第伍話 麻雀の本質
ファミレスでお互いの合格を祝う宴を行っていた2人は終電を逃してしまい朝まで麻雀談義をすると決めた。
もうかなり呑んでおりキラはしゃっくりが出てきた。
「金子プロは麻雀の本質について...ヒック! こう話したよ――
『私はね、麻雀って真剣勝負という側面もあるけど、基本的には遊びだと思ってて、それが本質だというのが持論なの。どんなに偉い人が「いーや麻雀は真剣勝負だ!」とか「麻雀はギャンブルだ」とか言うとしてもこれだけは譲らない。麻雀の本質は『遊び』。だからこそ優しさを持ってプレイヤーはマナーを守ったプレイを行い、勝っても負けても最後には、ああ今日も麻雀がたのしかった! となって欲しいわけ。だって、私たちは生きてるんだもの。せっかく麻雀をしてるんだもの。笑ってたほうが......いいでしょ』
......ってね、うわッ? おいおいおい、どうしたシロー。泣くほどか??」
金子水景の持論を聞いて井之上士郎は感動のあまり泣いていた。酔っ払うと泣きやすくなるタイプなのか、深夜のファミレスで泣く男。奇妙な光景である。
「いや、だって。ミカゲさん立派すぎん? 生きてるんだから笑ってたほうがいい......うん、ほんと。僕も感銘を受けたわ......グスッ! 僕、母さんを子供の頃に病気で亡くしててさ。でも、いつも笑顔で、入院してからもずっと笑顔で。母さんの笑顔はそういうメッセージもあったのかな、なんて思い出して......グスッ」
「そうだったのか ヒック!」
「......キラ、しゃっくり出てるし一旦水飲んだら? この席はトイレ遠いからヤバいと思ったら即トイレ行きなよ?」
「........................それは......今だわ......」
そう言うとキラは立ち上がり猛ダッシュでトイレへと駆け込んだ。
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15分後。
「お待たせ」
「......遅かったね」
「ん。ついでにトイレ掃除してきたからな」
「おま、なんでそう素晴らしい人間なわけ。いつもそうなの?」
「トイレ入ったら掃除して出てくるのはけっこうよくやることだね。でも、毎回ではないよ。元から綺麗ならやる必要ないし」
「偉いよ。ほんと。僕はだらしない人間だからキラにはびっくりさせられ通しだ。疲れたろ、ほら。水持ってきたから」
「お、サンキュー」
ゴクッゴクッ
「うまい! 結局水が一番うまい!」
「そうなんだよな。料理とかも複雑な料理より肉焼いて醤油かけただけの方が好きだし」
「それどころかおれは魚を切って生で食うだけの方が好きだ」
「刺身な」
「シンプルイズベストって昔から言うもんな。麻雀もそういうとこあるし」
「本当本当、麻雀は――」
何の話をしていても結局は麻雀の話に戻る2人。それは青春を麻雀に掛けた人間ならでは、麻雀愛がなせるわざなのであった。