第3話 モンスターパニックとカーチェイス
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トム中尉に無線を飛ばしたカスガ大尉は、空軍に支援要請することを進言した。
先人たちと同じように正面から迎え撃ったところで、ただ弾を浪費するだけである。
そもそも何故かオーストラリア西部に飛ばされた以上、補給問題も浮上した。
もちろん米空軍が、同盟国であるオーストラリアの許可なく好き勝手に航空機を飛ばせる保証もない。
だが、トム中尉は機転を利かせた。
『――キャプテン、何故かオーストラリア西部に飛ばされた我々は、所属不明部隊に包囲されつつあり、敵中で孤立寸前です......細かいことは、上の人間に任せましょう』
無線機越しにトム中尉は淡々と事実を述べたあと、本当に空軍へ支援要請を送ったと付け加えた。
そうして太鼓のような鳴き声を轟かせるエミューの群れが、シエラ中隊を覆い尽くすかのように眼前まで迫ったその時だ。
中央に展開するトム中尉から、全部隊へ後退命令が伝えられた。
「ボブ、後退命令だ! モンスターパニックとカーチェイスの時間だ! サマーフィールド伍長、ミッキー、しっかり掴まってろ!」
「「「イエッサー!」」」
ドライバーのボブは、バックギアを入れてアクセルを思い切り踏み込み、勢いよく後進してエミューと十分な距離を取ったことを確認。
「Foooooooo!!」
奇声を上げながらハンドルを切って急旋回したことで、全員車内のどこかに頭をぶつけたのは言うまでもない。
「F***! ボブ! 前を見なさいよ!」
「このクソッタレ! ボブ! お前のニワトリ嫌いで俺たちを巻き込むな!」
「ヘルメットが無ければアーリントン行きだったわよ! このクソッタレ!」
「ボブ! 俺たちは敵じゃねえ! ママに言いつけんぞ!」
サマーフィールド伍長は、金髪碧眼の女神のような容姿から想像もつかないような悪態をつき、ミッキー上等兵は頭を抱えながらボブに罵声を浴びせた。
ボブは仲間たちからの罵声なんてどこ吹く風のまま、奇声を上げながらアクセルを踏み抜き、エミューの群れから全速力で逃れようとしたのだ。
「オーマイガー! ジェニー! 前はどうでもいい! それより後ろが問題だ! キャプテン!」
「All Right Mother F***ers. うるせえ、いいから早く離脱するぞ」
そうしてカーチェイスの果てに、荒野を埋め尽くすエミューの群れが奏でる太鼓のような鳴き声が、ほとんど聞こえなくなってきた頃合いだ。
『――全部隊に告ぐ。エリート気取りの空軍のお出ましです。我々海兵隊を敵と区別出来ないクソッタレですので、直ちに離脱して下さい!』
「こちらカスガ。もうやってる......どうぞ」
『――ええ、キャプテンの判断力と逃げ足に感服しております......どうぞ』
「それで、空軍がどうしたって?......どうぞ」――――。
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