11話 答案部
答案部......ね。
俺は首を傾げてその紙を見る。
どんな問題があるのか分からないけど、行ってみますか。
◆◆◆
紙に書かれていた音楽室前に行く。
答案部がどういう部活なのか、いまいちピンと来ないけど、答えを出す部だから問題も用意してるし、謎解き部って感じなのかなー?
音楽室前に着く。
謎解き部なのに音楽室使うんだ。
そこには既にカップルっぽい男女が一組いた。
その二人は悩んでそうに話していた。
机があり、その上には紙と錠の掛かった箱があった。
紙を見ると、あまり上手くない両手を広げた女生徒が二人映る絵が描いてある。
錠は三桁で開くタイプの鍵だった。
う~~ん? 鍵を開けろってことだよな。それは分かるんだが。
俺はネックウォーマーを上げた。
消去法で......絵から言葉を出して、三桁の数字に置き換えて開けるのかな?
ネックウォーマーから手を離し、ゴニョゴニョ話す。
「この絵からして、手を広げてるから......三文字くらいで、またね、は違うか......おいでとか? よおこそ、とか?」
おいでは01でおいで、でってなんだ? 調べた方が早そうだな。
俺は、スマホの文字数変換のサイトを使って調べてみた。
「6か......」
おいで、で016となった。
メモ帳アプリにメモしておいて、一応よおこそも調べて一気に試そう。
「よおこそだから、45でよお......こも5に入るかな? で、そってなんだ?」
調べると3と出た。
453か。
俺は錠の番号を見る。
「あれ?」
と既に錠の番号は453になっていた。
開くか触って確かめてみる。
でも開かない。
「開かないですよね」
試していると近くにいた男女の男が、話しかけてきた。
「そうですね。開きませんね」
男女が不思議そうに二人で話す。
「開かないんですよねー」
「なんでだろうね?」
俺はスマホのメモ帳を開く。
「まだ、もう一つ試してない数字があるのでやってみますね」
「そうですか」
俺は016も試してみる。
錠を合わせるも、開かなかった。
「あれ? どっちかでは開くと思ったんだけどなー」
「やっぱり開きませんよね。まだなにかヒントがあるんですかね?」
「んーどうでしょう......」
この男性は彼女に問題が解けるところでも見せたいのかな?
男は真剣に顎に手を当て、悩んでいた。
分かる。その男心。代わりでもいいから解いてあげたいな。
俺は、ネックウォーマーを口元まで再び上げる。
......。
016は、多分合ってる......おいでかよおこそしかないと思う......。
ネックウォーマーを下ろす。
「このやり方はやっていいのか分からないですが......9から順番に揃えましょう」
男女は俺を見守っていた。
俺は453の3の桁を9から順番に、8、7と一つずつ試していく。
そうして、数字が6になった時「ガチャ」と錠は解けた。
「6か......」
「開きましたね!」
男性が目を見開く。女性が興味ありげに聞いてくる。
「凄い! 何で開いたんですか? どうして分かったんですか?」
俺は二人に向き直る。
「この絵を見て、おいでかよおこそを数字に直すんだとは思ったんですけど、おいでだと016で、6の『で』が分からなかったんです」
二人は頷く。
「でも、での6は調べれば分かるし他の数字とも間違わない。だけど、よおこそは45まではいい。その3がそって聞いたら3とは普通は出てきづらくないですか?」
「まー確かに」
「私たちも調べたよね」
「それで、この問題を作った人は調べずに3以外にしたのかなって、思って全部試そうとしたら6で開きました......という感じです......」
「なるほど」と二人は納得する。
それにしても、この問題は雑な作りだったな......。
俺は箱を見る。
中開けて見ようか。
俺は箱を開く。
中には折られた紙が入っていた。
それを広げて見ると、地図になっている。
地図には赤でマークがあり、そこに行けと書いてあるようだった。
俺はスマホで地図の全体を写真として撮った。
「あの、これ地図で解いた人はここに行けってことだと思うんですけど、お二人はどうします?」
顔を見合う男女。女性が口を開いた。
「私たちはいいです。解いたのは私たちじゃないので......ね?」
「うん! そうだね。そうしよう」
「そうですか」
俺は地図を折って元に戻す。錠の番号は適当なものにした。
◆◆◆
撮った写真の地図を見ながら歩く。
地図はラサシトタウンの地図で、マークは学校の外にあった。
なので、俺は学校を出ていた。
ラサシト揚げパンを手に歩みを進める。
「うめぇ」
マークのある場所は俺が行ったことのない場所で、住宅街をスルスルと入っていって、迷路みたいな道を進んだ先にある。
俺は最後の角を曲がった。
見えたのは緑溢れる小さな公園。
ツタが壁を登っていて、花壇には綺麗な花が沢山咲いていた。
この場所だけ別世界のような空間だった。
そこに、二人の女性がいるのが見える。
あっ!
二人とも見覚えのある人だった。
落ちる花の髪飾りをつけた小柄な女性に、あの名前を聞きそびれた人。
俺は、恐る恐る近づく。
二人がこちらに気づいた。
聞きそびれた人が、少し驚いたような表情をして俺を見た。
「やっぱり、また会えたわね」
「......そうみたいですね」
俺は小柄な......。
確か名前はー......やべ、この人の名前は聞いたはずなんだけどな。一瞬だったから。
「あの」
小柄な人が俺を見て、頭を下げてくる。
「あなたのことは覚えてますよ。弟が本当にお世話になりました」
「いえいえ」
「名前聞いてなかったですね。改めまして、私は亡雨生晴です」
亡雨さんだー! そうだそうだ。
「あっ、私は囚覚十恕です」
「一年生?」
「はい」
「なら囚覚くんですね」
「はい」
聞きそびれた人が話に入る。
「私は囚覚んと呼ぶわ」
「え? なぜ?」
「親しい人はあだ名で呼びたいのよ」
「そうですか分かりました。こちらはなんて呼べばいいですか?」
亡雨さんがニッコリとする。
「いつひんは?」
「それはあなたの呼び方でしょ。囚覚んには似合わないわ」
聞きそびれた人が、俺に振り向いた。
「私の名前は、おとど乙一だから普通にあなたは私のことをおとどとでも呼んで」
「おとど......? 分かりました」
なんて書くんだろ? 後で調べておくか。
「それとタメ口でいいわ」
「え、一応先輩になるので......」
「大人になったら、一歳の年の差なんてあってないようなものよ。大人になってないから、はっきりとしたことは分からないけど、きっとそうよ。だからいいの」
「分かりました......分かった」
「それとね。部室を答えの場所にしなかったのは、部室、時間制だからいつ来られても平気なようにここにしたの。ここ、いい場所でしょ?」
俺は辺りを見た。
「そうですね」
「ていうことで囚覚ん。この部、答案部に是非入って欲しいわ!」
「あの......答案部って何するの?」
「謎解きとか、ミステリー部みたいなものよ。学校でやる部だから真面目そうに聞こえる名前にしただけって、私は卒業した先輩から聞いたわ」
「なるほど......」
他の部に入ってみて、特にやりたいような部も無かった......。
優しい風が吹く。まるで俺たち三人を次へと押し上げるような風。
「分かりました。あ、いや分かった。この部に入るよ」
二人は笑顔で俺を見た。
「これで部員は全員合わせて、ここの三人になったわけだから仲良くよろしくね」