ホーム›禁断の白›第七話 内緒話 前編
← 次の話目次前の話 →

第七話 内緒話 前編

「今日はもう遅いから、そろそろ休むか。続きは明日にしよう。シノ、ユキを部屋に案内してくれないか」

 ルカの言葉にシノは「おう」と返事をする。
 時刻はもう真夜中で、真っ暗な窓の外からは何も聞こえてこなかった。

「そうだわ、シノちゃん。私もあんたの部屋に泊めてくれないかしら」

「え、マジで」

 シノは明らかに嫌そうな顔をしてハオを見た。

「なによその顔は。私にこんな暗闇の中を歩いて帰れっていうわけ?」

「いや、そうじゃねぇけどさ、単純に一部屋に三人ってせめぇだろ。そもそも布団二人分しかねぇし。普通にルカんとこに泊まればいいじゃん、寝台一つ空いてるんだからさ」

「大丈夫よ、あんたも私も細いんだから、布団一つに二人で寝るくらい余裕でしょ? それに、ユキちゃんのお世話だってしたいし。ユキちゃんも、いきなりこんな乱暴な男と二人きりになるより、私もいたほうが安心でしょ?」

 ハオはシノが「ちょっと待て、お前俺と寝る気か!?」と言っているのを無視して、ユキに向かってにっこりと微笑みかける。それを見て、ユキも楽しそうに微笑んだ。

「大勢で寝たほうが楽しいと思います」

「ほら、ユキちゃんもこう言ってるんだから決定ね」

「え~マジかよユキ~」

 げんなりとして言うシノとは対照的に、ユキとハオは楽しそうに笑い合っている。

「誰のとこでもいいから、早く寝るぞ。
 あんまり遅くなると、またドドリゴに何か言われるかもしれない」

 ルカがそう言うと、みな徐々に立ち上がり始める。

「じゃぁ行くか、ユキ。じゃぁな、おやすみ、ルカ」
「おやすみなさい、ルカ。......ちょっと、私のこと置いて行こうとするんじゃないわよ!」
「おやすみ、また明日ね」
「ルカさん、おやすみなさい」

 四人はそう口々に言ってルカの部屋を後にした。
 パタンと扉が閉じると、夜の静寂が一人きりの部屋に訪れた。
 ルカはしばらく扉を見つめ、静かにため息をはくと、天井に備え付けられた発光石の明かりを消した。真っ暗になった部屋の中で、ルカは慣れた足取りで二段になった寝台の下のほうへ行き、布団の中に身を潜らせる。色々なことが起こりすぎて疲れていたので、目を閉じただけですぐに眠れそうだった。明日はまず何をすべきかを重たい頭で考えながら、ルカは目の前にある上段の寝台の下部を見つめていた。
 上段は元々ハクが使用していて、今もまだ布団も枕も片付けずそのままにしてある。
 別に他の誰かが使っても構わないのだが、もしかしたらハオは気遣ってシノの部屋に泊まると言ってくれたのかもしれない。
 明日もまた、あの虹石の瞳を見ることができると考えると、胸の奥底が温かくなるのを感じた。
 昔、よく寝る前にハクと会話していたことを思い出しながら、ルカは穏やかにまぶたを閉じた。


✻✻✻


 廊下の発光石はすでに消灯しており、四人はハオの持っていた携帯式の発光石の明かりを頼りに歩いていく。

「ここが俺の部屋。部屋番号は三〇五番。部屋の横に俺の名前書いてあるから、迷ったらここ見ればいいさ」

 シノは扉に三〇五と彫られた扉の前で立ち止まった。
 シノが扉を開けようとした途端、ハオがそれを止めた。

「待って、あんた部屋の掃除とかちゃんとしてあるの?」

「え、普通にしてあるけど」

「......ユキちゃん、ちょっとここで待っててね。シノの部屋の中確認してくるから」

 ハオはそう言って微笑みながらユキに発光石を渡した後、戸惑った顔のシノの腕をつかんで部屋の中へ入っていった。
 そして入った途端、
「ちょっと! あんたこれでよく掃除してるとか言えたわね!」
「えぇ!? 男の一人部屋とかこんなもんだろ!?」
「今から女の子と二人部屋になるのよ!? せめて脱いだ服ぐらい片付けてから招きなさいよ!」
 と、中から怒鳴り声が聞こえてきた。

