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「山⋯⋯ですか」
 十年ぶりに来た教え子からの連絡を、先生は無碍にしませんでした。
 美しい便箋びんせんに、硬筆のお手本のような字で書かれた先生の返信には、こう書かれていました。

「ぜひ見つけた答えを、あなたの口から聞かせていただけませんか」
 と。

 そして今日、私は先生の家を訪ねて、ようやく宿題の答えを伝えたのでした。

「長年考え抜いたにしては、至って普通な答えですね」
 小学生にもわかるように、ハッキリと大きく話すのはあの頃と変わりません。
 私はなんだか懐かしくなりました。
 あの頃と比べて貫禄は増しましたが、変わらず先生として私の前にいらっしゃる。
 その姿にホッとしました。

「なぜ、その答えなのでしょうか?」
 小学生にも常に敬語で話していた先生は、十年経った今でも丁寧に質問を投げてくれました。私は、自分の考えを口にします。

「最初は『海』だと思いました。雪に月、花とくれば、海はぴったりですから」
「そうですね」
「ですが、海だったら。似たような意味合いの風花雪月ふうかせつげつや花鳥風月かちょうふうげつに使われないのは、何故なのだろうと」
「⋯⋯ほう?」
 先生は面白そうな顔をしながら、顎に手を当てました。目で先を促す先生に、私は続きを口にします。

「そこで思い当たったんです。この言葉が作られた頃の海は、夏に行くところではないのかもしれない、と。調べたところ、最初に雪と月と花、三つ揃って出てくるのは万葉集だと知ったんです」
「そうですか。よく思い当たりましたね。⋯⋯それで調べた結果は、如何でしたか?」
 先生に褒められた私は、子どもの時と同じように嬉しくなります。 
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せんせい、しゅくだいのこたえあわせをしましょう作者:雪本風香
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「山⋯⋯ですか」
 十年ぶりに来た教え子からの連絡を、先生は無碍にしませんでした。
 美しい便箋びんせんに、硬筆のお手本のような字で書かれた先生の返信には、こう書かれていました。

「ぜひ見つけた答えを、あなたの口から聞かせていただけませんか」
 と。

 そして今日、私は先生の家を訪ねて、ようやく宿題の答えを伝えたのでした。

「長年考え抜いたにしては、至って普通な答えですね」
 小学生にもわかるように、ハッキリと大きく話すのはあの頃と変わりません。
 私はなんだか懐かしくなりました。
 あの頃と比べて貫禄は増しましたが、変わらず先生として私の前にいらっしゃる。
 その姿にホッとしました。

「なぜ、その答えなのでしょうか?」
 小学生にも常に敬語で話していた先生は、十年経った今でも丁寧に質問を投げてくれました。私は、自分の考えを口にします。

「最初は『海』だと思いました。雪に月、花とくれば、海はぴったりですから」
「そうですね」
「ですが、海だったら。似たような意味合いの風花雪月ふうかせつげつや花鳥風月かちょうふうげつに使われないのは、何故なのだろうと」
「⋯⋯ほう?」
 先生は面白そうな顔をしながら、顎に手を当てました。目で先を促す先生に、私は続きを口にします。

「そこで思い当たったんです。この言葉が作られた頃の海は、夏に行くところではないのかもしれない、と。調べたところ、最初に雪と月と花、三つ揃って出てくるのは万葉集だと知ったんです」
「そうですか。よく思い当たりましたね。⋯⋯それで調べた結果は、如何でしたか?」
 先生に褒められた私は、子どもの時と同じように嬉しくなります。 
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