Radix––根源–– 上編
長い年月が経った。
「タオ、人がまた自由を手にした」
「そうね」
「いつかタオが、言った通りだった」
「何か言ったかしら」
「人は、定義を知るからこそ自由を選べると」
「言ったかもね」
「タオ、どうかしたのか?」
「...タオは逆だったわ」
「ん?」
「自由に囚われる人を見るのが辛い」
「自由に囚われる鳥、虫、獣、草、木、花」
「自由なのに、自由を選ばない」
アルカナは静かに世界を見下ろした。
「その選択も、自由だろう」
その言葉に、タオは世界から目を逸らした。
「アルカナ」
代わりに、秩序を司る根源を見つめた。
「思えたの?」
唯一の仲間でもある、アルカナを。
「この世界が、美しいと」
唯一の敵でもある、アルカナを。
「あぁ」
アルカナは静かに言う。
「全ての生き物は、定義の上で成り立つ」
「ええ」
「人は定義を破る存在だとアルカナは思ってた」
「...」
「だが違った」
「......」
「人は定義を超える存在だったんだな」
「...アルカナは、強いね」
タオはいつも、アルカナが羨ましかった。
何もかもを見透し、定義して、
人を、植物を、動物を、季節を導く。
そんなアルカナが、愛おしくて、憎い。
羨ましくて、妬ましい。
透明な貴方。
「タオだって、強いだろう」
アルカナはいつも、タオが羨ましかった。
全てを知りながらも、森羅万象を信じる心。
だが、道を踏み外そうとするモノには
いつも『可能性の選択』を与える。
何もかもを受け入れ、流転して、
人を、植物を、動物を、季節を見届ける。
そんなタオが、愛おしくて、憎かった。
羨ましくて、妬ましいと感じた。
黒の貴方。
『愛してる』
『憎い』
故に世界は今日も、美しい。