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Episode 18 HOME

17区――ORPHAN

見慣れた景色が窓の向こうへ広がる。

古びた建物。
雑多な看板。
通りを歩く人々。

SERAPHの整然とした街並みとは違う。
だが、不思議とこちらの方が落ち着いた。

「帰ってきたー!」

車が止まるより早く、ノアが勢いよく飛び降りる。
大きく背伸びをすると、気持ち良さそうに空を見上げた。

「やっぱりORPHANが一番だねー」

「何がだ」

レートが荷物を肩へ掛ける。

「全部」

ノアは笑う。

「空気も。人も。ご飯も」

「最後だけが本音だろ」

クランツが呆れながら呟く。

「バレた?」

ノアは悪びれる様子もなく笑った。

「お腹空いたー!」

「さっき帰ってきたばっかりだぞ」

「移動したらお腹空くじゃん」

「意味が分からん」

「育ち盛り」

「だったら大きくなれ」

三人は笑いながら、大通りを歩いていく。
夕暮れの街は、仕事帰りの人々で賑わっていた。

屋台から漂う香ばしい匂い。
店先で笑い合う常連客。
市場の喧騒。

ようやく帰ってきた。
そんな実感が胸へ染み込んでいく。

馴染みの食堂。
席へ着いた瞬間、ノアは迷わずメニューを開いた。

「今日は豪華にいく」

「いつもだろ」

レートが呆れる。

「今日は護衛終わった記念!」

「毎回何かの記念にしてるな」

「人生は記念日だらけ」

「意味が分からん」

クランツはチャイラテを注文した。
ノアは料理を三品追加する。
レートは定食を頼んだ。

料理が運ばれてくる。
ノアは嬉しそうに目を輝かせた。

「いただきます!」

三人は食事を始める。
戦闘の話はほとんど出なかった。

「おいしー!!」

「どこでも同じ反応だな」

「ひほくふぁい?」

ノアはレートの言葉に頬を膨らませる。

「ノア。食べながら話すな」

クランツが優しく叱る。

他愛もない会話だけが続く。
SERAPHの食事とどちらが上か。
それが妙に心地良かった。

「そういえば」

ノアが口を開く。

「五千万コストって、ポテチ何袋?」

「まだ言ってる」

レートが笑う。

「気になるもん」

クランツは静かにチャイラテを飲んだ。

「一生食っても余る」

「夢叶ったー」

「お前にとってはな」

――ピピッ――

─────────────────
>> COMMUNICATION

CONNECTED : ZERO FORTRESS
STATUS : SECURE
─────────────────

『終わったか』

『ああ』

クランツは短く答える。
ゼロも無駄な前置きをしない。

『クロスから正式な連絡が入った。三日後、例のトークンを受け取りに使いが来る』

『了解』

『それまで保管。受け渡しはこちらで行う』

『了解』

――ピッ――

ノアが首を傾げる。

「もう終わった?」

「終わった」

「相変わらず、必要なことしか喋らんな」

レートが苦笑する。

「それでいい」

クランツが頷いた。

食事を終える。
店を出る頃には、辺りはすっかり夜になっていた。

翌日。

――ORPHANS GUILD

「ただいまー!」

ノアが手を振る。

「ここは家じゃない」

レートが突っ込む。

「似たようなもんじゃん」

受付には、いつもの顔ぶれがいた。

「相変わらず騒がしいな」

ダリウス・ベクター。

その隣では、エレノア・プットが帳簿を整理している。
ノアが手を振る。

「無事で何よりだ」

ダリウスが小さく笑う。
エレノアが三人へ歩み寄る。

「護衛任務、お疲れ様でした。報酬はこちらになります」

――ピッ――

─────────────────
>> PAYMENT

STATUS : COMPLETE
─────────────────

「依頼中、気になる出来事はありましたか?」

エレノアは三人の表情を見ながら尋ねた。

「......」

レートとクランツが顔を見合わせる。

「特には」

レートが答える。

「ご飯美味しかった!」

「そういう意味じゃない」

「ふふっ」

エレノアが苦笑する。
クランツも口を開いた。

「依頼自体は問題なく終わった」

「そうですか」

エレノアは安心したように微笑んだ。

「――しばらく警戒しとけ」

レートがダリウスに視線を向ける。

「何かあったのか?」

「確証はねぇ。ただの勘だ。だが――」

そこで言葉を一度切る。

「お前ら、どこかの連中に見られてるぞ」

ギルドにダリウスの声が静かに響く。

レートは何も答えなかった。
クランツも表情を変えない。

「......誰によ?」

ノアだけが不思議そうに二人を見ている。

「はぁ......ダリウスの勘、か」

レートが心底うんざりした顔をする。

「ああ。長くこの仕事をやってるとな......嫌な勘ほど当たる」

「知ってる」

「確定演出だろ」

「フラグ立ったねー」

「......お前ら、ギルマスに対して雑だな?」

笑い声が響く。

その声とは裏腹に――
予感は現実へ形を変えていく。
あとがき朔來 織
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 『SOUL TR@DE』は毎日18:00更新予定です。 面白いと思っていただけましたら、 評価・ブックマークで応援いただけると励みになります。 "SEE YOU AT THE NEXT MARKET."
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SOUL TR@DE作者:朔來 織
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17区――ORPHAN

