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勝利の女神よキスをして!

のっけから前回との温度差が酷い
 私はおっぱいが大好きだ。
 女性の胸が、乳房が、バストが、おっぱいが、大好きなのだ。
 サイズは大きいのがいい、揉み応えのあるのが望ましい。巨乳爆乳が好みだ。
 故に私は旅をした。
 あらゆるおっぱいを揉み、完璧なおっぱいを自らの手で再現しようと。
 おっぱいを愛する私の愛の結晶を、この世界に遺そうと。
 旅をしながらあらゆるおっぱいを揉むと同時に、私はあらゆる素材も研究した。
 時に金で、時に依頼の報酬に、時に土下座して、時に偶然を装い、時に制裁されながらも、私は多くのおっぱいを揉んだ。
 この手で揉んだおっぱいの感触、その全てを記憶と記録にしながら、それを再現する素材を研究した。
 そして三十年の月日の旅と研究の末に、究極のおっぱいを完成させたのだ。
 四十種類のスライムを配合し、色素も形も完璧。
 専用のエキスを使うことによりサイズの変更にも対応、並〜爆まで様々な好みに合わせられる。
 また、色も肌に合わせて着色・脱色が可能であり、見た目にも完璧に擬態。
 更には電気スライムの微弱な刺激を利用して“触れられた感覚"までも着用者に与える。
 服の上からはもちろん、脱いだとしても、触られたとしてもニセモノだとバレることはない...
 .........
 そう、ニセモノなのだ。
 研究を終えた私は感動と同時に虚しさを覚えた。
 どれだけ完璧な、究極なおっぱいを作ったところで、これはニセモノなのだ。
 素材が特殊故に量産は困難だが、少なからず、世のおっぱいに悩む女たちの助けになったもしれない
 しかし、ニセモノのおっぱいで克服したコンプレックスで本当にいいのだろうか?
 仮に自分のおっぱいを好きになるものが現れ、結ばれたとして、女はニセモノのおっぱいである事を抱え続けなければならない。
 それは本当に幸福なのだろうか?
 そして、ニセモノのおっぱいで男を騙すことは、私と同じおっぱいを愛する者たちへの冒涜ではないのだろうか?
 私は、巨乳が好きだ。
 だが、本来おっぱいに貴賤はない。
 おっぱいを愛するならば、おっぱいだけを愛してはならない。
 その女と、その女のおっぱいを愛するべきなのだ。
 私は間違っていた。
 旅の中で様々なおっぱいに触れ、女に出会い、私と共に歩んでくれる伴侶に出会えたことで、気が付いたのだ。
 既に私はおっぱいではなく、妻を愛していた事に。
 私は、完成した究極のおっぱいを封印し、墓まで持っていこうと誓った。これは人の世に出すべきではない、と...。
 私の30年は妻と出会えたことで、報われているのだ。決して無駄ではなかったと、心に言い聞かせて...。
 そして究極のおっぱいが完成してから数年経ったある日のこと、とある冒険者が私の噂を聞きつけてやってきた。
 おっぱいを持たぬ、“ニセモノ"のために、私の究極の“ニセモノ"を譲って欲しい、と。
 私の究極はニセモノでしかない、だが、だからこそ同じく"ニセモノ“に身につけられることで、その役割を果たすので無いのだろうか?
 ニセモノのおっぱいは、ニセモノの体に相応しい。私はおっぱいの封印を解き、冒険者に手入れと扱い方を纏めた書と共に譲った。
 そして、ニセモノの笑顔を見た時、私の30年の労力が、本当に報われた気がしたのだ...。

今、その究極のおっぱいは、何処にあるのか?
それは、ニセモノが本物であり続けるために、話すことはできない。

「ねぇプリム、カチューシャってさ...」
「えぇ、私もお触りにはまだ成功していませんが、服の上からでもわかる...あれはかなりの...」
「「美乳に違いない」」
「二人とも聞こえてるし、あんまり人の胸を凝視しないで欲しいんだけど...」
 それは今、ここにある。


百合の国のプリンセス♂ #4勝利の女神よキスをして!挿絵AIで作った挿絵


「カチューシャ! 好きなものか、欲しいもの教えて!!」
「唐突だね...」
 ライスシャワーが帰ってきた三日後の朝、私はカチューシャの欲しいものを本人に直接聞くことにした。
 よくよく考えたら私がカチューシャを大好きなのは公然の事実なのだから、好感度上げるのにプレゼントするならコソコソする必要ないじゃん!
「だってライスシャワーまで取り返してくれて、私ばっかりカチューシャの事を好きにさせられてズルいじゃん! お礼させてよ! 私にもカチューシャの喜ぶ贈り物させてよ!」
「元々あの子のことは私なりのお礼のつもりだからお礼なんていいんだけど...。でもティアラのそういう真っ直ぐなところ好きだよ」
「ぐわぁー! またそういう事を...好きになる! 好きにさせられるぅ!」
 友達としてだろうけど! 人としてだろうけど! 何その、相手を勘違いさせちゃうムーブ!
「あぁ、今日も推しカプが仲良くて尊い...」
 プリムは人前で悶えんな。
「いいから欲しいもの言ってよ〜」
「カチューシャ様の好きなものと言えば、やはりお肉でしょう!」
「うん、お肉かなあ」
「カチューシャはもっと可愛いもの欲しがって...」
 それは知ってるんだけどさ...、お肉はなんか、プレゼントとしてヤじゃん...。
 てかカチューシャも欲しいもの聞かれてお肉は乙女としてどうなの。そういうギャップもステキだけれど...。
「可愛いもの...。それじゃあ...ウサギとか?」
「ウサギ! カチューシャウサギ好きなんだ!?」
 おぉ!? いい感じの好きなものあるじゃんん! たしかにカチューシャとウサギの組み合わせはめっちゃ絵になりそう!
「うん、一番好きかなぁ」
「へぇー、どういう子? 更に拘りとかある!?」
 どういう意味で一番かはさておき。ウサギなら部屋で飼ってあげられる、私が飼って、カチューシャが滞在中預かるって事にすれば贈り物としても重くもないはず。
「拘り?」
「毛並みとか、色とか! 性格とか!」
 せっかくならより好みの子を飼ってあげたいよね。なんなら多頭飼いでもいいし。
「そういうとこに拘りはないかな? 強いて言えば子兎が好きだけど...」
「子兎かー! 小さくて...」
 小さくて可愛いよね、と続けようとすると。
「小さくて物足りないから、プリプリ太った大きな子かなぁ」
「ん...?」
 小さくて可愛い、でなく、物足りない?
「姫様、姫様」
 っと、疑問を浮かべてるとプリムが耳打ちしてくる。
「野ウサギは、冒険者にとって貴重なタンパク質です...」
「って、食べるの!?」
「うん? ティアラは食べたことない? 王族は豚とか牛とか食べ放題だし。食べる機会ないのかな」
 もしかしてずっとお肉の話してたの!?
「過去にディナーに出てきたことは一応あるけど...」
 子供の頃に出されたきりで味はあんまり覚えてない。たしか私が大泣きしてその後は出さなくなったんだっけ...。
「食べるのに、可愛いとは思うんだ?」
 可哀想とはならないのかな?
「見た目グロくて美味しいより、見た目可愛くて美味しい方がいいと思うけど」
「それはーうんー...どうだろ」
同意出来るような出来ないような...。
 価値観が冒険者に染まってるカチューシャの事を、もっと理解しなきゃなーと思う一件なのだった。


