~気づけば恩人から愛する存在に~
それからですよね?
まず、一応「彼」のいる世界を「異界」と呼ぶことにしますが。
その「異界」で、どれくらいいたのかな?
とにかく、共同生活が始まったんです。
「彼」から言われたのは、渡された香水をつける事と顔を隠す事でした。
理由は簡単で、生きた人間がいると分かれば、他の異形達の標的になるからです。
そう、標的。
というか、獲物ですね。
だから、「彼」の所持品を借りて「彼」のモノだと印象付ける事になったんです。
それで「彼」は顔がないし、そもそも人間とは違う存在なのですが、私はお腹空いちゃうじゃないですか。
食材も調味料になりそうなものも「彼」が全部調達してくれて、それを調理して食べていました。
「彼」は食べる必要がないのに、海外で、しかも別の世界にいる事が不安な私を気遣って、食べ終わるまで向かいの席にね?
座ってくれていたんです。
寄り添って、くれたんです。
そこから「彼」の性格とかを知ったりですとか、癖が分かるようになってきたりして。
あと、お互いの事も話しました。
勿論、アプリとかを駆使してですけど。
どれくらい経ってからかな?
「彼」がドイツ語圏の出自らしいが、それ以外の事は何も覚えていない事が分かったんです。
記憶がないって悲しい事じゃないですか?
それでも、気高くて優しい「彼」に気づいたら惹かれてしまって。
気づいてしまったんですよね。
「彼」に惚れてしまったのだと。
愛しい存在、異性として愛してしまったのだと。