
アヴォンマス陥落
■13.アヴォンマス陥落
南門詰め衛兵小隊長ウォルターは商人エドマンの無理な言い掛かりにうんざりしていた。
「なぁ、エド。そんな理屈が通らないことくらいあんたにもわかるだろう?」
「いやいや。ウォルター。あんたこそわからなきゃいけないんだ。こいつはイールプールのローデン伯爵の手形だ。ほれ、この手形の所持者の荷物は全て関税を免除されるってあるだろう?」
「何度も言うが、それはわかったよ。けれど、ここはメカニア王国だ。隣国の貴族が発行した手形の効力は及ばないんだよ。」
「だから、あんたがわからなきゃならないのはそこさ!いいか?ローデン伯爵と言えば、エスタシア王国でもロバート王子派の重鎮だ。エスタシア王国で現在、一番の権勢家と言っても良い。エスタシア王国とメカニア王国と言えば、強固な同盟国だ。そのメカニア王国の一衛兵がエスタシア王国随一のローデン伯爵の権威を認めなかったと後からわかってみろ?あんたの首一つでは済まないぞ?これは高度な国家間の問題なんだ。」
ウォルターには隣国エスタシアの王宮勢力の知識などないし、わかっているのは他国の貴族が発行した手形はメカニア王国内では無効ということだけだ。
自分は間違ってはいない。
しかし、『高度な国家間の問題』などと言われれば躊躇せざるを得ない。
「なぁ、エド。俺は目録通りの関税で良いって言っているんだ。賄賂もいらない。ここまで妥協したんだから、払ってくれよ。」
ウォルターはエドマンドの馬車に目を向けた。
ワインの樽の数だけでも明らかに目録よりも多い。
どう考えても、これを通関させるとしたら、普通は結構な賄賂が要求される筈だ。
それをなしにしただけでも、ウォルターにとっては最大の妥協だった。
少し弱気になったウォルターの様子を見てエドマンは調子に乗ったようだ。
「おいおい。ウォルター、いいか?今、エスタシア王国の英雄ジェームス二世王の後継者が誰かは決まっていない。正室の王子は一人もいないからな。庶子はいるが、いずれも身分の低い娘の産んだ王子だ。その点、ロバート様は先代エドワード三世王の孫であると同時にスぺラン王国の先代アンリ三世王の孫でもあるんだ。この御方が王にならせられれば......」
ウォルターは途中からエドマンの熱弁を聞いていなかった。
「おい。あれは......」
ウォルターは南門の外、フロル川を渡る石橋の向こう、なだらかな丘陵を縫うように街道が続いている。
その街道を暴走する馬がこちらに向かってきていた。
「おい......おい......おい!おい!おい!」
呼子笛が鳴った。
「ウォルター!橋の向こう!馬!」
門の上から大声で叫ぶ声が聞こえる。
「遅い!もうこちらでも見えてる!ビリー!行くぞ!」
ウォルターは一緒に門の通行人の監視をしていた部下の名前を呼ぶと走り出した。
「なぁウォルター、わかるだろ?エスタシアの次期国王の......」
なおも執拗に食って掛かるエドマンをウォルターは振り払った。
ウォルターと部下のビリーが門を飛び出した頃には暴走する馬は石橋に差し掛かっていた。
ウォルターもビリーも馬の扱いなど知らない。
どうして止めたらよいかなどわからなかったが、一先ず二人で橋の上で立ちはだかり、両手を広げて上げた。
そんなことで馬が怯えるかはわからなかったが、咄嗟に体を大きく見せた方が良いと思ったようだ。
馬の乗り手は馬にしがみつくようにしていて身動きしない。
そして、馬が近づき......