 朝からテンション高めなティアラを嗜めつつ、ロリエルちゃんに顔見せの日課を経て今日も今日とて三人で冒険者ギルドにやってきたものの。
「ごめんねー。今日は一つも依頼入ってないのー」
 長いお下げの金髪に真面目そうな眼鏡のお姉さんはこのギルドの受付のクリップさん...ていうかこのギルドで働いてるのこの人しか見たことないんだけど? いつ休んでるんだろ...。
「そういう日もありますよね、仕事がないのは良いことですし」
「そう言ってくれるのカチューシャさんだけだわ〜、他の皆さんはじゃあギルドから仕事出せってしつこくって〜」
 冒険者の仕事なんて大体が困りごとだから、無い方がいいのだけれど。仕事がないと食いっぱぐれちゃうものね...。
「今日は騎士団の方で仕事貰おっか」
「そうだね」
「いつものパターンですな!」
 無いものは仕方ないのでティアラの言うように騎士団へ行くことにすると...
「残念ながら、本日は騎士団はお休みなのだよ!」
 ギルドの入り口にバレッタさんが仁王立ちしていた。
「防衛組織にお休みなんてあるの...?」
 この国ホント大丈夫?
「団員が二人しかいないからね! 団長の不在、即ち騎士団のお休みなのだよ!」
「ヅラ居なくても事務のバレッタはお仕事あるでしょ」
「鬼の居ぬ間に洗濯というやつだよ!」
 要するにウィッグさん居なければ堂々とサボれるから自分もお休みと...。
 ところでギルドに何しにきたんだろ。
「というわけで、クリップ〜イチャつこ〜! 仕事ないんでしょ〜!」
「仕事がなくても仕事中です〜! ってバレッタ人前〜!」
 と思ったらクリップさん目当てだったらしく、カウンターを乗り越えてクリップさんに抱き着いてしまった。
「やれやれ、人目を憚らず卑しい人ですね」
「プリムがいう?」
 プリムは一人で悶えるタイプだけど。
「どうせ今日は闘技場開いてるから誰もこないって、仕事場でってのも乙でしょ〜」
「ダメ...、ダメだってバレッタ...ひゃ!」
 クリップさんの弱い抵抗も虚しく、バレッタさんに押し倒されてカウンターの中に消えてしまう。
「あっあっ...あーっ!」
 ちょっ!
「わー!」
 カウンターの裏でどうなってるのか、クリップさんの艶めかしい悲鳴が聞こえてきて、私は一目散に逃げ出した。
「あっ、カチューシャ!?」
「初心な反応、いいですねぇ!」


「まさかホントに始めるなんて...」
 ギルドの外に出て真っ赤になってそうな顔を鎮める。
「働き詰めのカップルですから、欲求不満なのでしょうね〜」
「クリップの方も殆ど抵抗してないしね」
「だからってあんなとこで、私たちがいるのに始めるかな...」
「人がいる方が興奮する的なヤツですよ!」
「的なヤツに巻き込まれたこっちの方が恥ずかしいよ...」
 明日クリップさんの顔ちゃんと見られるかなぁ...。
「ギルドも騎士団もダメとなると...今日は闘技場開いてるみたいだしそっち行ってみようか」
「バレッタさんが言ってたのだよね? この都市に闘技場なんてあったんだね」
 女性の多い国だからそういうのは無いものと思ってたけど、意外とガス抜きとかになるのかな?
「私が貰われる前くらいに王母様が作らせたんだって」
「クラン女王が?」
 あんまりそういうのが好きそうなイメージない人だけど、何か目的があるのかな。
「ちょっと意外だよね。冒険者とかを呼び込む目的があるらしいんだけど...」
 結構長く冒険者やってるけどこの国の闘技場が熱い!みたいに聞いたことはないような? 私やお母さんが興味無いからスルーしてただけかもだけど。
「取り敢えず観に行こっか」
「結構面白いものが見られますよ!」
「うん」
 名物の剣闘士でもいるのかな? ヒーラーの私じゃ参加する事はないだろうけど、二人は見せたいものがあるみたいだし、行く事にした。


「今日こそは彼女を倒す者が現れるのか!? 我らが最強! フルフェースの登場だー!!」
 闘技場につくと丁度剣闘士の顔見せをさせてたみたいで、コロッセオの中央に一人紹介されている人がいた。
「アレがこの闘技場の目玉の剣闘士、フルフェース。てか闘技場所属の剣闘士はあの人だけ」
 フルフェイスの兜に銀の女性モノの軽鎧、顔立ちは分からないけどスラッとした印象の人だった。
「常勝無敗で闘技場創立から一度も"試合で“負けたことが無し。まさに最強の、剣闘士」
「鎧を着込んでいますが、戦闘スタイルは典型的な魔法剣士ですねー」
 そんな強い人がウィッグさん以外にもこの国に居たんだ! それは見てみたいかも!
「ものすごい強い魔法剣士だなんて、まるでウィッグさんみた...」
「ていうかぶっちゃけヅラよね」
「まず間違いないですね」
「えぇぇ!?」
 ウィッグさんみたいじゃなくて、ウィッグさんなの!?
「イヤでも女性って!」
「この国じゃ女剣闘士の方が人気出るし、アイツのスタイルなら女鎧くらい余裕で着込めるでしょ」
「お顔隠さなくても、あの人のイケメンなら化粧で美女になれると思うんですけどねぇ」
 それはそう思うけど...。なんか他人事じゃなくて複雑だ...。
「フルフェイスでミステリーと、客の期待煽ってるんでしょ。今回こそは素顔が見られるかも!?っみたいな」
「仮面の下は美女がお約束ですものねー!」
 仮面じゃなくて兜だけど。
「えぇ...でもホントに...?」
 なんで騎士団長が女装(?)してまで剣闘士をしてるのかわからなくて私はまだ信じられない。
「だってさ」
 証拠を見せる、という風にティアラが観客席から身を乗り出し!
「ヅラー! 今日は棄権すんじゃないわよー!」
「Σ d(ー_ー )」挿絵AIで作った挿絵
 ティアラの呼び掛けに無表情(顔見えないけど)のサムズアップで応えてくれた。
「ね?」
 ウィッグさんもう少し正体隠して...。
「おーと! ティアラ様の煽りで今日はやる気のようだー! 遂に熱い決勝を観られるのかー!?」
 ティアラへのパフォーマンスになにか会場が盛り上がってる、王女の声援だからというわけでない見たい?
「棄権するなっていうのは?」
「アイツ強すぎるから、決勝戦は棄権すんのよ」
「あの人がいたんじゃ誰も優勝賞品を取れませんからねー」
「あぁ...たしかに...」
 勝ち目ないんじゃ賞品目当ての参加者呼び込めないものね。腕試しの挑戦者はいるだろうけど。
「さぁ彼女へ挑戦したい腕自慢はどんどんエントリーしてくれ! 賞品目当てなら別ブロックへのエントリーもアリだぞ!」
 主催も決勝での棄権を前提としてる流れらしい。
 ヒーラーの私はどの道参加は難しいけど、大体の必要な装備や道具は揃えてるから、余程の景品でないと惹かれないだろうなぁ。
「ちなみに今回の賞品はー...超高級魔法の寝袋!」
「魔法の...寝袋!?」


「カチューシャ?」
「地獄ような極寒も! 地獄のような猛暑も! コイツに包まれば適温で快適に眠れる超!スグレモノ! 更には臭いや魔力探知を遮断しモンスターからも見つかりにくくなり、もしもの時は飛び起きてそのままマントとして羽織って戦うことが可能だぁ! コイツがあれば、旅の快眠!全快!間違いなし!」
「魔法の...寝袋...」
 目の色が変わるってこいうことを言うんだろうなあ、カチューシャが見たこと無い笑顔を浮かべて賞品の説明に聞き入っている。
「エントリーってどこ!? ヒーラーでも参加できるかなぁ!?」
「え、エントリーするのぉ!?」
 観戦だけのつもりだったし、なによりヒーラーのカチューシャが参加するなんて思いもしなかった。だけれど賞品に目の色が変わってて...。
「ウィッグさんの居ない方のブロックなら決勝戦棄権して貰えて賞品手に入るんだよね!?」
「しかも決勝まで行く気でいるー!?」
 そりゃ賞品目当てならそうだろうけど!
「ヒーラーで参加とはなかなかのチャレンジャーですねカチューシャ様!」
「イヤ駄目だって! カチューシャが一人で戦うなんて!」
 いくら熟練のカチューシャでもヒーラー一人を闘技場なんかに放り込めないよ!
「だって! 魔法の寝袋だよ! なかなかお目にかかれ無いレアモノの更に高級品だよ!?」
「ダメだ目の色が変わってる...」
 やっぱりカチューシャは生粋の冒険者で、欲しいものは旅で重宝するものなんだなぁ...。
「私としましては、自己回復で痛みに耐えながら必死に戦いながらも嬲られて、あわよくばどんどん服が破れて肌が露わになってく姿を是非拝みt」
「プリムは黙って」
 そう言うのいいから。
「わかった! じゃあ私がエントリーする!」
「ティアラが?」
「カチューシャよりも経験は浅いかもしれないけど、単純な戦いなら魔法剣士の私の方が勝率は高いでしょ?」
 カチューシャにそんな危険な事させられないし、プリムがいうような光景なんて絶対大衆に見せたくない!
「カチューシャの欲しいものなら、カチューシャのために私が絶対手に入れて見せるから!」
「ティアラ...」
 こんな形でカチューシャの欲しいものが見つかるとは思わなかったけど、これならライスシャワーの事のお礼にもなる。
「それに、カチューシャにようやくカッコいいとこ、見せられるからね!」
 今日まで簡単な仕事ばかりで本気で戦うようなことも無かった。これは色んな意味でチャンスなのかもしれない。
「うん、わかった、お願い。でも無理はしないで死ぬ気で頑張って!」
「カチューシャ様、本音が漏れてます」
 どんだけ欲しいのよ...。
「わ...わかったわ...」
 そして、旅の貴重品を欲しがるということは、カチューシャが冒険者をやめる気が無いということで、少し悲しくなった...。


