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Via Serpentis––忘却の子––

「レール、俺を見て」
「......待て、待て。やめろ、やめろ!」
「俺の名は―――」
 その瞬間、声がした。
「言うな!」
「親...父...?」
 紅が広がっている。とても苦しそうだ。
 だが、迷いなく少年の方へと進む。
「その先を、絶対に言うな!」
「なんで!」
「守るためだ!」
「俺なら皆護れる!」
「それは救済なんかじゃない、呪いだ!」
「なら、なんで根源アルタオはこんな名前を与えた!」

「俺がお前を護るためだ!」

「俺は、親父達が殺戮者とかって呼ばれる方が嫌だ!親父が痛そうに、苦しそうにするのなんて見たくない!」
 その言葉は、殆ど悲鳴だった。
「パステルも、レールも、ミステリも!皆!皆!苦しんでほしくない!」
 その瞬間、ネックレスが光った。

「俺はオクルヴィス・クロウリー!」

「やめろ...やめろ、ヴィー!」
 レオンは泣きながら少年に触れようとした。

『願いは?』

「親父達は殺戮者なんかじゃない」
 ナニカに向かって、言う。
「森羅万象全てと共に生きてきた」
 ナニカに向かって、叫ぶ。
「人と向き合おうとして生きてきた」
 ナニカに向かって、嘆く。
「親父達は、恵オアシスだ!」

『無事に願いは届いた』

「いやだ、いやだ、ヴィー!ヴィー!」
 光に包まれる少年を見て、レオンは叫ぶ。
「レオン!」
 レールがなんとかレオンの腕を掴む。
「レオン、落ち着け!」
 その声は、届かない。
「俺、俺が役目を果たしてきた!」
 その悲鳴だけが、響く。
「なあ、根源アルタオ、聞いてくれ、俺が役目を果たす。力と知恵を、俺は...ちゃんと、持ってる、導いてきただろう!?なぁ!」
 その悲鳴だけが、残る。
「答えて、くれよ...」
 その言葉ですら、届かない。
「ヴィー...」
 息子の耳に、届かない。
「...レオン」
 レールの言葉に、レオンはただ涙を流すしかできなかった。
「...レール、後は、後は任せた」
 レオンはそう呟く。
「は...おい、レオン」
 レールの元から離れる。
 いつの間にか、傷は治っていた。
 根源アルタオの祝福か、または呪いか。

「俺はスネークウォークの水を司る者」

 蛇は逃げるために曲がるのではない。

「レオマレ・クロウリー」

 生きるために、最短を捨てる。

「俺の『記憶』を対価に、ヴィーを返せ」

「レオン、ダメだ!それは禁忌だ!」
 レールの叫びを、レオンは無視した。
「返せ、根源アルタオ。俺のヴィーを」
 黒曜の髪はゆっくりと揺蕩う。
「返せ、根源アルタオ。俺の愛する息子を!」
 琥珀の眼は空を見据える。
「返せ!」


『お前は知識と知恵を既に持っているな。であれば、お前には囁やかな祝福を授けよう』
 ――ナニをくれるんだ?
『いつかお前が本当に護りたいモノができた時、その名を口にするがいい。そうしたら全ての原初、根源アルタオの名において、お前を助けてやろう』
 ――その名は?
『オクルヴィス』
 ――意味は?
『意味?お前は時の間を護る鍵であり、眼だ』
 ――時を司る鍵であり、眼...か。成程な。
『やはり、お前は聡いな。名の意味を聞いてきた者など、レオマレとお前くらいだ』
 ――レオマレ?なんだそれは。
『そうだ。親子にしてやろう』
 ――おやこ?
『レオマレ・クロウリーの子』

『オクルヴィス・クロウリーだ』

「おや、じ」
「ヴィー」
「はは、やっと俺の名前を呼んでくれた」
「......悪かった」
「ううん、ありがとう。護ってくれて」
「なら、帰ってこい」
「俺の名は、親父達を護るためだ。今使う」
「......」
「水を司る親父が泣いてるの、変な感じだな」
「ばかが...」
「親父」
「......」

「だいすきだ!」

 後の文献で、スネークウォークとは
 村を街へ、街を国へと発展させた『移動民族』として多くの文献に残る事となる。
 そして、どの文献にも必ず全員の名が載っているというのは、極めて異例であり、その事実によってスネークウォークは多くの議論が今も行われている。
 殺戮者として時には評され、
 時には恵オアシスとして評される。
 九十九名の中でも、極めて多く残っている者の名は――。
 レオン。正しくは『レオマレ・クロウリー』