馬は狭い橋の上に立ちはだかるこの二人の男達を飛び越えることはできないと判断したらしい。
急に減速すると二人にぶつかる寸前で後ろ脚立ちになった。
しきりに前脚を振るので二人は仰け反り、尻もちをついてしまった。
馬は興奮して暴れ続け、乗り手は振り回されていた。
ウォルターは立ち上がろうと地面を這いつくばり、ビリーは片手を上げて振り回される馬の前脚から自分を守ろうと無駄な足搔きをしていた。
ウォルターがようやく立ち上がった頃には遂に乗り手も振り落とされ、暴れる馬の馬脚で踏みつぶされそうになっていた。
その時、ウォルターの背後から出てきた男が馬の轡をかろうじて掴んだ。
どうやらエドマンの馬車を御していた御者のようだ。
御者だけに馬の扱いがわかっているらしい。
必死に轡を掴んで、馬を落ち着かせようとしている。
「衛兵さん!申し訳ないがその人をどかせてくれ。このままじゃ踏みつぶされちまう!」
御者の言葉でウォルターは暴れる馬の脚元に倒れたままの乗り手のもとににじり寄った。
轡を掴まれた馬は、今度はしきりに後ろ脚で宙を蹴り上げていた。
ウォルターは乗り手を引っ張り出す間に一度、その蹴りを左肩に食らっていた。
安全な場所まで乗り手を引っ張り出したウォルターは乗り手の頬を優しくはたいた。
「おい!あんた大丈夫か?生きているか?」
乗り手の背中には矢が刺さっていた。
乗り手の着ているのは自分達と同じ衛兵の制服だった。
ただし、胸に刻印された紋章が違う。
乗り手の胸にはアヴォンマスの都市紋章が刻まれていた。
「......落ちた......」
乗り手がかすかに声を上げる。
「何だって?聞こえない。もう一度言ってくれ。」
「......アヴォンマスが......陥落......した......」
そして乗り手は沈黙した。
「ビリー!この人の面倒を見てくれ。」
ウォルターは乗り手の口元に手を当てた。
かすかに空気の流れを感じる。
心臓の鼓動もあるようだ。
まだ生きている。
ウォルターは走って、門に戻ると、門塔内で待機している小隊を呼び出した。
「テオ!耳を貸せ!」
待機組の小隊長テオが扉から出てくるとすぐにウォルターはその耳元に口を寄せ囁いた。
「なんだと?」
「こいつは大変なことになる。俺は今から中央詰所に走る。ここは任せて良いか?」
「わかった。任せろ。」
「そうだ、彼はまだ生きている。治療師を呼んでくれ。いや治療師では助けられないかもしれないな......テオ、この町唯一の魔法使いを知っているか?」
「北門近くに住んでる爺さんだな?」
「そうだ。彼を呼んだ方が良い。それと......」
「それと?」
「門の上にいる俺の部下である馬鹿二人を叱りつけておいてくれ!門の上の見張りは飾りじゃないってな!」
そう叫ぶとウォルターは走り出した。
馬に蹴られた左肩がまだズキズキしている。
南門から町の中に入ると道はまっすぐと右に分かれる。
まっすぐに行くとその先はすぐにまた左右に分かれる。
いつも中央詰所に行く時はまっすぐ行って、右に曲がる大通りを使うが、今回は最初に右に曲がった。
距離はあまり変わらないが、こちらの方が人通りが少ない。
衛兵が必死に走っているところをあまり町の住人に見せない方が良い......