「ここでみんなに重大発表だ。なんとユリゾンリリィ第一王女、ティアラ様がエントリーなさったぞ!」
 オオオオオオ!
 まぁそりゃ、こうなるわよね...。観戦することはあっても参加することの無かった私のエントリーで闘技場は更に盛り上がりを見せた。
 まぁ私は賞品目当てのBブロック、ヅラがいるのはAブロックだから話題の二人がかち合うって事はないはずだけど。
 大丈夫、振れ幅はあるけど今まで観戦した限りでは私でも十分通用するレベルのはず。腕自慢の挑戦者はヅラのいるAブロックに入るから猛者とも当たりにくい...はず。
「今回はBブロックの試合も目が離せないぞぉ!」
 やめて司会の人煽らないで。
 ともすればBブロックはAブロックに比べて盛り上がりに欠けがちだけれど、私が参加したことで今回はBブロックまで注目を集めてしまった。
 一応有名人だから物珍しさから私に挑みたいって猛者が来ないといいのだけど...。
「えぇ!? 身内が同じブロックに参加はダメなんですかぁ!? 姫様に堂々とセクハラするチャンスなのに!」
「コイツAブロック参加で」
 あとコイツみたいな変態も。
「ひょえー!? 私ボコられるじゃないですかー!?」
 むしろヅラにボコられて来なさい変態。
 八百長防止のために身内の参加制限あってよかった...。
 ていうか主を公衆の面前で辱め(セクハラ)とかちょっとありえないんですけど...。


 広いコロッセオだから試合は二組づつで行われた。
 ルールは一方の戦闘が続行不能と判断するか、負けを認めるまで。
 見世物であり試合中の不正防止のため、煙幕、爆煙、閃光、暗闇魔法などの戦いが見えなくなる手段は禁止、使用した時点で失格。
 相手を殺めるような危険な攻撃も禁止。武器は大会貸し出しの殺傷性の低い武器を使うこと。
 隣の組みの試合を邪魔しないこと。
 魔法及び飛び道具は観客席を巻き込まないこと。審判が危険と判断した場合失格。
 トトカルチョはBブロックのみ、闘技場内の加盟店で行うこと。
 その他細かいルールが多数...。
 ま、問題になるようなルールはないわね。
 さぁ、イイトコ見せるわよー!


「我らがフルフェース、圧巻の勝利だー! 彼女に勝てる猛者はいるのかー!?」
「ティアラ様、3回戦も難無く突破ー! 知られざる実力を見せ付けていくー!」
 あまり期待してなかったというとティアラに申し訳ないけれど、私が思った以上にティアラは順調に勝ち進んでいた。
「ティアラって、結構強いんだね」
「たはははー、もうちょっと余裕で勝ってればそうかもしれないんだけどね...」
 闘技場の治癒師に変わって私が試合後のティアラの治療をしながら思ったことを口にすると、ティアラは苦笑いしながら謙遜した。
「ううん、最低限当たってもいい攻撃に抑えて、無理に被弾減らそうとしないで戦えるのは凄いよ」
 ウィッグさんみたいに全部避けるか防げるなるその方がカッコいいのだろうけど、ティアラは自分の力量に合わせて無理のない被弾をしながら戦ってる。
「あーでも、カチューシャにこうして治して貰えるなら攻撃食らうのも悪くないかも...」
「もう、当たらないに越した事はないんだからね。でも...私もティアラを治せるのはちょっと、うれしいかも...」
 普段の仕事も簡単過ぎて、私は探知とかばかりでヒーラーとしてあまり働けてないし。
「次の試合の準備お願いしまーす」
「はーい」
 だいたい治したところでティアラが次の試合に呼ばれる。
「多分全部治したけど、どこか痛むところない? 大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、おかげで完全回復!」
 触診には自信あるけど、本人じゃないとわからないところもあるからね。私のために戦ってくれてるんだから、しっかり治さないと。
「次の試合も頑張って!」
「推しのエールで負ける気がしないよ!」
 控室を出てティアラと別れて。私はまた観客席に戻る。
 それにしてもこうして戦ってるティアラを見てると...なんか...。
「カッコいい...」
 お母さんが戦ってるところをいつも見てるから、他の人が戦ってるところを見てもカッコいいと思うことなんて無かった。
 近くにいる比較対象が高すぎるせいなのだけど...、ティアラの強さはお母さんに遠く及ばないのにどうしてだろ...。
「戦ってる姫様カッコいいですよねー」
「双眼鏡でパンチラ凝視しながら言われても同意できないよ...」
 ちなみにプリムは早々にウィ...フルフェースに当たってボコされて終わった。
 プリムも強い風に聞いてるけど、実際どうなんだろ? ロイヤル・ガードが護衛対象より弱いなんてことはないと思うけど...。
「そういえばティアラって、なんで姫騎士なの?」
 この平和な国で、王女がわざわざ魔法剣士の修練積んでるなんて、思えば不思議なことだった。
「亡くなったご両親が行商人で、その形見の日記を見て育ったので、将来...王位を引退したら奥さんと両親が見た景色を見て回りたいっていってましたね」
「そんな先の事なんだ...」
 冒険者に憧れがあっても、決して国を出たいなんて言わないのは、ちゃんと自分の責任と向き合ってるからなんだな...。
「ティアラはどこまでも真っ直ぐなんだね」
 だから、カッコよく見えるのかな...。中途半端の私と違って...。
 そうして、いつのまにか私は戦ってるティアラの姿に見惚れていた...。


「ティアラ様Bブロック全勝! 決勝進出です! 我々の国の王女は強かった!」
 な...なんとか勝てたぁ...。カチューシャの応援で頑張れたとはいえ、現役冒険者たちに我ながらよく勝てたなあ...。
「ティアラお疲れ様! おめでとう!」
「全部辛勝で、全然カッコよくなかったね...」
「そんなことないよ! えっと...」
「ん?」
 観客席から飛び降りてコロッセオの中にお祝いに来てくれたカチューシャが改まる、正直必死で戦って流麗さの欠片もなかったからカッコよくなかったと思うんだけど...。
「今日のティアラ...凄くカッコよかったと...思うよ...?」
「かはぁ...!?」
「おーっと、ティアラ様! 7人目の刺客に一撃ノックアウトだー!」
「わー!?」
 いやその不意打ちはエグいわ...照れ顔可愛すぎるもの...。悔いなしっ。


 コロッセオの端でカチューシャのとどめを刺されて治療も受けながら、次の試合の報告を待つ。
 と言ってもいつもならここでヅラが棄権するからさっきのが事実上の決勝だろうけど。
「さぁここでお知らせだ、なんとフルフェースが今回の決勝は棄権しないとの事だ!」
「「え!?」」
 なんて考えてたら司会のアナウンスからとんでもない言葉が飛び出た。
「試合前に王女はフルフェースを焚きつけ、自らはAブロックではなくBブロックを勝ち抜いて決勝で挑むというこの展開! なんて熱い王女なんだ!!」
 ちょちょちょ、試合前のアレ言質とられてた!? いや待って全然そんなつもりじゃないんだけど!?
 オオオオオオ!
 あーダメだ...めっちゃ盛り上がってる...今更違いますとは言えない雰囲気...。
「カチューシャ...ごめん...」
「あははは...事故みたいなものだから仕方ないよ...」
 カチューシャもまさかの展開に苦笑いしている...、あー、あと一歩だったのになー。カチューシャにプレゼントしたかったなー。
 イヤイヤイヤ、やる前から諦めてどうするよ。
「まぁでも、もしもヅラが棄権しない場合もちゃんと考えてたんだけど...」
「え? ウィッグさんに勝つ方法を?」
 ただ棄権されるのも悔しいからシミュレーションしてたのが、まさか使うことになるとは...。
「普通にやっても勝目ないから、搦め手になるけど...」
 ただまぁ、そんな上手くいくとも限らないし...、なにより...。
「もーちょっと、ご褒美欲しいな〜なんて」
 カチューシャのために、ライスシャワーのお礼のために戦ったけど、ヅラと戦うならあともう一つ、ヤル気の上がるご褒美が欲しい!
「ご褒美?」
「そう、カチューシャから!」
「私からあげられるものなんて、!?」
 モノが欲しいんじゃないの! スキンシップ的なやつなの! と、カチューシャにハグのポーズと唇をポイントしてみる。
「え...えぇ...」
 通じたらしく困惑して赤くなってる、可愛い。でも可愛いだけじゃ、ダメなの! ご褒美も欲しいの!
「えっと...じゃぁ...勝てたら...」
「勝てたら!?」
「キ、キス...してあげる...」
 100点満点の仕草と台詞だよ!!
「ほっぺ? おクチ?」
「ほっぺ...」
「むぅ...お口がいいけど...、それは大事な時期までお預けでいっか」
「ホッ...」
 妥協すると胸を撫で下ろしている。
 カチューシャにはまだキスも難易度高いかー、初心で可愛いなー。あー私から奪ってしまいたい。
「よし! 俄然ヤル気出てきた!」
 ぶっちゃけキスそのものよりも照れるカチューシャが可愛かったから満足! いや満足しちゃダメだ、勝たないと。