見慣れた景色が窓の向こうへ広がる。

古びた建物。
雑多な看板。
通りを歩く人々。

SERAPHの整然とした街並みとは違う。
だが、不思議とこちらの方が落ち着いた。

「帰ってきたー!」

車が止まるより早く、ノアが勢いよく飛び降りる。
大きく背伸びをすると、気持ち良さそうに空を見上げた。

「やっぱりORPHANが一番だねー」

「何がだ」

レートが荷物を肩へ掛ける。

「全部」

ノアは笑う。

「空気も。人も。ご飯も」

「最後だけが本音だろ」

クランツが呆れながら呟く。

「バレた?」

ノアは悪びれる様子もなく笑った。

「お腹空いたー!」

「さっき帰ってきたばっかりだぞ」

「移動したらお腹空くじゃん」

「意味が分からん」

「育ち盛り」

「だったら大きくなれ」

三人は笑いながら、大通りを歩いていく。
夕暮れの街は、仕事帰りの人々で賑わっていた。

屋台から漂う香ばしい匂い。
店先で笑い合う常連客。
市場の喧騒。

ようやく帰ってきた。
そんな実感が胸へ染み込んでいく。

馴染みの食堂。
席へ着いた瞬間、ノアは迷わずメニューを開いた。

「今日は豪華にいく」

「いつもだろ」

レートが呆れる。

「今日は護衛終わった記念!」

「毎回何かの記念にしてるな」

「人生は記念日だらけ」

「意味が分からん」

クランツはチャイラテを注文した。
ノアは料理を三品追加する。
レートは定食を頼んだ。

料理が運ばれてくる。
ノアは嬉しそうに目を輝かせた。

「いただきます!」

三人は食事を始める。
戦闘の話はほとんど出なかった。

「おいしー!!」

「どこでも同じ反応だな」

「ひほくふぁい?」

ノアはレートの言葉に頬を膨らませる。

「ノア。食べながら話すな」

クランツが優しく叱る。

他愛もない会話だけが続く。
SERAPHの食事とどちらが上か。
それが妙に心地良かった。

「そういえば」

ノアが口を開く。

「五千万コストって、ポテチ何袋?」

「まだ言ってる」

レートが笑う。

「気になるもん」

クランツは静かにチャイラテを飲んだ。

「一生食っても余る」

「夢叶ったー」

「お前にとってはな」

――ピピッ――

─────────────────
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『終わったか』

『ああ』

クランツは短く答える。
ゼロも無駄な前置きをしない。

『クロスから正式な連絡が入った。三日後、例のトークンを受け取りに使いが来る』

『了解』

『それまで保管。受け渡しはこちらで行う』

『了解』

――ピッ――

ノアが首を傾げる。

「もう終わった?」

「終わった」

「相変わらず、必要なことしか喋らんな」

レートが苦笑する。

「それでいい」

クランツが頷いた。

食事を終える。
店を出る頃には、辺りはすっかり夜になっていた。

翌日。

――ORPHANS GUILD

「ただいまー!」

ノアが手を振る。

「ここは家じゃない」

レートが突っ込む。

「似たようなもんじゃん」

受付には、いつもの顔ぶれがいた。

「相変わらず騒がしいな」

ダリウス・ベクター。

その隣では、エレノア・プットが帳簿を整理している。
ノアが手を振る。

「無事で何よりだ」

ダリウスが小さく笑う。
エレノアが三人へ歩み寄る。

「護衛任務、お疲れ様でした。報酬はこちらになります」

――ピッ――

─────────────────
>> PAYMENT

STATUS : COMPLETE
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「依頼中、気になる出来事はありましたか?」

エレノアは三人の表情を見ながら尋ねた。

「......」

レートとクランツが顔を見合わせる。

「特には」

レートが答える。

「ご飯美味しかった!」

「そういう意味じゃない」

「ふふっ」

エレノアが苦笑する。
クランツも口を開いた。

「依頼自体は問題なく終わった」

「そうですか」

エレノアは安心したように微笑んだ。

「――しばらく警戒しとけ」

レートがダリウスに視線を向ける。

「何かあったのか?」

「確証はねぇ。ただの勘だ。だが――」

そこで言葉を一度切る。

「お前ら、どこかの連中に見られてるぞ」

ギルドにダリウスの声が静かに響く。

レートは何も答えなかった。
クランツも表情を変えない。

「......誰によ?」

ノアだけが不思議そうに二人を見ている。

「はぁ......ダリウスの勘、か」

レートが心底うんざりした顔をする。

「ああ。長くこの仕事をやってるとな......嫌な勘ほど当たる」

「知ってる」

「確定演出だろ」

「フラグ立ったねー」

「......お前ら、ギルマスに対して雑だな?」

笑い声が響く。

その声とは裏腹に――
予感は現実へ形を変えていく。
あとがき朔來 織
最後までお読みいただき、ありがとうございます。 『SOUL TR@DE』は毎日18:00更新予定です。 面白いと思っていただけましたら、 評価・ブックマークで応援いただけると励みになります。 "SEE YOU AT THE NEXT MARKET."
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