Episode 30 CLEARANCE
崩れた建物の中。
響くのは、命を乞う悲鳴だけ。
「た、頼む......」
震える声。
「殺さないでくれ......!」
額には、まだARKの銃口。
レートは何も答えない。
誰もが指一本動かせない。
――カチャ――
ARKをゆっくりと下ろした。
「......え」
「ボ......ボス......」
呆然と顔を上げる。
助かった。
そう思った瞬間。
――ピッ――
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FROM : DARIUS
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『......レートか』
『一件』
『聞こう』
『回収を頼む』
『――誰だ』
『ZIGZAG。頭だ』
向こう側で、小さく笑う声が聞こえた。
『生きてるんだな』
『ああ』
『珍しいじゃねぇか』
『売却で』
『他にもいるか?』
『構成員数人とSBTが数枚』
レートは淡々と答える。
ダリウスはすぐに理解する。
『分かった。ギルドで回収しよう』
『頼む』
『その後はTRADERへ引き渡す。場所は?』
『クランツに送らせる』
『了解した』
――ピッ――
通信は数秒で終わった。
男は状況を理解できていない。
「ダリウス......!?」
「お前たちが先に仕掛けてきた」
レートは静かに男を見下ろす。
「だから潰した」
ただ、事実だけを告げる。
「そ......そんな......」
逃げられない。
ZIGZAGは終わった。
「――っ!!!」
声にならない叫びが響く。
「増援は来ないな」
クランツが周囲を見渡す。
「ああ」
レートは頷いた
「ダリウスへの連絡は完了してる」
「了解」
ノアは大きく伸びをした。
「やっと帰れるー」
「腹減った」
「さっきまで戦ってたんだけど?」
「だからだよ」
クランツが小さく笑う。
「いつものことだ」
ゼロは拘束された男を一瞥すると、静かに踵を返した。
「回収班が来る。我々の仕事は終わりだ」
「「「了解」」」
レートはARKをホルスターへ収める。
瓦礫の隙間から差し込む夕陽が、四人の背中を照らしていた。
歩き出したレートは、小さく口を開く。
「帰るぞ」
「やっとチャイラテが飲める......」
クランツが並ぶ。
「あたしのポテチ、一袋無くなったー」
「お前が食べたんだろうが」
「記憶にない!」
「記憶に在れ」
ノアとレートが騒がしく笑う。
「いつも通りだな」
ゼロは呆れながらも目を細めていた。
ORPHANへ続く帰り道。
――ブオォォン――
背後の崩れた廃墟。
遠くから、車両のエンジン音が近付いていく。
日常は、ゆっくりと歩を進めていた。