「さぁティアラ様とフルフェース、いったどんな戦いを見せてくれるんでしょうか!」
 カチューシャに十分に治療してもらい、いよいよヅラと相対する。あーマジで煽らなきゃよかった...。
「Fight!」
 ヅラも剣闘士として戦ってる以上はいきなり全力を出して私を瞬殺なんてしない筈、なにより...。
「ここまで女性対戦者は全て“相手を無傷で"勝ち上がってきたフルフェース、果たして王女相手には本気を出すのか!?」
 そう、コイツは女が相手だと無傷で倒してきた。本人は勿論のこと、相手さえも。
「私ボコボコにされましたよ!?」
 一部変態例外はいるけど。
 バランスを崩したり、武器を相手の手から吹き飛ばしたり、とにかく誰が見ても"勝負があった“瞬間で勝利してきた。
「はぁ!!」
 だからコイツから私を倒そうとする攻撃はしないはず...私はガントレットでの守りを捨てて、両手で剣戟を叩き込む。
「ティアラ様、凄い猛攻だー! しかしフルフェース、その場けらまんじりとも動かずコレを凌ぐ!」
 オオオオオオ!
 やっぱり、今のヅラは剣闘士として実力で劣る私に対してあらゆる点でハンデを持たせて試合を盛り上げようとしてる!
 私に勝機があるならそのハンデを利用する!
「ライト!」
「(゜_゜)」
 連撃の合間に強い光で目眩まし、戦いが見えなくなるほどのは反則だけどヅラの目だけを狙ってなら大丈夫!
 ちょっと怯むヅラだけどこの程度で攻撃が通るわけもない、だから私はヅラが防戦一方なのを良いことにチカチカと目眩ましを連発する。
「(ー_ー#)」
 こちらの倒す気のない、嫌がらせ目的連発の魔法にヅラがようやく動いて私から距離を取る。
「ほら、防戦一方じゃ盛り上がらないわよ。アンタからも攻めて来なさいよ」
 私が勝ち目を引くには防御に徹されると都合が悪い、ヅラの方から勝負をキメさせに来てもらわないと...。
「凸(ー_ー)」
「そうこなくっちゃ」
 嫌がらせを続けたかいあったのかヅラもやる気を出してくれた。
「だからって私も守りには徹さないけどね!」
 今度はヅラからも攻撃が始まった、勿論私が防げるギリギリを狙って倒す気がないのは変わり無いけど...。
「つっう...!」
 始まったヅラの攻撃は鋭すぎて避けるのにも防ぐにも手足がジンジンしてくる...これはいずれ足の感覚を一瞬失って転ぶか、手の感覚が麻痺して武器を弾かれるか...今までの対戦者の二の舞になるわね。
「負ける気はないわよ!」
 私は手の感覚がまだ十分に残っているウチに更に手数を増やした、打ち込むたびに剣が強く防がれて加速度的に腕の感覚が無くなっていく...。
「(ー_ーメ)」
 そして、十分に打ち込んだところでヅラの剣が迫り、痺れた私の手はそれを防ぎきれない。
 剣が手から離れる、宙を舞う、勝負が決した瞬間だった...。
 ―勝った!
「残心なさいよ!」
 “剣を手から弾かれたら負け"なんてルールはない! 私はまだ負けてない! 剣は囮だ!
「とった!」
「(゜o゜)」
 剣が弾かれる瞬間、もう一方の手を伸ばしてヅラの兜を掴んだ。勝利を確信したヅラは兜を掴む手を避けられない!
.........
 悔しいけど、私にヅラを倒す実力なんてない。だけれど、ヅラ自らが"反則負け“するなら私の勝ちだ!
「!!」
 私が兜を剥ぐと同時にヅラが緊急で魔法を発動し、周囲が強い光に包まれる。
「.........」
「こ...これは...」
 そして、光が収まった時、そこにヅラの姿はなかった。
「フ...、フルフェース選手! 試合からの離脱及び反則行為により敗北です!!」
 司会の判定に会場が、静まり返り...。
「勝者はユリゾンリリィ第一王女・ティアラ! 10年無敗のフルフェースに初の“試合勝利者"は、我らが国の王女様だぁーー!!」
「っしゃあぁぁーー!!」
 私は絶対に離さなかったヅラの兜を掲げ上げ、勝利の雄叫びを上げた...
 オオオオオオ!



「ティアラ...凄い! ホントに、ホントに勝っちゃった!」
 優勝の表彰式を経て、賞品を手にして戻ってきたティアラに私は収まらない興奮を鎮めながら駆け寄った。
 ホントは勝ってすぐの瞬間にコロッセオに飛び込んで讃えたかったけど、興奮し過ぎてそれは出来なかった。これでも少し落ち着いたほう。
「えへへへ、ヅラが正体隠してるおかげで勝てちゃった」
 武器は弾かれたし攻撃は一つも通ってないけど、それでも、ティアラは試合に勝ってくれた。
「あんまり...かっこいい勝利じゃないけどさ」
「ううん、カッコよかったよ! 例え上手くいって無くても、あのウィッグさんに勝つつもりで挑んだティアラ、凄くカッコよかった!」
 もし私が決勝に挑んでたら絶対に諦めてた、それも「実質優勝だからウィッグさんに頼めば賞品貰えるかも」なんて甘い考えで勝負を捨ててたと思う...。
「改めておめでとう! それと、私のためにありがとう!」
「私もようやくカチューシャのために何か出来て嬉しいよ!」
 そう言ってティアラは私に抱えてた優勝賞品、魔法の寝袋を渡してくれる。
「まぁ...カチューシャがそれを使うと思うとちょっと微妙だけれど...」
 そして渡してくれてからティアラの顔が曇る。あれ? なんでだろ?
「私は使わないよ?」
「え、でも、あんなに欲しがって...」
 そういえば欲しい理由言ってなかったっけ。
 .........
「運送依頼お願いしますね」
「はい、お母さんのベルメットさん宛ですねー、お預かりします」
 冒険者ギルドに戻って今日は私から仕事を依頼した。
「お母さんに使ってもらいたくて欲しかったんだ...」
「うん、私はどこでも眠れるけど、お母さんは普通の生活してた時期もあるし、体大事にしてほしいから...」
 睡眠が快適になれば、もっと長生きしてくれるよね。
「カチューシャ...、なんかごめん...」
「なんでティアラが謝るの?」
 優勝してくれたのはティアラで、私じゃウィッグさんいなかったとしても優勝できなかったと思うし、謝るような事なんてないのに。
「カチューシャがその寝袋で冒険生活に戻るのイヤだなって思ってて...」
 あ...。
「私が冒険生活に戻るかもしれないのに、あんなに頑張って優勝してくれたんだ」
「ライスシャワーのお礼だったし...。カチューシャが冒険生活に戻りたいないなら、やっぱり仕方ないなって...」
 そこまで考えて戦ってくれたんだ...。
「カチューシャはまだ私の側に居てくれるつもりなのに...。私、カチューシャの事を信じれてなかった...」
「ううん、私の方こそ、そんな寂しい思いをさせちゃってごめんね...」
 賞品に目がくらんで、ティアラの気持ちを全く考えてなかった...。それなのにティアラは頑張ってくれてたなんて...。
「そして、ありがとう。私の王子様」
 私は、ティアラの頬にキスをした。挿絵AIで作った挿絵
「カカカ...カチューシャ!?」
「ご褒美に欲しいって言ったのティアラだよ?」
 あんまり照れられると、私も恥ずかしくなってくるから軽く流して欲しいんだけど...。
「不意打ちはズルいって! 感触よく分かんなかったし! 一瞬だったし!」
「1回は1回ですぅ!」
 そんな何回もできないよ!
「もーいっかい! もーいっかい!」
「無理だってばー!」
 後からどんどん恥ずかしくなって、遂には私は逃げ出す

 この感情がどういうものかはまだよく分からないけど
 私の性別も、秘密も、どうしたいかも、何もかも隠したままの卑怯モノだけど
 私は、どんどんあなたを好きになってるよ、ティアラ
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百合の国のプリンセス♂作者:万能ねぎトロ
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勝利の女神よキスをして!