「......少し時間がかかりそうだね」

 レイは苦笑しながらユキに言った。ユキも苦笑してレイを見つめ返す。

「レイさんの部屋はどこなんですか?」

「俺? 俺の部屋は三〇八番。シノの三つ隣で、エィダールって人と一緒に使ってる」

 レイはそう言って右側を指差した。ルカさんの部屋は確か三一二番だったなと、ユキは廊下の右側を見つめながら記憶していった。

「......まさか本当に妹がいたなんてなぁ」

「え」

 ユキは驚いてレイの方を見る。兄が自分の存在を言っていたのだろうかと、わずかな疑心が生じた。

「何年前だったかなぁ。ハクがいない時にさ、他の月虹隊の四人でハクの家族について考えたことがあったんだ。俺はリン・シャロルの民なんて伝説でしか聞いたことなくて、精霊みたいなものだって考えてたからさ、家族はいないんじゃないかって言ったんだ。でも、シノは女兄弟がいそうだって言って、ハオもそれに乗ってね。で、シノは妹だって言って、ハオが姉だって言って意見が分かれてた。シノって、けっこう勘がいいんだよなぁ」

 懐かしそうに言うレイに、ユキも思わず笑みがこぼれる。そして内心、兄が掟を破っていなかったことに安心していた。

「ルカさんはなんて言っていたんですか?」

「あーなんて言ってたっけな? 一人っ子じゃないかって言ってた気がする」

「そうなんですか」

 ユキは、自分が兄に関する話を聞くのが好きだということに気付いた。ハクが故郷を離れたのはもう七年も前になる。その時ユキは七歳で、今となってはもうハクの顔もおぼろげで一緒にいた日々の記憶すら薄れていた。手紙の文面でしか分からない兄の輪郭が、ここに来て色々な話を聞くことで徐々に追加され、形を得てくる感覚が嬉しくて仕方がなかった。

「ありがとう、ユキ。俺たちのところに来てくれて。......なんだか、止まってた時が動き出したみたいだ」

 レイはユキに向かって穏やかに微笑む。
 レイの言葉と微笑みに、ユキの心は温かくなっていく。
 ユキの持つ発光石の温かな橙色に照らされた銀色の髪もまた綺麗で、やはりレイさんをけなす人の気持ちが分からないなとユキは思う。

「はーい、ユキちゃんお待たせ! 入っていいわよ! 
 あ、レイちゃん、その発光石貸しましょうか?」

 ガチャリと扉が開き、ハオが顔をのぞかせる。
 その奥からシノの「どうぞ~......」と疲れたような声が聞こえた

「いや、いいよ、近いから大丈夫。
 おやすみみんな、また明日」

「あらそう? おやすみなさい、レイちゃん」
「おやすみなさい、レイさん。今日は本当にありがとうございました」
「おやすみレイ~。良い夢を~」

 レイは手を振って自分の部屋へと向かっていく。
 ユキが部屋に入ると、シノはすでに上段の寝台に寝そべっており、顔だけ寝台からのぞかせていた。
 ルカの部屋に比べると、シノの部屋は雑然としていた。二つある机の上は両方とも見たこともない道具であふれており、部屋の隅には本が何冊か積み重ねられている。壁にも色々な道具が所せましと吊るされていた。その不思議な道具を見るたび、ユキは心が高まるのを感じていた。

「お、ユキ、そいつらに興味があるか? 目が金色に輝いてるぞ。そいつらはな、俺の大切な武器たちだ。まずその机の上にある黒いやつは......」

「はいはい、シノちゃん、そういう話は明日でもいいでしょ? もう遅いんだから寝なさい。睡眠不足はお肌の大敵よ?」

 身を乗り出して説明をし始めようするシノをハオがたしなめる。
 シノはティッパーという特殊な役職で、罠を仕掛けることに徹する役だとユキは兄からの手紙で聞いていた。手紙だけではその特殊な役がどんな戦い方をするのか分からず、実際に見てみたいと何度も思っていた。これがその道具で、明日からこの使い方まで教えてもらえるのだと思うとユキは嬉しくて仕方がなかった。

