから、私が絶対に女の子を...私を好きにさせて見せるよ!」
 と、諦めない宣言されてしまったのだ。
「情熱的な子だな! コレはチシャも気持ちが変わるんじゃないか?!」
「ならないよ! これ以上ややこしい事になる前にこの国離れようよ!」
 あまり深掘りされると自分の性別も秘密もバレてしまうんじゃないかとカチューシャは乗り気ではない。
「スマン、アタシは仕事できたから国を離れるのは暫く無理だ」
「えぇ!? この国に仕事なんてあるの?!」
 親子とはいえカチューシャとベルメットでは実力がかけ離れているので、仕事を別々に受ける事は珍しい事ではない。しかし、この平和な国に母が別行動をとるような仕事があるとは思えなかった。
「実はこの国に来た理由はもう一つあってね、この地にあるとある秘宝の在り処にいきなり目星が付いたんだ」
「仕事って秘宝探し? なんて秘宝なの?」
 たしかに大物のトレージャーハントともなると、暫く国に滞在することになるだろう。奇跡的にすぐ見つかる場合もあるが、そんな事は稀である。
「『インビローズの鏡』、伝承によれば映したモノの性質を反転する秘宝らしい」
「え、それって...」
「そう、それが見つかればお前はちゃんとした女になれるかもしれない...」
 その秘宝の力はどんなものかは未知数だが、可能性があるなら母親として藁にも縋る思いだった。
「というわけで早速PT募って探索隊編成したから、お前は安心して王女様と恋愛するといい!」
「え、ちょ」
「戦士です」
「剣士です」
「武闘家です」
 そして馬車で紹介される?仲間たち
「ちょ、バランス悪!?」
「楽しみに待っててなー!」
 我が子の突っ込みも意に返さずベルメットは馬車を走らせて行ってしまった。
「お、お母さーん!?」
 女の子になれるなら普通に男の子と恋がしたい。そんな根本的な考えを指摘する暇もなく...。

百合の国のプリンセス♂ #2お友達から始めましょう!挿絵AIで作った挿絵


「カチューシャ様、失礼しますね」
 豪勢な王宮の一室、私はノックの音...もとい、扉に近付いた気配で目が覚める。
「おはようございます...」
「おはよう御座います、お世話させて頂くプリムで御座いま...おや?」
 部屋に入ってきたのは水色髪の、私と同じくらいの年齢っぽい可愛らしいメイドさん。メイド服のデザインも王宮のメイド服と同じなものの、右脚側に深いスリットが入っていた。
 そのプリムを名乗るメイドさんは挨拶の途中で床で寝ている私に目を丸くする。
「ベッドに不備が御座いましたでしょうか?」
「そんなことは...ベッドも布団も凄いふかふかで気持ちいいんだけど、逆に眠れなくて...」
 物心ついた頃から冒険者してるものだから、寝る時は野宿かギルド宿の粗末なベッドが大半、こんなふかふかベッドじゃ落ち着かなくてとても眠れなかった。
「なるほど...。硬いベッド、手配しておきます」
「いや、そこまでしていただかなくても! 床で寝ますし!」
「大事なお客人を床で寝かせる訳にはいきません!」
 う、うーん...そもそもできれば冒険者ギルドに泊まりたいんだけどなぁ...。ホントに部屋空いてなかったけど。
 あの後、騒動を止めたお礼にディナーをご馳走になって(美味しいお肉いっぱい食べれた!)、泊まるところの話になったらティアラ様が
「騎士団本部に部外者泊めるなんてダメ!(至極まっとうな正論)カチューシャは王宮に泊まって!(←!?)」
 と半ば強引に泊められてしまった。
「お召し物も、そのまま寝られたのですか?」
「冒険者だから...寝巻なんて荷物になるものは...」
 特定のギルドやキャラバンに所属する冒険者は拠点や馬車があるから別だけど、私みたいな冒険者は極力荷物を減らして装備以外の着替えは下着くらいしか持たない。戦闘服がそのまま普段着で、寝る時は襲撃に備えてそのままだ。着替えがないから裸で寝るって冒険者さんはたまにいるけれど...というかお母さんがそれだったみたいだし。(私が生まれてからは着てる)
「そちらも用意させて頂きますね」
「泊まるのは今回だけだから!」
 やっぱり騎士団本部の方に泊まらせてもらいたい...、ウィッグさんかっこいいし。
「カチューシャおっはよー!」
 プリムさんの気遣いを断ってるとティアラ様が部屋に突撃してくる。
「ティアラ様、ノックしてください」
 そして後ろの別のメイドさんに怒られてる。
 近付いてきてるのはわかってたから、私はノック無くても平気だけれど。
「おはようございますティアラ様、気にしてないので次回から気を付けてくれればいいですよ」
「あーごめん、カチューシャの寝巻姿とか早く見たくて! ってヒーラー服のまま?」
「カチューシャ様のような冒険者は下着以外の着替えは荷物になりますからね」
 ティアラ様は残念がってるけど、もう一人のメイドさんは冒険者事情に詳しいらしい。
「じゃあこっちで可愛い寝間着用意すればいっか!」
「そのように手配させて頂きます」
「いや、あの...」
 それさっき断ったばかりなんだけど...あれ? そういえばプリムさんはどこだろ? ティアラ様の入室と同時に姿が見えないような? と思って気配を手繰ってみると...。
「ふむふむ...ヒーラードレスの下はブルマ(ドロワタイプ)ですか...」
「きゃあ!?」
 私の後ろに屈んで、スカートを捲られていた!
「プリム! アンタいつの間に!?」
 うそ!? 私が後ろを取られた!?
「ちっくしょー! 見た目聖女な清楚系ヒーラー、でも下着はガーター吊りのレースというギャップエロを期待したのに! ブルマかぁ...」
「え...あの...プリムさん?」
「勝手に盛り上がって勝手に絶望してんじゃないわよ、てか私の姫にセクハラすんな」
 さっきまでと様子のまるで違うプリムさんに私は言葉も出ない。
「残念な結果でしたが目的は果たしたので改めて自己紹介致しましょう!」
 そして落ち込んでたと思ったら、元気を取り戻して自己紹介を始める。
「私こそが、姫様付きのセクハラメイド、プリムです!」
「それだと私がセクハラさせてるみたいでしょーが!」
「あ、ちなみにカチューシャ様のホントの世話役はそちらのボンネットでっす、失礼しました!」
「どうやら先に来て私のフリをしてたようですね」
 あぁなるほど...そう言う人なのね...。
「プリム! カチューシャを困らすんじゃないわよ!」
「だって昨日非番で姫様がプロポーズしたって美少女見られなかったんですもん、ここは朝イチでお顔と下着を確認しないと!」
「下着は確認しなくていい!」
 なんか、この王族にしてこの従者ありって感じだなぁ...。ティアラ様は比較的まともそうだけれど。
「同僚がお騒がせしました。滞在中カチューシャ様の身の周りのお世話をさせて頂くボンネットです、よろしくお願いします」
「あ...はい、よろしくお願いします...」
 さっきのプリムさんのようにうやうやしく挨拶されるボンネットさんはまさにメイドの鑑といった具合で。
「お世話と言ってもカチューシャ様は冒険者であられるのでぶっちゃけ私やることありませんね。着替えの手伝いはおろか、ベッドシーツの取り替えも...なんなら床で寝る方が落ち着くのでは?」
「そうですけど...」
 冒険者事情に詳しいのはありがたいんだけど「私仕事しなくていいよね?」みたいに言ってない?
「なんか...ウチのメイドこんなのばっかりでごめん...」
「あはは...個性的な従者さんたちだね...」
 ティアラ様がまともなのは従者がこんなのだからなのかもしれない...。


