ホーム永遠の恋人——薔薇の姫君 夜明けの歌/白鳥の騎士 黄昏の歌眠りの城01 婚礼の宴
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眠りの城01 婚礼の宴

エルザは、瞬きした。
 上下左右が石壁で覆われていて、まるで洞窟にいるみたいだ。
 馬車が一台通れるぐらいの幅しかない。
 マルティンと手を繋いで歩いている。なんで手なんて繋いでるんだろう。子供の頃に戻ったみたいに。
 前方が白く輝いて見える。
 均整のとれた長身、騎士のように見える巡礼者が前を歩いていた。
 暗がりに差し込んだ日差しが眩しい。
 エルザとマルティンは、城門塔を通り抜けた。 
 また、エルザは瞬きをした。あたりを見渡す。
「あれ? 私たちの他にもう一人いなかった?」
 マルティンは、目をこすりながら言った。
「――わかんねぇ。なんか頭が重くて。たしか俺たち二人だけで来たはずだろう。変なこと言うなよな」
 変なのはアンタよ。二人だけで来たはずだろう? っておかしくない? エルザは引っかかりを覚えた。
 城門塔の側の厩舎を通りかかった。馬が集まれば、鼻息とか、蹄の地面を叩く音とかするもんだけど、やけに静かだ。
「あれ? そういえば私たち馬に乗ってなかった?」
 マルティンは、打たれたように目を見開いた。
「そうだ。なんで俺、忘れてたんだ。俺の馬、どこ行った?」
 キョロキョロと周りを見渡していたが、すぐに興味を失ったみたいに平坦な声で言った。
「......厩舎に預かってもらっただろう」 
「そうだっけ?」
 なんか気持ち悪いな。
 犬舎を通りかかったのに、静かだ。みんな眠っているの? 犬っていうのは人が通ったら吠えるのに。
 違和感が膨らんでいく。
「静かすぎない?」
 その問いかけにまるで答えるように、急に音が鳴り出した。
 犬は吠えだすし、馬はいななき、鼻息を吐き出し、地面を叩く蹄の音まで、ご丁寧に私が思った通りに鳴り出した。
 武具工房では武具を鍛える音。
 兵士や召使が行き交う足音や話し声。
 エルザは、唇を噛んだ。まるでほころんだ夢を繕っているような感覚。胸元に手が伸びる。何かを掴もうとしたが、手に力が入らなかった。
 
 中庭には、領主の婚礼の宴に呼ばれた封土を与えられた騎士たちの色鮮やかな天幕、紋章旗が風に翻っている。
 それを横目に、エルザ達は中庭を突っきって、天守閣に向かった。
 ドラッヘンフェルス城主夫妻の婚礼の宴を告げる喇叭の音が鳴り響いている。
「やだ。遅刻よ」
「急げ!!」
 二人は手を繋いだまま、走り出した。

 ***

  黒地に金色の竜が織られたタペストリーの下に、結婚の儀式をつつがなく終えたばかりの城主夫妻が座っている。
 卓子テーブルが縦二列にならび、椅子に腰掛けた家臣たちが、夢中になって肉にかぶりついている。給仕がナイフで肉を切り分け、上等の葡萄酒を注いでまわっている。次から次へと料理を運ぶ使用人。卓子テーブルの下では、犬が残飯をあさっていた。
 リュートの音色にのって、陽気な恋歌が流れるお祭り騒ぎの中、エルザとマルティンは、カーラインの元へ歩いていく。
 城主夫妻がエルザ達を迎えようと立ち上がった。
「カーライン様、遅れて申し訳ございません。これからも精一杯お仕えします!」
「カーライン様、足は大丈夫なんですか?」
 エルザとマルティンが一緒に話し出したので、カーラインは相変わらずねと言うように微笑んだが、マルティンの言葉に首を傾げた。
「足? 大丈夫だけど、どうしてそんなこと」
 と言いかけ、黙り込む。
「足なら治った、はずだ。元通り、歩けるようになっている」
 オスヴォルトは、自分でも違和感を覚えたようだった。眉をしかめると、ゴブレットを音を立てて置いた。
 カーラインは、卓子テーブルを回り込んで、エルザたちのところに歩いてきた。足は引きずっていなかった。
 エルザは、腱を切られて、元通りに歩けるなんてことあるんだろうかと一瞬思ったが、それよりも彼女が心から愛している女主人が元通りに歩けることが嬉しかった。
 マルティンも嬉しそうだ。本当に犬みたい。立ち上がって、主人の膝に足を乗せて、ブンブン尻尾を振っている犬。その犬――エルザの弟が、あれ? という顔になる。
「グスタフ隊長は何処にいるんですか? さっきから探しているのに姿が見えないんです。俺たちより一週間早く出立してるんで、到着しているはずなのに」 
 カーラインは眉をひそめた。
「グスタフはまだよ。おかしいわね。彼が遅れるなんて。何かあったに違いないわ」
「ああ。あの男なら、こちらの懐事情も考慮して、一週間前に到着するようにしているはずだ」とオスヴォルト。
 マルティンは考え込んでいた。一体、隊長は何処にいったんだ? 隊長は精鋭部隊と一緒に出ていったんだ。盗賊に襲われたって、撃退しているはず。

 
 突然、突風が吹いた。蝋燭の炎が揺れる。大広間の扉が開いたのだ。
 カーラインの目は大きく見開かれ、震え出した。
 オスヴォルトは妻を抱き寄せながら、誰が入ってきたのかを見た。
 エルザとマルティンも背後を振り返る。
 白鳥が翼を広げた紋章。緑の軍衣、均整のとれた長身の騎士がリュートを爪弾いている。
 彼らがよく知っている、だが死んだはずの男だった。
 青年は優雅に一礼し、リュートを弾きながら、歌い出す。
 
 
 ああ 明日になれば わたしは遠い国へ戦いにゆく
 留守を悲しむそなたの涙も やがては乾き
 わたしのことは忘れてしまう

 歌う騎士の眼差しは、カーラインだけに注がれている。
 彼女もまた彼しか見えない。

 ――麗しの乙女は、あなた以外しか愛さないと誓い、騎士はパレスチナへと旅立つ。

  騎士の恋人は 胸かきむしり悲しんだ
  しかし十二ヶ月と経たないうちに
  みよ
  彼女は騎士との誓いを裏切った
 
  そして今、司祭様に祝福され祝宴がはや始まっていた

 その歌の通り、カーラインは、祝宴のなかにいる。今にも倒れそうな花嫁を弾劾するように、かつての恋人は歌う。

 ――九つ半の鐘が鳴ると、死んだはずの恋人が乙女の隣に座っている。

  ああその瞬間 乙女の目に映ったものは!
  髑髏されこうべに蛆虫が
  うごめき出ては這いずりまわる かつての恋人

 ――恋人は、花嫁にむかって言う。

  亡霊になって
  婚礼の席でそなたのかたわらにすわって裏切りを咎め
  そなたをわが花嫁だといい放ち
  墓場へ連れ去るためにやってきた
  いい終わるや
  恐怖の悲鳴をあげる花嫁を両の腕にかき抱き
  獲物もろとも 大きく開いた大地に 吸い込まれていった


 地獄へと墜ちていくように尾をひいて、歌が終わった。
 大広間は、水底に沈んだように静まりかえった。
 沈黙を破ったのは、ドラッヘンフェルス城主の花嫁カーラインが床へとくずおれる音。オスヴォルトが彼女の体を抱きかかえると、椅子に座らせる。エルザが駆けつけて、カーラインの背中をさすりながら、カーラインの恋人だった男を恐怖で見開いた目で見た。マルティンは敬愛していた騎士が近くにいるのに抱きつこうとしなかった。何か違和感を感じているように。鼻に皺を寄せている。

 人形に息を吹き込んだように、人々はざわめきだした。
 剣が石にぶつかりる音が広間に反響した。
 ふたたび、広間はしんと静まる。
 床についた剣の柄に両手をあずけて、オスヴォルトは、リュートをもつ騎士を真っ向から見据えた。
「......結末が気に食わん。俺ならこうするな」
 城主が、あきらめの悪い骸骨騎士の腐った手から花嫁を奪いかえし、骨がバラバラになるまでぶちのめし、地獄へと送りかえした後、城主夫妻は、末長く結ばれました、めでたしめでたし。どうだ?」
 ふっと、うすい唇に笑みを佩き、緑衣の騎士もまた、オスヴォルトを真っ直ぐにみた。
「誰の視点で物語を見るかで、なにが幸せなのかは変わってくるのでは?」
「なるほど。それはそうだ」
 剣を鞘に収めると、十字軍で共に戦った戦友の肩を掴んだ。そして力一杯、抱きしめた。
 エメラルド色の双眸に驚きが走った。
「アルベルト! 生きてたんだな。帰ってくるのが遅すぎるじゃないか!」
 オスヴォルトは、なんとも言えない顔になった。
「カーラインは、俺と結婚したが、ずっとお前を待っていたんだ。あんな歌でカーラインを責めないでくれ。お前らしくないぞ」 
 アルベルトと呼ばれた騎士は、微笑んだ。
「私らしいってなんだ? 私はこの女が欲しいんだ。黄金の炎のような女が」 
 オスヴォルトはアルベルトだと思っていた男から、一歩下がる。思わず、剣の柄を握っていた。
「おやおや。殺気を出したりして、悲しいね。友達なんだろう、私たちは?」

 異様な雰囲気を鋭い言葉の剣が切り裂く。
「あなた、アルベルトの顔をしているけど、アルベルトではないわね」
 カーラインの瞳が爛々と黄金の炎のように燃え、妖しいエメラルドの瞳を見据えていた。
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永遠の恋人——薔薇の姫君 夜明けの歌/白鳥の騎士 黄昏の歌作者:松木響子
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エルザは、瞬きした。
 上下左右が石壁で覆われていて、まるで洞窟にいるみたいだ。
 馬車が一台通れるぐらいの幅しかない。
 マルティンと手を繋いで歩いている。なんで手なんて繋いでるんだろう。子供の頃に戻ったみたいに。
 前方が白く輝いて見える。
 均整のとれた長身、騎士のように見える巡礼者が前を歩いていた。
 暗がりに差し込んだ日差しが眩しい。
 エルザとマルティンは、城門塔を通り抜けた。 
 また、エルザは瞬きをした。あたりを見渡す。
「あれ? 私たちの他にもう一人いなかった?」
 マルティンは、目をこすりながら言った。
「――わかんねぇ。なんか頭が重くて。たしか俺たち二人だけで来たはずだろう。変なこと言うなよな」
 変なのはアンタよ。二人だけで来たはずだろう? っておかしくない? エルザは引っかかりを覚えた。
 城門塔の側の厩舎を通りかかった。馬が集まれば、鼻息とか、蹄の地面を叩く音とかするもんだけど、やけに静かだ。
「あれ? そういえば私たち馬に乗ってなかった?」
 マルティンは、打たれたように目を見開いた。
「そうだ。なんで俺、忘れてたんだ。俺の馬、どこ行った?」
 キョロキョロと周りを見渡していたが、すぐに興味を失ったみたいに平坦な声で言った。
「......厩舎に預かってもらっただろう」 
「そうだっけ?」
 なんか気持ち悪いな。
 犬舎を通りかかったのに、静かだ。みんな眠っているの? 犬っていうのは人が通ったら吠えるのに。
 違和感が膨らんでいく。
「静かすぎない?」
 その問いかけにまるで答えるように、急に音が鳴り出した。
 犬は吠えだすし、馬はいななき、鼻息を吐き出し、地面を叩く蹄の音まで、ご丁寧に私が思った通りに鳴り出した。
 武具工房では武具を鍛える音。
 兵士や召使が行き交う足音や話し声。
 エルザは、唇を噛んだ。まるでほころんだ夢を繕っているような感覚。胸元に手が伸びる。何かを掴もうとしたが、手に力が入らなかった。
 
 中庭には、領主の婚礼の宴に呼ばれた封土を与えられた騎士たちの色鮮やかな天幕、紋章旗が風に翻っている。
 それを横目に、エルザ達は中庭を突っきって、天守閣に向かった。
 ドラッヘンフェルス城主夫妻の婚礼の宴を告げる喇叭の音が鳴り響いている。
「やだ。遅刻よ」
「急げ!!」
 二人は手を繋いだまま、走り出した。

 ***

  黒地に金色の竜が織られたタペストリーの下に、結婚の儀式をつつがなく終えたばかりの城主夫妻が座っている。
 卓子テーブルが縦二列にならび、椅子に腰掛けた家臣たちが、夢中になって肉にかぶりついている。給仕がナイフで肉を切り分け、上等の葡萄酒を注いでまわっている。次から次へと料理を運ぶ使用人。卓子テーブルの下では、犬が残飯をあさっていた。
 リュートの音色にのって、陽気な恋歌が流れるお祭り騒ぎの中、エルザとマルティンは、カーラインの元へ歩いていく。
 城主夫妻がエルザ達を迎えようと立ち上がった。
「カーライン様、遅れて申し訳ございません。これからも精一杯お仕えします!」
「カーライン様、足は大丈夫なんですか?」
 エルザとマルティンが一緒に話し出したので、カーラインは相変わらずねと言うように微笑んだが、マルティンの言葉に首を傾げた。
「足? 大丈夫だけど、どうしてそんなこと」
 と言いかけ、黙り込む。
「足なら治った、はずだ。元通り、歩けるようになっている」
 オスヴォルトは、自分でも違和感を覚えたようだった。眉をしかめると、ゴブレットを音を立てて置いた。
 カーラインは、卓子テーブルを回り込んで、エルザたちのところに歩いてきた。足は引きずっていなかった。
 エルザは、腱を切られて、元通りに歩けるなんてことあるんだろうかと一瞬思ったが、それよりも彼女が心から愛している女主人が元通りに歩けることが嬉しかった。
 マルティンも嬉しそうだ。本当に犬みたい。立ち上がって、主人の膝に足を乗せて、ブンブン尻尾を振っている犬。その犬――エルザの弟が、あれ? という顔になる。
「グスタフ隊長は何処にいるんですか? さっきから探しているのに姿が見えないんです。俺たちより一週間早く出立してるんで、到着しているはずなのに」 
 カーラインは眉をひそめた。
「グスタフはまだよ。おかしいわね。彼が遅れるなんて。何かあったに違いないわ」
「ああ。あの男なら、こちらの懐事情も考慮して、一週間前に到着するようにしているはずだ」とオスヴォルト。
 マルティンは考え込んでいた。一体、隊長は何処にいったんだ? 隊長は精鋭部隊と一緒に出ていったんだ。盗賊に襲われたって、撃退しているはず。

 
 突然、突風が吹いた。蝋燭の炎が揺れる。大広間の扉が開いたのだ。
 カーラインの目は大きく見開かれ、震え出した。
 オスヴォルトは妻を抱き寄せながら、誰が入ってきたのかを見た。
 エルザとマルティンも背後を振り返る。
 白鳥が翼を広げた紋章。緑の軍衣、均整のとれた長身の騎士がリュートを爪弾いている。
 彼らがよく知っている、だが死んだはずの男だった。
 青年は優雅に一礼し、リュートを弾きながら、歌い出す。
 
 
 ああ 明日になれば わたしは遠い国へ戦いにゆく
 留守を悲しむそなたの涙も やがては乾き
 わたしのことは忘れてしまう

 歌う騎士の眼差しは、カーラインだけに注がれている。
 彼女もまた彼しか見えない。

 ――麗しの乙女は、あなた以外しか愛さないと誓い、騎士はパレスチナへと旅立つ。

  騎士の恋人は 胸かきむしり悲しんだ
  しかし十二ヶ月と経たないうちに
  みよ
  彼女は騎士との誓いを裏切った
 
  そして今、司祭様に祝福され祝宴がはや始まっていた

 その歌の通り、カーラインは、祝宴のなかにいる。今にも倒れそうな花嫁を弾劾するように、かつての恋人は歌う。

 ――九つ半の鐘が鳴ると、死んだはずの恋人が乙女の隣に座っている。

  ああその瞬間 乙女の目に映ったものは!
  髑髏されこうべに蛆虫が
  うごめき出ては這いずりまわる かつての恋人

 ――恋人は、花嫁にむかって言う。

  亡霊になって
  婚礼の席でそなたのかたわらにすわって裏切りを咎め
  そなたをわが花嫁だといい放ち
  墓場へ連れ去るためにやってきた
  いい終わるや
  恐怖の悲鳴をあげる花嫁を両の腕にかき抱き
  獲物もろとも 大きく開いた大地に 吸い込まれていった


 地獄へと墜ちていくように尾をひいて、歌が終わった。
 大広間は、水底に沈んだように静まりかえった。
 沈黙を破ったのは、ドラッヘンフェルス城主の花嫁カーラインが床へとくずおれる音。オスヴォルトが彼女の体を抱きかかえると、椅子に座らせる。エルザが駆けつけて、カーラインの背中をさすりながら、カーラインの恋人だった男を恐怖で見開いた目で見た。マルティンは敬愛していた騎士が近くにいるのに抱きつこうとしなかった。何か違和感を感じているように。鼻に皺を寄せている。

 人形に息を吹き込んだように、人々はざわめきだした。
 剣が石にぶつかりる音が広間に反響した。
 ふたたび、広間はしんと静まる。
 床についた剣の柄に両手をあずけて、オスヴォルトは、リュートをもつ騎士を真っ向から見据えた。
「......結末が気に食わん。俺ならこうするな」
 城主が、あきらめの悪い骸骨騎士の腐った手から花嫁を奪いかえし、骨がバラバラになるまでぶちのめし、地獄へと送りかえした後、城主夫妻は、末長く結ばれました、めでたしめでたし。どうだ?」
 ふっと、うすい唇に笑みを佩き、緑衣の騎士もまた、オスヴォルトを真っ直ぐにみた。
「誰の視点で物語を見るかで、なにが幸せなのかは変わってくるのでは?」
「なるほど。それはそうだ」
 剣を鞘に収めると、十字軍で共に戦った戦友の肩を掴んだ。そして力一杯、抱きしめた。
 エメラルド色の双眸に驚きが走った。
「アルベルト! 生きてたんだな。帰ってくるのが遅すぎるじゃないか!」
 オスヴォルトは、なんとも言えない顔になった。
「カーラインは、俺と結婚したが、ずっとお前を待っていたんだ。あんな歌でカーラインを責めないでくれ。お前らしくないぞ」 
 アルベルトと呼ばれた騎士は、微笑んだ。
「私らしいってなんだ? 私はこの女が欲しいんだ。黄金の炎のような女が」 
 オスヴォルトはアルベルトだと思っていた男から、一歩下がる。思わず、剣の柄を握っていた。
「おやおや。殺気を出したりして、悲しいね。友達なんだろう、私たちは?」

 異様な雰囲気を鋭い言葉の剣が切り裂く。
「あなた、アルベルトの顔をしているけど、アルベルトではないわね」
 カーラインの瞳が爛々と黄金の炎のように燃え、妖しいエメラルドの瞳を見据えていた。
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永遠の恋人——薔薇の姫君 夜明けの歌/白鳥の騎士 黄昏の歌作者:松木響子
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