第13話 優はもうしばらく入院なんですか
緋那は優花と一緒に優の入院している病院に一緒に向かう、その間会話はほとんどなかった。途中で優花からの希望で彼女の実家である花屋により、優への見舞いの花を彼女自身で用意する。
そして、優の病室の前にたどり着いた。緋那も優花も緊張した面持ちで扉をノックする。
「はーい!」
中から元気な優の声が聞こえた。扉を開けて緋那達は病室に足を踏み入れる。
優は昨日と違い、検査用のセンサーやコードはなく、腕に点滴のみをしていた。昨日のような状態じゃなかったことに緋那は安心して息を吐く。
「あっ、優花。久しぶりー」
ベッドの上からぶんぶんと手を振る。しかし、自らベッドから降りようとする様子がなかった。緋那はその様子に違和感を覚える。しかし、優花は気にした様子もなく優に近づく。
「優! 思ったより元気そうで安心したよ」
「心配かけてごめんね。あっ、もしかしてそれお見舞いのお花!?」
優は優花が持っている花束に気付き、嬉しそうに笑う。俺の時と反応違うなと緋那は内心思うが、特に口には出さず、2人の様子を見守る。
「うん。私が優をイメージして作ったんだ。気に入ってくれると嬉しいな」
そう言って優花が渡した花束は黄色やピンクなど明るい色が基調として華やかに彩られており、確かに優のイメージと言われると納得できる出来だった。緋那はすごいなと思いながら、花束を見る。それに気づいた優が花束を抱きしめながらドヤ顔で緋那を見る。
「いいでしょ、ひなた! あげないよっ」
「誰も欲しいと言ってないだろ」
「そうよ、望月に花とか似合わなすぎる」
「でも、ひなた花束くれたよ?」
「えっ、あんた花屋で花束買ったの? 引くわー」
「おい、安東」
わざと腕をさすりながら言う優花に緋那はため息をつく。見舞いに花束は当たり前だろ、それで引かれる理由がわからないと緋那は思った。しかし、何を言われるかわからないため、口を噤む。優花は優が大好きで、緋那のなすこと全て否定する趣味があるのだ。まともにやり合っても終わりが見えない。
ここは俺が大人にならないとと緋那は人知れず決意する。
「でも、花もらって嬉しかったよ? あっ、今日の優花の花も勿論嬉しい」
花束に花を近づけて、優は花の匂いを思いっきり吸い込む。病室はほのかに消毒の匂いがしており、花の匂いが心地よいのだろうと緋那は勝手に当たりをつけた。
優と優花が楽しそうに話し始めた為、近くに置いてあったパイプ椅子を引き、離れた場所からその様子を眺める。
「そうよね、花には罪ないか。優わかってるね!」
「ふふふ、私はその辺は抜かりがないのだよ!」
内容がない話を楽しそうに話す2人に居心地の悪さを感じた緋那は優達に一声かけて、一度病室を後にする。
しかし病室から出たものの、病院内で行く場所なんてない。コンビニが入っていたなと、コンビニのある階に向かおうとした際に、優の母親がエレベーターから降りてきたことに気づいた。
顔はかなり疲れており、焦燥としてる様子がありありと伝わる。一瞬声をかけるか悩んだところで、彼女と目が合う。
「あっ、緋那君。今日も見舞いに来てくれたの? ありがとう」
「おばさんこんにちは。今日は安東と来てて、今優と安東が部屋で話しています」
「安東......ああ、優花ちゃんね。番号知らなくて連絡できなかったから謝らないと」
「? 優が番号知ってるはずじゃ......」
「実は、優が倒れた時に近くの池にスマホを落としてしまって、故障していたの。明日修理から戻る予定なんだけど......」
「そうだったんですね」
なるほど、謎が解けたと緋那は思った。いくら入院を隠したかったと言っても学校を休むことになれば伝えざるを得ない。なのに優花が知らなかった事を緋那は意外に思っていた。しかしスマホの故障により、連絡番号がわからないと言うのはなんとも優らしい。
「優はもうしばらく入院なんですか」
「......実は、入院後もたまに意識消失が起きてるの。原因がわかるまでは、入院しましょうと先生と。もしかしたら長期入院になるかも知れないわ」
「えっ......?」
知らなかった事実を彼女の母親から言われて緋那は目を見開いた。優の様子からはそんな状況だと察することができなかった。心配かけないために、隠していたのだ。今の状況で1番不安なのは間違いなく優だ。いつもは迷惑をかけるのに、こういうことは隠す。優はいつでも元気に思われたい人間だった事を緋那は忘れていた。
緋那のその様子を見て優の母親ははっとしたように口元を手で覆った。
「緋那君はどうしても、身内に思えて話しちゃったけど、このことは秘密にしてね。優も知られてると思われたくないだろうから」
彼女は優しくそう笑う。それから少し考えるそぶりを見せる。
「優花ちゃんと優が話してるなら、私も少し後に面会に行こうかしら。緋那君、時間ある? 緋那君には共有しておいた方がいい気がして、優の現状の話をしても大丈夫?」
疲れた様子の優の母親はそう笑うと、緋那を病院内にあるカフェへと誘った。
緋那は頷き、彼女と共に病棟から1階にあるカフェへと向かった。