 その後朝食は断るつもりだったけどすでに用意されてたんじゃもったいないので頂いて、私はすぐに冒険者ギルドに向かった。
「もーしわけございませんでしたぁ!」
 王宮を抜けて王城のホールに辿り着くと昨日のメイド長さんが床に突っ伏しながら凄い剣幕で女王様に謝罪していた。隣にいるのが王妃様かな?
「このキャペリン、腹掻っ捌いてお詫びを致しますう!」
「待て待て待て、怒るために呼んだんじゃない、お前にいなくなられると私も困る」
「今回の件は抜き打ちの実力テストと言うことにしましたから、アナタへの処罰はありませんよ」
「そもそもが私の差し入れが原因だしな...」
 女王様、自分も伸されたのに寛大な人だなあ。メイド長さんも本来はとても真面目な人なんだろう、私が出ていくと気を遣わせそうだからこっそり抜けよう。
 そうして冒険者ギルドに一人でやってきたんだけど...。
「ティアラ様、付いてこられるんですね...」
「そりゃカチューシャの心を射止めるからには一緒に行動しないと!」
「姫様普段から冒険者の真似事してますけどね」
 冒険者ギルドまでティアラ様とプリムさんが付いてきていた。割と堂々と。
「仕事するなら私たちとパーティー組みましょ! プリムは変態だけどメイドたちの中では強い方だからさ、昨日のキャペリン程じゃないけど」
「そういえば昨日は母の暴走を止めて頂いたそうで! ありがとうございます!」
「メイド長さんの娘さんなんだ?」
「昨日はあんなだったけどホントは凄い真面目な人なのよ、それの娘がどう言うわけかコレなのよねぇ...、遺伝子バグってんじゃないかしら」
「プリムさんは養子じゃないんだ?」
 この国はレズビアンが多くて王城勤務ともなるとほぼ全員がそうだとか。だから子供は必然的に養子になると聞いてるんだけど。
「母は元々他の国の王宮勤務の教官で、私を産んだ頃に父を戦争で亡くしまして、女手一つで育てるのに当時の国の福利厚生が良く無かったところを女王様に引き抜かれたそうです」
「ウチの国なら王宮内で娘の面倒を見ながら働けるよ、って引き抜いたんだって」
 それはたしかに行き過ぎてるくらいな引き抜条件だと思う。
「だからプリムは私が引き取られる前よりずっと先に王宮にいたのよねー」
「物心ついた頃から王宮にいましたから、姫様が貰われたときは友達が増えて嬉しかったですねー」
「主従にしては距離が近いなって思ったけど、二人は幼馴染なんだね」
「そうね、主従だけど親友よ」
「ありがたいお言葉です!」
 主従以上に二人は強い友情で結ばれてるのが、なんだかいいなぁって。
「いいなぁ...、私はずっと冒険者してるから...」
 幼馴染なんているわけもなく、同年代の友達すらいないのは、改めて寂しいように思える...。
「じゃあさ! 私たちはまずは友達から始めようよ!」
「え?」
 ティアラ様が私の両手を取って、満面の笑みを向ける。
「カチューシャはノーマルだからまだ女の子を好きになれないかもしれないけど、同性の友達ならいいでしょ?」
「でもティアラ様は王女だし...」
 あとホントは同性じゃないんだけど...。
「そんなの気にしないでいいから!」
「セクハラしてくる従者が友人なくらいですからね!」
 それはホントそう思う。
「私はいいけど、次カチューシャにやったらぶっ飛ばすから」
「例え警告されてもこの本能の衝動には抗えnあぴゃー!?」
 言葉が終わるより先にティアラ様の放った魔法がプリムさんを吹き飛ばした。
「まだ何もやってないじゃないですか! 先払いでぶっ飛ばさないで下さいよ!」
「うっさい! 少しは反省しなさい!」
「あははは!」
 そんな二人の様子があまりにもおかしくって、大声で笑ってしまう。
「うん、欲しいな...、友達」
 笑いと一緒に出た涙を拭きながら、私は正直な気持ちを打ち明ける。
「うん! よろしくねカチューシャ!」
「よろしく、ティアラ!」
 いつまでこの国にいるか分からないけど、この国に居たい理由が一つできたのだった。


「というわけでヅラ! お仕事ちょーだい!」
「殿下、どいうわけかわかりません」
 カチューシャと友達になって、そのまま冒険者ギルドに行ったのだけど案の定3人で受けるような仕事はなかった。一番大変そうなので猫探しとか...。
「ので! 騎士団に仕事を貰いに来たのよ!」
「いつもと同じ経緯と言うことですか...」
 むしろ冒険者ギルドの仕事は簡単過ぎて、モンスター討伐メインのこっちから仕事貰うことの方が多いのよね、私。
「なんかごめんなさい...」
「仕事を手伝って頂けるのでこちらとしてもありがたいのですが...」
「特に大きめの討伐や掃討、モンスターの発見報告は上がってないわねぇ」
 ヅラがチラっとバレッタの方を見ると、バレッタは書類をパラパラとめくって私好みの仕事を探してくれてる。でもやっぱり、こっちにもやりがいのあるような仕事はないみたいね。
「そんな都合のいい事はないかー」
 でもなぁ、カチューシャとの仲を深めるならある程度はやり甲斐ある内容じゃないとなー。
「難しい仕事ではないが、王都北東周辺のパトロールを頼もうか、街道もなく周辺には古戦場と森くらいしかないから後回しにしがちでな」
「何もなくともピクニック感覚で仲良くなればいいんじゃない?」
「そう言った油断のしすぎは死亡フラグです!」
 まぁ、生粋の冒険者らしいカチューシャのその心持ちは大事なのだけど...ホントにピクニックで終ると思う。ウチの国の平和っぷり尋常じゃないから...。


「周辺にモンスターの気配は...全然無いね...」
 王都から出てすぐ街道を外れて北東の丘へ登ったところで、カチューシャがモンスターを探知し始める。
「モンスターの探知魔法まで使えるの?」
「あれって高位魔術ですよね、カチューシャ様ヒーラーの魔法以外も修めているんですね」
 モンスターの魔力を広範囲に感知する魔法なのだけど、些細な動植物にまで反応してそれが多重に重なって判別がめちゃくちゃ難しい、らしい。
「お母さんと組むベテランさんに色々教えてもらったの。特にモンスターとかの探知は得意だよ」
 なんてこと無いふうに言ってるけど、カチューシャってホント凄い冒険者なんだなあと思い知らされる。昨日も自分で魔法作ってたし。
「ウチの国は魔法技術でも有名なのに、それすらカチューシャに敵う気がしないなぁ...」
「姫様実戦主義だって座学の魔法勉強サボりがちですしね」
「私は必要だから覚えただけだし...、それに武器で戦うのは苦手だよ」
 ちょっと自信を無くしてるとカチューシャがフォローしてくれる。あぁホント良い子だ嫁に欲しい。
「私も武器で戦うのは苦手ですよ!」
「アンタは魔術格闘マジックアーツでしょうが」
 ロイヤル・ガードも兼任しているメイドたちは武器が不要なこのスタイルを確立させている。あと男手がないから魔法の肉体強化で力仕事を行うためという事情もある。
「みんな得手不得手があるんだから、比べることなんてないよ」
「そうなんだけどさ...」
 ヅラが規格外の強さなのは知ってたけど、ベルメットさんやカチューシャのような本物を見せられて自分の実力不足を再確認してしまったのよね...。
「昨日の盾も、頼もしかったよ」
「おうふっ!」
 ニコッと笑ってそんなフォロー...
 浄化されてしまう!
「唐突なガー不やめて下さい、死んでしまいます」
 なんか流れ弾(?)で勝手に悶え死んでるプリムは置いといて...
 いやもう、一目惚れだったけど何度でも惚れ直せるわ、マジ好きめっちゃ好き!
「ありがと! なんかめっちゃ元気出てきた!」
「うん、頑張ろう」
「流石一流ヒーラー、心の癒しもお手の物ですね!」
「プリムさんはなんで倒れてるの?」
「あと浄化もね...」
 アンタはいつまで尊み食らって死んでんの、私に向けられた笑顔だぞ返せ。

