09
リンもヨウも、なのかとおなじ中学卒らしい。
音楽活動にかなり力を入れた珍しい中高一貫校だが、そこはほんの一握りだけれど、芸能活動も認められていたようだ。
なのかがふたりを知ったのは、卒業生の名簿の中に音楽活動をしていた人がいたということから。
どうしてそれが「Klar」のふたりだとわかったのかというと、ぼくが弾いていたあの曲をリンがピアノで試し弾きしたからだと、なのかが教えてくれる。
短文で、淡々と、何度も送られてきていた。
一昨日のコンクールは入賞にすら至らなかったこと。
母が自分のことのように残念そうに溜息をついていたが、それはまるで自分が突き離されたように感じたこと。
母は自分がかなえられなかった夢を、なのかを通じて果たしたいと思っているのかもしれないということ。
たとえそうでも、なのかが思いどおりにピアニストになれば、もしかすると母は南帆の気持ちにも気付くかもしれないと思って、必死に練習をしてきたこと。
できるならもっとはやくに、「Klar(クラー)」の音楽を知りたかったこと。
スクロールしながら、視界が滲んでいくのに気付いた。
なのかも、ぼくと同じ思いを抱いていたみたいだ。
ぼくはずっと、どこかでなのかとは違うのだと思っていた。
似たようなことが、またなのかから送られてくる。
なのかがピアニストになるよりも早く、たぶん、「Klar(クラー)」の音が母の心の傷を埋めたこと。
小柄な母は、ピアノを習ってはいたものの、手がほんの少しだけ小さいせいで、なのかがコンクールで弾いた曲が巧く弾けなかったのだそうだ。
知らなかった。祖母はなにも言わなかったし、母からもなにも聞いたことがない。
驚くことに、リンが学生の前で弾いた曲は、なのかがコンクールで弾いた曲だったようだ。だからこそ、母の思いが氷解したのではないかと、なのかのメッセージを読む。
『あの日のメッセージは、結構鮮明に覚えているんだよね』
「わかる」と、リンがヨウに同意をする。
『高校受験に受かったっていうおめでたい報告のあとに、ラジオの終了を告げるのって、結構グッとくるものがあって』
そう言われて、ぼくは目を瞠った。
確かにあの日、リンの声は震えていた。自分も中学受験の時に心底緊張したからこそわかると言ってくれたが、それはなのかとおなじ、競争率がかなり高い学校だと知ると、余計に自分の気持ちとリンクする。