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Episode 7 MOVEMENT

輸送車は街道を走っていた。
窓の外を流れていく景色は、ORPHANとはどこか違う。

崩れた料金所。
蔦に覆われた道路。
朽ちた建物。

かつて市場を支えていた巨大な中継施設は、今は静かに存在していた。
荷台のノアは、頬杖をつきながら周囲を眺める。

「外って、やっぱり静かだねー」

「ORPHANが賑やか過ぎるだけだ」

クランツが短く返す。

「私は、あの街が好きですよ」

クロスは穏やかに微笑む。

「そうなのか?」

レートが視線を向ける。

「ええ」

クロスは窓の外を眺めながら呟く。

「笑っている人が多い。市場というものは、価値だけでは動きません。人がいて、初めて市場になります」

ノアは首を傾げる。

「商人って、みんなそんなこと考えてるの?」

クロスは少しだけ笑う。

「さあ?私がそう思っているだけです」

「......物流が止まれば、市場は止まる」

クランツが静かに口を開いた。

「はい」

クロスは頷く。

「価値は、届いて初めて価値になります」

――キィッ――

言葉を遮るように、輸送車がゆっくりと減速する。

「停止します」

運転手の声が車内へ響いた。

「前方に放棄車両を確認」

――バタンッ――

三人は即座に反応する。

街道の中央。
一台の小型車両。

事故の痕跡はない。
窓ガラスも割れていない。

ノアが覗き込む。

「誰もいないよ?」

クロスは車内から周囲を見回し、静かに言う。

「積荷より先に安全確認を」

レートは頷いた。

「無理はしないでください」

クランツは車両を確認する。
異常はない。

レートたちは車両へ手を掛ける。

「押すぞ」

「うん」

ノアが反対側へ回る。

クランツは動かなかった。
足元へ視線を落としている。

土に刻まれたタイヤ痕。

「......」

「どうした?」

レートが声をかける。
クランツは視線を上げない。

「新しい。数時間前だ」

レートの目が鋭くなる。

「クランツ。ノア。周囲を警戒」

「「了解」」

二人の声が重なる。

人の気配はどこにもない。
放棄車両を道路脇へ寄せる。

――バタン――

一行は再び輸送車へ乗り込んだ。

――ブオォン――

何事もなかったように、再び街道を進み始める。

その姿が見えなくなる頃。

放棄車両から遠くない距離。
一人の影がゆっくりと姿を現した。

黒いフード。
表情は見えない。

耳元の通信機へ静かに囁く。

『対象、予定ルートを進行中――』

小さく言葉を続けた。

『予定通りです』

――ピッ――

人物は街道とは反対方向へ歩き出す。

さらに遠く。
崩れたビルの屋上。

もう一人。
別の監視者が静かに双眼鏡を下ろす。

輸送隊は気付かない。

その行く先には――
幾つもの視線が集まり始めていた。
あとがき朔來 織
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 『SOUL TR@DE』は毎日18:00更新予定です。 面白いと思っていただけましたら、 評価・ブックマークで応援いただけると励みになります。 "SEE YOU AT THE NEXT MARKET."
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SOUL TR@DE作者:朔來 織
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輸送車は街道を走っていた。
窓の外を流れていく景色は、ORPHANとはどこか違う。

崩れた料金所。
蔦に覆われた道路。
朽ちた建物。

かつて市場を支えていた巨大な中継施設は、今は静かに存在していた。
荷台のノアは、頬杖をつきながら周囲を眺める。

「外って、やっぱり静かだねー」

「ORPHANが賑やか過ぎるだけだ」

クランツが短く返す。

「私は、あの街が好きですよ」

クロスは穏やかに微笑む。

「そうなのか?」

レートが視線を向ける。

「ええ」

クロスは窓の外を眺めながら呟く。

「笑っている人が多い。市場というものは、価値だけでは動きません。人がいて、初めて市場になります」

ノアは首を傾げる。

「商人って、みんなそんなこと考えてるの?」

クロスは少しだけ笑う。

「さあ?私がそう思っているだけです」

「......物流が止まれば、市場は止まる」

クランツが静かに口を開いた。

「はい」

クロスは頷く。

「価値は、届いて初めて価値になります」

――キィッ――

言葉を遮るように、輸送車がゆっくりと減速する。

「停止します」

運転手の声が車内へ響いた。

「前方に放棄車両を確認」

――バタンッ――

三人は即座に反応する。

街道の中央。
一台の小型車両。

事故の痕跡はない。
窓ガラスも割れていない。

ノアが覗き込む。

「誰もいないよ?」

クロスは車内から周囲を見回し、静かに言う。

「積荷より先に安全確認を」

レートは頷いた。

「無理はしないでください」

クランツは車両を確認する。
異常はない。

レートたちは車両へ手を掛ける。

「押すぞ」

「うん」

ノアが反対側へ回る。

クランツは動かなかった。
足元へ視線を落としている。

土に刻まれたタイヤ痕。

「......」

「どうした?」

レートが声をかける。
クランツは視線を上げない。

「新しい。数時間前だ」

レートの目が鋭くなる。

「クランツ。ノア。周囲を警戒」

「「了解」」

二人の声が重なる。

人の気配はどこにもない。
放棄車両を道路脇へ寄せる。

――バタン――

一行は再び輸送車へ乗り込んだ。

――ブオォン――

何事もなかったように、再び街道を進み始める。

その姿が見えなくなる頃。

放棄車両から遠くない距離。
一人の影がゆっくりと姿を現した。

黒いフード。
表情は見えない。

耳元の通信機へ静かに囁く。

『対象、予定ルートを進行中――』

小さく言葉を続けた。

『予定通りです』

――ピッ――

人物は街道とは反対方向へ歩き出す。

さらに遠く。
崩れたビルの屋上。

もう一人。
別の監視者が静かに双眼鏡を下ろす。

輸送隊は気付かない。

その行く先には――
幾つもの視線が集まり始めていた。
あとがき朔來 織
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