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第六話 選手入場ノ儀 後編

 盛大な拍手と歓声に包まれ、選手たちの先陣を切り金獅子隊が行進して来る。
 ユキも背伸びをしてやって来る選手たちを見ようと頑張っている。


「あ、ホーマ......さんが見えた!」


 ユキはホーマの名を呼び、取って付けたように敬称を付ける。ルカも苦笑いしながらはっきりと見てきた金獅子隊の面々を見つめた。六人が二列になり、慣れたように堂々と行進をしている。
 金獅子隊の前には太陽の国のシンファ長であるサザードが歩いており、その一歩前に太陽の国の兵士が旗を持って歩いている。旗の中心には真っ赤な太陽と、それに吠えているかのように勇ましい獅子王が描かれている。

「先頭にいるのが、お前も知っての通り太陽の国の第三王子ホーマと、その隣にいるのが金獅子隊の隊長でありザンファのレオンだ」

 ルカは拍手を止めずに金獅子隊についてユキに説明をする。「あれが隊長のレオンさん......」とユキは目を金色に輝かせてつぶやく。
 赤い髪を揺らし、生意気な笑みを浮かべているホーマの隣には、美しい金色の髪をした精悍な顔つきをした青年がいた。ルカが鮮やかな金色であるのに対して、レオンの髪は銀色がかった淡い金色だ。瞳もまるで翡翠のように輝いている。背も高く、隣にいるホーマよりも頭一つほど大きい。レオンは月のシンファたち側にいるので、ルカたちからもよく見えた。

「あいつはもう四年近く金獅子隊の隊長をしている。実力も相当だ。......この五国で一番のザンファだと言っても過言じゃない。隣のホーマはリーヤだが......性格はどうあれ実力は本物だ。あいつにだけは負けるなよ」

 ルカの言葉に、ユキは「はい」と力強く頷く。

「その二番目の列の、俺ら側にいる茶髪のやつがギナクだ。......前にあいつについて、一回話したことがあったな。あいつはリユーファでな、射た弓はほぼ百発百中っていう、バケモノみたいなやつだ。......ヒリンが死んでからしばらく休んでいたが、今はもう復活している」

 ルカは赤みがかった茶色の髪と瞳をした青年を見つめて言う。目つきの悪さは今も昔も変わっていない。ルカにしてみれば、彼を見たのはキンジュアの裁判以来だ。ヒリンを亡くしてからかなり憔悴していたが、ここに出てきたということはもう彼も前に向かって進み始めているのだろう。ユキはただ黙って、真剣な表情でギナクのことを見据えている。

「......その隣にいる黒髪のが、ティッパーのリツだ。細身だが、かなりの曲者だ。まるで相手の心を読んでいるかのように先回りして罠を仕掛けてきやがる。物静かで、何考えてるか全く分からないやつだけど、まぁ、悪いやつではじゃないさ」

 ギナクの横にいる、真っ黒な髪と瞳を持つ少年について説明していく。リツは細身で中性的な顔立ちをした男だ。女と見間違われることはシノと同じくらいかもしれない。しかしリツの方が背も高いし体つきもいい。

「三列目の二人は、補欠の選手だ。こっち側にいる灰色っぽい髪のやつがリユーファのメアで、向こう側の薄茶色で一番小さいのがザンファのサンテだ。補欠といえども強いぞ」

 ルカは金獅子隊最後の二人の説明をする。もうじき先頭の旗持が自分たちの目の前を通過しそうだ。

「......シン・アティアの人はいないんですか?」

 ユキは金獅子隊を背伸びして見ながら不思議そうに言う。

「えぇそうよ。シン・アティアは試合に出るわけではないから、選手入場に参加できないの。そもそも、私たちみたいに、専用のシン・アティアがいる隊の方が珍しいのよ。普通の隊は武器の調整はその武器を買ったお店のシン・アティアに頼むからね。もちろん、金獅子隊みたいに有名なところは専用のシン・アティアもいるだろうけど、そういう腕のいい職人は他の隊の武器調整もしているだろうし、隊に所属ってわけではないと思うわ。......だから、月虹隊が五神祭に出場できたとしても、私は選手入場には参加できないのよ」

 ハオは淡々とそう言ってユキの方を見る。その言葉に、ユキは悲しそうに瞳を薄青色に染める。

「ハオも月虹隊の一員なのにな......」

 ユキがそうぽつりとつぶやくと、「ユキちゃん......」とハオは感激したように声を出す。

「......大丈夫よ、ユキちゃんたちが五神祭に出場した時には、私が最前列でみんなに拍手を送るからね。だから悲しまなくてもいいのよ。その気持ちだけで充分よ」

 ハオは優しくそう言ってユキの頭を撫でまわす。ユキはくすぐったそうにしながらも「うん......」とまだ残念そうに小さな声でつぶやく。

 旗持が自分たちの目の前を通過し、拍手や歓声は最高潮に大きくなっていった。周りからは金獅子隊の隊員の名前を呼ぶ声も上がり始める。金獅子隊はただ真っすぐに前だけを見つめ、この天道通りを堂々と歩いていた。ユキの目からもはっきりと見えるようになり、金色の瞳を金獅子隊に向けて拍手を送り続けていた。
 来年こそは、必ずこの道を自分たちも歩くのだ。
 ルカも金獅子隊の行進を真っすぐに見据えながら、強くそう誓うのだった。

 
「危ない!!!」

 
 突然、ルカの後ろでレイが叫ぶ。

 そして同時に、爆音と共に金獅子隊の上空で何かが弾けた。
 強烈な振動が辺りを襲う。
 途端、悲鳴があちこちで上がり始める。

 ルカは驚きながらも振動に耐え、体勢を崩さないように身を固める。
 一気に混乱は広がっていき、場は騒然となっていく。
 行進も止まり、金獅子隊はルカたちの目の前で立ち止まった。
 よく見れば、先頭にある太陽の国の旗の端が破けており、旗持は呆然とした顔のまま旗を見上げていた。

「静まれ! 動くな!!」

 と、治安部隊は乱れだした道沿いの人々をなだめようと必死になっている。
 月のシンファたちからも混乱した声が上がり、「なんだ今の?」「何が起こったんだ......?」と各々が不安そうな顔を見合わせていた。
 ルカは言葉も出せずに後ろを振り向き、目を見開いたままのレイの顔を見た。

「......レイ、お前、何が見えたんだ......?」

 ルカは何とか声を出す。金獅子隊の上空で何かが弾けた時、確かレイは「危ない」と叫んでいた。
 レイはどこか遠くを見ながら静かに口を開いた。


「......あの遠くに見える建物の屋上から、誰かがこっちに向かって弓を射てきた」


 レイはどこかを指差して言う。
 月虹隊はみな訝しげな表情でレイの指差した先を見た。どうやら、向こうの道沿いに見える建物と建物の隙間から覗く、さらに遠くの建物を指差しているらしいが、正直ルカにはその建物の輪郭すらぼんやりとしか見えない。おそらく、レイにしか見えないだろう
「まじかよ......」と、シノは目を細めながら低くつぶやく。
「でも、もうどこかに行っちゃった」と、レイはまだ遠くを見つめながら言った。

「で、その誰かが射た弓矢が、金獅子隊の上空で爆発したってのか?」

 シノが険しい口調で問いかけると、「うん、たぶん......」とレイは曖昧に返事をした。


「......ううん、私が弓矢を弾いた......」


 ユキはぽつりとつぶやく。

「え」と、ルカは未だ金獅子隊を見つめているユキの方を見た。
 ユキも信じられないという表情でルカのことを見上げる。その目は、深い紫色に染まっている。ユキ自身も相当困惑しているらしい。

「......レイさんの声が聞こえた時に、向こうから金獅子隊に向かって弓矢が飛んでくるのが見えて、咄嗟にシンで弓矢を弾きました......。それで、軌道がずれて、旗に当たってから、あそこに突き刺さりました......」

 ユキはそう言って天道通りの端っこを指差す。その地面をよく見ると、確かに弓矢が突き刺さっている。

「......お前のシンだったのか......」と、ルカは弓矢と、破れた旗を交互に見ながらつぶやいた。確かに、あの強烈な振動はユキのものだと思えば納得できた。
「どういうことよ......」と、ハオはなおも呆然としながら慌ただしくなってきた会場を見渡した。

