ホーム狭間
← 前の話目次次の話 →

狭間

 目の前に、大きな橋があった。
 長い年月、丁寧に手入れされてきたのだろう。木肌は艶やかに光っていた。
「すげぇ...」
 シテはその橋を見て、思わず声を漏らした。

『此処は、現世と死後を繋ぐ道だ』

 そう言いながら、イアは橋の下に置かれてある古びた木で造られた小さな舟に乗る。それに続き、シテも乗り込んだ。
 ギシッと木の軋む音が聞こえた。

『この橋を越える者は、皆やがて死者となる』

「じゃあ、あの松の木は?」
 シテが指差した先には、三つの松の木が存在していた。その松を見て、イアは「あぁ」と頷く。

『あれは一の松、ニの松、三の松とある尊きモノだ』
「へぇ?」
『死者は皆、その松に見送られて舞台へ向かう』
 イアはゆっくりと水に触れた。
 チャポン...と静かに音が聞こえた。

『一の松は、生者が最後に見る場所』
『二の松は、死を迎えた者が越える場所』
『三の松は、もう戻れぬ者が旅立つ場所』

「この橋は、死者と生者を繋ぐって言ってたのに、生きてるのか?」
『...お前にはまだ早い話だった』
「なあ、俺は?」
『橋を渡る者は、舞台へ向かう』
「...うん?」
『橋の下をくぐる者は、舞台を見届ける』
「イア、お前結構説明下手?」
『真面目に言っている。分からないのならお前の理解力の問題だろう』
「むずかしいー、わかんねぇ...寝ていい?」
『そこの橋の付近に宿がある。眠れ』
 イアが水面を軽く叩く。パン、と乾いた音が橋の下に響いた。
「え、おーい!イア!」
 次の瞬間には、
 もう宿のベッドに寝転がっていた。
「えぇ...まじでなに...意味わかんない」
 そう言いながらも、シテは眠りに落ちた。

『ふっ、さあ、演目の開幕だ』
 イアはそらから世界を見下ろした。
シェア
← 前の話
停止
次の話 →
夢路
作者:結弦
目次を見る
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム狭間
← 前の話目次次の話 →

狭間

 目の前に、大きな橋があった。
 長い年月、丁寧に手入れされてきたのだろう。木肌は艶やかに光っていた。
「すげぇ...」
 シテはその橋を見て、思わず声を漏らした。

『此処は、現世と死後を繋ぐ道だ』

 そう言いながら、イアは橋の下に置かれてある古びた木で造られた小さな舟に乗る。それに続き、シテも乗り込んだ。
 ギシッと木の軋む音が聞こえた。

『この橋を越える者は、皆やがて死者となる』

「じゃあ、あの松の木は?」
 シテが指差した先には、三つの松の木が存在していた。その松を見て、イアは「あぁ」と頷く。

『あれは一の松、ニの松、三の松とある尊きモノだ』
「へぇ?」
『死者は皆、その松に見送られて舞台へ向かう』
 イアはゆっくりと水に触れた。
 チャポン...と静かに音が聞こえた。

『一の松は、生者が最後に見る場所』
『二の松は、死を迎えた者が越える場所』
『三の松は、もう戻れぬ者が旅立つ場所』

「この橋は、死者と生者を繋ぐって言ってたのに、生きてるのか?」
『...お前にはまだ早い話だった』
「なあ、俺は?」
『橋を渡る者は、舞台へ向かう』
「...うん?」
『橋の下をくぐる者は、舞台を見届ける』
「イア、お前結構説明下手?」
『真面目に言っている。分からないのならお前の理解力の問題だろう』
「むずかしいー、わかんねぇ...寝ていい?」
『そこの橋の付近に宿がある。眠れ』
 イアが水面を軽く叩く。パン、と乾いた音が橋の下に響いた。
「え、おーい!イア!」
 次の瞬間には、
 もう宿のベッドに寝転がっていた。
「えぇ...まじでなに...意味わかんない」
 そう言いながらも、シテは眠りに落ちた。

『ふっ、さあ、演目の開幕だ』
 イアはそらから世界を見下ろした。
シェア
← 前の話
停止
次の話 →
夢路
作者:結弦
目次
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません