第十八話:ゴブリンの巣穴
「一気にいくぞ、ついてこい」
「おっけー」
初心者ダンジョンのときと同じで、このダンジョンもノクスが次々にゴブリンを片付けていく。
あっという間にたどり着いたボス部屋のドアを開けると、おすもうさんよりも太っている大きなゴブリンがいた。
他のゴブリンはやせているから、よけいに太って見えるよ。
大デブゴブリンの近くには、メイド服を着たゴブリンがいる。
「開発には、こんなメイドさんは嫌だって言ったんだがな」
ノクスがため息をついて、メイドゴブリンを見ながらつぶやいた。
ゴブリンがメイド服を着ているのは不具合(バグ)じゃないから、直してもらえなかったのかもしれない。
「ギャギャッ?」
「ギャギャギャギャッ!」
ぼくたちに気づいたゴブリンたちが、こちらを向いて何か言った。
たぶん「だれだ」とか「どうやって入った」とか言ってるのかも。
ゴブリンたちの向こうには大きなテーブルがある。
テーブルの上には、塩か砂糖か分からない白いものが山のように盛られていた。
あれは何だろう?
ゴブリンたちのごはんかな?
塩か砂糖っぽいものから、魚のシッポが出ている。
魚料理? 白いのは塩? あんなにかけたらしょっぱすぎない?
「大デブはオレがやるから、メイドを任せてもいいか?」
「さっき覚えた水魔法で攻撃すればいい?」
「ああ。顔めがけて水の玉をぶつけてやれ」
「わかった」
話している間に、ゴブリンたちがこちらへ歩いてくる。
ノクスは大デブめがけて剣を横にふった。
大デブのお腹がスパッと大きく切れたけど、血は出なかった。
「ぎぎぃっ!」
大デブは切れたところを両手でおさえながら、おこったような声を上げる。
血は出てないけど、あんなに大きな切り傷だから、まちがいなく痛いと思う。
「アクア!」
ぼくはメイドゴブリンに片手を向けて、起動言語を言った。
バスケットボールくらいの水を顔にぶつけるイメージで。
ぼくの手から放たれた水のボールは、メイドゴブリンの顔にぶつかると、頭全体をつつんでしまった。
「ギャボギャボギャボッ」
パニックになったメイドゴブリンは、大きな泡をはいてジタバタした後、バターンッてひっくり返ってしまったよ。
そのまま地面に吸いこまれるように消えていったから、たぶん死んだかも。
思ってたのとちがったけど、まあいいか。
「やっぱりお前、本番に強いな」
ノクスがチラッとこちらを見て言いながら、大デブの胸めがけて剣を突き出す。
突き刺した勢いのまま地面にたたきつつけるようにした後、ノクスが剣をぬき取ると、たおれた大デブも地面に吸いこまれるように消えていった。