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第15話 本音と建前

緋那は優の母親と一緒に優の病室に戻る。病室では優と優花が楽しそうに笑いあっていた。

「優花ちゃん、お見舞いありがとうね」

 優の母親は先ほど見せた弱さは嘘だったかのように気丈に優花に笑いかける。すごいなと緋那は思った。緋那はどんな顔で優を見たらいいか、話を聞いてわからなくなっていた。

「あっ、おばさんこんにちは」

 優花が優の母親に挨拶をする。その様子を緋那はボーと眺めていた。

「ありゃ? ひなたどうした? 私と優花が話しすぎで待ってるの疲れた?」

 不思議そうに優が聞いてくる。その様子を見て緋那は自分を殴りたくなった。大変なのは優だ。なのに俺が落ち込んでどうする。拳を強く握り締め、覚悟を決める。

「別に疲れてない。お前らのガールズトークが長いのは昔から知ってるからな」
「それもそっか。ひなたいつも居心地悪そうにしてたもんね」
「それがわかってたなら俺が離れるの許してくれてもよかったんじゃないか?」

 優と優花の話は長い。その都度、こっそりとその場を後にしようとしていたのだが、それに気づいた優が緋那に話を降り逃げることもできない状態に毎回されていたのだ。居心地が悪いと気づいていたのたら、気を遣って欲しかった。緋那はため息をつきたくなる。

「ははは。本当に優は緋那君が大好きね」

 優の母親が微笑ましそうに優を見ている。否定したいがこのタイミングでの否定はしにくい。しかし、さすがは優花だ。彼女は迷いなくベッドに座る優に抱きつき、言う。

「望月より私の方が優の事大好きなんだから!! 幼馴染だからと言って調子に乗らないでよね!」
「俺がいつ調子に乗った......」

 優花の言葉に頭を抑えながら緋那は返す。優花は毎度緋那と優の中に嫉妬して突っかかってくるのだ。優と相思相愛ならそれでいいだろう、俺を巻き込むなと緋那はいつも思う。

「優花、大丈夫だよ! ひなたは幼馴染枠! 親友で1番大好きな女友達は優花だから!」

 やや含みがあるように緋那には聞こえたが、優花は感動している様子で優をさらに抱きしめる。優も笑いながら優花を抱きしめ返している。

 それでもやはり、ベッドから出ようとしない優に違和感を覚える。しかし、彼女の母親は納得している様子がある。まだ自分には隠されている優の病状があるのだろうと緋那は無理やり自分を納得させる。家族のような付き合いをしているとはいえ、所詮他人だ。その事実に緋那は微かに胸が痛むのを感じ、そんな自分を疑問に思う。

  何故そんな当たり前のことに気づついたんだ? と。

「優は友達多いけど、特に2人の事は大好きみたいだからね」

 優の母親が笑いながら言う。2人と言う言葉に優花は引っかかったような顔をする。緋那と一括りにされたことが気に入らないと顔に書いてあるが、優花は優の母親の手前、いつものような軽口は言えないようだ。優花はいつも緋那に突っかかる。しかし、ここまで非日常な状態だとその日常に安堵のようなものを覚える。

「安東、おばさんも話あるだろうし、俺らは帰るぞ」
「望月に言われなくても、わかっている」

 いつもの軽口を叩きながら、優花は鞄を持つ。そして再度優に笑いかける。

「部活があるから、毎日は来れないけど、たくさんお見舞いくるから! 早く良くなって一緒に学校行こうね」

 優花の発言に一瞬だけ優が顔を歪める。しかし、ほんの一瞬ですぐにいつもの笑顔に戻っていた。緋那は気のせいか? と思わず目を擦る。隣で優の母親も若干硬い表情で笑っている。
 長期入院に原因不明の病状。きっと学校へ行く事もしばらくは無理なのだろう。しかし、その事実を知らない優花だけは無邪気に笑う。

「そうだな。じゃ、優。また来るな」

 緋那は優にそう挨拶すると優花と一緒に病室を出た。そして病院から出るとすぐに優花と別れ、家路に着く。
 病室で優と彼女の母親がどんな会話をしていたか知る由もなかった。



 ♢♢♢♢



「優、大丈夫?」
「ん? お母さん何が?」

 心配そうな顔の母親を見て優は笑顔で答える。母の聞きたい事はわかる。きっと学校へはしばらく行けない。優花にその事を隠している以上、あの言葉に傷ついていいわけがない。でも、母親が、緋那が表情が変わったのが見えた。緋那は知ってしまってるんだなと悲しく思った事は事実だ。でも、優花には、学校のみんなには元気な優でいたいと思う。そうしないと、この原因不明の病に負けるそんな気が優にはしていたのだ。だから不安は表には出さない。

 たとえそれが、彼女の実の母親だとしても。

 母も優の頑なさは知っている。だから、譲らないものを感じ取ったようだ。小さく息を吐いてからベッドの端に腰をかけて優を優しく抱きしめた。

「ごめんね、丈夫に産んであげられなくて」
「お母さんのせいじゃないよ! それに先生達も必死に原因探してくれているもん。治らないと決まったわけじゃないよ!」

 自分で言っても白々しいと思った。この現代医学でわからないのだ。見つかるとしてもかなりの時間を要する。それぐらいは優にもわかっていた。諦めないと言いながら、優はどこか諦めていた。そして、少しでも長く家族や緋那と一緒にいたいと思った。何故かわからない。しかし、自分は今死に向かう電車に乗車してしまったと感じた。決して降りることのできない終着駅『死』への特別特急に。
 優は願った。少しでも長くこの電車に乗っていられるように。電車から降りるその時が自分の人生の終わりだと何故か悟った。
 そしてこの感覚を以前も味わったような親近感を覚える。死んだ事はないのになんで私はこんなに悟っているのだろうか? 優は底知れない恐怖を感じながらも顔には出さない。

「大丈夫だよ、お母さん」

 笑いながら優は嘘をつく。鼻につく消毒の匂いと、点滴の落ちる音が静寂な病室内に響いた。
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天国行きの切符作者:星川宙
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第15話 本音と建前

緋那は優の母親と一緒に優の病室に戻る。病室では優と優花が楽しそうに笑いあっていた。

「優花ちゃん、お見舞いありがとうね」

 優の母親は先ほど見せた弱さは嘘だったかのように気丈に優花に笑いかける。すごいなと緋那は思った。緋那はどんな顔で優を見たらいいか、話を聞いてわからなくなっていた。

「あっ、おばさんこんにちは」

 優花が優の母親に挨拶をする。その様子を緋那はボーと眺めていた。

「ありゃ? ひなたどうした? 私と優花が話しすぎで待ってるの疲れた?」

 不思議そうに優が聞いてくる。その様子を見て緋那は自分を殴りたくなった。大変なのは優だ。なのに俺が落ち込んでどうする。拳を強く握り締め、覚悟を決める。

「別に疲れてない。お前らのガールズトークが長いのは昔から知ってるからな」
「それもそっか。ひなたいつも居心地悪そうにしてたもんね」
「それがわかってたなら俺が離れるの許してくれてもよかったんじゃないか?」

 優と優花の話は長い。その都度、こっそりとその場を後にしようとしていたのだが、それに気づいた優が緋那に話を降り逃げることもできない状態に毎回されていたのだ。居心地が悪いと気づいていたのたら、気を遣って欲しかった。緋那はため息をつきたくなる。

「ははは。本当に優は緋那君が大好きね」

 優の母親が微笑ましそうに優を見ている。否定したいがこのタイミングでの否定はしにくい。しかし、さすがは優花だ。彼女は迷いなくベッドに座る優に抱きつき、言う。

「望月より私の方が優の事大好きなんだから!! 幼馴染だからと言って調子に乗らないでよね!」
「俺がいつ調子に乗った......」

 優花の言葉に頭を抑えながら緋那は返す。優花は毎度緋那と優の中に嫉妬して突っかかってくるのだ。優と相思相愛ならそれでいいだろう、俺を巻き込むなと緋那はいつも思う。

「優花、大丈夫だよ! ひなたは幼馴染枠! 親友で1番大好きな女友達は優花だから!」

 やや含みがあるように緋那には聞こえたが、優花は感動している様子で優をさらに抱きしめる。優も笑いながら優花を抱きしめ返している。

 それでもやはり、ベッドから出ようとしない優に違和感を覚える。しかし、彼女の母親は納得している様子がある。まだ自分には隠されている優の病状があるのだろうと緋那は無理やり自分を納得させる。家族のような付き合いをしているとはいえ、所詮他人だ。その事実に緋那は微かに胸が痛むのを感じ、そんな自分を疑問に思う。

  何故そんな当たり前のことに気づついたんだ? と。

「優は友達多いけど、特に2人の事は大好きみたいだからね」

 優の母親が笑いながら言う。2人と言う言葉に優花は引っかかったような顔をする。緋那と一括りにされたことが気に入らないと顔に書いてあるが、優花は優の母親の手前、いつものような軽口は言えないようだ。優花はいつも緋那に突っかかる。しかし、ここまで非日常な状態だとその日常に安堵のようなものを覚える。

「安東、おばさんも話あるだろうし、俺らは帰るぞ」
「望月に言われなくても、わかっている」

 いつもの軽口を叩きながら、優花は鞄を持つ。そして再度優に笑いかける。

「部活があるから、毎日は来れないけど、たくさんお見舞いくるから! 早く良くなって一緒に学校行こうね」

 優花の発言に一瞬だけ優が顔を歪める。しかし、ほんの一瞬ですぐにいつもの笑顔に戻っていた。緋那は気のせいか? と思わず目を擦る。隣で優の母親も若干硬い表情で笑っている。
 長期入院に原因不明の病状。きっと学校へ行く事もしばらくは無理なのだろう。しかし、その事実を知らない優花だけは無邪気に笑う。

「そうだな。じゃ、優。また来るな」

 緋那は優にそう挨拶すると優花と一緒に病室を出た。そして病院から出るとすぐに優花と別れ、家路に着く。
 病室で優と彼女の母親がどんな会話をしていたか知る由もなかった。



 ♢♢♢♢



「優、大丈夫?」
「ん? お母さん何が?」

 心配そうな顔の母親を見て優は笑顔で答える。母の聞きたい事はわかる。きっと学校へはしばらく行けない。優花にその事を隠している以上、あの言葉に傷ついていいわけがない。でも、母親が、緋那が表情が変わったのが見えた。緋那は知ってしまってるんだなと悲しく思った事は事実だ。でも、優花には、学校のみんなには元気な優でいたいと思う。そうしないと、この原因不明の病に負けるそんな気が優にはしていたのだ。だから不安は表には出さない。

 たとえそれが、彼女の実の母親だとしても。

 母も優の頑なさは知っている。だから、譲らないものを感じ取ったようだ。小さく息を吐いてからベッドの端に腰をかけて優を優しく抱きしめた。

「ごめんね、丈夫に産んであげられなくて」
「お母さんのせいじゃないよ! それに先生達も必死に原因探してくれているもん。治らないと決まったわけじゃないよ!」

 自分で言っても白々しいと思った。この現代医学でわからないのだ。見つかるとしてもかなりの時間を要する。それぐらいは優にもわかっていた。諦めないと言いながら、優はどこか諦めていた。そして、少しでも長く家族や緋那と一緒にいたいと思った。何故かわからない。しかし、自分は今死に向かう電車に乗車してしまったと感じた。決して降りることのできない終着駅『死』への特別特急に。
 優は願った。少しでも長くこの電車に乗っていられるように。電車から降りるその時が自分の人生の終わりだと何故か悟った。
 そしてこの感覚を以前も味わったような親近感を覚える。死んだ事はないのになんで私はこんなに悟っているのだろうか? 優は底知れない恐怖を感じながらも顔には出さない。

「大丈夫だよ、お母さん」

 笑いながら優は嘘をつく。鼻につく消毒の匂いと、点滴の落ちる音が静寂な病室内に響いた。
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