「やだ、それよりもユキちゃん、服着替えなきゃいけないんじゃないの? その服王宮のでしょ? いい服だけど、眠るには適してないわねぇ。シノちゃん、あんた寝間着の一着ぐらい持ってない? 寝やすそうなのでいいわよ」

「え~......、箪笥の一番下の引き出しぐらいに入ってねぇか?」

「はいはい一番下ね」

 ハオはそう言って一番下の引き出しを引く。

「......あんた、もしかしてこの服のこと言ってる? 使い古しすぎて襟のとこよれよれなんだけど。しかも相変わらず奇抜な趣味してるわね......」

「んなこと言われたって、自分で着るからいーじゃん別に。それ以外もっと奇抜なのしかないだろ?」

 確かに、シノの服には不思議な模様が描かれていて、形も左右非対称であったため、ユキから見ても変わっているなと感じるものだった。普通に街を歩いていても目立ちそうだ。

「しょーがない、ユキちゃん、今日はこれで我慢してちょうだい。明日可愛い服探しに行きましょうね」

 そう言ってハオは諦めたような顔でユキにシノの服を渡した。

「ありがとう、シノ」

「おう、悪いな、そんな服しかなくて」

「別に構わないよ」

「あら、ユキちゃん、なんでシノにはそんなに親しそうに話すわけ? ずるいわ、私にも敬語なんて使わないでいいのよ? シノなんて私より二つも年下のくせに、今まで一回も私を敬ったことなんてないんだから」

 ハオは不服そうにシノの方を見る。

「なんだよハオ。俺に敬ってほしいのか?」

「いいわよ今更......。それに、あんたが人を敬うなんて正直気持ち悪いわ。前太陽の王にすら啖呵切った男だもんね、あんたは」

 シノは得意げに「だろ?」と言ってニヤリを笑った。
それを見てハオは「嫌味言ってんのに全然効果ないわねまったく......」とため息をはく。
シェア
前の話 →
第六話 兄の最期 後編
← 次の話
第七話 内緒話 後編
禁断の白作者:御米田よね
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム›禁断の白›第七話 内緒話 前編
← 前の話目次次の話 →

第七話 内緒話 前編

「今日はもう遅いから、そろそろ休むか。続きは明日にしよう。シノ、ユキを部屋に案内してくれないか」

 ルカの言葉にシノは「おう」と返事をする。
 時刻はもう真夜中で、真っ暗な窓の外からは何も聞こえてこなかった。

「そうだわ、シノちゃん。私もあんたの部屋に泊めてくれないかしら」

「え、マジで」

 シノは明らかに嫌そうな顔をしてハオを見た。

「なによその顔は。私にこんな暗闇の中を歩いて帰れっていうわけ?」

「いや、そうじゃねぇけどさ、単純に一部屋に三人ってせめぇだろ。そもそも布団二人分しかねぇし。普通にルカんとこに泊まればいいじゃん、寝台一つ空いてるんだからさ」

「大丈夫よ、あんたも私も細いんだから、布団一つに二人で寝るくらい余裕でしょ? それに、ユキちゃんのお世話だってしたいし。ユキちゃんも、いきなりこんな乱暴な男と二人きりになるより、私もいたほうが安心でしょ?」

 ハオはシノが「ちょっと待て、お前俺と寝る気か!?」と言っているのを無視して、ユキに向かってにっこりと微笑みかける。それを見て、ユキも楽しそうに微笑んだ。

「大勢で寝たほうが楽しいと思います」

「ほら、ユキちゃんもこう言ってるんだから決定ね」

「え~マジかよユキ~」

 げんなりとして言うシノとは対照的に、ユキとハオは楽しそうに笑い合っている。

「誰のとこでもいいから、早く寝るぞ。
 あんまり遅くなると、またドドリゴに何か言われるかもしれない」

 ルカがそう言うと、みな徐々に立ち上がり始める。

「じゃぁ行くか、ユキ。じゃぁな、おやすみ、ルカ」
「おやすみなさい、ルカ。......ちょっと、私のこと置いて行こうとするんじゃないわよ!」
「おやすみ、また明日ね」
「ルカさん、おやすみなさい」