 丘を越えて少し歩いたところでようやくモンスターに遭遇した。
 と言っても接近もモンスターの規模もカチューシャが教えてくれてたから特に驚きもないのだけど、むしろ距離も数もぴたりと当てたカチューシャに驚きだわ。
「植物タイプのモンスターですね!」
「期待はしてなかったけど、雑魚の部類ね」
 見つかったモンスターは宿り木から変化?したと思われる蔓の怪物が数匹。獲物を蔓でふん縛って体力を吸うくらいのもので、攻撃はツタを振り回すくらい、万が一捕まっても体力を吸うのにかなりの時間がかかるから逃げ出すチャンスも多い、総じて危険度の低い雑魚。
「さぁ! 姫様、カチューシャ様、婚約エンゲージ! 婚約!」
「いや接敵エンゲージ...」
 この程度なら私一人で平気ね、ようやくカチューシャに良いところを見せられそう!
「私に任せて!」
 剣を抜いてモンスターの群れに突撃エンゲージ、私に向けられたツタを切り裂いて本体の蔓を両断。これを2回、残りを炎の魔法で一掃。
「どうよ!」
 そして決めポーズ! 残心しろって? たまにはいいでしょ!挿絵AIで作った挿絵
「ティアラ、残心忘れてる。減点」
 ってカチューシャこいうことには厳しいね!?
「姫様もっと激しく動いて、パンチラしてませんよ。減点」
「アンタには聞いてない!」
 しかもなによその採点、カチューシャがノーマルじゃないなら私だってパンチラで気を引きたいわ!
「ギリギリ見えないのも趣があっていいと思うよ?」
 あれぇ!? カチューシャパンチラに興味あった!? しまくった方がいい!?
「ほぅ、カチューシャ様いける口ですか? 如何ですか『スカートの長さとパンチラの価値は比例する』説に付いて議論しませんか!」
 厄介オタクが同好の士見つけたみたいになっとる。
「やめろ私の姫をそっち方向へ誘うな」
「ごめん、その話はちょっとわからないかも...」
 よかった、カチューシャはやっぱりピュアピュアだった。まぁエロいカチューシャも、アリですが?
「まず第一にスカートというヒラヒラしている危うい防壁、コレが...」
「勝手に語りだしたけど気にしないで、ほっとけば満足して終わるから」
「あ、うん」
「それと! さっきは張り切りすぎてカッコつけちゃっただけで! 普段はちゃんと残心してるからね!」
「大丈夫だよ、わかってるから。昨日はちゃんとしてたもんね」
 やった! 昨日のちゃんと見ててくれてた! よくやった昨日の私!
「でもどんなに弱いモンスターでも不意打ちは危険だから、残心はちゃんとしようね?」
 はいママ、絶対に忘れません!
「そんな危うい防壁だからこそ期待と浪漫を煽るのですよ!」
「近くに他のモンスターはいない?」
「うん、目立ったところにいるのはいないかな?」
「狩りすぎても良くないんだっけ?」
「弱いのは他のモンスターの餌になるからね、ある程度残さないと人里の方に餌を求めて降りてきちゃうの」
「スカートに守られてないパンツなんて「守る価値無し」と同義...」
「そうなる前に狩ればいいんじゃないの?」
「人里に降りてこない、他のモンスターを捕食する普段は無害なモンスターまで狩ることはないと思うよ?」
「カチューシャは優しいね」
「過ぎたるは及ばざるが如し、長すぎて「見えるかも...」の期待を煽れないのも...」
「冒険者の私は、ずっとその土地の人を守れるわけじゃないから、効率的な狩り方をしてるだけだよ」
「それはそれで、その土地の人たちの事を考えてる優しさじゃないかな」
「えへへ...ありがとう...」
 私に褒められて照れてるカチューシャ可愛い...
「もったいぶられてばかりではやはりお腹が空きます、価値の高い...」
 せっかくカチューシャと良いふいんき(何故か変換できる)なのにプリムマジうるせぇ!
「このまま東に行って古戦場の方を周ろうか」
「あそこの森はいいの?」
カチューシャの指の先には、こののどかな丘には異質な、ただならぬ雰囲気をした森があった。
「あー、あそこの森は...」
 知らずにカチューシャが踏み込むこともないと思うけど、一応説明しておくかな。
「その点、姫様とカチューシャ様のスカート丈は実に理想的で...」


 ティアラは少しためらってから話してくれた。
「あそこの森は、ライカンの里があるのよ」
「ライカン!?」
 ”人狼ライカン“、狼のような耳と尾、強靭な爪を持ち、男しか生まれない種、かつてはエルフや人間と同じような種であったが、かつてこの地を蹂躙した魔王に組みし、魔族となった。
 魔族となったライカンの魔力は強大で、その性質は獰猛残虐、その四肢は超高速で大地を駆け、魔力を帯びた爪は瞬く間にあらゆるモノを引き裂いた。
 魔王討伐により息を潜めたが、種の特徴である耳・尾・爪を完全に隠すことができて通常の人間と見分けがつかないため、人間社会に潜む人狼に人々は恐れ続けている。
 これが、私の知るライカンの知識。
 そんなライカンの里が平和なこの国の奥にあるなんて...。
「ライカンの里が近くにあって、怖くないの?」
「森のかなりの奥の方だし、里から出てこないからね。こちらから刺激するようなこともないし、平和そのものよ」
「でも、ライカンって男しか生まれないから、種を残すのに他の種の女性が必要だよね? 国の女の人が攫われてたりしないの?」
「それは大丈夫かな、そうなってたらヅラのやつが黙ってるワケないし」
 ライカンと言えば私の知る知識のように、怖がられるものだけど、ティアラからはそういった様子は感じられなかった。
「公にはしてないけど、王都の住民はみんな知ってるから、カチューシャも近付かないようにね」
「うん」
 ティアラから感じないライカンへの恐怖心に、私は少しの不思議と、期待を持つのだった...。
「私は純粋に、パンチラを愛しているんだぁぁあ!」
 あとなんか、ずっと語ってたプリムさんの話もようやく終わったらしい。


「古戦場跡...ホントに何も無いね...」
 丘から東へ向かい、何も無い平原に辿り着いた。大昔の戦争の影響でここだけは大地が死んでいるらしく、動植物もモンスターも殆どいない。
 一応、その頃のであると思われるゴースト系のモンスターがいるものの、長い年月に倒され過ぎてスッカリ念も弱まり雑魚モンスターと変わらなくなっている。
「ここは人も来ないしあんまり周る必要もないかな」
「見える範囲にもなにもいなさそうですね」
 ゴースト系は倒してもどうせまた出てくるし、これ以上弱らせる必要もないでしょ。
「モンスターの反応はないけど、猫の痕跡がする...」
「猫?」
「もしや冒険者ギルドで張り出されてた迷子の猫探しですか?」
「うん、他の仕事のついでに探せないかと受けてきたの」
 そう言ってカチューシャは預かったであろう猫の首輪を顔に当てる。
「モンスターだけでなく、猫の居場所までわかるの?!」
「言ったでしょ、探知は得意だから」
 カチューシャは少し誇らしげにウィンクする。飼い猫なんてか弱い魔力探知できるものなの? カチューシャてホントに凄いんだなあ。
「街の外が平和過ぎて、こんなとこまで来ちゃったのかな」
「好奇心猫をも殺すわねぇ」
「ティアラ! 縁起でもない!」
「ご、ごめん...」
 痕跡を追うカチューシャの後ろで適当なことをボヤいたら怒られちゃった...。
 カチューシャはついでって言ってたけど、きっと飼い主のことを思って本気で仕事を受けたんだろうな...。
 いつか会った冒険者が言っていた
『冒険者の仕事に貴賤はない』
私はやり甲斐のない仕事だと無碍にしたけど、どんな内容であれそれは依頼した人の願いがあって、冒険者はそれを全力で解決する。
 特に迷子の猫なんて、飼い主はよっぽど心配してるに違いないのに、私は...。
「私のやってることが、冒険者の“真似事”って言われる訳が分かった気がする...」
「ん、仕事を選り好みしてるようじゃ、冒険者としては二流だって私も言われたよ」
 カチューシャは私の気持を察してくれたらしく、クスクス笑って自分もそうだったと慰めてくれる。
「凄い、姫様が人として成長していく」
 アンタも人として成長して、具体的には変態治して。
「ところでカチューシャ、どんどん進んでるけど猫の痕跡とモンスターの探知って両方できるの?」
「できるから大丈夫だよ」
 猫の痕跡を辿るのにずいぶん集中してるらしいから念の為に聞いてみたけど、両立できるらしい。本人はそう言ってるんだけど...
「いやでも、近くにモンスターいても無警戒に過ぎてるように見えたから...」
「うん? 周りにモンスターなんていないよ?」
 え? まさかチラチラ見えてるゴーストに気付いてない?
「いや、今もそこに...」
「え?」
 と、近付きすぎてこちらに気付いたゴーストがカチューシャの前に飛び出して威嚇する様に体を広げた。
「ひゃ...ひあーーー!!!??」
「カ、カチューシャ!?」
 なんてことは無い低級ゴーストの威嚇にカチューシャは悲鳴を上げて尻餅を付き、パニックになって杖をブンブン振り回す...けど、ゴーストに物理攻撃なんて当たるわけもなく。
「やー! やー!? 来ないでー!!」
「カチューシャ落ち着いて! ゴーストに物理効かないから!」
「手遅れですけどそんなに騒ぐと他のゴーストも寄ってきますよー」
 そしてここまで無視して通り過ぎた他のゴーストたちもこちらに気がついて寄ってくる。
「モンスターのいるところで騒がないって冒険者の常識じゃないの!?」
「イヤだー! 食べないでー! 私美味しくないからー!」
 ダメだ聞こえてない...でもパニックになって幼児退行してるカチューシャめっちゃ可愛い、低級ゴーストの方も久しぶりに怖がってくれる相手に出会えたからか襲うってか小躍りしてる...。
「もうちょっと見てたいけど...、プリム! 片付けるよ!」
攻撃開始エンゲージ!」
「あ、猫が居るかもしれないからあんまり派手な技は無しね」
 ようやく出番とやる気を出してるプリムに釘を差しつつ、私たちは周りに気をつけながらよってくるゴーストを片付けた。