のっけから前回との温度差が酷い
 私はおっぱいが大好きだ。
 女性の胸が、乳房が、バストが、おっぱいが、大好きなのだ。
 サイズは大きいのがいい、揉み応えのあるのが望ましい。巨乳爆乳が好みだ。
 故に私は旅をした。
 あらゆるおっぱいを揉み、完璧なおっぱいを自らの手で再現しようと。
 おっぱいを愛する私の愛の結晶を、この世界に遺そうと。
 旅をしながらあらゆるおっぱいを揉むと同時に、私はあらゆる素材も研究した。
 時に金で、時に依頼の報酬に、時に土下座して、時に偶然を装い、時に制裁されながらも、私は多くのおっぱいを揉んだ。
 この手で揉んだおっぱいの感触、その全てを記憶と記録にしながら、それを再現する素材を研究した。
 そして三十年の月日の旅と研究の末に、究極のおっぱいを完成させたのだ。
 四十種類のスライムを配合し、色素も形も完璧。
 専用のエキスを使うことによりサイズの変更にも対応、並〜爆まで様々な好みに合わせられる。
 また、色も肌に合わせて着色・脱色が可能であり、見た目にも完璧に擬態。
 更には電気スライムの微弱な刺激を利用して“触れられた感覚"までも着用者に与える。
 服の上からはもちろん、脱いだとしても、触られたとしてもニセモノだとバレることはない...
 .........
 そう、ニセモノなのだ。
 研究を終えた私は感動と同時に虚しさを覚えた。
 どれだけ完璧な、究極なおっぱいを作ったところで、これはニセモノなのだ。
 素材が特殊故に量産は困難だが、少なからず、世のおっぱいに悩む女たちの助けになったもしれない
 しかし、ニセモノのおっぱいで克服したコンプレックスで本当にいいのだろうか?
 仮に自分のおっぱいを好きになるものが現れ、結ばれたとして、女はニセモノのおっぱいである事を抱え続けなければならない。
 それは本当に幸福なのだろうか?
 そして、ニセモノのおっぱいで男を騙すことは、私と同じおっぱいを愛する者たちへの冒涜ではないのだろうか?
 私は、巨乳が好きだ。
 だが、本来おっぱいに貴賤はない。
 おっぱいを愛するならば、おっぱいだけを愛してはならない。
 その女と、その女のおっぱいを愛するべきなのだ。
 私は間違っていた。
 旅の中で様々なおっぱいに触れ、女に出会い、私と共に歩んでくれる伴侶に出会えたことで、気が付いたのだ。
 既に私はおっぱいではなく、妻を愛していた事に。
 私は、完成した究極のおっぱいを封印し、墓まで持っていこうと誓った。これは人の世に出すべきではない、と...。
 私の30年は妻と出会えたことで、報われているのだ。決して無駄ではなかったと、心に言い聞かせて...。
 そして究極のおっぱいが完成してから数年経ったある日のこと、とある冒険者が私の噂を聞きつけてやってきた。
 おっぱいを持たぬ、“ニセモノ"のために、私の究極の“ニセモノ"を譲って欲しい、と。
 私の究極はニセモノでしかない、だが、だからこそ同じく"ニセモノ“に身につけられることで、その役割を果たすので無いのだろうか?
 ニセモノのおっぱいは、ニセモノの体に相応しい。私はおっぱいの封印を解き、冒険者に手入れと扱い方を纏めた書と共に譲った。
 そして、ニセモノの笑顔を見た時、私の30年の労力が、本当に報われた気がしたのだ...。

今、その究極のおっぱいは、何処にあるのか?
それは、ニセモノが本物であり続けるために、話すことはできない。

「ねぇプリム、カチューシャってさ...」
「えぇ、私もお触りにはまだ成功していませんが、服の上からでもわかる...あれはかなりの...」
「「美乳に違いない」」
「二人とも聞こえてるし、あんまり人の胸を凝視しないで欲しいんだけど...」
 それは今、ここにある。


百合の国のプリンセス♂ #4勝利の女神よキスをして!挿絵AIで作った挿絵


「カチューシャ! 好きなものか、欲しいもの教えて!!」
「唐突だね...」
 ライスシャワーが帰ってきた三日後の朝、私はカチューシャの欲しいものを本人に直接聞くことにした。
 よくよく考えたら私がカチューシャを大好きなのは公然の事実なのだから、好感度上げるのにプレゼントするならコソコソする必要ないじゃん!
「だってライスシャワーまで取り返してくれて、私ばっかりカチューシャの事を好きにさせられてズルいじゃん! お礼させてよ! 私にもカチューシャの喜ぶ贈り物させてよ!」
「元々あの子のことは私なりのお礼のつもりだからお礼なんていいんだけど...。でもティアラのそういう真っ直ぐなところ好きだよ」
「ぐわぁー! またそういう事を...好きになる! 好きにさせられるぅ!」
 友達としてだろうけど! 人としてだろうけど! 何その、相手を勘違いさせちゃうムーブ!
「あぁ、今日も推しカプが仲良くて尊い...」
 プリムは人前で悶えんな。
「いいから欲しいもの言ってよ〜」
「カチューシャ様の好きなものと言えば、やはりお肉でしょう!」
「うん、お肉かなあ」
「カチューシャはもっと可愛いもの欲しがって...」
 それは知ってるんだけどさ...、お肉はなんか、プレゼントとしてヤじゃん...。
 てかカチューシャも欲しいもの聞かれてお肉は乙女としてどうなの。そういうギャップもステキだけれど...。
「可愛いもの...。それじゃあ...ウサギとか?」
「ウサギ! カチューシャウサギ好きなんだ!?」
 おぉ!? いい感じの好きなものあるじゃんん! たしかにカチューシャとウサギの組み合わせはめっちゃ絵になりそう!
「うん、一番好きかなぁ」
「へぇー、どういう子? 更に拘りとかある!?」
 どういう意味で一番かはさておき。ウサギなら部屋で飼ってあげられる、私が飼って、カチューシャが滞在中預かるって事にすれば贈り物としても重くもないはず。
「拘り?」
「毛並みとか、色とか! 性格とか!」
 せっかくならより好みの子を飼ってあげたいよね。なんなら多頭飼いでもいいし。
「そういうとこに拘りはないかな? 強いて言えば子兎が好きだけど...」
「子兎かー! 小さくて...」
 小さくて可愛いよね、と続けようとすると。
「小さくて物足りないから、プリプリ太った大きな子かなぁ」
「ん...?」
 小さくて可愛い、でなく、物足りない?
「姫様、姫様」
 っと、疑問を浮かべてるとプリムが耳打ちしてくる。
「野ウサギは、冒険者にとって貴重なタンパク質です...」
「って、食べるの!?」
「うん? ティアラは食べたことない? 王族は豚とか牛とか食べ放題だし。食べる機会ないのかな」
 もしかしてずっとお肉の話してたの!?
「過去にディナーに出てきたことは一応あるけど...」
 子供の頃に出されたきりで味はあんまり覚えてない。たしか私が大泣きしてその後は出さなくなったんだっけ...。
「食べるのに、可愛いとは思うんだ?」
 可哀想とはならないのかな?
「見た目グロくて美味しいより、見た目可愛くて美味しい方がいいと思うけど」
「それはーうんー...どうだろ」
同意出来るような出来ないような...。
 価値観が冒険者に染まってるカチューシャの事を、もっと理解しなきゃなーと思う一件なのだった。


 朝からテンション高めなティアラを嗜めつつ、ロリエルちゃんに顔見せの日課を経て今日も今日とて三人で冒険者ギルドにやってきたものの。
「ごめんねー。今日は一つも依頼入ってないのー」
 長いお下げの金髪に真面目そうな眼鏡のお姉さんはこのギルドの受付のクリップさん...ていうかこのギルドで働いてるのこの人しか見たことないんだけど? いつ休んでるんだろ...。
「そういう日もありますよね、仕事がないのは良いことですし」
「そう言ってくれるのカチューシャさんだけだわ〜、他の皆さんはじゃあギルドから仕事出せってしつこくって〜」
 冒険者の仕事なんて大体が困りごとだから、無い方がいいのだけれど。仕事がないと食いっぱぐれちゃうものね...。
「今日は騎士団の方で仕事貰おっか」
「そうだね」
「いつものパターンですな!」
 無いものは仕方ないのでティアラの言うように騎士団へ行くことにすると...
「残念ながら、本日は騎士団はお休みなのだよ!」
 ギルドの入り口にバレッタさんが仁王立ちしていた。
「防衛組織にお休みなんてあるの...?」
 この国ホント大丈夫?
「団員が二人しかいないからね! 団長の不在、即ち騎士団のお休みなのだよ!」
「ヅラ居なくても事務のバレッタはお仕事あるでしょ」
「鬼の居ぬ間に洗濯というやつだよ!」
 要するにウィッグさん居なければ堂々とサボれるから自分もお休みと...。
 ところでギルドに何しにきたんだろ。
「というわけで、クリップ〜イチャつこ〜! 仕事ないんでしょ〜!」
「仕事がなくても仕事中です〜! ってバレッタ人前〜!」
 と思ったらクリップさん目当てだったらしく、カウンターを乗り越えてクリップさんに抱き着いてしまった。
「やれやれ、人目を憚らず卑しい人ですね」
「プリムがいう?」
 プリムは一人で悶えるタイプだけど。
「どうせ今日は闘技場開いてるから誰もこないって、仕事場でってのも乙でしょ〜」
「ダメ...、ダメだってバレッタ...ひゃ!」
 クリップさんの弱い抵抗も虚しく、バレッタさんに押し倒されてカウンターの中に消えてしまう。
「あっあっ...あーっ!」
 ちょっ!
「わー!」
 カウンターの裏でどうなってるのか、クリップさんの艶めかしい悲鳴が聞こえてきて、私は一目散に逃げ出した。
「あっ、カチューシャ!?」
「初心な反応、いいですねぇ!」