 四人はそう口々に言ってルカの部屋を後にした。
 パタンと扉が閉じると、夜の静寂が一人きりの部屋に訪れた。
 ルカはしばらく扉を見つめ、静かにため息をはくと、天井に備え付けられた発光石の明かりを消した。真っ暗になった部屋の中で、ルカは慣れた足取りで二段になった寝台の下のほうへ行き、布団の中に身を潜らせる。色々なことが起こりすぎて疲れていたので、目を閉じただけですぐに眠れそうだった。明日はまず何をすべきかを重たい頭で考えながら、ルカは目の前にある上段の寝台の下部を見つめていた。
 上段は元々ハクが使用していて、今もまだ布団も枕も片付けずそのままにしてある。
 別に他の誰かが使っても構わないのだが、もしかしたらハオは気遣ってシノの部屋に泊まると言ってくれたのかもしれない。
 明日もまた、あの虹石の瞳を見ることができると考えると、胸の奥底が温かくなるのを感じた。
 昔、よく寝る前にハクと会話していたことを思い出しながら、ルカは穏やかにまぶたを閉じた。


✻✻✻


 廊下の発光石はすでに消灯しており、四人はハオの持っていた携帯式の発光石の明かりを頼りに歩いていく。

「ここが俺の部屋。部屋番号は三〇五番。部屋の横に俺の名前書いてあるから、迷ったらここ見ればいいさ」

 シノは扉に三〇五と彫られた扉の前で立ち止まった。
 シノが扉を開けようとした途端、ハオがそれを止めた。

「待って、あんた部屋の掃除とかちゃんとしてあるの?」

「え、普通にしてあるけど」

「......ユキちゃん、ちょっとここで待っててね。シノの部屋の中確認してくるから」

 ハオはそう言って微笑みながらユキに発光石を渡した後、戸惑った顔のシノの腕をつかんで部屋の中へ入っていった。
 そして入った途端、
「ちょっと! あんたこれでよく掃除してるとか言えたわね!」
「えぇ!? 男の一人部屋とかこんなもんだろ!?」
「今から女の子と二人部屋になるのよ!? せめて脱いだ服ぐらい片付けてから招きなさいよ!」
 と、中から怒鳴り声が聞こえてきた。

「......少し時間がかかりそうだね」

 レイは苦笑しながらユキに言った。ユキも苦笑してレイを見つめ返す。

「レイさんの部屋はどこなんですか?」

「俺? 俺の部屋は三〇八番。シノの三つ隣で、エィダールって人と一緒に使ってる」

 レイはそう言って右側を指差した。ルカさんの部屋は確か三一二番だったなと、ユキは廊下の右側を見つめながら記憶していった。

「......まさか本当に妹がいたなんてなぁ」

「え」

 ユキは驚いてレイの方を見る。兄が自分の存在を言っていたのだろうかと、わずかな疑心が生じた。

「何年前だったかなぁ。ハクがいない時にさ、他の月虹隊の四人でハクの家族について考えたことがあったんだ。俺はリン・シャロルの民なんて伝説でしか聞いたことなくて、精霊みたいなものだって考えてたからさ、家族はいないんじゃないかって言ったんだ。でも、シノは女兄弟がいそうだって言って、ハオもそれに乗ってね。で、シノは妹だって言って、ハオが姉だって言って意見が分かれてた。シノって、けっこう勘がいいんだよなぁ」

 懐かしそうに言うレイに、ユキも思わず笑みがこぼれる。そして内心、兄が掟を破っていなかったことに安心していた。

「ルカさんはなんて言っていたんですか?」

「あーなんて言ってたっけな? 一人っ子じゃないかって言ってた気がする」

「そうなんですか」

 ユキは、自分が兄に関する話を聞くのが好きだということに気付いた。ハクが故郷を離れたのはもう七年も前になる。その時ユキは七歳で、今となってはもうハクの顔もおぼろげで一緒にいた日々の記憶すら薄れていた。手紙の文面でしか分からない兄の輪郭が、ここに来て色々な話を聞くことで徐々に追加され、形を得てくる感覚が嬉しくて仕方がなかった。