「ごめんなさい...ごめんなさい...。私お化けが本当にダメで...」
 ゴーストを片付けると落ち着いたカチューシャがグズりながら謝罪してくれる。
 うーん、泣き顔と照れ顔で、めっちゃい!
「こっちこそごめんね、まさかゴースト系は探知出来ないなんて知らなくって」
「でもゴースト系にもモンスター特有の魔力があるはずですよね? ゴースト系だけ探知出来ないなんて聞いたことありませんが」
「私の探知はちょっと特殊で...」
 猫さえ探知できるほど繊細なのに? うーん、カチューシャって不思議だ。
「それにしてもカチューシャがあんなに取り乱すなんてなー」
「うぅ...先輩風吹かせた直後にこんな失態...穴があったら入りたい...」
 私も一緒に入りたい。恥ずかしがってるカチューシャ可愛すぎる。
「ヒーラーならアンデッドやゴーストなんてむしろ特効のイメージあるんだけど」
 何故かヒーラーの魔法にその手の特効魔法あるよね?
「アンデッドは平気なんだけど...お化けだけはダメで...」
「誰にでも苦手な物一つくらいありますよ! 私は美少女のパンチラが怖いです!」
「あんまり茶化すともっと怖い王女が出てくるわよ...」
「空気を和ますジョーダンですってば!」
 にしてもお化けて、あぁもう、ホント可愛い。


「落ち着いた事だしゴーストが復活する前に移動しよっか、カチューシャ猫の痕跡はまだ追える?」
「さっきの戦闘で少し散ったかもしれないけど、大丈夫だと思う」
 猫の痕跡を追うのに集中し過ぎて近くにいるお化けにも気が付かないなんて...、私すっごいカッコ悪い...。
 とにかく早くここを離れたい、お化けの念が復活するまでは一日くらいかかるからその心配はないはずだけど。
「あれ...?」
 立ち上がろうとして、腰に力が入らない...。え、これ、まさか...。
「カチューシャ?」
「その...腰が抜けちゃったみたい...」
 いやー! もー! ここに来て恥の上塗り! 冒険者が腰を抜かすなんて!
「あー...」
ほら呆れられてる! 腰を抜かして動けないなんて経験ないわーって顔してる!
「立た上がれるまでゆっくりする?」
「やだ! 早くここから離れたい...」
 ここにいたら別のゴーストがまた現れるかもしれない、もう情けなくてもいいから涙目で訴える。
「じゃあ、私がおぶってこっか。プリムは私を護衛して」
「エンゲージ!」
「気に入ったのソレ?」
 私の情けない訴えにティアラが背中を差し出してくれるけど...
 あ、いや...、背中に担がれるのはマズイ...。しかも、腰に力が入らない時に...、男の子特有のアレが...当たりかねない。

「えっと...背中じゃなく前に担いで欲しいかも...です...」
 え?
 カチューシャに背中を差し出したら消え入りそうな声で、恥ずかしさを押し殺してお願いされた。
「前に担ぐって、それは、つまり...」
「お...お姫様抱っこで...お願いします...」
 我が世の春がキターーーー!!
「我が世の春がキターーーー!!」
「落ち着いてください姫様、ダブってます」
 まさかカチューシャからお姫様抱っこをお願いされるなんて!
「え、でもなんで!?」
 いや疑問に思うな私、ここでやめられたらどうする。
「そりゃ姫様、背負われたら困るからじゃないですかね」
「背負われたら困る事って...」
 腰を抜かしたカチューシャを凝視して何が困るんだろうと考えて見ると...。
「「あっ」」
 私とカチューシャ、同時に思い当たったのか声が重なる。
「違うから! 漏...そんなんじゃないからぁ!!」
「大丈夫大丈夫! 仮にそうだとしても全然OKだし!」
「ホントに違うのーー!」
 その後真っ赤になったカチューシャを抱き上げたものの、特にそう言う臭いはしなかったので、そういう事ではなかったらしい、多分。

 腰を抜かしたカチューシャを担いで猫の探索を再開し、カチューシャの案内で無事見つけることができた。
 そして結局、カチューシャの腰は抜けままだったので今日もカチューシャは王宮へお持ち帰りされたのでした。
「今日は厄日だよぉ...」
「いやー! 良い日だったなー!」
 カチューシャと友達になれて、可愛いところや意外な一面が沢山見れて、私たちの仲が急接近出来た気がする!挿絵AIで作った挿絵


オマケ
『スカート丈とパンチラの価値は比例する』全文
Byプリム

『まず第一にスカートというヒラヒラしている危うい防壁、コレが要
隠してるのになんでそんなヒラヒラしてるんだ! 下なんてノーガードじゃないか! 守る気あんのか! そんな危うい防壁だからこそ期待と浪漫を煽るのですよ! 守る価値があるんですよ! だからスカートに守られてないパンツなんて「守る価値無し」と同義、囚われてない道中に放り出されたヒロインみたいなものですよ、そこに浪漫が、物語がない! モロ見えなんてもはやただの在庫処分ですよ!
失礼、少々脱線しました。つまり、パンツは長いスカートで守られてるほど価値が高い訳です。パンチラの浪漫があるのですよ。
勿論、過ぎたるは及ばざるが如し、長すぎて「見えるかも...」の期待を煽れないのも論外ですが、スカートの材質次第ではブワッと捲れる訳ですよ、「見えないのか...」と諦めさせておいての特大の不意打ちパンチラ! この物語はもはや芸術ですよ!
とはいえ、もったいぶられてばかりではやはりお腹が空きます、価値の高いパンチラばかりのグルメではなく、価値のそこそこのスカート丈が短いパンチラも適度に摂取したいところですね
その点、姫様とカチューシャ様のスカート丈は実に理想的です! 滅多に見えないカチューシャ様と適度に見せてくれる姫様のパーフェクトタッグ!
まぁカチューシャ様の場合下着がブルマ(ドロワタイプ)なのでパンチラというか、足ももチラの魅力なのですが、コレはパンチラとは別ジャンル、語るのは次の機会にしましょう。
えぇだからこそ! カチューシャ様にはエッチな下着を、履いてほしい! この思いを、ぶつけさせて欲しい!
私は純粋に、パンチラを愛しているんだぁぁあ!』
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百合の国のプリンセス♂作者:万能ねぎトロ
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ホーム百合の国のプリンセス♂お友達から始めましょう!
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お友達から始めましょう!

