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③ 酒井弓子の場合(釘を刺す少女)

 それから数カ月後......病室のベッドの中で、弓子はウキウキしていた。
 と言うのも、つい先程、担当医の先生から「治療の経過も順調だ。恐らく9月には退院が可能だ」というお墨付きを貰ったからだ。

 去年、あの人が言ってたことは、やっぱりウソじゃなかった。
 私は、高校受験に間に合うんだ。
 雪村君にも、また逢える!
 弓子は、嬉しくて仕方が無かった。
 と、そこへ、病室のドアをノックする音が聞こえたのだ。

 あれ?......先生また、戻ってきたのかしら?
 弓子が返事をすると、制服を着た少女が入って来た。
「お久しぶりね。もうすっかり、良くなったみたいね」
 それは、同級生の村田京子だった。

「ありがとう......急にどうしたの?」
 よく考えたら、小学校以来、あまり親しく話したりしていない彼女の登場に、弓子はいささか、戸惑っていた。

 京子は、病室の花瓶に赤いバラの花束を飾ると、振り返ってこう言った。
「アナタには、ウソが通じないのは分かっているので、単刀直入に言います......雪村君の事は、私にまかせて諦めてください」
「......!?」

「アナタも、雪村君の事が気になっていたのでしょう?はっきりしたのは、あの誕生日会の頃かしらね」
「......」

 京子は、しゃべり続ける。
「雪村君はね......何者かに、常に命を狙われているのよ。そして残念ながら、アナタのチカラでは、雪村君を守り切れない......でも私なら、ソレができる」
 彼女は、ウソを言っていない。弓子には分かった。

「この世に男なんて、星の数ほどいる訳だし......アナタには悪いけど、今回は私に譲ってね?」
 この人は、いきなりやって来て......ナニ勝手な事を言ってるんだ?
 弓子はそう思いつつも、彼女の内側からにじみ出る、底知れない、分厚い氷のような重圧を感じて、黙っていた。

「あとは私に任せて、アナタは安心して、治療に専念してね......じゃあ、要件はそれだけだから。お大事にね」
 言いたいことだけ言って、彼女は病室から、足早に去って行った。

 その場に残された弓子は、戦わずして、すっかり負けた気分だった。
 こんな事は、人生で初めての経験だった。
 まるで"格の違い"を見せつけられたような感じがした。

 コレが1979年8月某日の事である。挿絵AIで作った挿絵
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④ 酒井弓子の場合(卒業式の再会)
彼女たちはモブじゃない!(セーラー服と雪女 第一部②)作者:サナダムシオ
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③ 酒井弓子の場合(釘を刺す少女)

 それから数カ月後......病室のベッドの中で、弓子はウキウキしていた。
 と言うのも、つい先程、担当医の先生から「治療の経過も順調だ。恐らく9月には退院が可能だ」というお墨付きを貰ったからだ。

 去年、あの人が言ってたことは、やっぱりウソじゃなかった。
 私は、高校受験に間に合うんだ。
 雪村君にも、また逢える!
 弓子は、嬉しくて仕方が無かった。
 と、そこへ、病室のドアをノックする音が聞こえたのだ。

 あれ?......先生また、戻ってきたのかしら?
 弓子が返事をすると、制服を着た少女が入って来た。
「お久しぶりね。もうすっかり、良くなったみたいね」
 それは、同級生の村田京子だった。

「ありがとう......急にどうしたの?」
 よく考えたら、小学校以来、あまり親しく話したりしていない彼女の登場に、弓子はいささか、戸惑っていた。

 京子は、病室の花瓶に赤いバラの花束を飾ると、振り返ってこう言った。
「アナタには、ウソが通じないのは分かっているので、単刀直入に言います......雪村君の事は、私にまかせて諦めてください」
「......!?」

「アナタも、雪村君の事が気になっていたのでしょう?はっきりしたのは、あの誕生日会の頃かしらね」
「......」

 京子は、しゃべり続ける。
「雪村君はね......何者かに、常に命を狙われているのよ。そして残念ながら、アナタのチカラでは、雪村君を守り切れない......でも私なら、ソレができる」
 彼女は、ウソを言っていない。弓子には分かった。

「この世に男なんて、星の数ほどいる訳だし......アナタには悪いけど、今回は私に譲ってね?」
 この人は、いきなりやって来て......ナニ勝手な事を言ってるんだ?
 弓子はそう思いつつも、彼女の内側からにじみ出る、底知れない、分厚い氷のような重圧を感じて、黙っていた。

「あとは私に任せて、アナタは安心して、治療に専念してね......じゃあ、要件はそれだけだから。お大事にね」
 言いたいことだけ言って、彼女は病室から、足早に去って行った。

 その場に残された弓子は、戦わずして、すっかり負けた気分だった。
 こんな事は、人生で初めての経験だった。
 まるで"格の違い"を見せつけられたような感じがした。

 コレが1979年8月某日の事である。挿絵AIで作った挿絵
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彼女たちはモブじゃない!(セーラー服と雪女 第一部②)作者:サナダムシオ
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