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第1話 嫌な予感

 宝くじが当たった。


 300円とか3000円じゃない。
 一等の、5000万円だ。

 俺は高校卒業後、親戚のバイク屋で整備士として働いているだけの、18歳の普通の男だ。
 整備士と言っても、まだ就職して1か月も経っていない。故に貯金なんてほぼ0だ。
 そんな俺からしたら、5000万円という金額は超大金だった。
 自分のバイク屋を開くという夢も、あとは俺の技術だけの問題になったも同然だ。

 すぐにでも換金したいと思い、家を飛び出して愛車に跨った。
 先月買ったばかりの中型バイクだ。

 と言っても、その勢いのまま爆走して銀行に直行するなんて愚行は働かない。
 今回ばかりは絶対に事故れないのだ。
 大金が待っているからこそ、安全運転だ。
 要は急がば回れってことだ。

 そんなこんなで、俺は銀行のある町に続く峠道をゆっくり走っている。
 すると、クォーンといった甲高いレーシングサウンドが聞こえてくる。
 走り屋だろうか?
 俺は分かる。きっとあれは速い。そして多分高い。

 その音は徐々に近づいてくる。
 後ろじゃない。対向車だ。
 恐らく1000万円以上する車だろう。
 俺も今日からはそういう車がいつでも買えるタイプの人間なのだ。
 そんなことを思いつつ、少しにやけながら右カーブを曲がろうとした瞬間。

 対向車線からセンターラインを割って黒い塊が飛び出してきた。

「――ぐはっ」

 轟音が鳴り響く。
 俺の身体には衝撃が走る。

 気付いたら俺の身体は宙を舞っていた。
 ふと下を見ると俺の愛車はガードレールと黒い車の間で潰れていた。
 そんな愛車を見送りつつ、俺の身体はガードレールを通り越した。

 まずい。俺は知っている。
 このガードレールを超えた先は崖なのだ。


 まさか、このまま終わるのか?
 嘘だろ?

 5000万円は?
 バイク屋の夢は?
 
 結婚もできずに俺は死ぬのか?
 まだ18歳だぞ?

 ここからじゃないのか?

 嫌だ。
 死にたくない。
 
 生きたい。
 生きたい。
 生きたい。

 生きたい......


 俺の視界は徐々に黒くなっていった。
 


~~~~



 ゆっくりと目を開く。
 そこには、 西洋風の建物が並んでいた。

 地面はアスファルトではなく、ごつごつとした不揃いな石畳。
 周囲を見渡すと、赤レンガ造りの建物が隙間なく並んでいる。

「は? どうなってんだ?」

 思わず心の声が漏れてしまう。

 俺は峠でバイクに乗っていて......
 何があったんだ?
 というか、あの崖から落ちたのに死ななかったのか?

 いくつも疑問が浮かぶ。
 が、悠長に長考している時間はなかった。

「痛っ」

 俺は犬耳の生えた男にタックルされ、尻もちをついた。
 犬耳の男は俺の方を見て、嘲笑いながら走る。
 その手には、いつの間にか俺の鞄が握られていた。

「待て! 泥棒!」

 あの鞄には宝くじが入っている。
 すぐにでも取り戻す。
 そう思い、足に力を入れるも、足に激痛が走る。
 クソッ、折れてんのかよ。

 そんな俺を心配しているのか、ローブを羽織り、杖を持った女性が俺の元に座る。
 何かを話しかけてきたが、俺の知っている言語ではなかった。

 女性は左手を俺の右足に当てて、何かを呟き始めた。

 彼女が右手に持つ杖から緑の輝きが放たれる。
 俺の身体が緑の光で包まれるとともに、俺の怪我はみるみる治っていく。
 それに比例するように俺の目からは光が消えていった。

 ローブの女性は青ざめた顔をしている。
 女性は心配そうに俺の知らない言語で話しかけてくる。
 しかし、俺はただ座って虚空を見つめていた。

 しばらくの間、そうしていた。
 そんな俺に見切りをつけたのか、女性はいつの間にかいなくなっていた。


 ここまで条件が全て揃えば、俺は受け入れるしかなかった。
 俺はこの状況を理解したくなかった。
 目の前に広がった光景を、信じたくなかった。

 恐らく俺は、目を開いた瞬間からここがどこなのか、薄々気づいていた。
 だが、そんなはずはない。あまりにも非現実的だと否定した。
 
 が、その予感は的中していた。

 見たことない文字で書かれた看板、知らない言語で喋る人達。
 犬耳のついた男、ローブを身に着け杖を持った人。
 そして、言葉一つで治る怪我。


――そう、ここは異世界だ。
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異世界輪廻の終着点作者:かにたべ隊
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 宝くじが当たった。


 300円とか3000円じゃない。
 一等の、5000万円だ。

 俺は高校卒業後、親戚のバイク屋で整備士として働いているだけの、18歳の普通の男だ。
 整備士と言っても、まだ就職して1か月も経っていない。故に貯金なんてほぼ0だ。
 そんな俺からしたら、5000万円という金額は超大金だった。
 自分のバイク屋を開くという夢も、あとは俺の技術だけの問題になったも同然だ。

 すぐにでも換金したいと思い、家を飛び出して愛車に跨った。
 先月買ったばかりの中型バイクだ。

 と言っても、その勢いのまま爆走して銀行に直行するなんて愚行は働かない。
 今回ばかりは絶対に事故れないのだ。
 大金が待っているからこそ、安全運転だ。
 要は急がば回れってことだ。

 そんなこんなで、俺は銀行のある町に続く峠道をゆっくり走っている。
 すると、クォーンといった甲高いレーシングサウンドが聞こえてくる。
 走り屋だろうか?
 俺は分かる。きっとあれは速い。そして多分高い。

 その音は徐々に近づいてくる。
 後ろじゃない。対向車だ。
 恐らく1000万円以上する車だろう。
 俺も今日からはそういう車がいつでも買えるタイプの人間なのだ。
 そんなことを思いつつ、少しにやけながら右カーブを曲がろうとした瞬間。

 対向車線からセンターラインを割って黒い塊が飛び出してきた。

「――ぐはっ」

 轟音が鳴り響く。
 俺の身体には衝撃が走る。

 気付いたら俺の身体は宙を舞っていた。
 ふと下を見ると俺の愛車はガードレールと黒い車の間で潰れていた。
 そんな愛車を見送りつつ、俺の身体はガードレールを通り越した。

 まずい。俺は知っている。
 このガードレールを超えた先は崖なのだ。


 まさか、このまま終わるのか?
 嘘だろ?

 5000万円は?
 バイク屋の夢は?
 
 結婚もできずに俺は死ぬのか?
 まだ18歳だぞ?

 ここからじゃないのか?

 嫌だ。
 死にたくない。
 
 生きたい。
 生きたい。
 生きたい。

 生きたい......


 俺の視界は徐々に黒くなっていった。
 