 百人目の名だけは、
 どの文献にも存在しなかった。
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「レール、俺を見て」
「......待て、待て。やめろ、やめろ!」
「俺の名は―――」
 その瞬間、声がした。
「言うな!」
「親...父...?」
 紅が広がっている。とても苦しそうだ。
 だが、迷いなく少年の方へと進む。
「その先を、絶対に言うな!」
「なんで!」
「守るためだ!」
「俺なら皆護れる!」
「それは救済なんかじゃない、呪いだ!」
「なら、なんで根源アルタオはこんな名前を与えた!」

「俺がお前を護るためだ!」

「俺は、親父達が殺戮者とかって呼ばれる方が嫌だ!親父が痛そうに、苦しそうにするのなんて見たくない!」
 その言葉は、殆ど悲鳴だった。
「パステルも、レールも、ミステリも!皆!皆!苦しんでほしくない!」
 その瞬間、ネックレスが光った。

「俺はオクルヴィス・クロウリー!」

「やめろ...やめろ、ヴィー!」
 レオンは泣きながら少年に触れようとした。

『願いは?』

「親父達は殺戮者なんかじゃない」
 ナニカに向かって、言う。
「森羅万象全てと共に生きてきた」
 ナニカに向かって、叫ぶ。
「人と向き合おうとして生きてきた」
 ナニカに向かって、嘆く。
「親父達は、恵オアシスだ!」

『無事に願いは届いた』

「いやだ、いやだ、ヴィー!ヴィー!」
 光に包まれる少年を見て、レオンは叫ぶ。
「レオン!」
 レールがなんとかレオンの腕を掴む。
「レオン、落ち着け!」
 その声は、届かない。
「俺、俺が役目を果たしてきた!」
 その悲鳴だけが、響く。
「なあ、根源アルタオ、聞いてくれ、俺が役目を果たす。力と知恵を、俺は...ちゃんと、持ってる、導いてきただろう!?なぁ!」
 その悲鳴だけが、残る。
「答えて、くれよ...」
 その言葉ですら、届かない。
「ヴィー...」
 息子の耳に、届かない。
「...レオン」
 レールの言葉に、レオンはただ涙を流すしかできなかった。
「...レール、後は、後は任せた」
 レオンはそう呟く。
「は...おい、レオン」
 レールの元から離れる。
 いつの間にか、傷は治っていた。
 根源アルタオの祝福か、または呪いか。

「俺はスネークウォークの水を司る者」

 蛇は逃げるために曲がるのではない。

「レオマレ・クロウリー」

 生きるために、最短を捨てる。

「俺の『記憶』を対価に、ヴィーを返せ」

「レオン、ダメだ!それは禁忌だ!」
 レールの叫びを、レオンは無視した。
「返せ、根源アルタオ。俺のヴィーを」
 黒曜の髪はゆっくりと揺蕩う。
「返せ、根源アルタオ。俺の愛する息子を!」
 琥珀の眼は空を見据える。
「返せ!」


『お前は知識と知恵を既に持っているな。であれば、お前には囁やかな祝福を授けよう』
 ――ナニをくれるんだ?
『いつかお前が本当に護りたいモノができた時、その名を口にするがいい。そうしたら全ての原初、根源アルタオの名において、お前を助けてやろう』
 ――その名は?
『オクルヴィス』
 ――意味は?
『意味?お前は時の間を護る鍵であり、眼だ』
 ――時を司る鍵であり、眼...か。成程な。
『やはり、お前は聡いな。名の意味を聞いてきた者など、レオマレとお前くらいだ』
 ――レオマレ?なんだそれは。
『そうだ。親子にしてやろう』
 ――おやこ?
『レオマレ・クロウリーの子』

『オクルヴィス・クロウリーだ』

「おや、じ」
「ヴィー」
「はは、やっと俺の名前を呼んでくれた」
「......悪かった」
「ううん、ありがとう。護ってくれて」
「なら、帰ってこい」
「俺の名は、親父達を護るためだ。今使う」
「......」
「水を司る親父が泣いてるの、変な感じだな」
「ばかが...」
「親父」
「......」

「だいすきだ!」

 後の文献で、スネークウォークとは
 村を街へ、街を国へと発展させた『移動民族』として多くの文献に残る事となる。
 そして、どの文献にも必ず全員の名が載っているというのは、極めて異例であり、その事実によってスネークウォークは多くの議論が今も行われている。
 殺戮者として時には評され、
 時には恵オアシスとして評される。
 九十九名の中でも、極めて多く残っている者の名は――。
 レオン。正しくは『レオマレ・クロウリー』

 百人目の名だけは、
 どの文献にも存在しなかった。
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