 この各国のシンファたちがまとまっている場所はまだそれほどでもないが、南側の一般人が多くいる場所は相当混乱しているようだった。

「なんだ、今の振動は!!」「反乱か!?」「王が襲われたのか!!」と、ありもしない噂が流れ始め、多くの治安部隊が民を治めようと必死になっている。

「おい、なんかやべぇ騒ぎになってるな......」と、シノは南側を見つめて眉をひそめる。

「そうね......これ、もしかして犯人を見たのってレイちゃんだけなんじゃないの? シンを放ったのはうちのユキちゃんだし......。なんだか、とんでもないことになりそうね......」

 と、ハオも険しい表情をしながら騒ぎ始めた人々を見つめていた。
 当の金獅子隊はというと、静かにその場にとどまって辺りを見渡していた。落ち着いているあたりさすがだなと、ルカは感服してその様子を見つめる。金獅子隊の周りには、ぞくぞくと治安部隊が集まり始めていた。


「みんな、無事かい!?」


 南の方からジェクロが走ってやってくる。金獅子隊の後ろには銀狼隊が並んでいるので、そこから走ってきたようだ。ルカたちの位置からでも銀狼隊の姿を見ることができ、みな静かにその場で待機している。

「何があった!? 金獅子隊の上空でシンが弾けたように見えたが......。誰かケガはしていないよね?」

 ジェクロは息を切らしながら月のシンファたちの前に立ち、みなを見渡した。シンファたちはそれぞれ顔を見合わせるが、誰もケガはしていないようである。


「ジェクロさん!!」


 ルカはそう叫んでシンファたちの前に出て行き、後から他の月虹隊の面々も続いた。ジェクロのすぐそばまで近寄ったので、月虹隊は天道通りに足を踏み入れる形となった。周りのシンファたちから注目が集まる。金獅子隊の隊員たちもこちらを見つめているようだった。

「ルカ......月虹隊、どうしたんだい?」

 ジェクロは一瞬目を見開いたが、落ち着いて月虹隊に語りかけた。

「......レイが、向こうの建物から弓矢が飛んでくるのを見ました。そして、金獅子隊の上空でその弓矢をユキが弾いたんです」

 ルカは嫌な予感を感じながらもジェクロに説明する。「......なんだって?」と、ジェクロは険しい表情でレイとユキを交互に見た。
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禁断の白作者:御米田よね
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第六話 選手入場ノ儀 後編

 盛大な拍手と歓声に包まれ、選手たちの先陣を切り金獅子隊が行進して来る。
 ユキも背伸びをしてやって来る選手たちを見ようと頑張っている。


「あ、ホーマ......さんが見えた!」


 ユキはホーマの名を呼び、取って付けたように敬称を付ける。ルカも苦笑いしながらはっきりと見てきた金獅子隊の面々を見つめた。六人が二列になり、慣れたように堂々と行進をしている。
 金獅子隊の前には太陽の国のシンファ長であるサザードが歩いており、その一歩前に太陽の国の兵士が旗を持って歩いている。旗の中心には真っ赤な太陽と、それに吠えているかのように勇ましい獅子王が描かれている。

「先頭にいるのが、お前も知っての通り太陽の国の第三王子ホーマと、その隣にいるのが金獅子隊の隊長でありザンファのレオンだ」

 ルカは拍手を止めずに金獅子隊についてユキに説明をする。「あれが隊長のレオンさん......」とユキは目を金色に輝かせてつぶやく。
 赤い髪を揺らし、生意気な笑みを浮かべているホーマの隣には、美しい金色の髪をした精悍な顔つきをした青年がいた。ルカが鮮やかな金色であるのに対して、レオンの髪は銀色がかった淡い金色だ。瞳もまるで翡翠のように輝いている。背も高く、隣にいるホーマよりも頭一つほど大きい。レオンは月のシンファたち側にいるので、ルカたちからもよく見えた。

「あいつはもう四年近く金獅子隊の隊長をしている。実力も相当だ。......この五国で一番のザンファだと言っても過言じゃない。隣のホーマはリーヤだが......性格はどうあれ実力は本物だ。あいつにだけは負けるなよ」

 ルカの言葉に、ユキは「はい」と力強く頷く。

「その二番目の列の、俺ら側にいる茶髪のやつがギナクだ。......前にあいつについて、一回話したことがあったな。あいつはリユーファでな、射た弓はほぼ百発百中っていう、バケモノみたいなやつだ。......ヒリンが死んでからしばらく休んでいたが、今はもう復活している」