 王城でのメイド長ご乱心と、ティアラのプロポーズの後、今後の事を相談するためカチューシャとベルメットは冒険者ギルドの酒場で合流していた。
 ちなみにベルメットとウィッグの戦いはウィッグの仕事の都合のため決着が付かなかったらしい。
「いやはや、我が子ながら相当な美少女だとは思ってたが、まさか王女様に一目惚れされるとは...流石だな!」
「感心することじゃないよ!」
 ベルメットもこの国の女子誰かしらは確実にカチューシャに惚れるだろうとは思っていたが、それがまさか王女様とは予想するまい。
「まぁ王女様ともなればお前も無碍には扱えないし、女の子を好きになるには丁度い良いんじゃないか?」
「良くないよ! 一応断ったけど保留扱いなんだよ!」
 ティアラの方も承諾されるとは始めから思っていなかったようで
「そもそもキミはノーマルだろうから、私が絶対に女の子を...私を好きにさせて見せるよ!」
 と、諦めない宣言されてしまったのだ。
「情熱的な子だな! コレはチシャも気持ちが変わるんじゃないか?!」
「ならないよ! これ以上ややこしい事になる前にこの国離れようよ!」
 あまり深掘りされると自分の性別も秘密もバレてしまうんじゃないかとカチューシャは乗り気ではない。
「スマン、アタシは仕事できたから国を離れるのは暫く無理だ」
「えぇ!? この国に仕事なんてあるの?!」
 親子とはいえカチューシャとベルメットでは実力がかけ離れているので、仕事を別々に受ける事は珍しい事ではない。しかし、この平和な国に母が別行動をとるような仕事があるとは思えなかった。
「実はこの国に来た理由はもう一つあってね、この地にあるとある秘宝の在り処にいきなり目星が付いたんだ」
「仕事って秘宝探し? なんて秘宝なの?」
 たしかに大物のトレージャーハントともなると、暫く国に滞在することになるだろう。奇跡的にすぐ見つかる場合もあるが、そんな事は稀である。
「『インビローズの鏡』、伝承によれば映したモノの性質を反転する秘宝らしい」
「え、それって...」
「そう、それが見つかればお前はちゃんとした女になれるかもしれない...」
 その秘宝の力はどんなものかは未知数だが、可能性があるなら母親として藁にも縋る思いだった。
「というわけで早速PT募って探索隊編成したから、お前は安心して王女様と恋愛するといい!」
「え、ちょ」
「戦士です」
「剣士です」
「武闘家です」
 そして馬車で紹介される?仲間たち
「ちょ、バランス悪!?」
「楽しみに待っててなー!」
 我が子の突っ込みも意に返さずベルメットは馬車を走らせて行ってしまった。
「お、お母さーん!?」
 女の子になれるなら普通に男の子と恋がしたい。そんな根本的な考えを指摘する暇もなく...。

百合の国のプリンセス♂ #2お友達から始めましょう!挿絵AIで作った挿絵


「カチューシャ様、失礼しますね」
 豪勢な王宮の一室、私はノックの音...もとい、扉に近付いた気配で目が覚める。
「おはようございます...」
「おはよう御座います、お世話させて頂くプリムで御座いま...おや?」
 部屋に入ってきたのは水色髪の、私と同じくらいの年齢っぽい可愛らしいメイドさん。メイド服のデザインも王宮のメイド服と同じなものの、右脚側に深いスリットが入っていた。
 そのプリムを名乗るメイドさんは挨拶の途中で床で寝ている私に目を丸くする。
「ベッドに不備が御座いましたでしょうか?」
「そんなことは...ベッドも布団も凄いふかふかで気持ちいいんだけど、逆に眠れなくて...」
 物心ついた頃から冒険者してるものだから、寝る時は野宿かギルド宿の粗末なベッドが大半、こんなふかふかベッドじゃ落ち着かなくてとても眠れなかった。
「なるほど...。硬いベッド、手配しておきます」
「いや、そこまでしていただかなくても! 床で寝ますし!」
「大事なお客人を床で寝かせる訳にはいきません!」
 う、うーん...そもそもできれば冒険者ギルドに泊まりたいんだけどなぁ...。ホントに部屋空いてなかったけど。
 あの後、騒動を止めたお礼にディナーをご馳走になって(美味しいお肉いっぱい食べれた!)、泊まるところの話になったらティアラ様が
「騎士団本部に部外者泊めるなんてダメ!(至極まっとうな正論)カチューシャは王宮に泊まって!(←!?)」
 と半ば強引に泊められてしまった。
「お召し物も、そのまま寝られたのですか?」
「冒険者だから...寝巻なんて荷物になるものは...」
 特定のギルドやキャラバンに所属する冒険者は拠点や馬車があるから別だけど、私みたいな冒険者は極力荷物を減らして装備以外の着替えは下着くらいしか持たない。戦闘服がそのまま普段着で、寝る時は襲撃に備えてそのままだ。着替えがないから裸で寝るって冒険者さんはたまにいるけれど...というかお母さんがそれだったみたいだし。(私が生まれてからは着てる)
「そちらも用意させて頂きますね」
「泊まるのは今回だけだから!」
 やっぱり騎士団本部の方に泊まらせてもらいたい...、ウィッグさんかっこいいし。
「カチューシャおっはよー!」
 プリムさんの気遣いを断ってるとティアラ様が部屋に突撃してくる。
「ティアラ様、ノックしてください」
 そして後ろの別のメイドさんに怒られてる。
 近付いてきてるのはわかってたから、私はノック無くても平気だけれど。
「おはようございますティアラ様、気にしてないので次回から気を付けてくれればいいですよ」
「あーごめん、カチューシャの寝巻姿とか早く見たくて! ってヒーラー服のまま?」
「カチューシャ様のような冒険者は下着以外の着替えは荷物になりますからね」
 ティアラ様は残念がってるけど、もう一人のメイドさんは冒険者事情に詳しいらしい。
「じゃあこっちで可愛い寝間着用意すればいっか!」
「そのように手配させて頂きます」
「いや、あの...」
 それさっき断ったばかりなんだけど...あれ? そういえばプリムさんはどこだろ? ティアラ様の入室と同時に姿が見えないような? と思って気配を手繰ってみると...。
「ふむふむ...ヒーラードレスの下はブルマ(ドロワタイプ)ですか...」
「きゃあ!?」
 私の後ろに屈んで、スカートを捲られていた!
「プリム! アンタいつの間に!?」
 うそ!? 私が後ろを取られた!?
「ちっくしょー! 見た目聖女な清楚系ヒーラー、でも下着はガーター吊りのレースというギャップエロを期待したのに! ブルマかぁ...」
「え...あの...プリムさん?」
「勝手に盛り上がって勝手に絶望してんじゃないわよ、てか私の姫にセクハラすんな」
 さっきまでと様子のまるで違うプリムさんに私は言葉も出ない。
「残念な結果でしたが目的は果たしたので改めて自己紹介致しましょう!」
 そして落ち込んでたと思ったら、元気を取り戻して自己紹介を始める。
「私こそが、姫様付きのセクハラメイド、プリムです!」
「それだと私がセクハラさせてるみたいでしょーが!」
「あ、ちなみにカチューシャ様のホントの世話役はそちらのボンネットでっす、失礼しました!」
「どうやら先に来て私のフリをしてたようですね」
 あぁなるほど...そう言う人なのね...。
「プリム! カチューシャを困らすんじゃないわよ!」
「だって昨日非番で姫様がプロポーズしたって美少女見られなかったんですもん、ここは朝イチでお顔と下着を確認しないと!」
「下着は確認しなくていい!」
 なんか、この王族にしてこの従者ありって感じだなぁ...。ティアラ様は比較的まともそうだけれど。
「同僚がお騒がせしました。滞在中カチューシャ様の身の周りのお世話をさせて頂くボンネットです、よろしくお願いします」
「あ...はい、よろしくお願いします...」
 さっきのプリムさんのようにうやうやしく挨拶されるボンネットさんはまさにメイドの鑑といった具合で。
「お世話と言ってもカチューシャ様は冒険者であられるのでぶっちゃけ私やることありませんね。着替えの手伝いはおろか、ベッドシーツの取り替えも...なんなら床で寝る方が落ち着くのでは?」
「そうですけど...」
 冒険者事情に詳しいのはありがたいんだけど「私仕事しなくていいよね?」みたいに言ってない?
「なんか...ウチのメイドこんなのばっかりでごめん...」
「あはは...個性的な従者さんたちだね...」
 ティアラ様がまともなのは従者がこんなのだからなのかもしれない...。