「まさかホントに始めるなんて...」
 ギルドの外に出て真っ赤になってそうな顔を鎮める。
「働き詰めのカップルですから、欲求不満なのでしょうね〜」
「クリップの方も殆ど抵抗してないしね」
「だからってあんなとこで、私たちがいるのに始めるかな...」
「人がいる方が興奮する的なヤツですよ!」
「的なヤツに巻き込まれたこっちの方が恥ずかしいよ...」
 明日クリップさんの顔ちゃんと見られるかなぁ...。
「ギルドも騎士団もダメとなると...今日は闘技場開いてるみたいだしそっち行ってみようか」
「バレッタさんが言ってたのだよね? この都市に闘技場なんてあったんだね」
 女性の多い国だからそういうのは無いものと思ってたけど、意外とガス抜きとかになるのかな?
「私が貰われる前くらいに王母様が作らせたんだって」
「クラン女王が?」
 あんまりそういうのが好きそうなイメージない人だけど、何か目的があるのかな。
「ちょっと意外だよね。冒険者とかを呼び込む目的があるらしいんだけど...」
 結構長く冒険者やってるけどこの国の闘技場が熱い!みたいに聞いたことはないような? 私やお母さんが興味無いからスルーしてただけかもだけど。
「取り敢えず観に行こっか」
「結構面白いものが見られますよ!」
「うん」
 名物の剣闘士でもいるのかな? ヒーラーの私じゃ参加する事はないだろうけど、二人は見せたいものがあるみたいだし、行く事にした。


「今日こそは彼女を倒す者が現れるのか!? 我らが最強! フルフェースの登場だー!!」
 闘技場につくと丁度剣闘士の顔見せをさせてたみたいで、コロッセオの中央に一人紹介されている人がいた。
「アレがこの闘技場の目玉の剣闘士、フルフェース。てか闘技場所属の剣闘士はあの人だけ」
 フルフェイスの兜に銀の女性モノの軽鎧、顔立ちは分からないけどスラッとした印象の人だった。
「常勝無敗で闘技場創立から一度も"試合で“負けたことが無し。まさに最強の、剣闘士」
「鎧を着込んでいますが、戦闘スタイルは典型的な魔法剣士ですねー」
 そんな強い人がウィッグさん以外にもこの国に居たんだ! それは見てみたいかも!
「ものすごい強い魔法剣士だなんて、まるでウィッグさんみた...」
「ていうかぶっちゃけヅラよね」
「まず間違いないですね」
「えぇぇ!?」
 ウィッグさんみたいじゃなくて、ウィッグさんなの!?
「イヤでも女性って!」
「この国じゃ女剣闘士の方が人気出るし、アイツのスタイルなら女鎧くらい余裕で着込めるでしょ」
「お顔隠さなくても、あの人のイケメンなら化粧で美女になれると思うんですけどねぇ」
 それはそう思うけど...。なんか他人事じゃなくて複雑だ...。
「フルフェイスでミステリーと、客の期待煽ってるんでしょ。今回こそは素顔が見られるかも!?っみたいな」
「仮面の下は美女がお約束ですものねー!」
 仮面じゃなくて兜だけど。
「えぇ...でもホントに...?」
 なんで騎士団長が女装(?)してまで剣闘士をしてるのかわからなくて私はまだ信じられない。
「だってさ」
 証拠を見せる、という風にティアラが観客席から身を乗り出し!
「ヅラー! 今日は棄権すんじゃないわよー!」
「Σ d(ー_ー )」挿絵AIで作った挿絵
 ティアラの呼び掛けに無表情(顔見えないけど)のサムズアップで応えてくれた。
「ね?」
 ウィッグさんもう少し正体隠して...。
「おーと! ティアラ様の煽りで今日はやる気のようだー! 遂に熱い決勝を観られるのかー!?」
 ティアラへのパフォーマンスになにか会場が盛り上がってる、王女の声援だからというわけでない見たい?
「棄権するなっていうのは?」
「アイツ強すぎるから、決勝戦は棄権すんのよ」
「あの人がいたんじゃ誰も優勝賞品を取れませんからねー」
「あぁ...たしかに...」
 勝ち目ないんじゃ賞品目当ての参加者呼び込めないものね。腕試しの挑戦者はいるだろうけど。
「さぁ彼女へ挑戦したい腕自慢はどんどんエントリーしてくれ! 賞品目当てなら別ブロックへのエントリーもアリだぞ!」
 主催も決勝での棄権を前提としてる流れらしい。
 ヒーラーの私はどの道参加は難しいけど、大体の必要な装備や道具は揃えてるから、余程の景品でないと惹かれないだろうなぁ。
「ちなみに今回の賞品はー...超高級魔法の寝袋!」
「魔法の...寝袋!?」


「カチューシャ?」
「地獄ような極寒も! 地獄のような猛暑も! コイツに包まれば適温で快適に眠れる超!スグレモノ! 更には臭いや魔力探知を遮断しモンスターからも見つかりにくくなり、もしもの時は飛び起きてそのままマントとして羽織って戦うことが可能だぁ! コイツがあれば、旅の快眠!全快!間違いなし!」
「魔法の...寝袋...」
 目の色が変わるってこいうことを言うんだろうなあ、カチューシャが見たこと無い笑顔を浮かべて賞品の説明に聞き入っている。
「エントリーってどこ!? ヒーラーでも参加できるかなぁ!?」
「え、エントリーするのぉ!?」
 観戦だけのつもりだったし、なによりヒーラーのカチューシャが参加するなんて思いもしなかった。だけれど賞品に目の色が変わってて...。
「ウィッグさんの居ない方のブロックなら決勝戦棄権して貰えて賞品手に入るんだよね!?」
「しかも決勝まで行く気でいるー!?」
 そりゃ賞品目当てならそうだろうけど!
「ヒーラーで参加とはなかなかのチャレンジャーですねカチューシャ様!」
「イヤ駄目だって! カチューシャが一人で戦うなんて!」
 いくら熟練のカチューシャでもヒーラー一人を闘技場なんかに放り込めないよ!
「だって! 魔法の寝袋だよ! なかなかお目にかかれ無いレアモノの更に高級品だよ!?」
「ダメだ目の色が変わってる...」
 やっぱりカチューシャは生粋の冒険者で、欲しいものは旅で重宝するものなんだなぁ...。
「私としましては、自己回復で痛みに耐えながら必死に戦いながらも嬲られて、あわよくばどんどん服が破れて肌が露わになってく姿を是非拝みt」
「プリムは黙って」
 そう言うのいいから。
「わかった! じゃあ私がエントリーする!」
「ティアラが?」
「カチューシャよりも経験は浅いかもしれないけど、単純な戦いなら魔法剣士の私の方が勝率は高いでしょ?」
 カチューシャにそんな危険な事させられないし、プリムがいうような光景なんて絶対大衆に見せたくない!
「カチューシャの欲しいものなら、カチューシャのために私が絶対手に入れて見せるから!」
「ティアラ...」
 こんな形でカチューシャの欲しいものが見つかるとは思わなかったけど、これならライスシャワーの事のお礼にもなる。
「それに、カチューシャにようやくカッコいいとこ、見せられるからね!」
 今日まで簡単な仕事ばかりで本気で戦うようなことも無かった。これは色んな意味でチャンスなのかもしれない。
「うん、わかった、お願い。でも無理はしないで死ぬ気で頑張って!」
「カチューシャ様、本音が漏れてます」
 どんだけ欲しいのよ...。
「わ...わかったわ...」
 そして、旅の貴重品を欲しがるということは、カチューシャが冒険者をやめる気が無いということで、少し悲しくなった...。