 ルカは赤みがかった茶色の髪と瞳をした青年を見つめて言う。目つきの悪さは今も昔も変わっていない。ルカにしてみれば、彼を見たのはキンジュアの裁判以来だ。ヒリンを亡くしてからかなり憔悴していたが、ここに出てきたということはもう彼も前に向かって進み始めているのだろう。ユキはただ黙って、真剣な表情でギナクのことを見据えている。

「......その隣にいる黒髪のが、ティッパーのリツだ。細身だが、かなりの曲者だ。まるで相手の心を読んでいるかのように先回りして罠を仕掛けてきやがる。物静かで、何考えてるか全く分からないやつだけど、まぁ、悪いやつではじゃないさ」

 ギナクの横にいる、真っ黒な髪と瞳を持つ少年について説明していく。リツは細身で中性的な顔立ちをした男だ。女と見間違われることはシノと同じくらいかもしれない。しかしリツの方が背も高いし体つきもいい。

「三列目の二人は、補欠の選手だ。こっち側にいる灰色っぽい髪のやつがリユーファのメアで、向こう側の薄茶色で一番小さいのがザンファのサンテだ。補欠といえども強いぞ」

 ルカは金獅子隊最後の二人の説明をする。もうじき先頭の旗持が自分たちの目の前を通過しそうだ。

「......シン・アティアの人はいないんですか?」

 ユキは金獅子隊を背伸びして見ながら不思議そうに言う。

「えぇそうよ。シン・アティアは試合に出るわけではないから、選手入場に参加できないの。そもそも、私たちみたいに、専用のシン・アティアがいる隊の方が珍しいのよ。普通の隊は武器の調整はその武器を買ったお店のシン・アティアに頼むからね。もちろん、金獅子隊みたいに有名なところは専用のシン・アティアもいるだろうけど、そういう腕のいい職人は他の隊の武器調整もしているだろうし、隊に所属ってわけではないと思うわ。......だから、月虹隊が五神祭に出場できたとしても、私は選手入場には参加できないのよ」

 ハオは淡々とそう言ってユキの方を見る。その言葉に、ユキは悲しそうに瞳を薄青色に染める。

「ハオも月虹隊の一員なのにな......」

 ユキがそうぽつりとつぶやくと、「ユキちゃん......」とハオは感激したように声を出す。

「......大丈夫よ、ユキちゃんたちが五神祭に出場した時には、私が最前列でみんなに拍手を送るからね。だから悲しまなくてもいいのよ。その気持ちだけで充分よ」

 ハオは優しくそう言ってユキの頭を撫でまわす。ユキはくすぐったそうにしながらも「うん......」とまだ残念そうに小さな声でつぶやく。

 旗持が自分たちの目の前を通過し、拍手や歓声は最高潮に大きくなっていった。周りからは金獅子隊の隊員の名前を呼ぶ声も上がり始める。金獅子隊はただ真っすぐに前だけを見つめ、この天道通りを堂々と歩いていた。ユキの目からもはっきりと見えるようになり、金色の瞳を金獅子隊に向けて拍手を送り続けていた。
 来年こそは、必ずこの道を自分たちも歩くのだ。
 ルカも金獅子隊の行進を真っすぐに見据えながら、強くそう誓うのだった。

 
「危ない!!!」

 
 突然、ルカの後ろでレイが叫ぶ。

 そして同時に、爆音と共に金獅子隊の上空で何かが弾けた。
 強烈な振動が辺りを襲う。
 途端、悲鳴があちこちで上がり始める。

 ルカは驚きながらも振動に耐え、体勢を崩さないように身を固める。
 一気に混乱は広がっていき、場は騒然となっていく。
 行進も止まり、金獅子隊はルカたちの目の前で立ち止まった。
 よく見れば、先頭にある太陽の国の旗の端が破けており、旗持は呆然とした顔のまま旗を見上げていた。

「静まれ! 動くな!!」

 と、治安部隊は乱れだした道沿いの人々をなだめようと必死になっている。
 月のシンファたちからも混乱した声が上がり、「なんだ今の?」「何が起こったんだ......?」と各々が不安そうな顔を見合わせていた。
 ルカは言葉も出せずに後ろを振り向き、目を見開いたままのレイの顔を見た。