 その後朝食は断るつもりだったけどすでに用意されてたんじゃもったいないので頂いて、私はすぐに冒険者ギルドに向かった。
「もーしわけございませんでしたぁ!」
 王宮を抜けて王城のホールに辿り着くと昨日のメイド長さんが床に突っ伏しながら凄い剣幕で女王様に謝罪していた。隣にいるのが王妃様かな?
「このキャペリン、腹掻っ捌いてお詫びを致しますう!」
「待て待て待て、怒るために呼んだんじゃない、お前にいなくなられると私も困る」
「今回の件は抜き打ちの実力テストと言うことにしましたから、アナタへの処罰はありませんよ」
「そもそもが私の差し入れが原因だしな...」
 女王様、自分も伸されたのに寛大な人だなあ。メイド長さんも本来はとても真面目な人なんだろう、私が出ていくと気を遣わせそうだからこっそり抜けよう。
 そうして冒険者ギルドに一人でやってきたんだけど...。
「ティアラ様、付いてこられるんですね...」
「そりゃカチューシャの心を射止めるからには一緒に行動しないと!」
「姫様普段から冒険者の真似事してますけどね」
 冒険者ギルドまでティアラ様とプリムさんが付いてきていた。割と堂々と。
「仕事するなら私たちとパーティー組みましょ! プリムは変態だけどメイドたちの中では強い方だからさ、昨日のキャペリン程じゃないけど」
「そういえば昨日は母の暴走を止めて頂いたそうで! ありがとうございます!」
「メイド長さんの娘さんなんだ?」
「昨日はあんなだったけどホントは凄い真面目な人なのよ、それの娘がどう言うわけかコレなのよねぇ...、遺伝子バグってんじゃないかしら」
「プリムさんは養子じゃないんだ?」
 この国はレズビアンが多くて王城勤務ともなるとほぼ全員がそうだとか。だから子供は必然的に養子になると聞いてるんだけど。
「母は元々他の国の王宮勤務の教官で、私を産んだ頃に父を戦争で亡くしまして、女手一つで育てるのに当時の国の福利厚生が良く無かったところを女王様に引き抜かれたそうです」
「ウチの国なら王宮内で娘の面倒を見ながら働けるよ、って引き抜いたんだって」
 それはたしかに行き過ぎてるくらいな引き抜条件だと思う。
「だからプリムは私が引き取られる前よりずっと先に王宮にいたのよねー」
「物心ついた頃から王宮にいましたから、姫様が貰われたときは友達が増えて嬉しかったですねー」
「主従にしては距離が近いなって思ったけど、二人は幼馴染なんだね」
「そうね、主従だけど親友よ」
「ありがたいお言葉です!」
 主従以上に二人は強い友情で結ばれてるのが、なんだかいいなぁって。
「いいなぁ...、私はずっと冒険者してるから...」
 幼馴染なんているわけもなく、同年代の友達すらいないのは、改めて寂しいように思える...。
「じゃあさ! 私たちはまずは友達から始めようよ!」
「え?」
 ティアラ様が私の両手を取って、満面の笑みを向ける。
「カチューシャはノーマルだからまだ女の子を好きになれないかもしれないけど、同性の友達ならいいでしょ?」
「でもティアラ様は王女だし...」
 あとホントは同性じゃないんだけど...。
「そんなの気にしないでいいから!」
「セクハラしてくる従者が友人なくらいですからね!」
 それはホントそう思う。
「私はいいけど、次カチューシャにやったらぶっ飛ばすから」
「例え警告されてもこの本能の衝動には抗えnあぴゃー!?」
 言葉が終わるより先にティアラ様の放った魔法がプリムさんを吹き飛ばした。
「まだ何もやってないじゃないですか! 先払いでぶっ飛ばさないで下さいよ!」
「うっさい! 少しは反省しなさい!」
「あははは!」
 そんな二人の様子があまりにもおかしくって、大声で笑ってしまう。
「うん、欲しいな...、友達」
 笑いと一緒に出た涙を拭きながら、私は正直な気持ちを打ち明ける。
「うん! よろしくねカチューシャ!」
「よろしく、ティアラ!」
 いつまでこの国にいるか分からないけど、この国に居たい理由が一つできたのだった。


「というわけでヅラ! お仕事ちょーだい!」
「殿下、どいうわけかわかりません」
 カチューシャと友達になって、そのまま冒険者ギルドに行ったのだけど案の定3人で受けるような仕事はなかった。一番大変そうなので猫探しとか...。
「ので! 騎士団に仕事を貰いに来たのよ!」
「いつもと同じ経緯と言うことですか...」
 むしろ冒険者ギルドの仕事は簡単過ぎて、モンスター討伐メインのこっちから仕事貰うことの方が多いのよね、私。
「なんかごめんなさい...」
「仕事を手伝って頂けるのでこちらとしてもありがたいのですが...」
「特に大きめの討伐や掃討、モンスターの発見報告は上がってないわねぇ」
 ヅラがチラっとバレッタの方を見ると、バレッタは書類をパラパラとめくって私好みの仕事を探してくれてる。でもやっぱり、こっちにもやりがいのあるような仕事はないみたいね。
「そんな都合のいい事はないかー」
 でもなぁ、カチューシャとの仲を深めるならある程度はやり甲斐ある内容じゃないとなー。
「難しい仕事ではないが、王都北東周辺のパトロールを頼もうか、街道もなく周辺には古戦場と森くらいしかないから後回しにしがちでな」
「何もなくともピクニック感覚で仲良くなればいいんじゃない?」
「そう言った油断のしすぎは死亡フラグです!」
 まぁ、生粋の冒険者らしいカチューシャのその心持ちは大事なのだけど...ホントにピクニックで終ると思う。ウチの国の平和っぷり尋常じゃないから...。


「周辺にモンスターの気配は...全然無いね...」
 王都から出てすぐ街道を外れて北東の丘へ登ったところで、カチューシャがモンスターを探知し始める。
「モンスターの探知魔法まで使えるの?」
「あれって高位魔術ですよね、カチューシャ様ヒーラーの魔法以外も修めているんですね」
 モンスターの魔力を広範囲に感知する魔法なのだけど、些細な動植物にまで反応してそれが多重に重なって判別がめちゃくちゃ難しい、らしい。
「お母さんと組むベテランさんに色々教えてもらったの。特にモンスターとかの探知は得意だよ」
 なんてこと無いふうに言ってるけど、カチューシャってホント凄い冒険者なんだなあと思い知らされる。昨日も自分で魔法作ってたし。
「ウチの国は魔法技術でも有名なのに、それすらカチューシャに敵う気がしないなぁ...」
「姫様実戦主義だって座学の魔法勉強サボりがちですしね」
「私は必要だから覚えただけだし...、それに武器で戦うのは苦手だよ」
 ちょっと自信を無くしてるとカチューシャがフォローしてくれる。あぁホント良い子だ嫁に欲しい。
「私も武器で戦うのは苦手ですよ!」
「アンタは魔術格闘マジックアーツでしょうが」
 ロイヤル・ガードも兼任しているメイドたちは武器が不要なこのスタイルを確立させている。あと男手がないから魔法の肉体強化で力仕事を行うためという事情もある。
「みんな得手不得手があるんだから、比べることなんてないよ」
「そうなんだけどさ...」
 ヅラが規格外の強さなのは知ってたけど、ベルメットさんやカチューシャのような本物を見せられて自分の実力不足を再確認してしまったのよね...。
「昨日の盾も、頼もしかったよ」
「おうふっ!」
 ニコッと笑ってそんなフォロー...
 浄化されてしまう!
「唐突なガー不やめて下さい、死んでしまいます」
 なんか流れ弾(?)で勝手に悶え死んでるプリムは置いといて...
 いやもう、一目惚れだったけど何度でも惚れ直せるわ、マジ好きめっちゃ好き!
「ありがと! なんかめっちゃ元気出てきた!」
「うん、頑張ろう」
「流石一流ヒーラー、心の癒しもお手の物ですね!」
「プリムさんはなんで倒れてるの?」
「あと浄化もね...」
 アンタはいつまで尊み食らって死んでんの、私に向けられた笑顔だぞ返せ。

