第二十六話:物欲センサー
ジンギスカンパーティーが終わった後。
街へ行ったぼくたちは、宝箱の絵がついた看板の屋台に、人がいっぱい集まっているのを見かけた。
「ねえノクス、あれは何の店?」
「あれは【福引屋】だな」
ぼくの質問にノクスが答えたとき、人だかりの中から「出た!」という、うれしそうな声と、おぉっというどよめきが聞こえる。
なんだか楽しそう。
ぼくはお祭りのときと同じでワクワクしてきた。
「福引、やってみるか?」
「うん! どんなことをするの?」
「金貨一枚を店員にわたして、異次元ボックスを開けるんだよ」
ノクスと話しながら、屋台の行列に並ぶ。
並んでいる人の中には、レイドボスバトルでタゲとりしていたアインさんもいた。
「アイン、心を無にするのよ。ほしい物のことは考えちゃダメ」
「分かってるって」
エルフの女の人が、アインさんの後ろから言い聞かせている。
アインさんは、レイドボスのときよりも真面目な顔でうなずいている。
しばらくしてアインさんの番になり、屋台の店員に金貨をわたして大きな宝箱の形をした異次元ボックスを開けた。
「......酒だ」
真面目な顔のままアインさんが宝箱から取り出したのは、大きな樽だった。
後ろにいる女の人が、ガックリしている。
「レイドボス前に出てればよかったのに......って違うでしょ、また物欲センサーに引っかかったわね」
「心を無にしたつもりだったんだがな」
「まだまだ無の境地に至ってないのよ」
「そうか」
アインさんは女の人と話しながら、大きな樽を軽々と肩に担いで立ち去っていった。
福引ってお酒も出るんだ。
ぼくは飲めないから、もしも出たらノクスにあげよう。
ところで、ブツヨクセンサーってなんだろう?
ムノキョウチってなんだろう?
「次はオレたちだな。先に開けるから見てな」
「うん」
ぼくたちの番になった。
ノクスが店員さんに金貨をわたして、宝箱のふたに手をかける。
パカッと開けて出たのは、黒い鞘に収まった日本刀だった。
見ていた人々から、おぉって声が上がる。
いいものなのかな?
「今すぐ使える物ではないけど、大事にとっとこう」
ノクスは鞘から出さずに日本刀を見つめた後、異空間倉庫に入れた。
今のレベルでは使えない物だったらしい。
「次、やってごらん」
「うん」
ノクスに言われて、ぼくは店員さんに金貨をわたして宝箱に手をのばす。
ズッシリ重いふたを、よいしょって持ち上げて開けた。
「ガラスの杖......?」
「いや、それはガラスじゃなくて水晶だよ」
ぼくが開けた宝箱から出てきたのは、キラキラ光る透明な杖だった。
見ていた人々から、すごいとかキレイとか言う声が聞こえる。
【水晶の杖】
装備可能ジョブ:ウィザード、プリースト
装備可能レベル:30以上
特殊効果:知力+10、魔力+10
「そっちもいいもの出たな」
「うん!」
今のぼくのレベルは27だから、あと3レベル上がったら装備できる。
ノクスもぼくも、ブツヨクセンサーにはひっかからなかったみたいだね。
ちなみに。
ぼくたちの後ろに並んでいたリュウさんは......
「えーっ、エリクサーかよ。システム、オレの死亡対策しすぎだろ」
......また、死んだときに役立つ物を手に入れていたよ。
後でお兄ちゃんに聞いたら、物欲センサーっていうのは、システムがプレイヤーの心を読んで、ほしがってる物を出さないことを言うんだって。
ぼくは何も考えずに箱を開けたから良かったのかな?