「......レイ、お前、何が見えたんだ......?」

 ルカは何とか声を出す。金獅子隊の上空で何かが弾けた時、確かレイは「危ない」と叫んでいた。
 レイはどこか遠くを見ながら静かに口を開いた。


「......あの遠くに見える建物の屋上から、誰かがこっちに向かって弓を射てきた」


 レイはどこかを指差して言う。
 月虹隊はみな訝しげな表情でレイの指差した先を見た。どうやら、向こうの道沿いに見える建物と建物の隙間から覗く、さらに遠くの建物を指差しているらしいが、正直ルカにはその建物の輪郭すらぼんやりとしか見えない。おそらく、レイにしか見えないだろう
「まじかよ......」と、シノは目を細めながら低くつぶやく。
「でも、もうどこかに行っちゃった」と、レイはまだ遠くを見つめながら言った。

「で、その誰かが射た弓矢が、金獅子隊の上空で爆発したってのか?」

 シノが険しい口調で問いかけると、「うん、たぶん......」とレイは曖昧に返事をした。


「......ううん、私が弓矢を弾いた......」


 ユキはぽつりとつぶやく。

「え」と、ルカは未だ金獅子隊を見つめているユキの方を見た。
 ユキも信じられないという表情でルカのことを見上げる。その目は、深い紫色に染まっている。ユキ自身も相当困惑しているらしい。

「......レイさんの声が聞こえた時に、向こうから金獅子隊に向かって弓矢が飛んでくるのが見えて、咄嗟にシンで弓矢を弾きました......。それで、軌道がずれて、旗に当たってから、あそこに突き刺さりました......」

 ユキはそう言って天道通りの端っこを指差す。その地面をよく見ると、確かに弓矢が突き刺さっている。

「......お前のシンだったのか......」と、ルカは弓矢と、破れた旗を交互に見ながらつぶやいた。確かに、あの強烈な振動はユキのものだと思えば納得できた。
「どういうことよ......」と、ハオはなおも呆然としながら慌ただしくなってきた会場を見渡した。

 この各国のシンファたちがまとまっている場所はまだそれほどでもないが、南側の一般人が多くいる場所は相当混乱しているようだった。

「なんだ、今の振動は!!」「反乱か!?」「王が襲われたのか!!」と、ありもしない噂が流れ始め、多くの治安部隊が民を治めようと必死になっている。

「おい、なんかやべぇ騒ぎになってるな......」と、シノは南側を見つめて眉をひそめる。

「そうね......これ、もしかして犯人を見たのってレイちゃんだけなんじゃないの? シンを放ったのはうちのユキちゃんだし......。なんだか、とんでもないことになりそうね......」

 と、ハオも険しい表情をしながら騒ぎ始めた人々を見つめていた。
 当の金獅子隊はというと、静かにその場にとどまって辺りを見渡していた。落ち着いているあたりさすがだなと、ルカは感服してその様子を見つめる。金獅子隊の周りには、ぞくぞくと治安部隊が集まり始めていた。


「みんな、無事かい!?」


 南の方からジェクロが走ってやってくる。金獅子隊の後ろには銀狼隊が並んでいるので、そこから走ってきたようだ。ルカたちの位置からでも銀狼隊の姿を見ることができ、みな静かにその場で待機している。

「何があった!? 金獅子隊の上空でシンが弾けたように見えたが......。誰かケガはしていないよね?」

 ジェクロは息を切らしながら月のシンファたちの前に立ち、みなを見渡した。シンファたちはそれぞれ顔を見合わせるが、誰もケガはしていないようである。


「ジェクロさん!!」


 ルカはそう叫んでシンファたちの前に出て行き、後から他の月虹隊の面々も続いた。ジェクロのすぐそばまで近寄ったので、月虹隊は天道通りに足を踏み入れる形となった。周りのシンファたちから注目が集まる。金獅子隊の隊員たちもこちらを見つめているようだった。

「ルカ......月虹隊、どうしたんだい?」

 ジェクロは一瞬目を見開いたが、落ち着いて月虹隊に語りかけた。

「......レイが、向こうの建物から弓矢が飛んでくるのを見ました。そして、金獅子隊の上空でその弓矢をユキが弾いたんです」

 ルカは嫌な予感を感じながらもジェクロに説明する。「......なんだって?」と、ジェクロは険しい表情でレイとユキを交互に見た。
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