12話 ひとときの日常
「うちの部の先輩曰く、亡雨さん告白されてるらしいぞ」
クラス内の俺の席で10分休憩中に話しかけられた。
答案部に入ってること。それから女性がいること。顔の良さを聞かれたので、「凄く高いと思う」ということを素直に答えた結果。
法根が答案部について調べてきてくれた。
「それはいつ、どんな人に、相手は一人?」
俺は一応聞く。法根は腕を組んで深刻そうに答えた。
「先輩曰く......去年と今年合わせて、そろそろ両手いっぱいになるぐらいだと」
俺は耳を疑い目を見開く。
「な、なんだと......」
久しぶりに衝撃的な内容を聞かされてるなー。
「なぜここまで人気なのかというと......」
「うん......」
俺はゴクリと唾を飲み込む。
意外だ。
「見た目が可愛い、中身は優しい、声は天使、話すと愛嬌がある、動きは小動物でも実はお姉ちゃん、ちっちゃいところが逆にいい、見れば見るほど――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。なんか感想になってきてないか?」
「勘違いするなよ、俺が言ったんじゃないからな」
「分かった。取り敢えず次亡雨さんに告白するのが、法根の聞いたその人だって推理は容易にできる」
法根が時計を見て、俺を見る。
「ま、俺は亡雨さんとやらのこと、まだ拝んだこともないからなー。でも、実際二年の間では人気高いらしいぞ。女子からも嫌われてるとかそういうのもないらしい」
「へーー」
「と、次はおとどさんだな。あの漢字が上に雲、下に龍って三つずつ書く、テストの時どうしてるんだと一番気になる名前の人だが......」
そういえば、まだ漢字調べてなかった......。
俺はスマホで「おとど漢字」で画像検索してみる。
「うわっ凄そうな画数!」
「だろ?」
法根も俺のスマホを覗き込んでいた。
「そんなおとどさんは告白されているのかっていうと、勿体ぶらずにぱっぱか答えると、二回あったかなかったかくらいだとよ」
「すー、(呼吸)そういえば俺、別に二人に彼氏がいるか? みたいな調査頼んでないよ?」
「まぁそこは俺の趣味よ。ダチがこれからくっつけそうな相手が相手なのか確認するのが、ギャルゲの友人の役目だからな!」
手をグーに親指を立て、ニッと決めた法根。
「別にギャルゲの世界ではないけど、それと情報通の友人キャラっていうのも、最近では出てこないらしいしね。なぜかネットで流れてきたよ」
「惜しいやつを亡くしたな......」
「死んだみたいにいうけど、まあ、ある意味死んだようなものか......」
法根は目頭を押さえ、天井を向く演技をして遊んでいる。
「それで、どこまで話したっけ?」
俺は「えーと」と言い。
「おとどに告白が二回あったかなかったかって、話」
「そうだ、見た目は凄くいいらしいな。綺麗系って感じで」
「まあそうだね正直」
「なのにどうして、同じ部の子とここまで差が開いたのか? それは......」
俺は特に期待をしているわけではなく、法根が言うのを待った。
「厳しい性格で告白する相手がいないらしい」
「ま、まあそんなイメージは......まぁあるよ、ただのイメージだけどね」
「って感じだな。俺が調べた感じで。そうそう大事なことを言い忘れた」
「なに?」
法根は手を口元にやり、コソコソ話でもするかのように言ってきた。
「今二人とも彼氏はいないって」
俺は法根に向き直る。
「そういう目的で入ったんじゃないから......」
「まっ、そうだよな。でも、よくあの謎部に入れたな。入りたいってやつでも入り方が分からないってなるんだぜ。もちろん女の子目当ての男子だけど」
「うーーん」
俺はネックウォーマーを手で軽く摘む。
「確かに少し入るの難しいかも」
「聞くにそうらしいな」
「キーンコーンカーンコーン......」とチャイムが鳴る。
「おっと時間だ、じゃあ頑張れよ!」
「あ、ああ?」
なにを頑張るんやら......。
◆◆◆
部活動の時間になる。
俺は音楽室へと足を運んだ。
部屋の中、目の前には亡雨さんがいて、
小柄だけどいつも優しくて、良い人だな。
なんてことを考えて、亡雨さんを眺めていた。
「どうしたんですか、私の顔に何か付いてます?」
「いやいや、なにも。なにしてるのかな? と思って見ただけ」
「そうですか、今は自作の手遊びを考えていました」
手遊び......?
手を遊ばせながら亡雨さんは俺を見て、笑顔を向ける。
なんか笑顔が可愛いマスコットみたい......あれ? 普段俺こんなこと考えないんだけどな。法根のせいで変な思考になってる。
と、部屋のドアが開かれおとどが入ってきた。
「さぁ皆いるわね。自慢の問題を作ってきたわ!」
俺たちはおとどを見る。問題の話を聞いて今日も部活動は始まった。