第四話 ミカゲからのお願い
「......え?」
キラは一瞬何が起きているのか理解出来ていなかった。名前を呼ばれた? おめでとう? どうもピンと来ない。自分は役満放銃したはずだが。と。
「おい、どうしたんだよ。キラ! おまえもプロになったんだよ! 試験官に返事くらいしろよ」
「えっ、やっぱおれがプロになったってこと?」
「だからそうだってば。やったな!」
「............やった............やった! やった!!」
「そうだ。おめでとう、12番吉良義慶。いや、吉良プロと呼ぶべきだな」
「ありがとうございますミカゲプロ。おれがプロか、そっかぁ」
「こーら。先輩プロを馴れ馴れしくファーストネームで呼ぶな。私のことは『金子プロ』と呼ぶ事!」
「(あっ『ミカゲ』ってファーストネームだったのか)わかりました。すいません、金子プロ」
「よろしい」
隠密ミカゲのフルネームは金子水景である。ミカゲは名字ではない。しかし、御影(ミカゲ)という名字は存在するためキラが勘違いしたのも仕方のないことだった。
「なんだぁ、ミカゲ。彼がお気に入りなのか? ずいぶん機嫌がいいじゃないか」
「うるさいわよ、トキオ! 彼のことは後で話すわ、とてもいい人材よ、彼」
「珍しい。ミカゲにここまで言われるなんて、どんな人物なのか興味深いな」
俳優顔負けの色男は『トキオ』というらしい。しかし、本当に綺麗な男性だ。まるで乙女ゲームやライトノベルの世界からキャラクターが出てきたような美しさだなとキラは思った。
『コホン、続いて研修生の発表をする――』
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──
「「かんぱーい!!」」
中生を頼んだ2人はジョッキをキンと軽く当ててお互いの合格を祝福した。
「いやー、良かった。キラも合格して本当に良かった」
「バカヅキしたよな。まさか繰り上げ合格するなんて」
「ミカゲさんもすげえ喜んでくれてたな。キラ、おまえ歳上キラーなとこあるよな。歳上キラーキラ」
「茶化すなよ。それに金子プロの恋人はあの『トキオ』って人だろ」
「は? なんでそう思うの」
「おまえわかんねーのかよ、金子プロは自分のこと『金子プロ』と呼びなさいと言うくらいにはおカタいのにあの人には『トキオ』って言ってたんだぞ」
「あ、あーー。......キラは鋭いな」
「おれは普通だ。おまえが鈍いの」
「にしても、ミカゲさんはおまえに期待してるのは間違いないな。帰り際呼び出されて少し話してたろ、なんて言われたんだ?」
「ああ、正規合格者数が増えた関係で仮ライセンスの用意が今無くて渡せないからもし自宅にライセンスが届く前にライセンスを必要とする場面が来たらこれを提示したらいいって言って......コレ」
それは金子水景のサイン入り名刺だった。右下には『仮ライセンス』と記入してある。
「これを見せればライセンス代わりになるってさ」
「おま、それ、単純に連絡先書いてある名刺もらっただけじゃね?」
「まあ、そうかも。何か困ったことがあれば連絡して来なさいとも言っていたし。連絡先を渡されたには違いないかもな」
「あとでかけちゃえよ。待ってるかもしんないし。てか、それの他にも何か話してたろ」
「おまえよく聞いてんな〜。別に、まじめな話しかしてないよ」
「どんな?」
金子水景の話は以下のようなものだった。
『いつの世もルールは完璧ではありません。狡猾な奴がうまくすり抜けてルール上禁じられていない抜け穴を見つけては悪さをします。しかしそれを我々スタッフは許しません。なぜなら人と人の繋がりはルールより上にマナーがあるから。ルールとは本来【強制的にマナーを守ってもらうための分かりやすいマニュアル】という役割があり、ルール外であっても明らかなマナー違反は禁止行為です。ルールにないからやっていいなんてのは頭の悪い子供の理屈。いい大人がやることじゃないんですよ。そのことを昨今の雀士たちはまるでわかってない。あなたは正しいマナーと優しさをそのプレイで示してくれる【真心の人】だと思う。どうか、私たちと共に、プロ活動をして下さい』
「......っていうね、お願いをされた」
「キラ、おまえすごいな。で、それでおまえなんて答えたの?」
「『わかりました』って。本当はよくわからなかったんだけどさ。おれって真心の人って言われる程の人物だったのかな? 優しさを持とうくらいは考えてるけど、ある程度は厳しくてもいいと思うし。そういうのってバランスじゃないか?」
「ま、いいじゃないか。誤解だとしても良く思われてるのは良いことだ!」
「まあ......そうか」
その後、酒を飲みながら今日のテストのことや実技試験でのことなど話しあってこといるうちに酒も回ってきて楽しくなっていると終電を逃し......
「あっ、うそだろ。もうこんな時間かよ」
「やべ、電車ないじゃん。どーする? キラは早番でしょ」
「あ、おれ連休だからそれは大丈夫」
「なんだ、じゃあこのまま朝まで麻雀談義でいこー」
「よっしゃ、テーマは『麻雀と優しさ』でいくべ。真心の人って言われちゃそれについて考えとくしかないからなー」
「まじめだなあ」
「金子プロの力になりたいだけさ」
「恋か?」
「......それはわかんね。けど、女からお願いされたら頑張ろうとすんのは男として普通のことだろ」
「だな」
「それに金子さんはこうも言ってたんだ。麻雀の本質の話なんだけどさ、それに心打たれたっていうのもあるな」
「麻雀の本質?」
「ああ」
金子水景の話した麻雀の本質とは――?