第四話:チュートリアル
「メリディエスさん、まずは身体を動かしてみましょう」
ガイドのユヌが言うと、周りの風景が変わっていく。
石造りの建物の広間にいたぼくは、草原の真ん中に立っていた。
ぼくは手や足を上げてみたり、歩いたり、走ったりしてみた。
まだ慣れてないのに、いつもの自分の身体よりも動かしやすい。
「天使族は空を飛ぶことができます。どのくらいの高さまで上がりたいか、どのくらいの速さで進みたいか、考えるだけで飛べますよ」
飛ぶにはイメージが必要らしい。
天使になるのは初めてだけど、ぼくはゲームセンターでハンググライダーのゲームをしたことがある。
そのときのゲーム画面を思い出しながら飛ぶイメージをしたら、ふわりと身体がうかび上がった。
風に乗って、青空をすべるように進む。
背中の翼は広げたままで、羽ばたいていない。
トンビが空を飛んでるときみたいな感じだ。
「メリディエスさーん、そろそろ次のチュートリアルをしませんかー?」
楽しくてしばらく夢中で飛んでいたら、ユヌに呼ばれた。
地面へゆっくり降りるイメージをしたら、背中の翼が動いてなめらかに降りていく。
ぼくはユヌの近くへ、ふわっと軽く着地した。
「では、次はチュートリアルフィールドでモンスターとのバトルを練習しましょう」
ぼくの前の空中に剣が現れる。
ゲームの主人公が最初に持ってる剣みたいに普通っぽいやつだ。
ぼくがそれを右手でつかむと、草原の向こうからスライムが近付いてきた。
「まずは剣を使った物理攻撃からどうぞ」
ぼくはスライムが近くまで来たところで、剣をふり下ろしてみた。
スライムは見た目通りゼリーみたいにやわらかくて、簡単に真っ二つに切れてしまう。
二つに切れたスライムは蒸発するみたいに消えて、地面にお菓子の袋と丸い石が残った。
「ドロップ品はストレージに入れてお持ち下さい。片手を向けて『収納』と言えばストレージに入ります」
ってユヌが言ったので、ぼくはお菓子の袋と丸い石をストレージに収納した。
お菓子の袋にはスライムとグミっぽい絵がかいてある。
「ドロップ品は、街や村の商店で売ることができますし、自分で使うこともできます。魔石は魔道具のエネルギーになりますし、スライムグミは食べればHPが回復しますよ」
魔石は他のゲームやアニメで見たのと同じように使えるらしい。
スライムグミ、何味か気になるから、あとで食べてみよう。
「では次は魔法を使ってみましょう。魔法はスクロールを手に入れることで覚えられます。まずはこちらを差し上げますので、使ってみて下さい」
ぼくの前の空中に巻物が現れる。
手に取ってヒモをほどいて広げると、文字がうかび上がった。
文字はふわりとうかんで空中を進み、ぼくの頭に吸いこまれていく。
起動言語【イグニス】
初級火魔法。イメージすることで薪に火をつけたり、敵に火球を飛ばしたりする。
「薪を用意しますので、火をつけてみて下さいね。イメージして起動言語を言えば発動します」
ユヌが言うと、ぼくの前に枯れ枝の小山が現れた。
ぼくは枯れ枝に右手をむけて、燃えるイメージを頭に浮かべる。
「イグニス」
ぼくがつぶやいたら、ポッと音を立てて、薪が燃え始めた。
こんなに簡単に火がつけられるのか。
学校のキャンプのときに、この魔法が使えたらいいのに。
「天使族の場合は種族オリジナル魔法があります。それはレベルアップと共に使えるようになりますよ」
天使にはオリジナルの魔法があるらしい。
どんな魔法かな?
テレビゲームでは経験できない「実際に魔法を使う感覚」に、ぼくはワクワクしてきたよ。
もっとカッコイイいろんな魔法を使いたいな。