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Episode 17 RETURN

翌朝。
SERAPHは昨日と変わらず動き続けていた。

街全体が、一つの生命維持装置のように脈打っている。
ホテルを出た三人は、クロス商会が手配した車へ向かって歩いていた。

「結局さー」

ノアが両手を頭の後ろで組みながら言う。

「SERAPHって病院しかないね」

「病院じゃない」

クランツが答える。

「病院を中心に街が作られてる」

「同じじゃない?」

「違う」

「そうなの?」

「病院しかない街なら、人は住めない」

ノアは辺りを見回す。

商店。
飲食店。
宿泊施設。

生活に必要なものは揃っていた。

「確かに」

「患者だけが暮らしてるわけじゃない」

その視線は、街ではなく前を向いていた。
しばらく誰も話さない時間が続く。

「......勘なんだが」

レートが口を開いた。

「何だ」

クランツがレートを見る。

「HOST――」

「HOSTがどうかした?」

「あいつは、敵じゃない気がする」

ノアが首を傾げた。

「え?昨日あんなに戦ったのに?」

「だから勘だ」

レートは肩を竦める。

「理由はない」

クランツは少しだけ考えた。

「......俺も近いことは思っていた。敵なら、もっとやり方はあった」

レートも頷く。

「ああ。試してた。そんな感じがした」

「でも何のため?」

ノアが聞き返す。
レートは苦笑した。

「それが分かったら苦労しない」

「またそれ。便利な言葉だねー」

「便利だからな」

三人は笑った。
歩きながら、クランツが携帯端末を取り出す。

――ピッ――

─────────────────
>> COMMUNICATION

CONNECTED : ZERO FORTRESS
STATUS : SECURE
─────────────────

『終わったか』

『ああ』

クランツは歩みを止めない。

『クロスと交渉した。ゼロ、例のトークン――五千万コスト』

『......了承だ。クロスから正式な連絡が入れば応じる。受け渡しはこちらで行う』

『了解』

クランツが頷く。

『クロス側から使いを出すそうだ』

『了解』

─────────────────
>> COMMUNICATION

STATUS : DISCONNECTED
─────────────────

――ピッ――

ノアが苦笑する。

「相変わらず短いね」

「十分だ」

クランツは端末をしまう。

「交渉は成立した」

レートも小さく頷いた。

「依頼は終わったな」

「五千万......」

ノアはまだ呟いていた。

「ポテチ何袋買えるんだろー」

「食い切れないぐらい買える」

レートが即答する。

「すごい」

「そこなのか」

クランツが呆れる。

「そこだよ」

車へ乗り込む。

――ブオォン――

エンジンが始動する。
SERAPHの街並みが、ゆっくりと後ろへ流れていく。

ノアは窓へ額を預けた。
数分もしないうちに、小さく寝息を立て始める。
レートは窓の外を眺めていた。
遠ざかる白い街。

クロス。
HOST。
五千万のトークン。

今回の依頼は終わった。
だが、何一つ解決した気はしない。

「......結局」

レートが呟く。

「最後まで分からなかったな」

クランツは前を向いたまま答える。

「全部分かる依頼の方が珍しい」

「違いない」

静かな車内に、それ以上の会話はなかった。
やがて高速道路を抜ける。
見慣れた景色が少しずつ増えていく。

ノアが突然目を覚ました。

「着いた?」

「まだだ」

「ご飯?」

「まだだ」

「じゃあ寝る」

再び目を閉じる。
レートは思わず笑った。

「本当に自由だな」

「今さらだ」

クランツも笑う。

「まもなくORPHANへ到着します」

レートは背もたれへ身体を預ける。

「帰ったら飯でも食うか」

ノアが勢いよく起き上がる。

「行く!」

「寝てたくせに」

「ご飯は別」

「昨日も聞いた」

クランツが静かに息を吐く。

「......現金なやつだ」

笑い声が車内へ広がる。
SERAPHでの護衛任務は、静かに幕を閉じた。
あとがき朔來 織
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 『SOUL TR@DE』は毎日18:00更新予定です。 面白いと思っていただけましたら、 評価・ブックマークで応援いただけると励みになります。 "SEE YOU AT THE NEXT MARKET."
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SOUL TR@DE作者:朔來 織
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翌朝。
SERAPHは昨日と変わらず動き続けていた。

