第二十七話:福引屋
「あの福引屋はレイドボスが倒されると現れて、24時間だけ営業したら閉店するレア屋台なんだよ」
夕方にログアウトした後、お兄ちゃんが教えてくれた。
今日の晩ごはんは、スーパーで買ってきた味付け羊肉を使ったジンギスカンだよ。
お兄ちゃんが「今夜はコレが食べたくなる」って思ったから用意していたんだって。
うちでは、もやしだけじゃなくてナスをいっしょに焼くんだ。
焼けてトロッとしたナスにタレがしみて美味しいよ。
【福引屋・プリムス屋台】
プリムスの街に、レイドボスバトルが終わった後に一日だけ現れる屋台。
福引は一人一日一回だけ。
料金は、金貨一枚。
異次元ボックスから出てくる物は、装備・食べ物・飲み物・ポーションなど。
どれも金貨一枚よりも高い物ばかりなので、損ではない。
福引でしか手に入らないレアな物もある。
「アインが当てていた酒は福引限定品で、飲めば一時間だけ全ての能力値が二倍になるんだよ」
「それであの女の人が『レイドボス前に出てればよかったのに』って言ってたの?」
「だな。まあ、次のレイドボスバトルに使えばいいと思うよ」
ぼくの頭の中に、悪魔を前にしたアインさんが樽ごとお酒を飲んでいる姿が浮かぶ。
よっぱらって強くなるって、なんかのゲームにあったような?
次のレイドボスバトルでは、強さ二倍のアインさんを見られるかもしれないね。
欲しかった物とちがったみたいだけど。
「お兄ちゃんが当てていたカタナは?」
「あれも限定品。レベル40から装備できて、攻撃するとダメージが二倍になる武器だよ」
「いいね。強そう!」
黒い鞘に金の模様が入った日本刀も、福引だけで手に入る物なんだって。
ダメージが二倍って、いいね。
ノクスは狼の獣人でスピードタイプだから、ダメージを増やす武器はすごく良さそう。
「ぼくが当てた杖も限定品?」
「うん。あれはレベル30杖の中で一番いいものだよ」
水晶の杖も、福引だけで手に入る物だった。
知力と魔力が上がるから、魔法の効果が強くなって、一度に撃てる数も増える。
攻撃魔法の強化にぴったりだ。
装備できるレベルになるのが楽しみになってきたよ。
「リュウさんが当てていたエリクサーは?」
「エリクサーは限定品ではないけど、めったに手に入らないレア品ではあるな」
エリクサーは福引限定じゃなかった。
でも、ふつうのお店では買えないレアなものなんだって。
体力と魔力がゼロの状態でも、フル回復して復活できるらしい。
よく死んじゃうリュウさんには、まちがいなく役立ちそう。
「アインやリュウも装備がほしかったんだろうけど、欲しい物を考え過ぎて物欲センサーが作動したんだな」
「ブツヨクセンサーって、システムにあるの?」
「無い。あれは、プレイヤーの心の中にあるんだよ」
欲しいものが出なくなる物欲センサーは、人間の心の中にあるらしい。