08
今日限りの再結成で、今後は未定だと、リンが言う。
未定ということは可能性があるということだと、パーソナリティーと、そしてヨウが粘る。リンは否定も肯定もしなかった。ただ、あの時と同じように笑って、涼し気な目元を伏せた。
『同級生たちの夢を応援したくて始めたユニットが、思いのほか人気になって嬉しかったんですよ。
俺もヨウも学生だったし、音楽留学も決まっていたので、まるで投げ出すような形で終わってしまったのが、少し心残りでした』
リンが言い終えるよりも早く、周囲の人たちが拍手をした。それを見て、パーソナリティーがまた「もっとやれ」とばかりに手で煽る。ブースの中ではヨウも同じく手で煽るのが見えた。
息を漏らすように笑う声は、あの時のままだ。透明感があるのは声だけじゃなく、表情や仕草もだった。
まるで、音の調べがそのままリンを作っているかのような、淀みも濁りもない、綺麗な表情をしている。
顔の造作が綺麗だというだけではなく、佇まいも、少し栗色のような髪色も、なにものにも染まっていないような、そんな気がした。
『じつは、ずっと気にかかっていたことがあって』
ふと、リンが言った。
『2年前、ラジオの番組編成を理由に、時間を預かっていた番組が終了になりました。
番組編成で時間帯が変更になるというだけだったのが、俺の都合でユニット解散に至ってしまったのは、申し訳ないと思っています』
『まあでも、音楽留学が終わってまた日本に戻ってきたわけだしさあ』
パーソナリティーがそう言うと、リンは気恥ずかしそうに笑いながら、少し肩を竦めた。
『そうなんですけどね。でも、夢を応援するつもりで始めたことを、俺が途中で投げ出したことで、じつは夢はかなわないかもしれない......なんて思わせてしまったかもしれない相手がいるんですよ。
もちろんそれは、個人ではなく、複数かもしれない。誰もそんなことを思っていないかもしれない。
それならそれでいいんだけど、ラジオの終了を告げた日に読み上げたメールの相手の子のことが、ずっと忘れられなかった』
どきりとした。
あの日、複数のメールが読まれていた。
だからそれは、ぼくのことではないだろう。そう思いながら、なのかから届いたメッセージに返信をする。