「ここでみんなに重大発表だ。なんとユリゾンリリィ第一王女、ティアラ様がエントリーなさったぞ!」
 オオオオオオ!
 まぁそりゃ、こうなるわよね...。観戦することはあっても参加することの無かった私のエントリーで闘技場は更に盛り上がりを見せた。
 まぁ私は賞品目当てのBブロック、ヅラがいるのはAブロックだから話題の二人がかち合うって事はないはずだけど。
 大丈夫、振れ幅はあるけど今まで観戦した限りでは私でも十分通用するレベルのはず。腕自慢の挑戦者はヅラのいるAブロックに入るから猛者とも当たりにくい...はず。
「今回はBブロックの試合も目が離せないぞぉ!」
 やめて司会の人煽らないで。
 ともすればBブロックはAブロックに比べて盛り上がりに欠けがちだけれど、私が参加したことで今回はBブロックまで注目を集めてしまった。
 一応有名人だから物珍しさから私に挑みたいって猛者が来ないといいのだけど...。
「えぇ!? 身内が同じブロックに参加はダメなんですかぁ!? 姫様に堂々とセクハラするチャンスなのに!」
「コイツAブロック参加で」
 あとコイツみたいな変態も。
「ひょえー!? 私ボコられるじゃないですかー!?」
 むしろヅラにボコられて来なさい変態。
 八百長防止のために身内の参加制限あってよかった...。
 ていうか主を公衆の面前で辱め(セクハラ)とかちょっとありえないんですけど...。


 広いコロッセオだから試合は二組づつで行われた。
 ルールは一方の戦闘が続行不能と判断するか、負けを認めるまで。
 見世物であり試合中の不正防止のため、煙幕、爆煙、閃光、暗闇魔法などの戦いが見えなくなる手段は禁止、使用した時点で失格。
 相手を殺めるような危険な攻撃も禁止。武器は大会貸し出しの殺傷性の低い武器を使うこと。
 隣の組みの試合を邪魔しないこと。
 魔法及び飛び道具は観客席を巻き込まないこと。審判が危険と判断した場合失格。
 トトカルチョはBブロックのみ、闘技場内の加盟店で行うこと。
 その他細かいルールが多数...。
 ま、問題になるようなルールはないわね。
 さぁ、イイトコ見せるわよー!


「我らがフルフェース、圧巻の勝利だー! 彼女に勝てる猛者はいるのかー!?」
「ティアラ様、3回戦も難無く突破ー! 知られざる実力を見せ付けていくー!」
 あまり期待してなかったというとティアラに申し訳ないけれど、私が思った以上にティアラは順調に勝ち進んでいた。
「ティアラって、結構強いんだね」
「たはははー、もうちょっと余裕で勝ってればそうかもしれないんだけどね...」
 闘技場の治癒師に変わって私が試合後のティアラの治療をしながら思ったことを口にすると、ティアラは苦笑いしながら謙遜した。
「ううん、最低限当たってもいい攻撃に抑えて、無理に被弾減らそうとしないで戦えるのは凄いよ」
 ウィッグさんみたいに全部避けるか防げるなるその方がカッコいいのだろうけど、ティアラは自分の力量に合わせて無理のない被弾をしながら戦ってる。
「あーでも、カチューシャにこうして治して貰えるなら攻撃食らうのも悪くないかも...」
「もう、当たらないに越した事はないんだからね。でも...私もティアラを治せるのはちょっと、うれしいかも...」
 普段の仕事も簡単過ぎて、私は探知とかばかりでヒーラーとしてあまり働けてないし。
「次の試合の準備お願いしまーす」
「はーい」
 だいたい治したところでティアラが次の試合に呼ばれる。
「多分全部治したけど、どこか痛むところない? 大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、おかげで完全回復!」
 触診には自信あるけど、本人じゃないとわからないところもあるからね。私のために戦ってくれてるんだから、しっかり治さないと。
「次の試合も頑張って!」
「推しのエールで負ける気がしないよ!」
 控室を出てティアラと別れて。私はまた観客席に戻る。
 それにしてもこうして戦ってるティアラを見てると...なんか...。
「カッコいい...」
 お母さんが戦ってるところをいつも見てるから、他の人が戦ってるところを見てもカッコいいと思うことなんて無かった。
 近くにいる比較対象が高すぎるせいなのだけど...、ティアラの強さはお母さんに遠く及ばないのにどうしてだろ...。
「戦ってる姫様カッコいいですよねー」
「双眼鏡でパンチラ凝視しながら言われても同意できないよ...」
 ちなみにプリムは早々にウィ...フルフェースに当たってボコされて終わった。
 プリムも強い風に聞いてるけど、実際どうなんだろ? ロイヤル・ガードが護衛対象より弱いなんてことはないと思うけど...。
「そういえばティアラって、なんで姫騎士なの?」
 この平和な国で、王女がわざわざ魔法剣士の修練積んでるなんて、思えば不思議なことだった。
「亡くなったご両親が行商人で、その形見の日記を見て育ったので、将来...王位を引退したら奥さんと両親が見た景色を見て回りたいっていってましたね」
「そんな先の事なんだ...」
 冒険者に憧れがあっても、決して国を出たいなんて言わないのは、ちゃんと自分の責任と向き合ってるからなんだな...。
「ティアラはどこまでも真っ直ぐなんだね」
 だから、カッコよく見えるのかな...。中途半端の私と違って...。
 そうして、いつのまにか私は戦ってるティアラの姿に見惚れていた...。


「ティアラ様Bブロック全勝! 決勝進出です! 我々の国の王女は強かった!」
 な...なんとか勝てたぁ...。カチューシャの応援で頑張れたとはいえ、現役冒険者たちに我ながらよく勝てたなあ...。
「ティアラお疲れ様! おめでとう!」
「全部辛勝で、全然カッコよくなかったね...」
「そんなことないよ! えっと...」
「ん?」
 観客席から飛び降りてコロッセオの中にお祝いに来てくれたカチューシャが改まる、正直必死で戦って流麗さの欠片もなかったからカッコよくなかったと思うんだけど...。
「今日のティアラ...凄くカッコよかったと...思うよ...?」
「かはぁ...!?」
「おーっと、ティアラ様! 7人目の刺客に一撃ノックアウトだー!」
「わー!?」
 いやその不意打ちはエグいわ...照れ顔可愛すぎるもの...。悔いなしっ。


 コロッセオの端でカチューシャのとどめを刺されて治療も受けながら、次の試合の報告を待つ。
 と言ってもいつもならここでヅラが棄権するからさっきのが事実上の決勝だろうけど。
「さぁここでお知らせだ、なんとフルフェースが今回の決勝は棄権しないとの事だ!」
「「え!?」」
 なんて考えてたら司会のアナウンスからとんでもない言葉が飛び出た。
「試合前に王女はフルフェースを焚きつけ、自らはAブロックではなくBブロックを勝ち抜いて決勝で挑むというこの展開! なんて熱い王女なんだ!!」
 ちょちょちょ、試合前のアレ言質とられてた!? いや待って全然そんなつもりじゃないんだけど!?
 オオオオオオ!
 あーダメだ...めっちゃ盛り上がってる...今更違いますとは言えない雰囲気...。
「カチューシャ...ごめん...」
「あははは...事故みたいなものだから仕方ないよ...」
 カチューシャもまさかの展開に苦笑いしている...、あー、あと一歩だったのになー。カチューシャにプレゼントしたかったなー。
 イヤイヤイヤ、やる前から諦めてどうするよ。
「まぁでも、もしもヅラが棄権しない場合もちゃんと考えてたんだけど...」
「え? ウィッグさんに勝つ方法を?」
 ただ棄権されるのも悔しいからシミュレーションしてたのが、まさか使うことになるとは...。
「普通にやっても勝目ないから、搦め手になるけど...」
 ただまぁ、そんな上手くいくとも限らないし...、なにより...。
「もーちょっと、ご褒美欲しいな〜なんて」
 カチューシャのために、ライスシャワーのお礼のために戦ったけど、ヅラと戦うならあともう一つ、ヤル気の上がるご褒美が欲しい!
「ご褒美?」
「そう、カチューシャから!」
「私からあげられるものなんて、!?」
 モノが欲しいんじゃないの! スキンシップ的なやつなの! と、カチューシャにハグのポーズと唇をポイントしてみる。
「え...えぇ...」
 通じたらしく困惑して赤くなってる、可愛い。でも可愛いだけじゃ、ダメなの! ご褒美も欲しいの!
「えっと...じゃぁ...勝てたら...」
「勝てたら!?」
「キ、キス...してあげる...」
 100点満点の仕草と台詞だよ!!
「ほっぺ? おクチ?」
「ほっぺ...」
「むぅ...お口がいいけど...、それは大事な時期までお預けでいっか」
「ホッ...」
 妥協すると胸を撫で下ろしている。
 カチューシャにはまだキスも難易度高いかー、初心で可愛いなー。あー私から奪ってしまいたい。
「よし! 俄然ヤル気出てきた!」
 ぶっちゃけキスそのものよりも照れるカチューシャが可愛かったから満足! いや満足しちゃダメだ、勝たないと。