「ありがとう、ユキ。俺たちのところに来てくれて。......なんだか、止まってた時が動き出したみたいだ」

 レイはユキに向かって穏やかに微笑む。
 レイの言葉と微笑みに、ユキの心は温かくなっていく。
 ユキの持つ発光石の温かな橙色に照らされた銀色の髪もまた綺麗で、やはりレイさんをけなす人の気持ちが分からないなとユキは思う。

「はーい、ユキちゃんお待たせ! 入っていいわよ! 
 あ、レイちゃん、その発光石貸しましょうか?」

 ガチャリと扉が開き、ハオが顔をのぞかせる。
 その奥からシノの「どうぞ~......」と疲れたような声が聞こえた

「いや、いいよ、近いから大丈夫。
 おやすみみんな、また明日」

「あらそう? おやすみなさい、レイちゃん」
「おやすみなさい、レイさん。今日は本当にありがとうございました」
「おやすみレイ~。良い夢を~」

 レイは手を振って自分の部屋へと向かっていく。
 ユキが部屋に入ると、シノはすでに上段の寝台に寝そべっており、顔だけ寝台からのぞかせていた。
 ルカの部屋に比べると、シノの部屋は雑然としていた。二つある机の上は両方とも見たこともない道具であふれており、部屋の隅には本が何冊か積み重ねられている。壁にも色々な道具が所せましと吊るされていた。その不思議な道具を見るたび、ユキは心が高まるのを感じていた。

「お、ユキ、そいつらに興味があるか? 目が金色に輝いてるぞ。そいつらはな、俺の大切な武器たちだ。まずその机の上にある黒いやつは......」

「はいはい、シノちゃん、そういう話は明日でもいいでしょ? もう遅いんだから寝なさい。睡眠不足はお肌の大敵よ?」

 身を乗り出して説明をし始めようするシノをハオがたしなめる。
 シノはティッパーという特殊な役職で、罠を仕掛けることに徹する役だとユキは兄からの手紙で聞いていた。手紙だけではその特殊な役がどんな戦い方をするのか分からず、実際に見てみたいと何度も思っていた。これがその道具で、明日からこの使い方まで教えてもらえるのだと思うとユキは嬉しくて仕方がなかった。

「やだ、それよりもユキちゃん、服着替えなきゃいけないんじゃないの? その服王宮のでしょ? いい服だけど、眠るには適してないわねぇ。シノちゃん、あんた寝間着の一着ぐらい持ってない? 寝やすそうなのでいいわよ」

「え~......、箪笥の一番下の引き出しぐらいに入ってねぇか?」

「はいはい一番下ね」

 ハオはそう言って一番下の引き出しを引く。

「......あんた、もしかしてこの服のこと言ってる? 使い古しすぎて襟のとこよれよれなんだけど。しかも相変わらず奇抜な趣味してるわね......」

「んなこと言われたって、自分で着るからいーじゃん別に。それ以外もっと奇抜なのしかないだろ?」

 確かに、シノの服には不思議な模様が描かれていて、形も左右非対称であったため、ユキから見ても変わっているなと感じるものだった。普通に街を歩いていても目立ちそうだ。

「しょーがない、ユキちゃん、今日はこれで我慢してちょうだい。明日可愛い服探しに行きましょうね」

 そう言ってハオは諦めたような顔でユキにシノの服を渡した。

「ありがとう、シノ」

「おう、悪いな、そんな服しかなくて」

「別に構わないよ」

「あら、ユキちゃん、なんでシノにはそんなに親しそうに話すわけ? ずるいわ、私にも敬語なんて使わないでいいのよ? シノなんて私より二つも年下のくせに、今まで一回も私を敬ったことなんてないんだから」

 ハオは不服そうにシノの方を見る。

「なんだよハオ。俺に敬ってほしいのか?」

「いいわよ今更......。それに、あんたが人を敬うなんて正直気持ち悪いわ。前太陽の王にすら啖呵切った男だもんね、あんたは」

 シノは得意げに「だろ?」と言ってニヤリを笑った。
それを見てハオは「嫌味言ってんのに全然効果ないわねまったく......」とため息をはく。
シェア
← 前の話
第六話 兄の最期 後編
次の話 →
第七話 内緒話 後編
禁断の白作者:御米田よね
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません