おはぎとアリサ、ついに……
「おはぎ、私......アナタを頼るどころか、拒絶した。なんで、助けに来てくれたの?」
「拒絶されたら、俺にはお前を護る権利が無くなるのか? 猫から自由を奪うもんじゃない」
やっぱり。コイツ、猫だ。どこまでいっても、コイツはおはぎ。
なら、私も私を通す。
「アナタとは、やっぱり友達になれない」
「なぜだ? 理解できんな。そんなに信用ならんか? 俺は?」
「逆よ。アナタは、私を救ってくれた。ちゃんと背負うべきものを、背負えと言ってくれた。だから。アナタとは......」
頭の中を真っ白にする。考えることじゃない。理屈でもない。心のままに。
「恋人に、なりたいの」
おはぎがどんなリアクションをするのか、正直、興味があった。実際のリアクションは。
「そう来たか」
だった。反応、薄ッ!!
化け猫に、勇気出して告白したのよ、こっちは!
しかもこんな大事件の後に!!
「で? ど、どうなのよ? 早く返事しなさいよ!」
「分かった、付き合おう」
......え? そこは、ちょっと考えさせてくれ、とか、最低限間を空ける、とか、そういう流れじゃないの?
即答って! ......でも。
「嬉しい」
本音。今までの人生で一番の。いえ、初めての。
「俺もだ」
私たちはしばらく見つめ合った。
いざ付き合うとなると、色々なことが気になってくる。特に気になったのが、呼び名だ。
アリサ。
これは良い。私にはニックネームなんてないし、呼び捨てはおはぎらしい。
でも。
おはぎ。
......彼氏よ? 相思相愛の。黒猫だからおはぎって、単純すぎない?
おはぎに呼び名を考えようと提案してみた。
「名前? タマとか、ムギとかか?」
猫め。
「もっと、カッコいい名前、ないの?」
「ぬう」
珍しく考えた末、おはぎは、
「窮鼠討伐王」
と、真顔で答えた。
猫要素減ってない! それより、まさかの中二!!
おはぎはおはぎだ、諦めよう。
「ねえ、明日は何曜日か、アナタにもわかるわよね?」
「土曜日だな。人間は大半が仕事を休む日だ」
「そう! だから......」
私は胸をいっぱいにして、ようやく言った。
「デートに行こう! 動物園とか、どう?」
動物園。少し子供じみていると自分でも思う。
でも、円満な家族の思い出がない私にとって、一番の憧れの場所だった。
だって、遊園地や水族館なら大人になっても恋人と行ける雰囲気があるけど、動物園は家族連れのイメージが強いんだもの。
その点、中学生で彼氏ができたのは大きい気がする。
「見ろアリサ、デカい鳥がいる。焼いたら美味いだろうな!」
フラミンゴを焼いて食う発想の彼氏、だけど。
「あれ? あれって、戸塚先生じゃない?」
「誰だ?」
「貴方が知るわけ無かったわね。ウチの学校のカウンセラーよ」
「アヤツ、ただ者ではないな」
「どこが? タダの善良な一般市民よ」
「ではなぜ、幽霊と仲良しなんだ?」
「幽霊ですって!?」
慌ててスマホを取り出し、カメラ越しに先生の方を見る。確かに、先生の横に高校生くらいの女が見える。先生は、なにやらうれしそうに幽霊に話しかけている。デート中みたいね。それより!
とうとう見つけた、私と同じチカラを持った人を! もしかしたら、先生はおはぎの次に私を理解してくれるかもしれない。
「おはぎ、先生は能力者なの?」
「だと良いがな。お前くらいのチカラがあれば、憑かれても気力が失せるくらいだろうが、普通の人間並みならかなり危険だぞ。命に関わる」
「そんな!」
「とりあえず男にチカラがあるか確認だ。もしないようなら、俺が幽霊をやっつけてやる」
「チカラがあったら?」
「人の恋路を邪魔するものではない」