第二話 あんだけ歓迎されといて
実技試験はその後、滞りなく進みオーラス。何度か大物手をアガって気付けば断トツで最終局をむかえたキラの手牌はこうだった。
キラ手牌 持ち点62200
⑤⑤⑤⑦⑧112345中中 6ツモ
(リーチとか必要ないから中のポンテンが取れたら一番良かったんだけどな。ま、こっから逆転されることもないか。点差は二着目とだって32100点差。オーラスの親は飛び寸前のラス目で点差とか計算する必要すら感じないし三着目も似たようなもんだ。あとはこれをアガるだけ――)
「リーチ」
打1
「ロン!!」
その発声の大きさにキラはビクッとなった。
(ヤバい。三着目のダマテン?! 無警戒だった。この声量は、ヤバい!)
三着目 安藤手牌
一九①⑨9東南西北白発中中 1ロン
「32000」
「――はい」
捨て牌を見れば国士無双であることは明白で、そこにはなんの迷彩も無かった。ただ、超断トツであるがゆえに無警戒になっていたのだ。もう、勝ちは揺るがないな、と。その慢心から取る必要があったかあやしいテンパイをとり。かける必要があるのかあやしいリーチをかけようとし。結果、役満に放銃。しかも三着目はアタマを中にしている。それを切ってくれればポンテンで済む手牌だったのに最終手出しで発を捨てての中アタマ。つまり見事に中を絞った上でのアガリということ。完全にキラの負けである。
(終わった......最悪だ。こんなことをやるために受験料を払ったわけじゃねえってのに)
「こら。ゲーム終了した卓はきちんと挨拶をして終わりにしなさい! ん? 12番吉良。何をしている」
「あ、すみません! ちょっと自分が情けなくて......」
試験官ミカゲは卓上を見渡して一瞬で全てを察した。
「ふ、まあそういう時もある。そう気を落とすな。来期またチャレンジすればいい。さあ、挨拶をして終わらせるんだ。プロになりに来たのだろう? プロってのは既にプロ意識がしっかりある人間に『それならば』ということで与えられる称号だ。挨拶くらいしっかりしないとな!」
「はい......」
「「ありがとうございました」」
◆◇◆◇
「つーわけでさ。あんだけ歓迎されといて、おれは落ちたわけよ(知らんけど)」
「最終局は僕も見てたから知ってるよ。たく、らしくないなぁ。前向きに考えようよ。少なくともミカゲプロにはプロ団体に必要な人材であると認められたんだろ? それにツイてることもあったじゃないか。その国士無双」
「ツイてること?」
「考えてみなよ、それ宣言牌の1索でヒットしてたから二着だけど、リーチ後に別の牌でヒットしたらリーチ棒ももってかれるから三着落ちしてたんだぜ。僥倖の二着とも言えるだろ。役満振って二着なんて実に珍しい」
「あ、そうか、確かにそうだ。けど、落ちてちゃ意味ないさ......」
「ンもう! 本当にウジウジとしつこいな! やっちまったモンはしょうがないだろ。それにまだ合否は出てない。可能性はゼロじゃないだろう?」
「そうかな、ゼロみたいなもんだろ。30200の二着で22位に滑り込みなんて出来る気がしないよ」
「そうかな? 案外生き残るかもと思ってんだけどな」
「ところでシローはどうだったんだ?」
「僕を誰だと思ってんだよ。それはトップに決まってるだろ。倍満ツモってやったよ」
「さすがだな」
────
──
『はい、全卓終了しましたので別室に移動して下さい。合否判定を行います。また、自分は実技で無理だったという方も研修生として迎え入れる可能性がありますので最後まで残って下さい。解散は約1時間後になります』
(うわっ、まじか。もうさっきから腹減りすぎてグーグー鳴ってんのにこっから1時間あるんか!)
(シロー、外出てすぐのとこに自販機あったろ。あれ、確かコンポタが売ってるやつだから一瞬の外出許可をもらって買ってきてやるよ。おまえはほぼ合格だからいきなり名前呼ばれる可能性もあるし行けないだろ。かわりに行ってきてやるから)
(キラぁ〜! おまえって本当いいやつだなあ。そしたら300円やるから自分の分も買ったらいいよ)
(サンキュ。じゃ、ちょっと行ってくる)
そう言って席を立ち試験官のミカゲに許可を取ると「3分以内に戻ること」という条件で外出許可が降りた。3分以内。キラはウルトラマンのごとく入り口の方向へと急いだが「危ないので歩きなさい!」とミカゲに言われ競歩のスピードに匹敵する速度で大股歩きをしていった。