Episode 10 HOST
レートは黒いカードを指先で挟み、そのまま高架橋の先を見据えた。
「行くぞ」
三人は車に戻らず、同時に歩き出す。
クロスも黙って後に続いた。
崩れた階段を登る。
錆び付いた鉄骨。
割れたコンクリート。
ノアが辺りを見回した。
「......誰もいないね」
「いや......見られてる――」
クランツは周囲を警戒したまま答える。
「ようこそ――」
低い声が背後から響く。
「――っ!?」
全員が一斉に振り向く。
そこには一人の男が立っていた。
黒いロングコート。
顔を覆う無機質な仮面。
年齢も表情も分からない。
その佇まいは異様に自然だった。
まるで最初からそこにいたかのように。
――ザッ――
「お前がパーティーの主催者か?」
レートが低い声で男へ向き合う。
「いいえ。私は招待状を届けただけです」
男は静かに首を横へ振る。
ノアが眉をひそめる。
「じゃあ、アンタ誰?」
「ふふっ――」
男は小さく笑った。
「その質問に答える権限はありません」
「つまり、お前は使いだ」
「そう思いたければ、それで構いません」
クランツの言葉を男は否定しない。
「目的は何です」
クロスは静かに男を見つめた。
男の仮面がゆっくりとクロスへ向く。
「――あなたです」
ノアが思わずクロスを見る。
レートも視線を動かさない。
「荷物ではないのですか」
「興味ありません」
男は即座に答える。
「我々が望んでいるのは、あなたと話す機会です」
「......私ですか」
「クロス商会長」
男は言葉を続ける。
「いかがでしょうか」
クロスは首を横へ振る。
「お断りします」
「――でしょうね」
男はその返答を予想していたように頷いた。
「だからこそ、お迎えに上がりました」
悠然とした姿。
淡々とした言動。
「ずいぶん強引だねー」
ノアが小さく舌打ちする。
「商人は時間を大切にします」
男は初めてノアへ視線を向けた。
「我々も同じです」
男はゆっくりと腰へ手を伸ばした。
レートの目が細くなる。
クランツも重心を落とした。
ノアは静かにGAINへ手を添える。
男は武器を抜かない。
代わりに。
小さな通信端末を取り出した。
――ピッ――
『接触完了』
そして――
堂々と告げた。
『――HOSTより報告』
男は再びレート達を見渡した。
『対象との対面を完了しました』
――ピッ――
「それでは――」
仮面の奥。
小さな笑い声が漏れる。
「パーティーを始めましょう」