彼のこの判断は後に彼の上司である中隊長に褒められるのだった。
非番のジェフリーは古き清泉亭で『攻城論(城市を陥落させる手段とその準備)』を卓に広げ、それを見ながら持参した紙にメモを書き込んでいた。
同じ卓の反対側の椅子にはアリスが座って、頬杖をついてニコニコとその様子を眺めている。
その様子を見ているダグは定期的に溜息をついていた。
やがて、ジェフリーは傍らに置いた水で割ったエールを飲み干すとコインをゴトゴトとテーブルの上に置いた。
「ごちそうさま。」
「もういいの?」
「あぁ。完全に読み切ったし、メモも取った。」
「これで町を守れる?」
「流石にそれはどうかな?でも勉強にはなった。中央詰所には『籠城見聞録』という本もあるんだ。これからそっちを借りてくる。それには、これまで各地で行われた過去の籠城戦についての記述がまとめられている。難しそうだが、次はそちらに挑戦してみるよ。」
「頑張ってね。あ、ちょっと待って。お父さん!私、ジェフリーを外まで送って来る!戻ったら、少し片づけするわ。」
「わかったよ。」
ダグが諦め顔で答える。
二人が出ていくと厨房からアガサが出てきた。
「アリスは今が一番夢中ね。」
「今が一番かい?」
「誰だってそうよ。意識し始めてすぐ、付き合い始めてすぐ、その頃が一番のぼせ上がるものよ。」
「そうかな?」
「そうよ!あなただって......」
「わかった、わかった!もういい!」
ダグが手を振るとアガサはクスリと笑った。
「それにしても寄りにも寄ってジェフリーとはなぁ......」
「あら?そこまでダメかしら?」
「さぁなぁ......儂はアリスには良い男と結ばれて幸せになって欲しかったからなぁ。」
「ジェフリーは悪くないんじゃない?評判も良いし。」
「評判だと?それはあの腹に一物ある厄介な商人共の話だろ?そりゃ彼らだって大切なお客様だが、兎に角、信用ができない。そんな奴らに限ってジェフリーを評価するんだ。衛兵隊の中じゃどうだ?ジェローム中隊長にはとことん嫌われているようだし、衛兵達からも人気者とは言えん。」
「仲の良い衛兵もいるじゃない?」
「ライリーやランディ達の小隊だろう?あいつらもジェフリー小隊並みに胡散臭い連中だからな......」
「あら?彼らは衛兵達の中でも特にうちに入り浸ってくれるお得意様よ?」
「そうなんだが......兎に角、本ばっかり読んでて、衛兵たるものジェローム中隊長みたいにとは言わんが、休みの日も練兵場で剣を振ったり、町に問題ないか見回りをしたりするくらい仕事熱心なら文句はないんだが。」
「彼が非番の日にここで一日中本を読んでくれなきゃ、うちの売り上げが下がるわ。」
「大した金になっとらんだろう。」
「それにジェフリーは身分の高い家の出身だと言う話じゃない?寧ろ、優良物件よ。」
「アガサ、実はそちらの方が問題なんだよ。」
「どういうこと?」
「あいつはどうも男爵の息子らしい。男爵と言っても北部の辺境貴族らしいがな。」
ジェフリーの出身地である北部丘陵の辺りはメカニア王国の中でも未開の後進的な土地とされ、そこの住人も粗野で野蛮と南部人からは少し軽侮されている。
そして、その地に領地を持つ貴族はマクリス王国やデーリア王国との国境紛争で戦功があって叙爵された俄か貴族が多いことからひとまとめに北部の辺境貴族と呼ばれ、他の貴族よりも下と思われている。
「北部の辺境貴族だって良いじゃない!」
「いや、貴族と言うだけで問題だ。考えてもみろ。男爵の息子がただの町娘と結婚すると思うか?いずれ家を継ぐ時にはアリスを捨てて故郷に帰り、どこかの貴族の娘と結婚するに違いない。」
「あらまぁ......」
「それなら大丈夫みたいよ。」
アリスの妹、マリーが厨房から出てきた。
「あ、お母さん。羊肉は全部、漬け込んでおいたわ。」
古き清泉亭の羊のグリルは贅沢にもワイン、酢、葡萄汁、季節の果物や蜂蜜で作った漬け汁に漬け込んでから焼かれる。
貴族達が食べるグリルのように高価な香辛料などは使っていないとは言え、大概の宿で出すグリルよりは遥かに凝っており、クレーネと並ぶ古き清泉亭の名物となっている。
尤も、その分、割高の料金とはなっているが。
「あと牛肉に下味付けてくれてありがとう。もう全部、生地に詰め終わったのよ。お陰で早く終わったわ。」
牛肉をペイストリ生地で包んで焼く料理は王都で流行り出してから、急速に各地に広がった。
古き清泉亭でも早くから取り入れて、今ではアガサとマリーの得意料理になっている。
「ところで、今の『それなら大丈夫』って、何のことだ?」
ダグはマリーに尋ねた。
「だから、お姉ちゃんとジェフリーの結婚のこと。」
「結婚だと!?」
ダグの声が上ずる。
「うん。お姉ちゃん言ってたわ。なんでも一代貴族だから問題ないってジェフリーが言ってたらしいわよ。それでお姉ちゃん、一気にジェフリーにお熱になったのよ。」
この姉妹は仲が良いからお互い何でも話し合うようだ。
「アリスがそんなことを言っていたのか?」
「お姉ちゃん。誰のことも良くは言わない商人達がジェフリーのことは認めているから昔から興味だけはあったみたい。で、試しに聞いたんだって。『貴族の娘と結婚するんでしょ?』って。でも、そうじゃないって話を聞いて......あれ?その頃からよね。お姉ちゃんがジェフリーに夢中になったのって。」
「マリー。儂にはジェフリーがそんな良い男には見えんが。お前から見ても良いのかね?」
「私?私は全然興味なかったわ。お姉ちゃんが珍しく興味持つから面白いとは思ってたけど。」
「アリスはジェフリーで本当に良いのかな?他にも良い男はいくらでもいるだろうに......あの子はこの町では人気者なんだぞ?」
「お父さん。それは違うわ。ジェフリーこそお姉ちゃんには良かったのよ?」
「何だって?」
「お父さん、キースを覚えてる?」
「キース?あの王都に行った優秀な男か?」
「そう。『一流の』キースよ。あだ名通り、衛兵の中でも優秀って評判で、ジェローム中隊長のお気に入り。しかも人望があって、部下からは絶大な信頼を寄せられてて、他の衛兵達からも人気だったわ。そして何と言っても超美形!正直フィルなんかより上だったわ。結局、すごい評判のおかげで推薦されて王都の衛兵になっちゃった!」
「ふむ。そのキースがどうしたんだ?」
「彼、お姉ちゃんに夢中だったの。」
「えぇ?」
「多分、四、五回はお姉ちゃんを呼び出して告白してるわよ。毎回振られてたけど。私なら一回目で『はい。』って言ったのになぁ......」
「お前、キースとだったら今頃......」
「そうね。栄えある国王直属王都衛兵隊の隊員様の令夫人ね。ま、お姉ちゃんがそんなことに興味あるとは思えないけれど。」
「お前、何が言いたい。」
「お姉ちゃんはお父さんが簡単に理解できるようなわかりやすい男の人よりも、変わった人が好みなのよ。」
マリーはそう言うと背を向けた。
「さ!私、そろそろ戻らなきゃ。スープの鍋をかき混ぜないと!」
マリーが厨房に消えるのを見届けるとアガサはダグに言った。
「あなた。アリスはもう二十一歳よ。正直、婚期を逃しかねないわ。これまで私達が薦めたお相手は皆ダメだったでしょ?あれだけいる衛兵達の中であの子が自分で選んだのはジェフリーなのよ。キースではなくね。」
「むぅぅぅ......」
「そろそろ、私達も覚悟した方が良いわね。」
ジェフリーが衛兵中央詰所に入るといつもと様子が違うことに気付いた。
どうも慌ただしい。
『攻城論(城市を陥落させる手段とその準備)』を本棚に戻し、『籠城見聞録』を取り出した。
ローランド卿の執務室に向かう途中、書記官のライトと目が合った。
(あいつ、ここに来る度、俺を見てないか?)
もう一度振り返るとライトは使い走りに何か命じていた。
(そうか、あいつだったのか。)
ジェロームはジェフリーが自分を介さずに直接ローランド卿と話をすることを嫌っていた。
衛兵小隊長の意見は中隊長である自分が聞いて、必要と思ったことだけを自分の言葉で司令官に伝えるべきと強く考えていた。
勿論、それは衛兵隊の規則通りのことである。
しかし、本好きのジェフリーは中央詰所の書棚の本を借りることが多く、ローランド卿と会話する機会が多かった。
ジェロームはその際にジェフリーがおかしなことをローランド卿に吹き込まないかと警戒していた。
その為か、ローランド卿と何かの話をすると翌日には必ず『お前、閣下に何を言った?余計なことは言っていないだろうな?』と尋ねてくる。
ジェフリーがローランド卿と会話したことを一々ジェロームが知っているのは誰か密告者でもいるのだろうと疑っていたが、ようやくわかった。
(もう、好きにしろよ。)
ローランド卿の執務室に行くまでもなく、ジェフリーはローランド卿と行き会った。
ローランド卿は側近の部下三人(いずれも中隊長待遇の男達だ
。)を引き連れ、矢継ぎ早に周囲に指示を出しながらやって来た。
「ジェフリーじゃないか?」
ローランド卿はにこやかに声をかけてきたが、その背後で側近の二人は冷たい目で見下ろし、一人はニコニコとしてきた。
ここでもジェフリーへの好悪は分かれるらしい。
「これは閣下。お忙しいところのようで......申し訳ありません。」
ローランド卿は片眉を上げてジェフリーが手にしている本を目にした。
「ほう?今度は『籠城見聞録』かね?」
「はい。『攻城論』は読み終えましたので、次はこちらで守る側の視線で学んでみようと思いまして。」
「随分、研究熱心ではないか?まるでこの町が攻められると知っているかのような姿勢だな。」
「いえ、決してそんなことは......」
「そうかね?しかし、君の千里眼は確かなようだな。」
「は?」
「ここだけの話だがな......」
「閣下!なりません!こんな小隊長ごときに!」
先程、冷たい目をしていた二人が慌てて制止した。
「構わぬ。」
ローランド卿は視線をジェフリーに戻すと続けた。
「ジェフリー、他言無用だぞ?」
「はぁ。」
「アヴォンマスが陥落した。」
「なんですって?」
ジェフリーは思わず叫んでしまったが、あたりを見渡し、声を落とした。
「遂に来たか......え?アヴォンマス?南?......、いや、そうか。港か......、あ、いや、どこだ?何故だ?」
突然の報せに動揺し、ひとりで呟くジェフリーをローランド卿は興味深そうに観察していた。
「それで?ジェフリー?本が読みたいのかね?」
「あ?はい。はい、読みたいと思いまして。」
「そうか。『籠城見聞録』は『攻城論』ほど読みやすくないぞ?決して文章が上手いとは言えないアグリー卿が各地の籠城に関する見聞を集め、特にわかりやすく解釈を入れるわけでもなく書き連ねただけの書物だからな。」
「はい。それで、後回しにしておりました。」
「そうか。感心なことだがな......」
ローランド卿はジェフリーから『籠城見聞録』を取り上げた。
「今は貸してやれぬ。」
「?」
「もうこれからは実地訓練の時だからな。ジェフリー。」
「はぁ......」
「非番のところ悪いがな。今日は詰所に戻れ。部下達も集めて待機しておくのだ。いつ緊急呼集がかかるとも知れんからな。間違っても例の酒場に入り浸るんじゃないぞ?」
(やっぱり古き清泉亭のことは知られているんだな......しかし......)
ジェフリーに言わせると古き清泉亭に行くなは無理な話だった。
部下を集めるなら古き清泉亭に行かざるを得ない。
何故なら今頃、ロニー、ボリス、フィルは古き清泉亭で飲み始めている頃だからだ。
勿論、ローランド卿の前でそれをわざわざ口にする気はなかったが......
それを知ってか知らずか、ローランド卿は続けた。
「ジェフリー、戻って部下達に伝えろ。」
「?」
「『休暇は終わりだ』とな。」