「さぁティアラ様とフルフェース、いったどんな戦いを見せてくれるんでしょうか!」
 カチューシャに十分に治療してもらい、いよいよヅラと相対する。あーマジで煽らなきゃよかった...。
「Fight!」
 ヅラも剣闘士として戦ってる以上はいきなり全力を出して私を瞬殺なんてしない筈、なにより...。
「ここまで女性対戦者は全て“相手を無傷で"勝ち上がってきたフルフェース、果たして王女相手には本気を出すのか!?」
 そう、コイツは女が相手だと無傷で倒してきた。本人は勿論のこと、相手さえも。
「私ボコボコにされましたよ!?」
 一部変態例外はいるけど。
 バランスを崩したり、武器を相手の手から吹き飛ばしたり、とにかく誰が見ても"勝負があった“瞬間で勝利してきた。
「はぁ!!」
 だからコイツから私を倒そうとする攻撃はしないはず...私はガントレットでの守りを捨てて、両手で剣戟を叩き込む。
「ティアラ様、凄い猛攻だー! しかしフルフェース、その場けらまんじりとも動かずコレを凌ぐ!」
 オオオオオオ!
 やっぱり、今のヅラは剣闘士として実力で劣る私に対してあらゆる点でハンデを持たせて試合を盛り上げようとしてる!
 私に勝機があるならそのハンデを利用する!
「ライト!」
「(゜_゜)」
 連撃の合間に強い光で目眩まし、戦いが見えなくなるほどのは反則だけどヅラの目だけを狙ってなら大丈夫!
 ちょっと怯むヅラだけどこの程度で攻撃が通るわけもない、だから私はヅラが防戦一方なのを良いことにチカチカと目眩ましを連発する。
「(ー_ー#)」
 こちらの倒す気のない、嫌がらせ目的連発の魔法にヅラがようやく動いて私から距離を取る。
「ほら、防戦一方じゃ盛り上がらないわよ。アンタからも攻めて来なさいよ」
 私が勝ち目を引くには防御に徹されると都合が悪い、ヅラの方から勝負をキメさせに来てもらわないと...。
「凸(ー_ー)」
「そうこなくっちゃ」
 嫌がらせを続けたかいあったのかヅラもやる気を出してくれた。
「だからって私も守りには徹さないけどね!」
 今度はヅラからも攻撃が始まった、勿論私が防げるギリギリを狙って倒す気がないのは変わり無いけど...。
「つっう...!」
 始まったヅラの攻撃は鋭すぎて避けるのにも防ぐにも手足がジンジンしてくる...これはいずれ足の感覚を一瞬失って転ぶか、手の感覚が麻痺して武器を弾かれるか...今までの対戦者の二の舞になるわね。
「負ける気はないわよ!」
 私は手の感覚がまだ十分に残っているウチに更に手数を増やした、打ち込むたびに剣が強く防がれて加速度的に腕の感覚が無くなっていく...。
「(ー_ーメ)」
 そして、十分に打ち込んだところでヅラの剣が迫り、痺れた私の手はそれを防ぎきれない。
 剣が手から離れる、宙を舞う、勝負が決した瞬間だった...。
 ―勝った!
「残心なさいよ!」
 “剣を手から弾かれたら負け"なんてルールはない! 私はまだ負けてない! 剣は囮だ!
「とった!」
「(゜o゜)」
 剣が弾かれる瞬間、もう一方の手を伸ばしてヅラの兜を掴んだ。勝利を確信したヅラは兜を掴む手を避けられない!
.........
 悔しいけど、私にヅラを倒す実力なんてない。だけれど、ヅラ自らが"反則負け“するなら私の勝ちだ!
「!!」
 私が兜を剥ぐと同時にヅラが緊急で魔法を発動し、周囲が強い光に包まれる。
「.........」
「こ...これは...」
 そして、光が収まった時、そこにヅラの姿はなかった。
「フ...、フルフェース選手! 試合からの離脱及び反則行為により敗北です!!」
 司会の判定に会場が、静まり返り...。
「勝者はユリゾンリリィ第一王女・ティアラ! 10年無敗のフルフェースに初の“試合勝利者"は、我らが国の王女様だぁーー!!」
「っしゃあぁぁーー!!」
 私は絶対に離さなかったヅラの兜を掲げ上げ、勝利の雄叫びを上げた...
 オオオオオオ!



「ティアラ...凄い! ホントに、ホントに勝っちゃった!」
 優勝の表彰式を経て、賞品を手にして戻ってきたティアラに私は収まらない興奮を鎮めながら駆け寄った。
 ホントは勝ってすぐの瞬間にコロッセオに飛び込んで讃えたかったけど、興奮し過ぎてそれは出来なかった。これでも少し落ち着いたほう。
「えへへへ、ヅラが正体隠してるおかげで勝てちゃった」
 武器は弾かれたし攻撃は一つも通ってないけど、それでも、ティアラは試合に勝ってくれた。
「あんまり...かっこいい勝利じゃないけどさ」
「ううん、カッコよかったよ! 例え上手くいって無くても、あのウィッグさんに勝つつもりで挑んだティアラ、凄くカッコよかった!」
 もし私が決勝に挑んでたら絶対に諦めてた、それも「実質優勝だからウィッグさんに頼めば賞品貰えるかも」なんて甘い考えで勝負を捨ててたと思う...。
「改めておめでとう! それと、私のためにありがとう!」
「私もようやくカチューシャのために何か出来て嬉しいよ!」
 そう言ってティアラは私に抱えてた優勝賞品、魔法の寝袋を渡してくれる。
「まぁ...カチューシャがそれを使うと思うとちょっと微妙だけれど...」
 そして渡してくれてからティアラの顔が曇る。あれ? なんでだろ?
「私は使わないよ?」
「え、でも、あんなに欲しがって...」
 そういえば欲しい理由言ってなかったっけ。
 .........
「運送依頼お願いしますね」
「はい、お母さんのベルメットさん宛ですねー、お預かりします」
 冒険者ギルドに戻って今日は私から仕事を依頼した。
「お母さんに使ってもらいたくて欲しかったんだ...」
「うん、私はどこでも眠れるけど、お母さんは普通の生活してた時期もあるし、体大事にしてほしいから...」
 睡眠が快適になれば、もっと長生きしてくれるよね。
「カチューシャ...、なんかごめん...」
「なんでティアラが謝るの?」
 優勝してくれたのはティアラで、私じゃウィッグさんいなかったとしても優勝できなかったと思うし、謝るような事なんてないのに。
「カチューシャがその寝袋で冒険生活に戻るのイヤだなって思ってて...」
 あ...。
「私が冒険生活に戻るかもしれないのに、あんなに頑張って優勝してくれたんだ」
「ライスシャワーのお礼だったし...。カチューシャが冒険生活に戻りたいないなら、やっぱり仕方ないなって...」
 そこまで考えて戦ってくれたんだ...。
「カチューシャはまだ私の側に居てくれるつもりなのに...。私、カチューシャの事を信じれてなかった...」
「ううん、私の方こそ、そんな寂しい思いをさせちゃってごめんね...」
 賞品に目がくらんで、ティアラの気持ちを全く考えてなかった...。それなのにティアラは頑張ってくれてたなんて...。
「そして、ありがとう。私の王子様」
 私は、ティアラの頬にキスをした。挿絵AIで作った挿絵
「カカカ...カチューシャ!?」
「ご褒美に欲しいって言ったのティアラだよ?」
 あんまり照れられると、私も恥ずかしくなってくるから軽く流して欲しいんだけど...。
「不意打ちはズルいって! 感触よく分かんなかったし! 一瞬だったし!」
「1回は1回ですぅ!」
 そんな何回もできないよ!
「もーいっかい! もーいっかい!」
「無理だってばー!」
 後からどんどん恥ずかしくなって、遂には私は逃げ出す

 この感情がどういうものかはまだよく分からないけど
 私の性別も、秘密も、どうしたいかも、何もかも隠したままの卑怯モノだけど
 私は、どんどんあなたを好きになってるよ、ティアラ
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人狼(ライカン)
百合の国のプリンセス♂作者:万能ねぎトロ
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