 丘を越えて少し歩いたところでようやくモンスターに遭遇した。
 と言っても接近もモンスターの規模もカチューシャが教えてくれてたから特に驚きもないのだけど、むしろ距離も数もぴたりと当てたカチューシャに驚きだわ。
「植物タイプのモンスターですね!」
「期待はしてなかったけど、雑魚の部類ね」
 見つかったモンスターは宿り木から変化?したと思われる蔓の怪物が数匹。獲物を蔓でふん縛って体力を吸うくらいのもので、攻撃はツタを振り回すくらい、万が一捕まっても体力を吸うのにかなりの時間がかかるから逃げ出すチャンスも多い、総じて危険度の低い雑魚。
「さぁ! 姫様、カチューシャ様、婚約エンゲージ! 婚約!」
「いや接敵エンゲージ...」
 この程度なら私一人で平気ね、ようやくカチューシャに良いところを見せられそう!
「私に任せて!」
 剣を抜いてモンスターの群れに突撃エンゲージ、私に向けられたツタを切り裂いて本体の蔓を両断。これを2回、残りを炎の魔法で一掃。
「どうよ!」
 そして決めポーズ! 残心しろって? たまにはいいでしょ!挿絵AIで作った挿絵
「ティアラ、残心忘れてる。減点」
 ってカチューシャこいうことには厳しいね!?
「姫様もっと激しく動いて、パンチラしてませんよ。減点」
「アンタには聞いてない!」
 しかもなによその採点、カチューシャがノーマルじゃないなら私だってパンチラで気を引きたいわ!
「ギリギリ見えないのも趣があっていいと思うよ?」
 あれぇ!? カチューシャパンチラに興味あった!? しまくった方がいい!?
「ほぅ、カチューシャ様いける口ですか? 如何ですか『スカートの長さとパンチラの価値は比例する』説に付いて議論しませんか!」
 厄介オタクが同好の士見つけたみたいになっとる。
「やめろ私の姫をそっち方向へ誘うな」
「ごめん、その話はちょっとわからないかも...」
 よかった、カチューシャはやっぱりピュアピュアだった。まぁエロいカチューシャも、アリですが?
「まず第一にスカートというヒラヒラしている危うい防壁、コレが...」
「勝手に語りだしたけど気にしないで、ほっとけば満足して終わるから」
「あ、うん」
「それと! さっきは張り切りすぎてカッコつけちゃっただけで! 普段はちゃんと残心してるからね!」
「大丈夫だよ、わかってるから。昨日はちゃんとしてたもんね」
 やった! 昨日のちゃんと見ててくれてた! よくやった昨日の私!
「でもどんなに弱いモンスターでも不意打ちは危険だから、残心はちゃんとしようね?」
 はいママ、絶対に忘れません!
「そんな危うい防壁だからこそ期待と浪漫を煽るのですよ!」
「近くに他のモンスターはいない?」
「うん、目立ったところにいるのはいないかな?」
「狩りすぎても良くないんだっけ?」
「弱いのは他のモンスターの餌になるからね、ある程度残さないと人里の方に餌を求めて降りてきちゃうの」
「スカートに守られてないパンツなんて「守る価値無し」と同義...」
「そうなる前に狩ればいいんじゃないの?」
「人里に降りてこない、他のモンスターを捕食する普段は無害なモンスターまで狩ることはないと思うよ?」
「カチューシャは優しいね」
「過ぎたるは及ばざるが如し、長すぎて「見えるかも...」の期待を煽れないのも...」
「冒険者の私は、ずっとその土地の人を守れるわけじゃないから、効率的な狩り方をしてるだけだよ」
「それはそれで、その土地の人たちの事を考えてる優しさじゃないかな」
「えへへ...ありがとう...」
 私に褒められて照れてるカチューシャ可愛い...
「もったいぶられてばかりではやはりお腹が空きます、価値の高い...」
 せっかくカチューシャと良いふいんき(何故か変換できる)なのにプリムマジうるせぇ!
「このまま東に行って古戦場の方を周ろうか」
「あそこの森はいいの?」
カチューシャの指の先には、こののどかな丘には異質な、ただならぬ雰囲気をした森があった。
「あー、あそこの森は...」
 知らずにカチューシャが踏み込むこともないと思うけど、一応説明しておくかな。
「その点、姫様とカチューシャ様のスカート丈は実に理想的で...」


 ティアラは少しためらってから話してくれた。
「あそこの森は、ライカンの里があるのよ」
「ライカン!?」
 ”人狼ライカン“、狼のような耳と尾、強靭な爪を持ち、男しか生まれない種、かつてはエルフや人間と同じような種であったが、かつてこの地を蹂躙した魔王に組みし、魔族となった。
 魔族となったライカンの魔力は強大で、その性質は獰猛残虐、その四肢は超高速で大地を駆け、魔力を帯びた爪は瞬く間にあらゆるモノを引き裂いた。
 魔王討伐により息を潜めたが、種の特徴である耳・尾・爪を完全に隠すことができて通常の人間と見分けがつかないため、人間社会に潜む人狼に人々は恐れ続けている。
 これが、私の知るライカンの知識。
 そんなライカンの里が平和なこの国の奥にあるなんて...。
「ライカンの里が近くにあって、怖くないの?」
「森のかなりの奥の方だし、里から出てこないからね。こちらから刺激するようなこともないし、平和そのものよ」
「でも、ライカンって男しか生まれないから、種を残すのに他の種の女性が必要だよね? 国の女の人が攫われてたりしないの?」
「それは大丈夫かな、そうなってたらヅラのやつが黙ってるワケないし」
 ライカンと言えば私の知る知識のように、怖がられるものだけど、ティアラからはそういった様子は感じられなかった。
「公にはしてないけど、王都の住民はみんな知ってるから、カチューシャも近付かないようにね」
「うん」
 ティアラから感じないライカンへの恐怖心に、私は少しの不思議と、期待を持つのだった...。
「私は純粋に、パンチラを愛しているんだぁぁあ!」
 あとなんか、ずっと語ってたプリムさんの話もようやく終わったらしい。


「古戦場跡...ホントに何も無いね...」
 丘から東へ向かい、何も無い平原に辿り着いた。大昔の戦争の影響でここだけは大地が死んでいるらしく、動植物もモンスターも殆どいない。
 一応、その頃のであると思われるゴースト系のモンスターがいるものの、長い年月に倒され過ぎてスッカリ念も弱まり雑魚モンスターと変わらなくなっている。
「ここは人も来ないしあんまり周る必要もないかな」
「見える範囲にもなにもいなさそうですね」
 ゴースト系は倒してもどうせまた出てくるし、これ以上弱らせる必要もないでしょ。
「モンスターの反応はないけど、猫の痕跡がする...」
「猫?」
「もしや冒険者ギルドで張り出されてた迷子の猫探しですか?」
「うん、他の仕事のついでに探せないかと受けてきたの」
 そう言ってカチューシャは預かったであろう猫の首輪を顔に当てる。
「モンスターだけでなく、猫の居場所までわかるの?!」
「言ったでしょ、探知は得意だから」
 カチューシャは少し誇らしげにウィンクする。飼い猫なんてか弱い魔力探知できるものなの? カチューシャてホントに凄いんだなあ。
「街の外が平和過ぎて、こんなとこまで来ちゃったのかな」
「好奇心猫をも殺すわねぇ」
「ティアラ! 縁起でもない!」
「ご、ごめん...」
 痕跡を追うカチューシャの後ろで適当なことをボヤいたら怒られちゃった...。
 カチューシャはついでって言ってたけど、きっと飼い主のことを思って本気で仕事を受けたんだろうな...。
 いつか会った冒険者が言っていた
『冒険者の仕事に貴賤はない』
私はやり甲斐のない仕事だと無碍にしたけど、どんな内容であれそれは依頼した人の願いがあって、冒険者はそれを全力で解決する。
 特に迷子の猫なんて、飼い主はよっぽど心配してるに違いないのに、私は...。
「私のやってることが、冒険者の“真似事”って言われる訳が分かった気がする...」
「ん、仕事を選り好みしてるようじゃ、冒険者としては二流だって私も言われたよ」
 カチューシャは私の気持を察してくれたらしく、クスクス笑って自分もそうだったと慰めてくれる。
「凄い、姫様が人として成長していく」
 アンタも人として成長して、具体的には変態治して。
「ところでカチューシャ、どんどん進んでるけど猫の痕跡とモンスターの探知って両方できるの?」
「できるから大丈夫だよ」
 猫の痕跡を辿るのにずいぶん集中してるらしいから念の為に聞いてみたけど、両立できるらしい。本人はそう言ってるんだけど...
「いやでも、近くにモンスターいても無警戒に過ぎてるように見えたから...」
「うん? 周りにモンスターなんていないよ?」
 え? まさかチラチラ見えてるゴーストに気付いてない?
「いや、今もそこに...」
「え?」
 と、近付きすぎてこちらに気付いたゴーストがカチューシャの前に飛び出して威嚇する様に体を広げた。
「ひゃ...ひあーーー!!!??」
「カ、カチューシャ!?」
 なんてことは無い低級ゴーストの威嚇にカチューシャは悲鳴を上げて尻餅を付き、パニックになって杖をブンブン振り回す...けど、ゴーストに物理攻撃なんて当たるわけもなく。
「やー! やー!? 来ないでー!!」
「カチューシャ落ち着いて! ゴーストに物理効かないから!」
「手遅れですけどそんなに騒ぐと他のゴーストも寄ってきますよー」
 そしてここまで無視して通り過ぎた他のゴーストたちもこちらに気がついて寄ってくる。
「モンスターのいるところで騒がないって冒険者の常識じゃないの!?」
「イヤだー! 食べないでー! 私美味しくないからー!」
 ダメだ聞こえてない...でもパニックになって幼児退行してるカチューシャめっちゃ可愛い、低級ゴーストの方も久しぶりに怖がってくれる相手に出会えたからか襲うってか小躍りしてる...。
「もうちょっと見てたいけど...、プリム! 片付けるよ!」
攻撃開始エンゲージ!」
「あ、猫が居るかもしれないからあんまり派手な技は無しね」
 ようやく出番とやる気を出してるプリムに釘を差しつつ、私たちは周りに気をつけながらよってくるゴーストを片付けた。

