第五話:はじまりの街プリムス
「最後に自分の能力や状態を見る方法をお教えします。起動言語【ステータス】で表示されますので、試してみて下さい」
「ステータス」
ユヌに教えてもらった起動言語を言ってみたら、空中にスクリーンみたいなのが出た。
そこには、ぼくの能力値と、覚えた魔法が書いてあった。
名前:メリディエス
種族:天使
レベル:1
ジョブ:
体力:3
筋力:2
器用:5
敏捷:5
知力:5
魔力:5
カリスマ:10
魔法
イグニス:初級火魔法。火を生み出す。薪に火をつけたり、敵に火球を飛ばしたりする。
「これでチュートリアルは終わりです。こちらの転送ゲートから街に出られますよ」
ステータスを見た後、チュートリアルは終わった。
ぼくの前に、魔法陣が現れる。
この向こうに行けば、新しいゲームの世界を体験できるんだ。
「ありがとうユヌ、二人目のキャラを作るときにまたよろしく」
「はい。正式サービスが始まったら、またお会いしましょう」
ユヌに話しかけると、人間みたいに自然に答えてくれた。
AIのはずだけど、機械的な感じはしない。
テレビゲームではNPCと自由に会話することはなかったから、不思議な感じだ。
街のNPCも、こんな風に自由に話せるのかな?
ぼくは期待に胸をふくらませて、魔法陣の上へ足をふみ入れた。
◇◆◇◆◇
はじまりの街プリムス。
そんな文字が空中に現れて、すぐに消えていく。
風景が変わり、石と木でできた建物が並ぶ街が見える。
人の数はそんなに多くない。
このゲームのアルファテストに参加しているのは、100人くらいって言ってたっけ。
だから少ないのかな。
「よっ、メリディエス、待ってたぜ」
知らない人の声が聞こえる。
黒髪に金色の目、オオカミの耳とシッポ、背は高くて細マッチョ、二十歳くらいの男の人が近付いてきた。
頭の上を見ると「ノクス」っていう名前が空中にうかんでいる。
もうだれだか明らかだね。
「お待たせ、ノクス、街を案内してよ」
「おっけー」
ぼくはお兄ちゃんをキャラ名で呼んだ。
ゲーム内ではキャラ名で呼び合おうって約束したからね。
屋台から流れてくる、焼き肉のにおい。
パン屋の前を通れば、香ばしいパンのにおいがした。
「ここのモッチーズパン美味いぞ。食ってみな」
ノクスがオススメのパンを買ってくれた。
野球ボールくらいの丸いパンは、キツネ色よりも少しうすい色をしている。
「手を洗うなら、あそこだ」
ぼくが水道を探していたら、ノクスが指さすところに水が流れ出ている石像があった。
女性が水がめを横向きで肩に乗せている像で、水がめからきれいな水が流れ続けている。
「冷たい」
「わき水だよ。飲むこともできるぞ」
石像から流れ続ける水は冷たくて、手がぬれる感じもする。
うちの水道よりも冷たいし、カルキのにおいもしなかった。
ぼくは手を洗ってから、モッチーズパンを紙袋から出してパクッとかぶりついた。
「すごい、本物のパンみたいに味がする」
「美味いだろ?」
「うん。やわらかくて中のチーズがとろけてて、あったかくて美味しい」
フルダイブゲームの世界で初めて食べたパンは、現実世界のパンのように味わえた。
ゲームをしているというよりも、もうこれは異世界に来ちゃった感じがするよ。