街全体が、一つの生命維持装置のように脈打っている。
ホテルを出た三人は、クロス商会が手配した車へ向かって歩いていた。

「結局さー」

ノアが両手を頭の後ろで組みながら言う。

「SERAPHって病院しかないね」

「病院じゃない」

クランツが答える。

「病院を中心に街が作られてる」

「同じじゃない?」

「違う」

「そうなの?」

「病院しかない街なら、人は住めない」

ノアは辺りを見回す。

商店。
飲食店。
宿泊施設。

生活に必要なものは揃っていた。

「確かに」

「患者だけが暮らしてるわけじゃない」

その視線は、街ではなく前を向いていた。
しばらく誰も話さない時間が続く。

「......勘なんだが」

レートが口を開いた。

「何だ」

クランツがレートを見る。

「HOST――」

「HOSTがどうかした?」

「あいつは、敵じゃない気がする」

ノアが首を傾げた。

「え?昨日あんなに戦ったのに?」

「だから勘だ」

レートは肩を竦める。

「理由はない」

クランツは少しだけ考えた。

「......俺も近いことは思っていた。敵なら、もっとやり方はあった」

レートも頷く。

「ああ。試してた。そんな感じがした」

「でも何のため?」

ノアが聞き返す。
レートは苦笑した。

「それが分かったら苦労しない」

「またそれ。便利な言葉だねー」

「便利だからな」

三人は笑った。
歩きながら、クランツが携帯端末を取り出す。

――ピッ――

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『終わったか』

『ああ』

クランツは歩みを止めない。

『クロスと交渉した。ゼロ、例のトークン――五千万コスト』

『......了承だ。クロスから正式な連絡が入れば応じる。受け渡しはこちらで行う』

『了解』

クランツが頷く。

『クロス側から使いを出すそうだ』

『了解』

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ノアが苦笑する。

「相変わらず短いね」

「十分だ」

クランツは端末をしまう。

「交渉は成立した」

レートも小さく頷いた。

「依頼は終わったな」

「五千万......」

ノアはまだ呟いていた。

「ポテチ何袋買えるんだろー」

「食い切れないぐらい買える」

レートが即答する。

「すごい」

「そこなのか」

クランツが呆れる。

「そこだよ」

車へ乗り込む。

――ブオォン――

エンジンが始動する。
SERAPHの街並みが、ゆっくりと後ろへ流れていく。

ノアは窓へ額を預けた。
数分もしないうちに、小さく寝息を立て始める。
レートは窓の外を眺めていた。
遠ざかる白い街。

クロス。
HOST。
五千万のトークン。

今回の依頼は終わった。
だが、何一つ解決した気はしない。

「......結局」

レートが呟く。

「最後まで分からなかったな」

クランツは前を向いたまま答える。

「全部分かる依頼の方が珍しい」

「違いない」

静かな車内に、それ以上の会話はなかった。
やがて高速道路を抜ける。
見慣れた景色が少しずつ増えていく。

ノアが突然目を覚ました。

「着いた?」

「まだだ」

「ご飯?」

「まだだ」

「じゃあ寝る」

再び目を閉じる。
レートは思わず笑った。

「本当に自由だな」

「今さらだ」

クランツも笑う。

「まもなくORPHANへ到着します」

レートは背もたれへ身体を預ける。

「帰ったら飯でも食うか」

ノアが勢いよく起き上がる。

「行く!」

「寝てたくせに」

「ご飯は別」

「昨日も聞いた」

クランツが静かに息を吐く。

「......現金なやつだ」

笑い声が車内へ広がる。
SERAPHでの護衛任務は、静かに幕を閉じた。
あとがき朔來 織
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