「ごめんなさい...ごめんなさい...。私お化けが本当にダメで...」
 ゴーストを片付けると落ち着いたカチューシャがグズりながら謝罪してくれる。
 うーん、泣き顔と照れ顔で、めっちゃい!
「こっちこそごめんね、まさかゴースト系は探知出来ないなんて知らなくって」
「でもゴースト系にもモンスター特有の魔力があるはずですよね? ゴースト系だけ探知出来ないなんて聞いたことありませんが」
「私の探知はちょっと特殊で...」
 猫さえ探知できるほど繊細なのに? うーん、カチューシャって不思議だ。
「それにしてもカチューシャがあんなに取り乱すなんてなー」
「うぅ...先輩風吹かせた直後にこんな失態...穴があったら入りたい...」
 私も一緒に入りたい。恥ずかしがってるカチューシャ可愛すぎる。
「ヒーラーならアンデッドやゴーストなんてむしろ特効のイメージあるんだけど」
 何故かヒーラーの魔法にその手の特効魔法あるよね?
「アンデッドは平気なんだけど...お化けだけはダメで...」
「誰にでも苦手な物一つくらいありますよ! 私は美少女のパンチラが怖いです!」
「あんまり茶化すともっと怖い王女が出てくるわよ...」
「空気を和ますジョーダンですってば!」
 にしてもお化けて、あぁもう、ホント可愛い。


「落ち着いた事だしゴーストが復活する前に移動しよっか、カチューシャ猫の痕跡はまだ追える?」
「さっきの戦闘で少し散ったかもしれないけど、大丈夫だと思う」
 猫の痕跡を追うのに集中し過ぎて近くにいるお化けにも気が付かないなんて...、私すっごいカッコ悪い...。
 とにかく早くここを離れたい、お化けの念が復活するまでは一日くらいかかるからその心配はないはずだけど。
「あれ...?」
 立ち上がろうとして、腰に力が入らない...。え、これ、まさか...。
「カチューシャ?」
「その...腰が抜けちゃったみたい...」
 いやー! もー! ここに来て恥の上塗り! 冒険者が腰を抜かすなんて!
「あー...」
ほら呆れられてる! 腰を抜かして動けないなんて経験ないわーって顔してる!
「立た上がれるまでゆっくりする?」
「やだ! 早くここから離れたい...」
 ここにいたら別のゴーストがまた現れるかもしれない、もう情けなくてもいいから涙目で訴える。
「じゃあ、私がおぶってこっか。プリムは私を護衛して」
「エンゲージ!」
「気に入ったのソレ?」
 私の情けない訴えにティアラが背中を差し出してくれるけど...
 あ、いや...、背中に担がれるのはマズイ...。しかも、腰に力が入らない時に...、男の子特有のアレが...当たりかねない。

「えっと...背中じゃなく前に担いで欲しいかも...です...」
 え?
 カチューシャに背中を差し出したら消え入りそうな声で、恥ずかしさを押し殺してお願いされた。
「前に担ぐって、それは、つまり...」
「お...お姫様抱っこで...お願いします...」
 我が世の春がキターーーー!!
「我が世の春がキターーーー!!」
「落ち着いてください姫様、ダブってます」
 まさかカチューシャからお姫様抱っこをお願いされるなんて!
「え、でもなんで!?」
 いや疑問に思うな私、ここでやめられたらどうする。
「そりゃ姫様、背負われたら困るからじゃないですかね」
「背負われたら困る事って...」
 腰を抜かしたカチューシャを凝視して何が困るんだろうと考えて見ると...。
「「あっ」」
 私とカチューシャ、同時に思い当たったのか声が重なる。
「違うから! 漏...そんなんじゃないからぁ!!」
「大丈夫大丈夫! 仮にそうだとしても全然OKだし!」
「ホントに違うのーー!」
 その後真っ赤になったカチューシャを抱き上げたものの、特にそう言う臭いはしなかったので、そういう事ではなかったらしい、多分。

 腰を抜かしたカチューシャを担いで猫の探索を再開し、カチューシャの案内で無事見つけることができた。
 そして結局、カチューシャの腰は抜けままだったので今日もカチューシャは王宮へお持ち帰りされたのでした。
「今日は厄日だよぉ...」
「いやー! 良い日だったなー!」
 カチューシャと友達になれて、可愛いところや意外な一面が沢山見れて、私たちの仲が急接近出来た気がする!挿絵AIで作った挿絵


オマケ
『スカート丈とパンチラの価値は比例する』全文
Byプリム

『まず第一にスカートというヒラヒラしている危うい防壁、コレが要
隠してるのになんでそんなヒラヒラしてるんだ! 下なんてノーガードじゃないか! 守る気あんのか! そんな危うい防壁だからこそ期待と浪漫を煽るのですよ! 守る価値があるんですよ! だからスカートに守られてないパンツなんて「守る価値無し」と同義、囚われてない道中に放り出されたヒロインみたいなものですよ、そこに浪漫が、物語がない! モロ見えなんてもはやただの在庫処分ですよ!
失礼、少々脱線しました。つまり、パンツは長いスカートで守られてるほど価値が高い訳です。パンチラの浪漫があるのですよ。
勿論、過ぎたるは及ばざるが如し、長すぎて「見えるかも...」の期待を煽れないのも論外ですが、スカートの材質次第ではブワッと捲れる訳ですよ、「見えないのか...」と諦めさせておいての特大の不意打ちパンチラ! この物語はもはや芸術ですよ!
とはいえ、もったいぶられてばかりではやはりお腹が空きます、価値の高いパンチラばかりのグルメではなく、価値のそこそこのスカート丈が短いパンチラも適度に摂取したいところですね
その点、姫様とカチューシャ様のスカート丈は実に理想的です! 滅多に見えないカチューシャ様と適度に見せてくれる姫様のパーフェクトタッグ!
まぁカチューシャ様の場合下着がブルマ(ドロワタイプ)なのでパンチラというか、足ももチラの魅力なのですが、コレはパンチラとは別ジャンル、語るのは次の機会にしましょう。
えぇだからこそ! カチューシャ様にはエッチな下着を、履いてほしい! この思いを、ぶつけさせて欲しい!
私は純粋に、パンチラを愛しているんだぁぁあ!』
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祝福の贈り物
百合の国のプリンセス♂作者:万能ねぎトロ
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