ホーム永遠の恋人——薔薇の姫君 夜明けの歌/白鳥の騎士 黄昏の歌序幕01 ただ黒い染みとして
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序幕01 ただ黒い染みとして

風が唸っていた。

 谷底から吹き上げる風が黒い外套をはためかせ、病的に痩せた男の顔を露わにする。
 落ち窪んだ眼窩は虚ろだった。
 雪に覆われた道は細く、踏み外したら最後。真っ逆様に崖から落ちる。
 以前の彼なら、悲鳴をあげて、恐怖に足が竦んでいただろう。

 谷底から噴き上げてくる風によろめきながら、夢見るように、ふらふらと。
 彼の視界に映らないが、谷底のあちこちから細い煙が立ち昇っていた。
 暖炉の火を囲む家族。その笑い声など、彼には聞こえるはずもない。

 ヨハネスと呼ばれていた男は振り返らなかった。

 白く塗りつぶされた道の辿り着く先。
 黒々と口を開けて彼を待っている。

 ひび割れた口が動き、白い息が吐き出された。
 雪の中を進む黒い外套の影は、次第に小さくなり、白と黒の境界の中へ溶けていった。

 それはまるで巨大な闇に落ちた一滴の、
 黒い染み。

 ただそれだけのものとして。
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序幕02 暖炉の火影
永遠の恋人——薔薇の姫君 夜明けの歌/白鳥の騎士 黄昏の歌作者:松木響子
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 雪に覆われた道は細く、踏み外したら最後。真っ逆様に崖から落ちる。
 以前の彼なら、悲鳴をあげて、恐怖に足が竦んでいただろう。

 谷底から噴き上げてくる風によろめきながら、夢見るように、ふらふらと。
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 暖炉の火を囲む家族。その笑い声など、彼には聞こえるはずもない。

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 黒々と口を開けて彼を待っている。

 ひび割れた口が動き、白い息が吐き出された。
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