断る。
ヴァルディア帝国第三皇子ルシアン・フォン・ヴァルディア。
今、私の目の前にいる貴公子である。
私はたった今、皇太子アレクシス様に婚約破棄を突き付けられた。
「......解せぬ、ですか?」
「あ、ああ。俺との結婚を断る理由は何なのかなーって」
理由。
理由ですか。
「逆にお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「もちろん」
「なぜ、私と結婚したいのでしょう?」
「めっちゃタイプだから」
「かっる」
即答だった。
この方は。
先ほどから一体、何を仰っているのでしょう。
「それだけですか?」
「それ以外に必要?」
「必要かと」
「そうなの?」
「そうかと」
「父上はそうじゃなかったぽいぞ?」
ルシアン殿下が陛下へと顔を向ける。
陛下はしっかりと明日を見据えて視線を一切合わせない。
この親子、似ている。
「はぁ......」
私も首を傾げたい。
皇室主催の社交パーティー。
帝国中枢を担う方々が集う場所。
第一皇子から婚約を破棄され。
その数分後。
第三皇子から求婚されている。
誰か。
この状況を説明していただけませんこと?
「じゃあ、俺の何が駄目?」
「何が、と申されましても」
「第三皇子」
「存じております」
「金はある」
「皇族ですから」
「顔も悪くない」
「ご自分で仰るのですね」
「浮気もしない」
「それは結婚以前の問題では?」
「面倒だから」
「理由が最低です」
ルシアン殿下が眉を寄せた。
本気で分かっていないらしい。
「政治にも興味ない」
「皇族としてどうなのでしょう」
「皇位もいらない」
「なおさら皇族としてどうなのでしょう」
「昼寝が好き」
「働け」
「結構いい条件だと思うんだけど」
「どの辺りがでしょう?」
分からない。
この方の自信が、どこから湧いてくるのか。
まったく分からない。
ただ、一つだけ分かったことがある。
「ルシアン殿下」
「ん?」
「やはり、お断りいたします」
「なんで!?」
先ほどより大きな声が響いた。