~~~~



 ゆっくりと目を開く。
 そこには、 西洋風の建物が並んでいた。

 地面はアスファルトではなく、ごつごつとした不揃いな石畳。
 周囲を見渡すと、赤レンガ造りの建物が隙間なく並んでいる。

「は? どうなってんだ?」

 思わず心の声が漏れてしまう。

 俺は峠でバイクに乗っていて......
 何があったんだ?
 というか、あの崖から落ちたのに死ななかったのか?

 いくつも疑問が浮かぶ。
 が、悠長に長考している時間はなかった。

「痛っ」

 俺は犬耳の生えた男にタックルされ、尻もちをついた。
 犬耳の男は俺の方を見て、嘲笑いながら走る。
 その手には、いつの間にか俺の鞄が握られていた。

「待て! 泥棒!」

 あの鞄には宝くじが入っている。
 すぐにでも取り戻す。
 そう思い、足に力を入れるも、足に激痛が走る。
 クソッ、折れてんのかよ。

 そんな俺を心配しているのか、ローブを羽織り、杖を持った女性が俺の元に座る。
 何かを話しかけてきたが、俺の知っている言語ではなかった。

 女性は左手を俺の右足に当てて、何かを呟き始めた。

 彼女が右手に持つ杖から緑の輝きが放たれる。
 俺の身体が緑の光で包まれるとともに、俺の怪我はみるみる治っていく。
 それに比例するように俺の目からは光が消えていった。

 ローブの女性は青ざめた顔をしている。
 女性は心配そうに俺の知らない言語で話しかけてくる。
 しかし、俺はただ座って虚空を見つめていた。

 しばらくの間、そうしていた。
 そんな俺に見切りをつけたのか、女性はいつの間にかいなくなっていた。


 ここまで条件が全て揃えば、俺は受け入れるしかなかった。
 俺はこの状況を理解したくなかった。
 目の前に広がった光景を、信じたくなかった。

 恐らく俺は、目を開いた瞬間からここがどこなのか、薄々気づいていた。
 だが、そんなはずはない。あまりにも非現実的だと否定した。
 
 が、その予感は的中していた。

 見たことない文字で書かれた看板、知らない言語で喋る人達。
 犬耳のついた男、ローブを身に着け杖を持った人。
 そして、言葉一つで治る怪我。


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