イモムシの知恵
「いいや。これは君の物語だよ。」
見当違いの方向からみなみの声がした。
私は声のした方へ向き直り、問いかけを続けた。
「みなみさんを封印したら、この物語は閉じるの? この物語が閉じたら、私たちの任務は終わるの?」
「私を封印しても、物語は終わらない。」
答えはまた別の方向から。
「任務を終わらせるのは簡単だ。」
「君が君の現実に帰れば良い。」
「君は任務を忘れて、普通に生きていけばいい。」
右から左から、前から後ろから、上から下から。
声のする方へ振り向いても、そこにみなみはいない。
みなみが見ていた私、みなみと私が見ていた景色。
一つ一つが懐かしい映像。
「みなみさんは、どうするの?」
どれもはずれならと、私は適当な方向へ顔を向けた。
今度は正面から、みなみの声が聞こえた。
「君を封印して、私は私の日常に戻る。」
問の答えは残酷だった。これではまるで......
いや、はじめから、薄々わかっていた。
「最後の本の怪異は、ちなみだよ。」
みなみがそう告げると、最後の扉......終章のページが開かれた。