みなみの証言
みなみは普通の子供だった。
ある日、幼いみなみは不思議な書庫に迷い込んだ。
本屋にも図書館にもない本が並ぶ、主人不在の書庫。
遥か昔にどこかの誰かが書き溜めて創り出した無数の物語。
物語の怪異を閉じ込めた物語。
みなみは、そんな物語の中の怪異たちを現実に解き放ってしまった。
怪異は普通の人には見えなかったが、小さなイタズラから大きな災害まで、現実の世界に影響を与えた。
みなみは、書庫の本を頼りに、たった一人で本の怪異と戦った。全ての怪異を倒したら、元の普通の生活に戻れると信じて、剣を振い、魔法を放った。そのうちみなみは、魔女と呼ばれるようになった。
怪異との戦いを進めるうちに、怪異を閉じ込めた本を生み出す魔法を手に入れた。
その魔法で創り出した怪異は、生みの親でもあるみなみを相棒と呼んだ。
みなみと同じ顔をした、とても普通の女の子。
本の怪異を、本の中で捕まえて封印することができる特別な女の子。
みなみが何年もかけて少しずつ成してきたことをたった半年で補完して、完遂してしまった、特別すぎる女の子。
そのように、みなみが創った。
本の世界から現実に現れなければ......言葉を交わし、笑いかけてこなければ、手をつないだ時の体温を感じなければ、「ちなみ」はただの怪異にすぎなかった。
みなみは、最後の一冊のを前にして、怪異を封印することが怖くなってしまった。
「ちなみは私にとって、たった一人の戦友で親友だったよ。」
「私にとってのみなみさんも、同じでしたよ。」
二人は互いの手のひらを重ねて、二人で封印の呪文を唱えた。
青い光が書庫を満たす。
目を閉じて、開いたら、私は青空の下の公園でファーストフードの袋を広げていた。
特別な日ではない、金曜日の昼下がり。
私はポケットの鍵を確かめて、オフィスに戻った。
――読了