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アリサに迫る危機

 私の最初の反応は、笑いだった。

「ふふ......ハハ......アハハハハ!! なにそれ? 相手がリーダー? どんな冗談よ? ねえ......答えなさいよ!!」

「そんなに大きな態度に出ていいわけ?」

「なによ、今さら何を気にする必要があるっていうの!?」

 私がつかみかかろうとした瞬間、瀬川は自分のスマホ画面を私に見せた。

「これ、なーんだ?」

「私が......さっき送った......指示!?」

 バカな私にもすぐに構図が見えた。目の前の瀬川の正体。よりによって、こんなヤツが......!!

「ども!! グループのリーダーこと、瀬川ちゃんでーす!!」

 瀬川がニヤニヤ笑いながら続ける。

「なんでこんなことするの? って顔してるから、教えてあげるね! アナタ、すぐ壊れちゃいそうだから。そーっと、そーっと、壊してあげたくなったの! 分かってるだろうけど、アナタ加害者、私被害者! 相談とか、逃げるとか、できないから!」

 違う。もう、どうでも良い。相談? 逃げる?

 そんなこと、私には選択する権利ない。

 次の瞬間、私の右腕全体が、うずいた。

 右腕が......熱い......

 錯覚? 違う。右腕のまわりが、かげろうみたいに揺らいでいる。

 予感。

 何か、出る。

 右腕から瀬川のニヤケ顔めがけて何かが飛んだ。次の瞬間見えたのは......トゲ。無数のトゲ。それに覆われる瀬川の顔。

 不気味なことに、瀬川はトゲだらけになった顔のまま、せせら笑っていた。

 トゲ? 私の腕から出たの? 瀬川はなんで笑っていられるの?

「足りないわ、北川さん。もっと、もっと、絶望して見せて!」

 でも。私の気持ちは変わっていない。もうどうでもいい。コイツが笑おうと苦しもうと、私には関係ない。

「絶望、絶望よッ!! もっと、もーっと、狂おしいほどに堕ちなさい!! アハハ、アハハハハ!!」

 ......うるさい。このバカ、いつまで笑っているつもり? 際限がないじゃないの?

「ククク、は、ハハ、笑いが、止まんな、い、気分がどんどん! どんどん!! 高揚してッ!!」

 今、ようやく、気づいた。瀬川の顔に刺さったトゲがジワジワと瀬川の顔に深くめり込んでいく。

「グ、ククク、息が、で、出来ない!!」

 周りの生徒たちも異変に気づきだした。だが、誰も、どうすることもできない。もちろん、私も。

「た、たす、たすけ......」

 とうとう瀬川が口から泡を吹き出した。その時だった。声。

「アリサ!!」

 お、おはぎ!! 猫の姿で窓から!? なんでここに......?

「チィ、ギリギリだな。このままだとこの娘、笑い死にするぞ!!」

「わ、笑い、死に!?」

「仕方ない、最後の手段だ!」

 おはぎが、何を思ったのか、瀬川の顔に噛みついた!!

「な、何を!!」

 瀬川は、身体をピクピクさせていたが、少しずつ静かになり、ついに動かなくなった。

「し、死んだ......の?」

 おはぎが瀬川から離れる。瀬川の顔面には、痛々しい噛み跡が......ない。

「顔の魂に穴を空けて、邪気を無理やり放出させた。この娘は助かる」

「邪気?」

「お前の腕からトゲが出ただろう? アレはお前の邪気そのもの。大きすぎる負の感情がこの娘の悪の感情を増幅させたんだ」

「私の......せいなの......?」

「ああ、そうだ」

 おはぎは偽らなかった。それが、私を少しだけ冷静にしてくれた。

「ソイツ、どうなるの?」

「顔の魂に穴が空けば顔が動かなくなる。つまり、お前はこの娘から......」

「表情を、奪った、のね......?」

 笑い、泣き、悲しみ、苦しむ。それらを伝えることが瀬川にはもうできない。二度と。

 瀬川に最後に張り付いた表情は、絶望だった。

「俺の姿はお前にしか見えん。つまり、この場で起きたことは俺とお前にしか理解できん」

 それは、私にとって朗報ではなく、これから先背負っていくものの宣告だった。
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北川アリサの純愛作者:深月真
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アリサに迫る危機

