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そう返した直後、なのかがよく使うちいかわのスタンプが送信されてきた。全身で震えながら泣いているスタンプだ。ふふっと息を漏らしたぼくの耳に、パーソナリティーの豪快な笑い声が届いた。
『俺さあ、「Klar(クラー)」の大ファンだったの。俺みたいな大の大人がだよ、おっさんがだよ、凛音くんの声とピアノと、珀陽(はくよう)くんの声で号泣。マジ号泣したの』
『ヨウの音を届ける力ってすごいですからね』
『珀陽くんのあの包むような声に、凛音くんのガラス細工みたいな繊細できれーーーーーーーな声が乗るとさあ、全然迫力が違うんだよぉ。ねえ、珀陽くん』
パーソナリティーが話を振ったとき、また、ぼくの耳にもうひとつ聞き覚えのある声がした。リンとはまた少し違う、まったく棘がなく、太いわけではないのに丸みを帯びた明るい声が、ぼくの鼓膜を揺らす。
『オトさん、俺のおかげって言ってるけど、俺のおかげだからね、マジで』
勘違いしないで、と、ヨウが笑っている。
オトさんは、お馴染みのパーソナリティーだ。音川太陽という名前のとおり、豪快で、ちょっと暑苦しさがあるが、この公開生放送を観覧したくてわざわざデパートにやってくるファンがいるくらいおもしろい人だ。
ぼくはあれ以来ラジオをほぼ聞いていなかったが、デパートにくるとこのFMブースの音だけは気になっていた。
リンがこのラジオのゲストに出ることは、昨日決まったらしい。本当に急遽だったようだ。本来はヨウ一人で出演予定だったけれど、たまたま出身校のコンクール会場で出会い、熱烈なオファーをしたのだとヨウが言う。
それも、オファーの仕方がとんでもなく強引だ。音楽室で学生向けに演奏したあと、拍手をする体で近付いて熱烈なハグをしたまま、「承諾するまで離さない!」と粘ったらしい。
なのかのような強引さだ。くすりと笑うぼくのスマホが、また揺れた。
『お母さん、感動して泣いてたんだけど』
『言うならいまじゃない?』
一瞬、どきりとした。すぐに猫が平泳ぎをするスタンプを選択する。「絶対無理」シリーズだ。
すぐさま、ちいかわのスタンプが来る。「えっ?」とハチワレが震えているそれを見て、もう一度「絶対無理」シリーズのスタンプを送った。