第4話 火力で解決すればいい
◇
トム中尉との無線交信を終えたカスガ大尉は、ドライバーのボブ上等兵に停車を命令した。
注文通りの急ブレーキを踏んだボブ上等兵には、またしても頭を打った全員からの罵声を浴びせられたのである。
「F***! ボブ! また私をアーリントンにでも飛ばすつもり!?」
「クソッタレ! いくら幼なじみの俺でも、お前にNワードを言いたくなるぜ!?」
「ボブ! お前はフォレスト◯ガンプかよ!?」
「オゥ、キャプテンが止まれって命令したじゃないですか? キャプテンの言うとおりなら俺たちは死なないぜ!」
「ああ、俺の言うとおりだけど、また死ぬかと思ったぜ?」
「「「「HAHAHA!」」」」
彼らはひとしきり笑い合ったあと、カスガ大尉の口からトム中尉とのやり取りで決まった命令を伝えようとした。
何故かオーストラリア西部に飛ばされて、エミューの群れに包囲されつつあったシエラ中隊は、モンスターパニックとカーチェイスの果て、ダメ元で空軍に支援を要請。
その結果は......。
「キャプテン、そんなに笑ってどうしたのかしら? また頭でもイカれたのかしら?」
「ジェニー、キャプテンはいつでもイカれてるぜ?」
「そうだよな、むしろイカしているぜ!」
エミューの群れから十分に引き離してから急停車したハンヴィーの中にて、カスガ大尉はつい先程、トム中尉とのやり取りを忘れられず、腹を抱えて笑い出してしまった。
これでは命令どころじゃないのだが、カスガ大尉はそんなことをお構いなしに笑い続け、ようやくおさまったところでこう告げたのだ。
「お前ら、聞いて驚くなよ?......エリート気取りの空軍、鳥の群れごときにB52(戦略爆撃機)を飛ばしたぞ? しかも数機の編隊でな?」
「冗談でしょ? 空軍、頭でもイカれたのかしら!? エミュー戦争のリベンジでもするつもり!?」
「こいつは傑作だぜ! うちの空軍は、昔のオーストラリア陸軍と同じ轍を踏みたくないらしいな!」
「よかったなボブ! ニワトリに追い回されたお前にとっちゃ爽快だろうよ!」
「「「「HAHAHA!」」」」
ハンヴィーから荒野を埋め尽くすエミューの群れを眺める彼らは、その場で待機しながらときどき距離を取ったりしつつ、軽口を叩いて笑い合った。
米空軍の冗談のようなサプライズが、本当に来るのかと待ち続けた彼らは、まるでクリスマスプレゼントを待つ子供のようだった。
そして数時間後......。
「キャプテン、本当に来たわね......」
「ああ、いくらなんでもあれはやり過ぎだろ?」
「ミッキー、今日はバーベキューパーティだな」
「ボブ、フライドチキンもいっぱいだぜ」
こうして、米空軍による米帝らしさ全開のパワープレイにより、多額の運用コストを投じた作戦の結果、人類は100年程前の雪辱を果たした。
そして、ここまでやる必要があったのか?
のちの歴史でまた人々は、笑うのかもしれない。
エミューとの戦争は、戦術的には勝利を勝ち取った。
だが、鳥相手に戦略爆撃機まで持ち出した人類は、またしてもある意味敗北したのだ。
先人の例から人類はなにも学ばず、新たな形でエミュー戦争の二の舞を演じたのであった。
そして、アフガンに展開していたはずのシエラ中隊が、何故、オーストラリア西部に飛ばされたのか?
謎は謎のまま、彼らは飽きるまでバーベキューを楽しみながら、迎えを待つ以外に無かったのであった――――。
――――Cut!
◇