 私の最初の反応は、笑いだった。

「ふふ......ハハ......アハハハハ!! なにそれ? 相手がリーダー? どんな冗談よ? ねえ......答えなさいよ!!」

「そんなに大きな態度に出ていいわけ?」

「なによ、今さら何を気にする必要があるっていうの!?」

 私がつかみかかろうとした瞬間、瀬川は自分のスマホ画面を私に見せた。

「これ、なーんだ?」

「私が......さっき送った......指示!?」

 バカな私にもすぐに構図が見えた。目の前の瀬川の正体。よりによって、こんなヤツが......!!

「ども!! グループのリーダーこと、瀬川ちゃんでーす!!」

 瀬川がニヤニヤ笑いながら続ける。

「なんでこんなことするの? って顔してるから、教えてあげるね! アナタ、すぐ壊れちゃいそうだから。そーっと、そーっと、壊してあげたくなったの! 分かってるだろうけど、アナタ加害者、私被害者! 相談とか、逃げるとか、できないから!」

 違う。もう、どうでも良い。相談? 逃げる?

 そんなこと、私には選択する権利ない。

 次の瞬間、私の右腕全体が、うずいた。

 右腕が......熱い......

 錯覚? 違う。右腕のまわりが、かげろうみたいに揺らいでいる。

 予感。

 何か、出る。

 右腕から瀬川のニヤケ顔めがけて何かが飛んだ。次の瞬間見えたのは......トゲ。無数のトゲ。それに覆われる瀬川の顔。

 不気味なことに、瀬川はトゲだらけになった顔のまま、せせら笑っていた。

 トゲ? 私の腕から出たの? 瀬川はなんで笑っていられるの?

「足りないわ、北川さん。もっと、もっと、絶望して見せて!」

 でも。私の気持ちは変わっていない。もうどうでもいい。コイツが笑おうと苦しもうと、私には関係ない。

「絶望、絶望よッ!! もっと、もーっと、狂おしいほどに堕ちなさい!! アハハ、アハハハハ!!」

 ......うるさい。このバカ、いつまで笑っているつもり? 際限がないじゃないの?

「ククク、は、ハハ、笑いが、止まんな、い、気分がどんどん! どんどん!! 高揚してッ!!」

 今、ようやく、気づいた。瀬川の顔に刺さったトゲがジワジワと瀬川の顔に深くめり込んでいく。

「グ、ククク、息が、で、出来ない!!」

 周りの生徒たちも異変に気づきだした。だが、誰も、どうすることもできない。もちろん、私も。

「た、たす、たすけ......」

 とうとう瀬川が口から泡を吹き出した。その時だった。声。

「アリサ!!」

 お、おはぎ!! 猫の姿で窓から!? なんでここに......?

「チィ、ギリギリだな。このままだとこの娘、笑い死にするぞ!!」

「わ、笑い、死に!?」

「仕方ない、最後の手段だ!」

 おはぎが、何を思ったのか、瀬川の顔に噛みついた!!

「な、何を!!」

 瀬川は、身体をピクピクさせていたが、少しずつ静かになり、ついに動かなくなった。

「し、死んだ......の?」

 おはぎが瀬川から離れる。瀬川の顔面には、痛々しい噛み跡が......ない。

「顔の魂に穴を空けて、邪気を無理やり放出させた。この娘は助かる」

「邪気?」

「お前の腕からトゲが出ただろう? アレはお前の邪気そのもの。大きすぎる負の感情がこの娘の悪の感情を増幅させたんだ」

「私の......せいなの......?」

「ああ、そうだ」

 おはぎは偽らなかった。それが、私を少しだけ冷静にしてくれた。

「ソイツ、どうなるの?」

「顔の魂に穴が空けば顔が動かなくなる。つまり、お前はこの娘から......」

「表情を、奪った、のね......?」

 笑い、泣き、悲しみ、苦しむ。それらを伝えることが瀬川にはもうできない。二度と。

 瀬川に最後に張り付いた表情は、絶望だった。

「俺の姿はお前にしか見えん。つまり、この場で起きたことは俺とお前にしか理解できん」

 それは、私にとって朗報ではなく、これから先背負っていくものの宣告だった。
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